「井上円了哲学塾で得たもの」 塾生登録番号 7700160019 東洋大学

「井上円了哲学塾で得たもの」
塾生登録番号 7700160019
東洋大学経営学部第二部経営学科
佐藤 辰矢
私が井上円了哲学塾で得たものは「成長の機会」と「他の学生からの刺激」だと思いま
す。
一つ目の「成長の機会」については、当初私が哲学塾に入った理由で一番大きいものが、
ディスカッションの力を高めたい、というもので、そのため昨年に単位を取得している関
係で履修できなかった 3 限の講義にはほとんど出席しないが、4限の時間にディスカッシ
ョンと発表だけ参加するというある意味不真面目な受講態度でした。結果としてみるとデ
ィスカッションの経験はずいぶん積むことができ、場数は去年とは比べ物にならないくら
いに増えました。授業やゼミでも並行して行っていたために、社会に出る前に論理的に考
えて発言する力はある程度身につけることができるようになり、満足していました。
しかしディスカッションのテーマについて興味がわかなかったり、やりづらいと思った
ときにモチベーションが保てていなかったりすることもあり、今後そういったときにやる
しかないとごまかして苦しい状態でやるのではなく、自分をどのようにして奮い立たせて
いくのか、という新たな課題が見つかりました。このように、ディスカッションのみでな
く、その過程で次の成長の機会が得られたことはとても良い収穫でした。
一方で講義に対してもう少し積極的に参加していれば得られるものはもっと大きかった
はずで、せっかく多方面で活躍されている方を外部から招いている贅沢な環境であったに
も関わらず、それを生かさなかったのは今思えば後悔だけが残ります。
参加した講義やフィールドワークの中でいくつか取り上げると B-lab と交渉学の二つの
回が印象的でした。B-lab は文京区の学校で勉強も運動もどちらもできるように設備が整っ
ていて、実験などの課外活動も定期的に行われているなど、私の出身である山形とは比べ
物にならないほど充実した環境がありました。このように、学校以外にも学びの場がある
ということが、環境的にも経験する内容的にも広がりが生まれて今の学校教育がカバーし
てないような力を発掘するのではないかと考えました。もっとも、すばらしい場所である
と関心する一方で地方と都市の格差がより助長されるような側面もあると感じました。
交渉学についての講義では普段経験することのない交渉という分野について考えること
が想像がつかないことで、とても難しいと感じました。今後ビジネスの世界に出た時に交
渉は必要となると思ったが、考えることは一人でもできるが交渉となると相手と条件が必
要で、うまくいくかどうかには人間性とかも絡んでくるので、非常に力を伸ばしにくい分
野ではないかと考えました。そのような中で経験ゼロの交渉に関する議題でディスカッシ
ョンが行われたのでとても苦労した分野でした。この講義で印象深かったのは win-win の
選択肢を見つけ出すというところで、これは交渉の場面で相対している二者のどちらの要
望も解決する第三の案だと認識していて、すばらしい解決方法でした。しかし、交渉して
いる際に出ていたパイを増やすという例が出ていて、二者は互いに win-win だったが一方
で第三者が不利益をこうむっている状況がありました。交渉という場においてはすばらし
い効力があったが、その外側においては win-win ではなかったことが残念で、自分と相手、
第三者それ以外もふくめて win-win の関係を築けるような解決案を探せるようになりたい
と感じました。
二つ目の「他の学生からの刺激」ということについては、授業のテーマがざっくりして
る分、ディスカッションや発表の機会に自由度が高くてその人がどのように考える人なの
か、何がしたい人なのかがよくも悪くも見ることができた点でした。いろんな場所に顔を
出す行動力がすごい人や、ディスカッションをする時間に「考える必要性を全く感じない
し、全く興味がないから意見を出せない」とはっきり言い切る人、他にも 1 年生の時点で
自分を変えようという思いで参加している人や、自分の弱い所をさらけ出せる人等、個性
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のある人が多くて刺激になりました。その中で自分は成長するために行動する時には人や
環境に従うといった方法をとりがちで、未知のものに取り組むチャレンジ精神をもってい
なかったり、周りからの影響を受けて自分の意見を少なからず変えてしまっているのかと
考える機会を持つことが出来ました。
最後にテーマから少し離れますが、福川理事長の第 13 回の授業では、世界の歴史をたど
った上で、今後日本はどのように活躍し、どのような社会を構築していくべきかというこ
とについて述べられました。このような問題について考えることは非常に難しく、世界情
勢や技術の発展、日本の現状やその比較など参考にするべき情報の量が多いため、そのよ
うな中で総合的に行動を決めていくということを理解することが、まず難しいものでした。
ただ、日本の学生としてこれについて考えることが出来るとこととしては、日本を含めた
世界でどうすれば哲学塾の掲げるようなグローバルリーダーとしての素養を持ち、活躍す
ることが出来るか、そして、そのために日本はどのように前に進んでいくべきか、という
ことだと思います。
福川先生は、
「日本力」という言葉で、自助共助の精神、異文化への寛容性自己陶治の努
力、信頼と秩序の尊重、自然共生の文化を日本人の強みとしておられます。他方で、横並
び意識、論理思考の弱さ、グローバル性の低さ、コミュニケーションの軽視、内向きの社
会意識、低調な対外発信力、英語力の弱さを日本人の弱みとしてあげられており、自己決
定能力の向上が急務であると述べられています。その上で、今後日本は国債が全資産を超
えて GDP が低下し続ける可能性があるということを考えると、世界や外資系企業で働くこ
とが、人口と日本企業の働き口の数で考えると必然になってきます。そして、外資系企業
や海外で働く上で個人としてどのような力を高めていくのかを考えると、弱みに注目して
それを改善することが最低条件になります。その中で特に改善が必要な弱みは、内向きの
社会意識です。他の横並び意識やコミュニケーションの意識などは、環境がそのような場
所ではないので、周りの影響で自然と改善されると考えます。また、語学と論理的思考は
語学は個人の努力で、論理的思考は経験で磨かれるものだと考えられます。そのため、内
向きな社会意識をどのように変えていくかが最重要課題となるのです。これは、自分とし
ては、改善に成功した暁には外向きな社会意識、つまり競争意識のようなものになるもの
だと考えています。
日本では、企業としての活動を、組織の資源を使ってチームでいかに成果を挙げるかが
働くことであるとされたきたわけですが、それに対して、外資企業では個人単位での成果
主義を掲げているという印象があります。もっとも、会社で生き抜くため、そして、活躍
するためには、個人の実力が必要で、そのためにも、日本はその原動力となる競争意識を
いかに高めていくのかという点で努力をしなければならないと考えます。日本という国が
これに取り組む方針として一般的に言われるアクティブラーニングのような主体的な授業
や、順位をつけることに対してクレームをつけるような親世代に対しての対処が必要とな
のです。加えて、大学生がインターンでするような企業の現場での体験教育を提供するこ
ともありえてよいと考えています。というのは、企業が業界内でいかに成果を出すか、他
企業と競争を繰り広げているか、ということは、部活や受験とはまた別の段階だと感じて
いるところがあり、そのような情報に早くから触れさせるようにすると、学生でいる間に
起業しようとするような意欲的な人が、より多くなるのではないかと考えられるからです。
こうしたことから、哲学塾に入塾して様々な分野のことについて考え、議論をしてきた
経験は、今後自分の中で基軸と呼べるものを構築する過程で生きるものだと思いました。
以上、
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