Page 1 京都大学 京都大学学術情報リポジトリ 紅

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Al-Cu-Cr系合金の準結晶 : 安定De相の存在とその近似結
晶
降籏, 順一郎
物性研究 (1993), 60(3): 183-238
1993-06-20
http://hdl.handle.net/2433/95107
Right
Type
Textversion
Departmental Bulletin Paper
publisher
Kyoto University
物性研究
60-3 (
1
9
9
3-6
)
Al
C
u
C
r
系合金 の準結 晶 *)
∼安定 De相の存在 とその近似 結 晶∼
富山大学 理学部
降賛 順 一 郎
(1993
年 3月 26日受理)
(概要〉
現在、準結 晶研究 のほ とん どは安定準結 晶を形成す る合金系 に対 して行 われている
。
なぜな
ら、安定準結 晶は準結 晶が もつ本来 の特徴 を、構造、物性、成長機構な どにつ いて、 明確 に我
々 に与 えて くれ ると考 え られてい るか らであ る。
その一方で、並進対称性がない準結 晶がなぜ結 晶よ りも安定なのか、 また特定の組成 に しか
安定準結 晶が存在 しないのは何故か、すなわ ち準結 晶が安定化す る条件 は何か、 とい う問題 が
安定準結 晶の発見以来、今 日まで議論 され続 けてい る。数 々の合金 系 に安定準結 晶の存在 を兄
いだす試み は、安定準結 晶の性質や生成条件 を解 明す る上 で重要 な研究 テーマの一つであ る と
思われ る
。
本研究では、安定な 2
次元準結 晶De相 とその近似結 晶をAトC
u
Cr
系合金 に確認 した ことを主
な成果 と して報告 している。AトC
uCr
系合金 は準安定 3
次元準結 晶 Ⅰ相 に関す る研究が い くつ
か報告 されているだけで、D
e相 につ いてはほ とん ど研究 されていなか った。
第 Ⅰ章で、最初 に準結 晶の概念 と準結 晶研究 の現状 につ いて簡単 に触れてお き、第 Ⅱ章 で は
A1
7。
C
l
l
l
。
Cr2
。
合金 に存在 したDe相の安定性、構造、成分、成長形態な どを電子顕微鏡観 察 の結
果 を 中心 に議論す る。更 に、 このDe相 に対応す る二種類 の近似結 晶につ いて も、主 に近似結 晶
間の構造 的 関係 につ いて透過型電子顕微鏡 (
T
E
X)
観 察の結果か ら論 じている。
*)本稿は修士論文として投稿されたが、編集部より依頼 して論文として掲載するものであるo
-
18
3
-
降旗
順一郎
く目次〉
ページ
第 Ⅰ葦. 序論 ∼準結 晶につ いて∼
第 Ⅱ葦 .
§1
.準結 晶の発見 と定義
1
8
5
§2
.
準結 晶の種類
1
8
7
§3
.
準結 晶の安定性 と凝 固形態
1
8
7
§4
.
射影法 とフェイ ゾン歪
1
89
§5
.
近似結 晶
1
8
9
§6
.
準結 晶の構造 モデル
1
91
§7
.
安定準結 晶 と丑
u
E
I
e
R
o
t
h
e
r
y
J
o
n
e
s
巌験則
1
9
4
Al
T
.
C
d1
0
C
r
2
.
合金 における安定なD
e相
§1
.
p
e
柏(
正1
0
角形相 )につ いて
1
9
8
§2
.
AトC
u
C
r
系準結 晶の研究 につ いて
1
9
9
§3
.
本研究 の 目的
2
0
0
§4
.
実験方法
2
01
§5
.
結果 と考察
2
03
(A)
a
s
c
a
s
t
試料
2
0
3
(B)
1
0
0
0
℃、1
0
0
時間熱処理試料
2
08
(C)
9
5
0
℃、50時間熱処理試料
21
7
(
D)820℃、870℃、50時間熱処理試料
22
2
(E)
安定性 と相変態
22
8
(F)e/a値 とKp
/
2kF
2
3
2
§6
.
結論
23
3
く
謝辞)
く
参考文献)
-1
8
4-
Al
-Cu-Cr系合金の準結晶
-安定 De相 の存在 とその近似結 晶∼
第 Ⅰ章.序論
∼準結晶について∼
§1
.準結晶の発見 と定義
結 晶の逆格子空 間にはシャープな回折点が多数周期的に存在 し、それ らの位置は空 間次元数
本の基本逆格子ベ ク トルの整数倍の和ですべてを記述す る(
すなわ ち指数付 けす る)
と同数の3
- ローパ ター
ことができる。 一方、アモル ファスについて は、その逆格子空 間にはいわゆる"
ン'
'
が現れ る。 これは、前者がその原子配列 に長距離秩序があるのに対 し、後者 には長距離秩
序が欠 けていることを意味 している。 したが って従来、結晶学の分野では長距離秩序 -周期構
逮 -結 晶であると解釈 されてお り、 これは誰 もが認め る常識であ った。 ところが、 この結 晶学
9
8
4
年D.
Sh
e
c
ht
m
a
nらによって報告 された。A1
6批l
合金の液体急冷 に
の常識を打 ち破 る事実が、1
0
面体の対称性を もつ新 しい金属相(
正2
0
面体相)
の発見である。1
)正2
0
面体 は
よ り得 られた正2
4
個 の ブラベ ー格子
結 晶では許 されない5回の回転対称軸を もっているために結 晶を定義す る1
には当てはま らない。 しか し、彼 らの示 した電子 回折 図形は、明 らかに原子配列の長距離秩序
を意味す るシャープな回折点が、非周期的に配列 してお りかつ5回対称 を満足す る ものであ っ
た。 この事実を認める限 り、 もはや結 晶学 において `
長̀距離秩序 -結 晶'
'とい う考え方は正 し
.
∫
.
St
ei
n
h
ar
dtらによって結 晶やアモル ファス とは異なる新 し
くない。 この新 しい金属相は、P
い秩序(
準周期性)
を もつ固体 と考え られ、 `
準̀結 晶'
'
と呼ばれた。2) ここで考え られた新 しい秩
0
面体相の発見以前、初めて並進対
序、すなわち準周期性 について触れてお く必要があ る。正2
.
Pe
nr
os
e であ った.彼 は二種類 の
称性のない長距離秩序を実現 したのは、宇宙論で著名な R
(
P
e
nr
os
er
h
om
biと呼ばれ る)
菱形 タイルに `
m̀
at
c
hi
n
gr
ul
e'
'
と言われ るある規則 を適用 し、これ
次元平面を充填す ることに成功
らを用 いて無限に非周期 的に、かつ5回対称を満足す るように2
した 3)(図 Ⅰ-1)O この タイル張 りはペ ンローズタイル と呼ばれい くつかの長距離秩序が存在
m̀
at
c
hi
n
gr
ul
e"か ら生 じ、他 にはタイルの辺の結合す る向き
す る。 それ らの一つ は もちろん `
つの方 向に厳
に関す る配 向秩序な どがある。ペ ンローズタイルの場合、辺 の結合す る向きは5
密に決 ま って しまう。準周期性 とは並進対称性のない長距離秩序であるが、ペ ンローズタイル
の持つ性質が準結 晶にとって全て当てはまるか どうかは、現段 階ではまだはっき りしていない。
(§6で詳 しく述べ る)
現在の ところ一般的な準結 晶の定義は以下のよ うにな っている。
(
a)逆格子空 間にシャープな 回折点が存在 し、
(
b)基本逆格子ベ ク トルの数が空 間次元数 (3)よ りも多 く、
(
C)結 晶では許 されない対称性を もつ。
-
18 5
-
降旗
順 一郎
囲 Ⅰ-1
(a);ペ ンローズ タイル と配 向秩序
二種類 の菱 形 タイル が非周期 的 に平面 を充填す る。 タイル の結 合す る向 き
は図 中の矢 印で示す 5
つ の方 向に厳密 にきま って い る(配 向秩 序 )0
皿
at
c
hi
n
g rul
e"
図 Ⅰ-1(b);ペ ンローズの菱形 と 一
二種類 の菱形 をペ ンローズの菱形 と呼 び、 それ ぞれ の菱形 の 1
重矢 印 どう し、
二 重矢 印 どう Lを張 り合わせ る ことによ ってペ ンローズ タイル を作 る こと
がで きる。
-1
86-
AトCu-Cr系合金 の準結 晶
-安定 De相 の存在 とその近似結 晶-
前に も触れたように準結 晶の回折点は非周期的(
準周期的)に配列 しているために、いわゆる指
本 よ りも多 く必要なのである(図 Ⅰ-2
)
。ちなみに、
数をつ けるためには基本逆格子ベ ク トルが3
0
面体相 は正2
0
面体の中心か ら頂点 に向か う6
本 の基本逆格子ベ ク トルが必要 である。
正2
§
2
.
準結 晶の種類
3
次元的に準周期構造を もつ正2
0面体相 (I
c
os
ah
e
dr
alp
h
as
e:
Ⅰ
相)
の発見以後、様々な種類の
次元平面 に準周期構造 を もち、それに垂直な一方 向にのみ周期性を示
準結 晶が報告 された。2
次元準結 晶 と呼び、準周期面の対称性か ら今 までの ところ3
種類確認 されている。
す準結 晶を2
1
0回の対称性を もつ正 1
0角形相 (
Dec
ag
on
alph
as
e:
De相)、4) 1
2回の対称性 を もつ正 1
2角形相
(
I
k
x
l
e
c
a
g
o
n
alp
h
as
e:
I
b相)、5) 8
回の対称性を もつ正8
角形相 (
O
c
t
ag
o
n
al
p
h
a
s
e:
0相 )6)である。
これ らの他 に、D
e相の準周期面で一方 向に周期性を示す構造 も報告 されてお り、 これは1
次元
0
面体相 につ いてはかな り詳 しく研究 されてお り、その構
準結 晶として解釈 されている。7) 正 2
や §6
で詳 しく述べ る)
造の違 いか らさらに細か く分類 されている。(§4
§
3
.
準結 晶の安定性 と凝 固形態
AトN
n
合金を初め として、多数の合金系で準結 晶は確認 されている。2
元合金 に存在す る準結
晶はすべて液体急冷法やガス中蒸発法な どで得 られ、熱力学的にはアモル フ ァス と同様準安定
相である.一万、3
元以上の合金 に存在す る準結 晶は結 晶 と同様に安定相である ものカモ
じ
⊥三
盆存在す る。Ⅰ相ではA1
Li
C
u、8) G
a
H
g
Z
n、9
'A1
C
u
-(
F
e,
R
u,
O
s)
、10)11'A
トP
d
-(
h,
R
e)
、12)
N
gAトP
d、13) D
e相ではAl
Cu
C
o(
Si
)、14)15) Al
Ni
C
o、16) AトP
d
≠
n1
7
) とい った合金系が安
次元準結 晶については最近 、AトP
d
定相であるが、Do相 、0相には安定相の報告 はまだない.1
C
u
F
e一
班
n1
9
)の報告がある。 これ らの準結 晶に対 しては安定な性質 を利用 して、大
F
e、18) Al
u
F
e系で ミ
き くて良質な "
単準結晶"試料を作製す る試みが行われて来 た。 Ⅰ相 につ いてはAトC
P
d
一
班
n系でセ ンチメーターサイズの、21)I
)
e相 についてはAl
Cu
Co
リメーターサイズの、20) A1
(
Si
)
系で ミリメーターサイズの 22)それぞれ良質な単準結 晶が得 られてお り、 まだはっき りと
解明されていない準結 晶の物性や構造解析の分野で重要な役割を演 じてい る。安定な準結 晶の
0
面体 23)と正 1
2
面体 、10) D
e相 については正 1
0
角柱 22)
凝固形態について、Ⅰ相 に関 しては菱形3
とい う、それぞれ、その対称性 に矛盾 しないきれいなファセ ッ トを持つ多面体が観察 されてい
る。 しか し、なぜ準結 晶の凝 固形態が一般的にきれいなフ ァセ ッ トを示すのかは、その成長機
構 と共 にまだはっき りした答えが得 られていない。
-
1
87
-
降旗
順一郎
図 Ⅰ-2;結 晶 と準結 晶の逆 格子 空 間
結 晶 と準結 晶(Ⅰ相 )の電子 回折 図形 を (a)と(b)で比較 して あ る。 電子 回折 図
形 は2
次元平 面 で得 られ るので結 晶の 回折 点 は2
本 の基本逆 格子 ベ ク トルの整数
倍 で記述 され るが (C)、準結 晶(Ⅰ相 )の場 合 は5
本 必要 で あ る(d)
。実 際の逆 格
子 空 間は3
次元空 間で あ るか ら、結 晶で は3
本 (e)、準結 晶(Ⅰ相 )で は6
本必要で
あ る(f)
0
-1
8
8-
AトCu-Cr系合金の準結晶
∼安定 De相の存在 とその近似結晶-
§
4
.
射影法 とフェイゾン歪
ペ ンローズタイルのように複数のセルが非周期 的に充填 した、いわゆる〝
準格子"を作 り出す
a
t
c
hi
n
gr
ul
eを使 った方法以外 に もい くつか考 え られているが 、24) ここで は、
辛.
段 として はm
その手.
段の一つであ り準結 晶の原子配列や回折図形を理解す る上で重要だ と思われ る射影法 に
ついて簡単 に述べ る。 準格子 は高次元空 間では周期格子であることが知 られている。図 Ⅰ-3
は2
次元正方格子か ら1
次元準格子 をつ くりだす方法 について示 した ものである。 正方格子 に対
して無理数の傾 きにな るように、図中に示す ような直交す る E〝、 E⊥軸を とる。 E〝を物理空
間とす るとき、 これに垂直な E⊥は補空間(またはフェイゾン空 間)と呼ばれてい る。今、禰空
間 E⊥の大 きさを一つの正方格子をちょうどギ リギ リに挟む幅 に限定 し、 E〝に平行な帯状領域
を考え る。 この帯状領域の 中に入 る格子点のみを E〝に射影す ることによ りE〝に非周期的な点
次元準格子 が生 じる。特 に、無理数の値が黄金比 (7 -(
1
+
51/2)
/
2≒1
.
6
1
8)
で与え
列が現れ、1
が非周期的に配置 し、 この 1
次元準格子 は フイ
られ る場合 には、 E〝上 に二種類の間隔(L、 S)
(a)の場合)0
ボナ ッチ列 と言われ るものになる(図 Ⅰ-3
2次元-1
次元の場合 と同様 に して6
次元 (
6
本のベ ク トルが互 いに直交す る空 間)
超立方格子か
次元準格子、すなわち3
次元準結 晶である Ⅰ相を記述す ることができる。結
らの射影 によって3
次元超立方格子 に も
晶において立方 晶に単純立方、面心立方、体心立方構造があるよ うに、6
次
同様な事が考え られ る。事実、 Ⅰ相の回折 図形は二種類観察 されてお り、それ らの違 いは6
か面心立方 (F型 Ⅰ相)
かで うま く説 明できることが示 さ
元超立方格子が、単純立方 (P型 Ⅰ相)
れている。25)
図 Ⅰ-3(b)
のよ うに補空 間 E⊥(すなわち帯状領域)
が E〝の関数 と して変動す る場合、射影
すべき格子点の選択 に誤 りが生 じフイボナ ッチ列 の L、 Sの配置替えが局所的に起 こる。 これ
は準格子 に対す る特有な欠陥であ り"
フェイゾン歪(
位相欠陥)
'
'
と呼ばれてい る。実際に準結 晶
a)、(
b)のように帯状領域が歪んだ り、不連
にはフェイ ゾン歪が確認 されている。26) 図 Ⅰ-4(
(
C
)
のよ うに帯状領域
続にな った りして生 じるフェイ ゾン歪をランダムフェイゾン歪、図 Ⅰ-4
は歪 まないが、その傾きが変化 して生 じるフ ェイゾン歪を リニアフェイゾン歪(
線型位相子歪)
と呼び区別 している。
§5
.
近似結 晶
次元正方格子 にたい して帯状領域
フイボナ ッチ列 に リニ アフェイゾン歪を導入 してゆき、2
の傾 きが無理数でな く重聖堂 にな った とき物理空 間 E〝には L、 Sの周期配列、つ ま り1
次元結
晶が現れ る。射影法 において、傾 きの値が準結 晶の得 られ る無理数の近似有理数で与え られ る
-189 -
降旗
順一郎
●● l T .●●. .●
I. ●
■I● ●
\
JI● I ●● ● ● ●
.
●
■ ′、;
ヽ
●
●
●
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●
:
●
●●
■●●●
\
′
)ヽ
.
′
'●
Y●
、
′
ヽ
′)
ヽ
ノ)
/
ヽ
′●、
一
●
'ヽ
一
′ '
ー
′ヽ
ノ
率 S L…L …
SiL …
.
S:
:
L:
号
S…
Li
S与 亘
享
S
\
図 Ⅰ-3;射影法 -2
次元 -1
次 元 の場 合 ∼
正方格 子 に対 して無理数 1
力の傾 きを もつ よ うに E 〝に乎行 な帯状領 域 を考 え、こ
の 中に含 まれ る点 のみ を E 〝に射影 す る と E〝には フ イボナ ッチ列 が生 じる(a)0
帯状領域 が変動 す る と点 の選択 に誤 りが生 じフ ェイ ゾ ン歪 が導入 され る(b)0
a
E⊥
A
oJ
b
も
衷
E⊥
o
ー
C
図
'E′
′
>E〝
E
⊥
Ⅰ-4;フ ェイ ゾ ン歪 の種類
帯状 領域 の変動 の仕 方 によ って フ ェイ ゾ ン歪 は、 ラ ンダ ムフ ェイ ゾ ン歪 (a と b)
と リニ アフ ェイ ゾ ン歪 (C)に分 けて考 え られ て い る。
- 190 -
AトCu-Cr系合金の準結晶
-安定 De相の存在 とその近似結晶-
場合、物理空間 E〝に生 じる結 晶をその準結 晶に対す る〝
近似結 晶"とい う。 フイボナ ッチ列 を
/Tと表記す ると、近似結 晶の傾 きはn
/
n(
瓜、nは整数)で表 され る。実 の ところ、
作 り出す傾 きを1
準結 晶の生成 され る組成付近 にはその準結 晶に対す る近似結 晶が存在す る場合が多い。一般 に、
近似結 晶の構造 は格子定数が長 く、非常 に複雑であるが、近似結 晶の原子配列 は局所的に準結
晶 と同 じであると考え られているので、近似結 晶の存在 は準結 晶の構造を解 明す る上 で重要で
ある。
§6
.
準結 晶の構造 モデル
準結 晶の発見以来、い くつかの構造モデルが提 唱されてきたが、 中で もその可能性を否定 さ
れていないモデルは、
(
a)
規則準格子 モデル
(1
9
86
年)
2
)
(
b)
多面体 ガラスモデル
(1
9
86
年 )27)
(
C)ラ ンダムタイ リングモデル
(1
9
8
8
年 )28)
の三通 りである。
(
a)は射影法 によって生 じる理想的な準結晶を表すモデルで、得 られた規則準格子 には塵堕
at
c
hi
n
grul
e)が存在す る。
な準周期性(
例えばm
(b)は並進対称性に抵触す るよ うな原子 クラスター(図 Ⅰ-5
)
が長距離 にわた って方 向を揃え
て結合 しているモデルである(図 Ⅰ-6)。 もちろん これ らの クラスターだけでは密な空周充填
はできず至 る所 に隙間が生 じる。 この隙間を適当な原子が埋めているとして も、 このモデル に
ついて準周期性の規則度 は悪い。 この点 について規則準格子モデルの立場か らは、 このモデル
は図 Ⅰ-4(b)タイプのラ ンダムフェイゾン歪を導入 した もの として解釈 されている。 液体急
0
n
m
冷法で得 られ る準結 晶にはた くさんのフェイ ゾン歪が観察 され、準周期性の相 関距離 も数 1
程度であることか ら、 これ ら準安定の準結 晶に対 しては多面体 ガラスモデルの見方 も一部 の研
C
uFe、AトPd
-h、
究者 によっては否定 されていない。 しか し安定な準結 晶、特 に Ⅰ相で はA1
D
e相で はAトC
uC
o(
Si
)
な ど準周期性の高い構造 を もつ ものについては、 このモデルに妥 当性 は
ない。
(
C)のモデルが提唱されたのは1
9
8
8
年であ り、(
a)
、(
b)
のモデルが考え られた時期か ら少 し
9
86
年に最初の安定準結 晶がA1
-Li
Cu合金 に報告 されてか ら、 8)
ずれているのには訳がある。1
このモデルが避 唱され るまでに、い くつかの合金系で安定な準結 晶が兄いだ された。なぜ準結
晶が結 晶よ りも安定なのか とい う問題 に対 して ラ ンダムタイ リングモデルが考え られた。準結
晶は有 限なある温度以上で、 これを構成す る複数 のセルの配位エ ン トロピーによ って安定化 し
-
191 -
降旗 順一郎
- FC-
i
図 Ⅰ-5; Ⅰ相 を構成す る正 2
0
面体原子 クラス ター
(a)は 1
3
個 の原子 か ら成 る正 2
0面体原子 クラス ターで あ る。 この正 2
0
面体 の頂
点 と稜 線上 に さ らに原子 を配置す る と(b)の、頂点 と面上 に配置す る と(C)の
0
面体 の対称 性 を もつ原子 クラスターがで きる。 (b)は正 2
0面体 の
それ ぞれ正 2
形 を してお り、 マ ッカイの正 2
0面体 クラス ター(
∬Ⅰクラス ター)で あ る。 (C)の
クラス ターは菱形 30面体 の形 を してお り、F-K(フラ ンクカスパ ー)相 に多数含 ま
れて い る。 国中に示 す原子 の色 の違 い はそのサイズの違 いを表 して い る(詳 しく
は文献 83)を参 照 )0 Ⅰ相 には(b)の クラスターか ら構成 されて い る もの と(C)
の クラス ターか ら構成 されて い る ものがあ り、前者 はXI
型、後者 はF-K型 と呼 ば
れ て い る。
-
1
92-
Al
_Cu-Cr系合金の準結晶
-安定 De相の存在 とその近似結晶∼
(
a)
(
b)
図 Ⅰ-6;多面体 ガ ラス モ デル (正 2
0
面体 ガ ラス モ デ ル )
方 向を揃 え、 例 え ば正 2
0面体 の面 ど う Lを ラ ンダ ム に結 合 して い く(a)0 (b)
は正 2
0面体 ガ ラス モ デル を 5回対称 軸 か ら眺 め た様子 。右 上 の点 は正 20面 体 の位
置 を投 影 して示 して あ る .
(
P
.
Y
.
St
e
p
h
e
n
s80)に よ る)
-
1
9
3-
降旗
順一郎
ている、つ ま り自由エネルギー ;
F-U-TS
(F ;自由エネルギー、 U ;内部エネルギー、 T ;温度、 S ;エ ン トロピー)
においてある温度以上での準結 晶のエ ン トロピー項の寄与(
準結晶のセルの 自由度)が内部エネ
ルギー項の寄与に比べて非常 に大 きいために、結局 自由エネルギーは結 晶に比べて小 さ くな っ
[
Ⅹ]
(
基底状態)
て しま うとい うのかこのモデルの主張である。ネル ンス トの定理 によって T-0
では S-0と考えるのが 自然であるか ら、 もし準結 晶がランダムタイ リングな らば、エ ン トロ
ピー最小の基底状態で準結 晶は安定でな く規則正 しくユニ ッ トセルが配置す る結晶が存在す る
ことにな り、安定な準結晶はある一定の温度以上で現れなければな らない。又、 このようにセ
at
c
hi
n
gr
ul
eは局所的に破 られる。 これを規則準格子のフェイゾ
ルの酉己置が ランダムなのでm
のようになる。 このモデルを指示す る実験事実 は Ⅰ相ではAトC
u
ン歪で解釈す ると図 Ⅰ-4(a)
)
e
相ではAトC
u
C
oal)な どの安定準結 晶に観察 された低温(約7
0
0
℃以下)
での近似
F
e、29)30) I
結晶への相変態である。 しか し、低温での相変態がランダムタイ リングモデルにとって必要十
C
u
F
eI相は微妙な成分の違 いで相変態が観察 されなか った り、32) さ
分条件ではない し、A1
らにはこの Ⅰ相にはランダムタイ リングモデルで期待 され る多 くのフェイゾン歪が観察 されな
(ランダムさが′
小さい場合は観察不可能 とされているが)
な ど否定的な要因 も多い。
い 33)
現在の ところでは、準格子のなかに多面体ガラスモデルで考慮 した原子 クラスターを多数埋
a
t
c
hi
n
g
め込むように原子を配置 したモデルが現実に近いと考え られているが、 この準格子にm
r
ul
eがあるのか、ないのか、すなわち厳密な規則準格子なのか、 ランダムタイ リングなのか、
についてはいろいろと議論 されてお り、決着がついていない。
§7
.
安定準結晶とH
u
m
e
R
ot
h
er
y
J
o
n
e
s
経験則
をベースに したAトT
N(
T
X
-遷移金属)
系合金を中心に嘩々な合金系で確認 されてい
準結 晶はAl
るが、その生成条件 について確定的な解答 はまだ得 られていない。 しか し近年の実験事実か ら、
34)
準結 晶はH
u
m
e
R
ot
h
e
r
y
別 に従 う"
電子化合物"の一種であるとい う見方が強 くな っている。
H
u
仙
e
R
ot
h
e
r
y別 とは、一つの合金構造が、ある決まった平均価電子敬/原子(価電子濃度 ;e/a)
の ところで形成 され ることを経験的に兄いだ した ものであ り、 この法則に従 って生 じる中間相
を`
電̀子化合物"と呼ぶ。価電子濃度 とは1
原 子あた りの伝導電子の数である。
T
姓(
T
X=遷移金属)
系合金の(
平均)
価電子濃度の算 出方法について
ここで準結晶を生成す るAl
l
原子については、原子価 3
がそのまま伝導電子 にな るのでAl
原子の価電子濃度
触れてお く。A
は土星である.遷移元素、例えば第-遷移系列元素 は、3dバ ン ドと4Sバ ン ドが重畳 している
-1
9
4-
Al
-Cu-Cr系合金の準結晶
∼安定 De相の存在 とその近似結晶-
ため殻外電子の状態は複雑である. ここでは、特 にCr、血、Fe、の遷移元素を例 に挙げて考え
てい く。遷移元素が単体で結 晶を形成す る時は、3d軌道 と4S軌道の殻外電子の一部 はイオ ン
殻に局在 し、一部 は伝導電子 として振 る舞 うであろう。 しか し、遷移元素がAlと化合物を形成
原子の伝導電子を
す る時、それ らの殻外電子(の一部)は伝導電子 と して振 る舞わず、む しろAl
空のバ ン ドに取 り込んでい くことが考え られる。従 って、遷移元素の価電子濃度 は負の値で表
され るのが適当である。具体的な数値 については
LP
a
ul
i
n
gの現象論 35)を適用す る。 まず
3dバ ン ドは、それが4Sバ ン ドと重畳するまでのバ ン ド(1)とそ うでないバ ン ド(
2)
の二つの副
.1
2
個の電子で満た され る。従 って、副バ ン
バ ン ドに分 けられ る。 この うち、副バ ン ド(1)は5
2)
は最高で4
.
8
8
個の電子が入 ることができるようになる(
3d軌道 には最高 1
0
個の電子が入
ド(
.
6
6
個の電子のみが入 ることができる.従 って、各元素Cr、肌1
、
るため)
O更に4Sバ ン ドには0
Fe、はそれぞれ0
.
2
2
、1
.
2
2
、2
.
2
2
個の電子を副バ ン ド(
2)
に含む ことにな る。結局、 この副バ
2)の空席 が これ ら遷移元素 の価電子濃度 にな りCr、Xn、Fe、 にはそれ ぞれ -4.66、
ン ド(
-3
.
6
6
、 -2
.
6
6とい う値が与え られ る。36) これ らの値か ら、例えば準安定 Ⅰ相が単相で生成
6
5
C
u2
。
Cr1
5
合金の(
平均)
価電子濃度は
す るA1
i
(
6
5×3
)+(
2
0×1)+(1
5×-4
.
6
6
)
チ/
1
0
0-土壁
のようになる。 ここでC
u
原子の価電子濃度 は+1
である(
4S軌道にあ る一つの殻外電子が伝導
電子 となる)
0
Al
(
C
u、P
d)
T
N(
T
X
=
遷移金属)
系合金の Ⅰ相は、ほぼ e/a-1
.
6
-1
.
8
の範 囲で生成 され(
上
C
u
Crはむ しろ例外的である)、特 に安定 Ⅰ相については e/a値が1
.
7
5
に集 中している
記のAl
onesはい くつかの電子化合物の結 晶について、ある価電子
ことが指摘 されている.37)38)R J
濃度で決定 され るフェル ミ面が、ブ リルアンゾー ンに接触す る時その ブ リルアンゾー ンに対応
はこの考え
する結 晶構造が、ある価電子濃度 に対 して安定である事を示 している039) 図 Ⅰ-7
次元で簡単に表 している。 これは国中の kFで表現 され るフェル ミレベルに対 して、構造
方を1
のブ リルア ンゾー ンを もつ方が、すなわちフェル ミ面が ブ リルアンゾー ンに接触
1よりも構造 2
す るような構造にな った方が、エネルギー的に ∂Eの分だけ得をす ることを示 している。 Ⅰ相
0
面体であ り、ほぼ球対称 に近いことか ら、 これに対応す るブ リルア ンゾー ンも
の対称性 は正2
ほぼ球 に近い形であると予想 される。 このような近似か ら I相に対 して K。( ブ リルア ンゾーン
onesの概念を適用す
の直径 に相当す る)を強い強度の逆格子ヘ ク トル の大 きさにとって、H.J
.
7
5
を満たすAト(
C
u、P
d)
T
X(
T
X
=
遷移金属)
系安定 Ⅰ相は例外な くフェル ミ面 と
ると、 e/a≒1
ブ リルア ンゾー ンが接触 している、つま りK。 -2kF
(
K。
/
2kF≒1)
の関係を満足す ることが知
られている。
-
19 5
-
降旗 順一郎
u
」
o
KF=Kp2/
2 Kpl/2 K
図 Ⅰ-7;丑uAe-Eot
heryJ ones軽 政 則
1
次元結 晶系 の波数 とエネル ギーの 関係 。 KF とい うフ ェル ミ波数 に対 して構造 1
で あ るよ りも構造 2
で あ る方が、すなわ ちフ ェル ミ波数 とプ リル ア ンゾー ンが接
触 した方 が、エ ネル ギー的 に ∂Eだけ得 をす る。
(
山 )q
図
EF
Ⅰ-8;アモル フ ァスの状態密度
E
aはアモル フ ァス、 bはアモル フ ァスか ら少 し結 晶化、 C は 自由電子 の状態密
度(
S
.
R
.
N
a
g
elら40)による)O アモル フ ァスの場 合、 フ ェル ミ面が ゾー ン境界 に
接触 す る とい うことは、 フ ェル ミレベル が状態密度 の極小近傍 に位置す る こと
で あ り、 これ によ りアモル フ ァスの構造 が結 晶化 に対 して安定化 して い る。
-
19 6
-
AトCu-Cr系合金の準結晶
-安定 De相の存在 とその近似結晶∼
これ らの合金系では何故、Eume-Rothery型の結 晶を形成せず、準結晶を形成す るのだろうか.
結晶について フェル ミ面 とブ リルア ンゾー ンが接触するとい うことは、言い換えれば、フェル
ミエネルギーが状簡密度の極大近傍に位置す ると言 うことである。 これは、結 晶のブ リルア ン
ゾーンの大 きさが方 向性を有することに起因 している。一方、アモル ファスについては、ハ ロ
ピーク付近に方 向性のない球状のぼやけたゾー ン境界が存在す ることが考え
ーパ ターンの第 1
られ る。 今、 この方 向性のない球状のゾー ン境界にアモル ファスのフェル ミ面が接触 している
とすれば、それは状態密度の極′
J
、
近傍にフェル ミレベルが位置 していると解釈す るのか 自然で
R.
N
ag
elらは多 くのアモル ファス合金がフェル ミ面 とゾーン境界が接触 している実験
あるoS.
はアモル ファ
事実を示 し、アモルファスの結 晶化に対する安定性を議論 している。39)図 Ⅰ-8
、アモル ファスから少 し結 晶化 した状態 (b)
、の状態密度を示 している。 この図はフェ
ス(a)
ル ミ面がゾー ン境界に接触 しているときは、結晶化するよ りもアモル ファスであるほ うが状態
密度の落 ち込み分だけエネルギー的に得 になるであろうことを示 している。 従 ってアモル ファ
スは熱処理な どで原子が "
かき乱 される"(
すなわちブ リルア ンゾー ンの大きさに方 向性ができ
る)まで準安定 として存在す るのである。安定準結 晶 Ⅰ相に対 して もこの考え方を近似 させ る
ことができるであろう。 Ⅰ相のブ リルア ンゾー ンはほぼ方 向性を もたず、 しか も回折 ピークが
(a)の極小を鋭 くした もの と考え られ る
結晶のように鋭いので、概念的に状態密度 は図 Ⅰ-8
(
実際の形はかな り複雑である)
。実際に電子比熱係数の測定か ら、安定 Ⅰ相 とその近似結 晶の
状態密度 にはフェル ミレベル付近で窪みを もつ擬ギ ャップの存在が示 されている。40)41)
現在 の ところ実験事実 と して、少な くともA1
-(Cu、Pd)-TX(Tは=遷移金 属 )系安定 Ⅰ相 は
Hu仙e-Rothery-J
ones巌験別を満たす電子化合物であ って、 フェル ミ面 とプ リル アンゾー ンが接
)
e相
触することで構造が安定化 し、その第一要因は電子エネルギーであると考え られている(I
。 しか し、準結 晶と似たような組成 (e/a値)と構造を もつ近
については第 Ⅱ葦 §5で述べ る)
似結晶に対 して、何故準結晶が安定であるのかについては問題が残 されている。
-
1
97
-
降旗 順一郎
第 Ⅱ章.A
l
7
.
C
ul.
C
r2
.
合金 における安定なDe相
§1
.
D
e
相(
正1
0
角形相)について
1
0回対称軸を もつ2
次元準結 晶D
e相の存在は1
9
8
5
年Be
n
d
e
r
s
k
y4
)やC
h
at
t
o
p
a
d
t
l
y
ay4
2
)
4
3
)らに
よって、Aトは
n合金の液体急冷試料 に初めて確認 された。Aト姐
n合金 において、I
)
e
相の形成 は l
相が得 られ るほどの高い急冷速度を必要 としなか った。彼 らの示 した1
0回対称軸に垂直な方 向
回対称の電子 回折 図形は、1
0回対称軸方 向に回折点が周期配置 してお り、 この
か ら得 られ る2
次元準結晶であることを示 していた。D
e
相には、 この2
回対称の電子 回折図形が二種
準結 晶が2
類あ り、 これ らが1
0回対称軸の周 りに1
8
0 間隔で交互に現れ、各々は3
6
0毎 に同 じ図形が繰 り返
0回対称を満足 している。 すなわち、D
e
相の点群 は基本的に1
0
/
m
m
l
l
であると考え られてい
し、1
る。
現在 まで にA
l
をベースに した合金を中心に数多 くの合金系でD
e相が報告 されている
。
これ ら
e
相 は2
次元準結晶の特徴である周期の違いによってい くつかに分けることができる。 目下
のD
)
e相の周期 は約 0
.
4
n
Ⅱ
I
、0
.
8
n
m
、1
.
2
n
m
、1
.
6
n
m(
0
.
4
n
m
X1
、
2
、
3、
4)
の四種類のタイプが
の ところ、I
.
4
m)
の長 さが基本の周期であると考え られている.約0
.
4
n
m周期の安定De
確認 されてお り、約 0
トC
uC
o
系合金 において、 この液体急冷試料 には、上で記述 した四種類の周期を
相が存在す るA
e
相がそれぞれ勧察 されている。
4
4
)また、Al
C
u
C
o系合金以外の安定D
e
相については、
持つD
.
4
n
m
、1
.
2
n
mのD
e相がそれぞれAトNトCo16)、A1
P
d
一
肌117)の合金系で報告 されている。
周期が約 0
安定なI
)
e
相について、A
ト(
C
u、Ni
)
Co系合金では熱処理によ り高い準周期構造を もつ理想的
P
d
一
班
n
系I
)
e相には熱処理後 も方 向性を もったフェイゾン歪が
な準結 晶が得 られ るのに対 し、A1
緩和 されず、 これが多数観察 される。 この様 に同 じ安定相であって も合金系によって熱処理後
に生 じる準周期の規則度が異なる原因については、まだはっき りと説明されていない。 この間
e
相の存在を探索 し、その傾 向を細か く
題に答えを出すために、様々な合金系について安定なD
調べ る必要があるように思われ る。 ちなみに Ⅰ相について も同じような事が認め られ、 これに
ついては構造が F型である合金系が高い規則度を有することがわか っている。Al
(
C
u
、Ni
)
C
o
k相の原子配置については相関距離が2
0
0
n
皿4
5
)に も及ぶ高い準周期構造を利用 してかな り詳
系I
しく解析 されてお り、単結晶Ⅹ線回折の結果 に基づ く構造モデル もい くつか示 された。46)47)
フェイゾン歪を多 く含むAトP
d
一
甘
n系I
)
e
相の構造について も高分解能電子顕微鏡像を利用 した研
究が行われている。48)49)
Aト(
C
u
、P
d)
T
N(
T
X-遷移金属)系安定 Ⅰ相の e/a値 とK。
/
2kFが、それぞれほぼ1
.
7
5と1.
0
に集 中す る一方、上記の安定D
e相についてそれ らの値は、それぞれ1.
6
-1
.
8
、0
.
9
-1
.
1
の範 囲
-1
9
8-
Al
-Cu-Cr系合金 の準結晶
∼安定 De相 の存在 とその近似結 晶-
で広が りを もつ ことが指摘 されている。
3
8
)D
e相 につ いて、 K。
/
2kFの考 え方 と計算方法 は §5
で触れ る。
§2
.
AトC
u
C
r
系準結 晶の研究 について
Al
をベ ースに した 〝
Al
C
u
T
X系合金"は準結 晶を生成 しやすい組成 5
0
)と して知 られている.
C
u
(
F
e
、R
u、O
s)
、I
)
e相ではAトC
u
C
oとい う安定相でかつ高
これ らの中で も特 に、 Ⅰ相ではA1
い準周期構造を持つ準結 晶は、準結 晶研究の様々な分野で重要な役割を果た している
。
AトC
u
C
r
系合金 については1
9
8
8
年、 Ⅰ相が液体急冷試料 に存在す ることがA
.
P.
T
s
aiらによ っ
5
1
'彼 らは、A1
8
5
_Ⅹ
C
uxC
r1
5
(
Ⅹ-0-2
0a
t
%)
の成分範 囲で単 ロール急冷装置 を用
て報告 された0
T
E
N)
によって解析 し
いて液体急冷試料を作製 し、 これ らをⅩ線粉末 回折 と透過型電子顕微鏡 (
8
。
C
u5
Cr1
5
(
Ⅹ-5)
、A1
6
5
C
u2
。
Cr1
5
(
Ⅹ-2
0)
の試料 には Ⅰ相が単相で得 られ、
た。 この結果 、A1
A1
7
5
C
ul
。
C
r1
5
(
Ⅹ-1
0)
、
A1
7
。
C
u1
5
Cr1
5
(
Ⅹ-1
5
)
の試料 には Ⅰ相 と結 晶相A1
2
C
u(
正方 晶 ;a-0
.
6
0
6
6
.
4
8
7
4
m
m)
が共存 していることが確認 された。 Ⅰ相単相試料のA
1
8
0
C
u5
C
r1
5
は、すで に
m
m,C -0
1
8
5
C
r1
5
の準安定 Ⅰ相(
単相で生成 す る)
5
2
)に、C
uが固溶 した もの と考え られ る。
知 られていたA
I
)
S
C)
を0
℃∼6
0
0
℃の温度範 閲
更に彼 らは、この Ⅰ相の安定性を調べる 目的で示差走査熱量測定 (
0
℃/
mi
n)
で行 った結果、A
1
6
5
C
u2
。
Cr1
5
合金の試料 には発熱 または吸熱 ピークが見 ら
(
昇温速度4
トC
u
Cr
系 Ⅰ相が安定相である可能性を指摘 した.
れず 、A
試料 の作製方法 をダ ブル ピス トンス プラ ッ ト急冷法 に変 えた 同 じよ うな実験 が 1
9
_
91
年、
H
.
S
el
k
eらによって報告 されている.
5
3
) この試料作製法では、A1
C
u
C
r
系 Ⅰ相が単相で得 られ
-0、5
ではA
l
、Ⅹ-1
0
ではAl
とA1
2
C
u、Ⅹ-1
5
ではA1
2
C
u
、A1
4
Cu9(立方 晶)、Ⅹる成分 はな く、X
ではA1
4
C
u9、AI
C
u
(
単斜 晶)
、A1
9
C
r
4
(
立方 晶)と、
各々について結 晶相 と Ⅰ相 は共存 してい る
2
0
S
C測定(実験条件 はA
.
P
.
T
s
aiらと同 じ)の結果 で
ことがⅩ線粉末 回折の結果で示 されてい る。D
1
6
5
C
u2
。
Cr1
5
の試料 には5
0
0
℃付近 に非常 にブロー ドな発熱 ピークがあると認識 し、Al
C
u
は、A
系 Ⅰ相が5
9
0
℃付近でA
1
2
C
u3
(
菱面体 晶)と新 しく兄いだ された3
元イ
ヒ合物A1
6
8
C
u1
6
C
r1
6
(
六万
C
r
.
7
7
3
m
m、C -1
.
2
5
9
n
Ⅱ
Ⅰ
)
の結晶相 に転移 していると報告 し、この合金系の Ⅰ相が安定相で
品;a-1
あることを否定 した。
H
.
S
el
k
eらとは独立 にA1
6
5
C
u2
。
C
r1
5Ⅰ相の安定性 と構造がS
.
E
b
al
ar
dら(
1
9
9
0
年)によって研究
5
4
)彼 らの報告 によれ ば、液体急冷で得 られ るAトC
u
C
r
系 Ⅰ相は電子 回折 図形の特徴
された。
5
0
℃、2
時間の熱処理でわずか に F型 に構造 を
か らP塾 Ⅰ相であると解釈 された。 この Ⅰ相 は6
2
0
℃、2
時間の熱処理では Ⅰ相はこの合金 に存在 しない ことが示 され た。いわ ゆる
変え、更 に7
s
c
a
s
t
試料(
液体急冷に比べればかな りの徐冷状態)に も Ⅰ相が認 め られなか った ことか ら、
a
-
19 9 -
降競
順 一郎
彼 らはA1
6
5
C
u2
0
Cr1
5
の Ⅰ相は準安定相であ ると結論 し、 この Ⅰ相の結晶相への転移熱量は非常
に少ない、すなわ ち Ⅰ相 と構造が似ている結 晶(
近似結晶)に相変態 していることを示唆 した。
A1
65
Cu2
。
Cr1
5
合金を液体急冷 しない試料 について もい くつか研究 されている。S
.
E
b
al
ar
dら
5
0
0
℃の溶 けたA1
6
5
C
u2。
C
r1
5
合金を1
1
0
0
℃か ら7
0
0
℃ まで5
℃/
mi
nの降温速度で徐冷 した
は、約 1
E
X観察、エネルギー分散型 Ⅹ線マイ クロアナライザー(
E
D
S)
による分析な どを
試料 に対 して、T
5
5
) この試料には様々な成分を持つ異 なる結晶が観察 され、準結 晶は存在 しなか った。
行 った。
6
7
C
u2
3
Crl。の
しか し、 これ らの中に Ⅰ相の場合 と非常 によ く似 た回折図形を与え る、成分がA1
/1
近似結 晶だ と判断 した。1
/
1
近似結
新 しい3元結 晶を兄いだ し、彼 らはこれを Ⅰ相 に対す る1
6
5
Cu2
。
Cr1
5
合金のa
s
c
a
st
試料 に も多 く観察 され、 これ についてはA1
6
5
C
u2
0
Cr1
5
合金の
晶はA1
as
I
C
aS
t
状態 と共 に1
9
9
2
年 にRS
el
k
eらによって詳細 に報告 されている.5
6
) この他 にも彼 らは
A1
6
5
C
u2
。
Cr1
5
合金 について7
5
0
℃ 、2日間での熱処理 も行 ってお り、 この試料 には1
/1
近似結 晶
6
。
Cu3
。
Crl
。
(
面心立方 ;a-1
.
7
5
4
n
Ⅲ)
、A1
71
C
u1
4
Cr1
5
(
六万 品;a-1
.
7
6
n
m、
はすでに存在せずA1
C -1
.
2
4
n
t
n
)
の新
しい二種類 の結晶を観察 している. 後者の結 晶は前 に述べたH
.
S
el
k
eらの報
告 とほぼ一致す るもの と思われ るが、 これが Ⅰ相 と関係があるのか どうかについては触れ られ
.
Eb
al
a
r
dらはA1
6
5
C
u2
。
C
r1
5
合金の徐冷試料 に もうーっ重要な結果を報告 している。
ていない。S
彼 らは この試料 に、塵量 なが ら成分がA1
7
C
u2
CrlのD
e
相 によ く似た回折 図形を示す構造を観察
H
.
S
el
k
eらによって測定 されたAl
6
5
C
u2
。
Cr1
5
aS
C
a
S
t
試料のⅩ線粉末 回折パ ター
したのである(
e相に該当す る ピークはない). "よ く似た"とい うのは(疑似 )
1
0回対称軸入射の電子 回
ンにはD
e
相 に対 してかな りずれた位置にあるとい うことである。 言 い方を
折図形の回折点が、本 当のD
e相にかな りの量で リニアフェイゾン歪を導入 した近似結 晶に近い状態にな ってい
変えれば、D
D
e
相 は2
次元準結 晶なので、準周期面が周期面に変イ
ヒすれば結晶になる)
0
るとい うことである(
u
Cr
系合金 にD
e
相を確認 しないに もかかわ らず、 この構造 をD
e
相の近似結 晶である
彼 らはAトC
0回軸 に沿 う周期 は弱 い強度の回折点 を考慮すれば、
と解釈 してい る。 この近似結 晶の疑似 1
"
3
.
7
8
n
m(-0
.
4
2
×
9
m
m)
"であ り、 もしこれがD
e
相であれば今まで報告 されたD
e
相の中で一番長い
トC
u
Cr
系合
周期 になる。 この結果 は、今 まで Ⅰ相 に関係す る事実 しか認め られていなか ったA
e
相の存在を予期 させ るものであ った.
金 にD
§
3
.
本研究の 目的
P.
Tsaiらの報 告以後 、mSel
keらや 、S.Ebal
ar
dらとは独立 に主 に
我 々 の研究室 で もA.
A1
6
5
C
u2
。
Cr1
5
合金のa
s
c
as
t
試料について研究を進めていた。S
.
E
b
al
ar
dらが報告 したようなD
e
相 に似ている相がわずかなが らこの試料に観察 されたが、その中には、D
e相 と呼べ る準結 晶 も
-2
0
0-
Al
-Cu-Cr系合金の準結晶
∼安定 De相の存在 とその近似結晶∼
微量なが ら存在 した.以上、様々な報告や結果か らAl
C
u
Cr
系I
)
e
相 につ いて
(a) Ⅰ相がほぼ単相で得 られ るAl
6
5
C
u2
0
Cr1
5
合金(
液体急冷状態で)にAl
C
u
Cr
系De相がほ と
1
6
5
C
u2
。
C
r1
5
か らずれていること。
ん ど認め られない事実か ら、 このDe相の成分がA
(b) Ⅰ相が もはや観察 されないa
s
c
a
s
t
状態でD
e
相が存在す ることか ら、 この合金系のD
e相の
eが安定相であ る可能性が否
形成 は Ⅰ相ほ どの急冷を必要 と しないこと、すなわ ちこのD
定できない こと。
の二点 につ いて着 目し、調べ る必要があ るよ うに思われ る 本研究 は、 よ く研究 されてい る
。
A1
6
5
C
u2
0
C
r1
5
合金 とは少 し成分のずれた 〝
A1
7
。
C
ul
O
C
r2
。
合金'
'
につ いて、主 にD
e相の安定性(棉
T
E
N)
、■
走査型電子顕微鏡 (
S
E
X)
、エネルギー分散型 Ⅹ線マイ
逮 )と成分を、透過型電子顕微鏡 (
E
p
s)
、 Ⅹ線粉末 回折、な どによって詳 しく調べ る ものである。
クロアナライザー(
§4
.
実験方法
9
.
9
9
%の各元素Al
、C
u、C
r
を原子量比でAl
:
C
u:
C
r-7
0:
1
0:
2
0にな るように秤量す る。
純度 9
これ らをAr置換 したアーク炉で合金 に し、その質量が約 1g程度のa
s
c
as
t
試料を作製す るO こ
s
c
a
s
t
試料をい くつかに分割 し異なる温度、時間で熱処理 を行 う 温度設定 の 目安をつ け
のa
。
s
c
a
s
t
試料の一部 を粉末 に して窒素雰 囲気 中において昇温速度 5
℃/
mi
nで示差熱分析
るためにa
(
D
T
A)も行 った。 この結果を図 Ⅱ-1
に示す。8
5
2
℃ に鋭い、9
0
7
℃にブロー ドな、 それぞれ吸熱
20
℃ 、8
7
0
℃ 、9
5
0
℃ と、更 に1
0
0
0
℃に設
ピークが認め られ るので、熱処理温度を この前後の8
s
c
a
s
t
試料 のかけ らを石英管 内に約 2×1
05
t
o
r
r
で真空封入 し、
定 した。熱処理方法 は分割 したa
5
0
℃ 、1
0
0
0
℃の試料 については、試料 と石英管 との反応を避 け
縦型電気炉を用いた。高温の9
5
c
mのアル ミナ管 を入れ、その 中に試料 をA
r
封入 した。熱処理 時
るため石英管の中に長 さが約 1
0
0
0
℃の試料 のみ 1
0
0
時間に し、他の試料 は5
0時間とした。熱処理後 はその温度での平衡
間は1
s
c
a
s
t
試料を含めて こうして得 ら
状態を室温で保つために、氷水です ぐに試料を水冷す る。a
E
N(
J
E
O
レ2
0
0
C
‡)
、S
E
甘+E
D
S、 Ⅹ線粉末 回折 (
CuXa
-1
.
5
4Åを使用)によ っ
れた各々の試料 は、T
E
X観察用試料 にjいては、C
uまたはXoのメ ッシュを使用 し、いわゆる 〝
粉
て観察、測定 した。T
砕法'
'
を用いた。
-2
01-
降旗
順 一郎
O X 山▲
ー
ト< 1
0Pu山
700
800
900
Temper
at
ur
e
H.
R.
=5o
C′mi
n
(
o
c)
1
000
図 Ⅱ-1;D
TA測 定 の結 果 。 測定 は窒 素 雰 囲気 中で 、 昇 温速 度 5
℃/
mi
nで行 った。試料 は粉
末で ある。
- 202 -
Al
-Cu-Cr系合金の準結 晶
-安定 De相 の存在 とその近似結晶∼
§5
.
結果 と考案
表 Ⅱ-1
に各試料 に生 じた状態をまとめてあ る。a
s
c
a
s
t
試料 に結 晶相 と共存 してかな りの量
)
e
相 は、1
0
0
0
℃ 、1
0
0
時間の熱処理試料に も窒基盤 と して結 晶相 と共存 していた。
で観察 されたI
以下 (A)∼(D)では各試料 につ いて詳 しい結果 を述べなが ら考察を進 めてい くことにす る。
表 Ⅱ-1
温度(
℃)
a
s
c
a
s
t
時間(
h)
結果
A
l
1
7
C
r
9
、些亜
/
Al
1
7
C
r
9
、六万 品A
171
C
u
1
2
C
r
1
7
、い くつかの未知な結 晶
Al
1
7
C
r
9
Al
1
7
C
r
9
、A
1
2
C
u
、疑似 D
e
相
Al
1
7
C
r
9
、A1
2
C
u
、塾生
(
A)
a
s
c
a
s
t
試料
a
s
c
a
s
t
試料 に観察 されたI
)
e
相の特徴的な電子 回折図形を 同 じスケールで図 Ⅱ-2
に示す。図
Ⅱ-2
(a)
はI
)
e
相1
0
回対称軸入射の回折 図形である。い くつかの回折点 は形が変形 し、笹置 的
に も理想的な 1
0
回対称 の位置 にたい して 〝
ずれ'
'
が見 られ るが、ほ とん どの回折点は幾何学 的に
1
0
回対称 を満足す るような位置 に局在 している。図 Ⅱ-2
(C)
、(d)
は1
0
回対称軸 に対 して垂
回対称軸入射の二種類 の回折 図形である。 §1
で も述べたが、 これ ら二種類 の回折 図形が
直な2
1
0
回軸の周 りに 1
8
0毎 に交互 に現れてD
e
相は1
0回対称 を満足 している。 矢 印で示すように鉛 直
0回軸に相当 し、 この方 向に回折点が周期配置 している。また、水平方 向では回折点が
方 向が 1
準周期配置 してお り、図 Ⅱ-2(C)における水平方 向の回折点の準周期配列が図 Ⅱ-2(a)にお
ける水平方 向のそれに対応 しているのが明 らかにわか る。 これ らの事実 はD
e
相が 1
0
回対称 の2
次元準結 晶であることを示 している。図 Ⅱ-2
(d)
の1
0
回対称軸の周期 は強い強度を もつ 回折
点では1
.
2
6
m
m
であるが、強度 の弱い回折点を考慮すれば1
.
2
6
n
mx3
-3
.
7
8
m
m
であ る。 約 0
.
4
n
m
を
I
)
e
相の基本周期 と して考え ると、 このA
l
C
u
C
r
系I
)
e
相の周期 は約 0
.
4
n
mx9
-3
.
6
n
n
l
型 に分類 さ
れ る。 従 って、今 回発見 されたA
1
C
u
C
r
系
D
e
相 は現在 までに確認 されているD
e
相(
約0
.
4
n
I
I
Xl、
2、3、4)
のなかで一番長 い周期を もっていることになる。
図 Ⅱ-3
(a)
は図 Ⅱ-2
(a)
(
D
e
相の 1
0
回対称軸)の電子 回折 図形か ら得 られ る高分解能電子顕
-
203 -
降旗
順一郎
e5
7T
3
e2
図 Ⅱ-2;a
s
c
as
t
試料 に観 察 され たD
e相 の 10回対称 軸入射 (a)、1
0回対称 軸 に垂直な 2
回
対称 軸入射 (C、 d)の電子 回折 図形 。(C)と(d)の 回折 図形 は 1
0回対称軸 の周
りに 1
80間隔で交互 に現れ る。(b)は準周期面 内で の基本逆格子ベ ク トル を表 し、
回折 図形で 印を付 けた 回折点 はその大 きさを表 して い る。
-2
0
4-
AトCu-Cr系合金の準結晶
∼安定 De相 の存在 とその近似結晶∼
(
b)
図 Ⅱ-3
;as
c
ast
試料 に観 察 され たD
e相 の 1
0回対称 軸入射 で得 られ る高 分解 能 電子 顕 微鏡
像 (a)とその 明 るい点 を結 ん で作 られ るタイ リング (b)0 (a)にお いて、 白線
の"
ずれ"は フ ェイ ゾ ン歪 を表す . タイ リングは一辺 の長 さが約 1
.
26n皿の 四種 類
の タイルで構成 され 、、
非 周期 的 に空 間充填 して い る様 子 を示 して い る。
- 205
-
降旗
順一郎
微鏡像 であ る. この図の一書郎こ示 してあるように図中の明るい点を結んで行 くと、A
1
C
u
C
r
系
D
e
相の準周期面 は一辺の長 さが約 1
.
26m
皿である四種類 のタイル(
ペ ンローズの二種類 の菱形、
角形、王冠型)
で非周期的に充填 されていることがわか り、その幾何学的なタイ リングの様
正5
(b)
に示 されている。
子 が図 Ⅱ-3
図Ⅱ-3(a)に矢 印で示 してある5つの方 向に沿 って、高分
解能電子顕微鏡像を斜めか ら眺めると明 るい点の直線的な配列を見 る事ができるが、 どの方 向
に対す る直線 もそのほ とん どが途 中で切断 され、ずれ(いわゆる`
'
ステ ップ")を生 じていること
がわか る。その一例が国中の 白線で示 してある。 この `
ス̀テ ップ'
'
の存在 は液体急冷で得 られた
準結 晶な どに多 く観察 されてお り、試料作製時(
準結晶の成長段 階)に凍結 された リニアフェイ
ゾ ン歪で説 明する ことができる。 一般 に リニアフェイゾン歪が導入 され ると、逆格子空 間では
回折点の位置 にずれが生 じる。また、 このずれの度合いによっては回折点(ピーク)の半値幅が
(a)
の 回折図形 に見 られた回折点のずれ
非対称 に広が ることも考え られ る。従 って、図 Ⅱ-2
や形 の変形 は高分解能電子顕微鏡像 に観察 された リニアフェイゾン歪で説 明 され るもの と思わ
1
C
u
C
r
系安定D
e
相の場合 、a
s
c
a
s
t
試料 に観察 された "
凍結 リニアフェ
れ る 今 回兄 いだ したA
。
イゾ ン歪"が熱処理 によって どのように緩和 され るかについては(B)で詳 しく述べ る。
De相が多量に存在 したA
l
T.
C
uュ
。
C
r
2
。
合金のa
s
c
a
s
t
状態が平均的に どの様にな っているかを
0/
Di
n)
によって調べた。その結果を図 Ⅱ-4に示すO表 I
I-2には
Ⅹ粉末 回折(
測定走査速度 は2
各 ピー クの番号 に対応す る積数 と面間隔、そ して物質名を示 してある。結 晶相の ピーク同定 に
S
T
Nカー ドを参考 に した.また、回折パ ター ンにおいて番号の上 に星 印のついた ピークはI
)
e
はA
相の ピークを表 している。 ここでD
e
相の指数付 けについて触れてお く。 実の ところ、準結 晶に
関す る指 数 の表記法 はベ ク トル の取 り方 によ ってい くつか あ り(例 えば Ⅰ相 につ いて は主 に
EI
s
e
r
指数 5
7
)とC
a
h
n
指数 5
8
)
が使われている)
、統一 されていないのが現状である。D
e
相につ い
9
)
6
0
)
が撞案 されているが、 ここで はA
l
N
n
系I
)
e
相 に対 して竹 内一
木村 によっ
て もい くつかの方法 5
)を用 いることにす る。
て考案 された指数付 け61
定義 され る6
本 の基本逆格子ベ ク トルの うち5
本 は図 Ⅱ-2
(b)
に示 され るよ うに準周期面にとり(el
、 e2
、e3、
e4、 e5
)
、残 りの1
本 は5
本のベ ク トルに垂直に、すなわ ちD
e
相の周期軸 (
1
0回対称軸)に平行 にとる(e6
)
。基本逆格子
本 は図 Ⅱ-2
(a)で印を付 けた5
つの回折点を、周期軸
ベ ク トルの大 きさと しては準周期面の5
本 は図 I
I-2(C又 は d)
で印を付 けた強度の一番強い回折点を選択す る。 従 って、 図
に平行 な 1
Ⅱ-2の回折 図形で印を付 け られた6
個 の回折点の指数 は基本逆格子ベ ク トルでそれぞれ、
el-(
1
0
0
0
00
)
e2-(
01
0
0
00
)
0
0
1
0
00
)
e3-(
-2
0
6-
∼安定 De相 の存在 とその近似結晶∼
AトClトCr系合金 の準結晶
(
sl!Un'
q LD)AllT
SUal
Ui
40
30
60
50
70
20(
°eg)
図 Ⅱ-4;走 査 速 度 2
0/
ni
nで 測定 したA1
70
Cul
O
Cr20合 金 as-c
ast試 料 の Ⅹ線 粉 末 回折パ タ ー
ンo 各 ピー クに記 した番 号 は表 Ⅱ-2の番 号 に対 応 して い る。 星 印 が つ い て い る
ピー ク はD
e
相 の ピー クで あ る。
表 Ⅱ-2
No
1
2
3
4
5
7
8
9
0
1
1
1
2
1
14
15
16
2
4
.0
2
5
.
4
3
7
.0
39
.
9
4
2
.1
71991n
U4
●
24
34
34
64
96
16
3
4
6
13
20(
deg)
71
.
6
7
3
.
7
7
4
.
6
7
7
.0
面 間隔 (A)
物質
3
.
7
2
Al1
7
Cr9
3
.
5
1
D
e
相
D
e
相
2
.
4
3
2
.
2
6
2
.1
5
2
.
1
2
2
.1
0
2
.
0
6
1
.
9
4
1
.
8
6
1
.
5
2
1
.
4
7
1
.
3
2
1
.
2
9
1
.
2
7
1
.
2
4
-2
0
7-
De相
Al17
Cr9
De相
De相
D
e
相、?
Al17
Cr9
Al1
7
Cr9
Al
1
7
Cr9
D
e
相
指数
(
30
0)
、
(
1
0
4)
(1
1
1
1
00
)
(1
0
0
0
00
)
(1
0
0
0
01
/
3
)
(
50
2)
、
(
3
3
0)
(
32
4)
、
(
3
0
6
)
(1
0
0
0
01
/
2
)
(
0
0
0
001
)
(
01
1
0
00
)
(1
5
2)
、
(
01
8)
(
6
0
0)
、
(
2
44)
(
6
0
6)
、
(
2
6
2)
(1
1
0
010
)
(
01
1
001
)
?
De
相
(110
01
5/6
)
D
e相
Al17C
r9
(1 00
10
0)
(6
3
6)
降旗
順一郎
e4-(
0
0
01
00
)
e5-(
0
0
0
0
10
)
e6-(
0
0
0
0
01
)
のよ うに表記 され る。 このよ うなベ ク トルの取 り方 は比較的強度の強い回折点(ピーク)
を表記
す るのに便利であ る。 この方法 に華 って、図 Ⅱ-2
の電子 回折図形か ら求 まる面 間隔の値 とⅩ
線粉末 回折パ ター ンか ら求 まる値を照 らし合わせなが ら、星 印のついてい るI
)
e相の ピークを同
0
0
0
0
01
)
が一番強度の強い
定 し指数を付けた。一般 にDe相 はⅩ線粉末 回折パ ター ンにおいて(
s
-c
ast
試料 はほ とん どDe相 とAl1
7C
r9
(
六万 品 ;aピー クで あ る。 図 Ⅱ-4の結果 か ら、a
1
.
2
91
0
n
m、 C-1
.
5
6
7
7
)
か ら構成 されてお り、De相が近似的にa
s
c
a
s
t
試料の6
0
%程を占めてい
はⅩ線粉末 回折パ ター ンの2β-3
9
0 -4
5
0 の範囲を走査速度を遅 くし
ることがわか る。 図 Ⅱ-5
.250/mi
n)測 定 した結果 で あ る。 (a)には今 回研 究 の対 象 にな って い る
て (走 査 速 度 は0
A17。
C
ul
。
C
r
2。
合金の、(b)にはよ く研究 されてきたA
1
6
5
C
u2。
C
r
1
5
合金のそれぞれa
s
c
a
s
t
状態
)
e相の ピークが (b)のパ ター ンには全 く見
を示 し、・
比較 してある。(a)のパ ターンに見 られ るI
1
6
5
C
u2。
C
r
1
5
合金で観察 したDe相がいかに微量であ ったかがわか る。
られない ことか ら、我々がA
すなわ ちこの結果か ら、A
トC
u
C
r
系合金 においては Ⅰ相の成分がA
1
6
5
C
u
20
C
r
1
5
に近い一方で、
D
e
相の成分 はA
1
70
C
ul。
C
r
2。
に近い ものと予想 され る。D
e
相の詳 しい成分 については(ち)で触れ
e相 と1
/1近似結 晶(Ⅰ相の近似結晶)の ピー
ることにす る。 更 に、二つのパ ター ンの比較か らb
クが 同 じよ うな位置にあることか ら、両者の構造 に何 らかの関係があることが予想 され るが、
e
相 については、すでにい くつかの構造的関
これにつ いての究 明は今後 の課題である。 Ⅰ相 とD
係 と類似性が報告 されている。62)63)
(B)
1
0
0
0
℃ 、1
0
0
時間熱処理試料
s
c
a
s
t
試料のD
e相は1
0
0
0
℃、1
0
0
時間の熱処理 によって も結 晶相 に相
最初で述べたよ うに、a
に この試料 に観察 されたD
e
相の電子 回折 図形
変態せず、安定相 として存在 していた。図 Ⅲ-6
s
c
a
s
t
試料の場合(図 工-2)と同 じよ うに示 してある。図 Ⅱ-6(b)は図 Ⅱ-6(d)の一部
肴 a
を拡大 して表 した ものである。 図中の矢 印で示 してある強度の弱い回折点が明 らかに観察 され、
A
l
C
u
C
r
系De相の周期が3
.
7
8
n
m
であることが確認 される01
0
回対称軸入射の図 I
I-6
(a)に示
s
c
a
s
t
試料 のD
e
相(図 Ⅱ-2
(a))に比べて非常 にシャー
した回折 図形について、その回折点はa
s
c
as
t
試料のDe相 と同程度
プにな っていることがわか る. しか し回折点の位置 に関 しては、a
のずれが観察 され る。
e
相の 1
0回対称軸入射の回折 図形か ら得 られた高分解能
図 Ⅱ-7(a)は図 Ⅱ-6(a)に示 したD
-2
0
8-
-安定 De相 の存在 とその近似結 晶∼
Al
-Cu-Cr系合金の準結 晶
(S亡.
un.
qD
L)
^ 1
!Suむ u
l
l
40
41
42
43
44
20(
°eg)
図 Ⅱ-5
;20-39-45
0付 近 を走 査 速 度 0
・2
50/
mi
nで 測 定 した A170
CulO
Cr20合金 (a)と
A1
6
5
Cu2
0
Cr1
5
合 金 (b)のa
s
c
as
t
試料 の Ⅹ線 粉 末 回折 パ タ ー ン。 A1
6
5
C
u2
0
Cr15
合金 のa
s
c
as
t
試 料 に はDe相 の ピー クは認 め られ な い.
-2
0 9
-
降旗
順一郎
図 Ⅱ-6;
1
00
0℃1
0
0時 間熱 処理試料 に観察 され たD
e相 の 1
0回対称 軸入射 (a)
、1
0回対称軸
に垂 直な 2回対称 軸入射 (C、 d)の電子 回折 図形 。(b)は (d)のパ ター ンの一部
e
を拡大 して示 して あ り、 国 中に矢 印で示 した強度 の弱 い回折点 を考慮 すれ ば 、D
相 の周期 は3
.7
8
mmで あ る。
- 2 10 -
A1
-Cu-Cr系合金 の準結 晶
∼安定 De相 の存在 とその近似結 晶∼
(a)
(b)
図 Ⅱ-7
;1
0
0
0
℃1
0
0
時 間熱処理試料 に観察 され たD
e
相の1
0回対称 軸入射 で得 られ る高分解
能 電子 顕微 鏡 像 (a)と、 その リングクラス ターの 中心 を結ん で作 られ るタイ リ
ング(b)0
ー
211 -
降旗
順 一郎
電子顕微鏡像であ る。 この高分解能電子顕微鏡像 はas-cast試料 の図 Ⅱ-3
(a)で示 した像か ら
約4
5
0
m
m
オ ーバ ーフォーカスの所で得 られ、
対称 的に置かれた1
0
個の明るい点を もつ "リング状"
0回対称 を有す る原子 クラスタ
の コン トラス トを強めるものである。 これ はDe相 の準周期面が1
ーか ら構成 されていることを意味 している。 この図の一部 に示 してあるように、 "リングクラ
)
e相 と同 じよ うな四種類のタイルか ら構成 され
スター"の 中心を結んで行 くと、as-cast試料のI
(b)
に与え られている。 タイルの一辺の
る非周期的なタイ リングが生 じ、その様子が図 Ⅱ-7
.
0
3n
m
であるが、 この値 は図 工-3
(b)
に示 したタイルの一辺の長 さ1
.
2
6n
m
の T(
黄金比
長 さは2
.6
1
8)
倍 とほぼ等 しくな っている。as-cast試料の場合 と同様に して図 Ⅱ-7
(a)の高分解能
≒1
つの方 向か ら斜 めに眺め ると、 リングクラスターの直線的な配列が見 られ る。
電子顕微鏡像を5
つの方 向にはほとん ど
この直線 は水平方 向にのみ頻繁 にステ ップが生 じているだけで、他の4
ステ ップは見 られない。 このように リニアフ ェイゾ ン歪(ステ ップは リニアフェイゾン歪を意
Pd-h 系De相 に も確認 されている。 以
味す る)の起 こる頻度が、方 向によって異な る構造 はA1
上のような結果は、as-cast試料 に全ての方 向で リニ アフェイゾン歪が存在 していた ことを考
えれば、 このDe相の熱処理 による リニアフェイ ゾン歪の緩和効果が方 向によって異な ることを
示 している。一般的に、 リニ アフェイゾ ン歪 は準結 晶が成長す る過程でい ったん導入 されて し
まうと、 これを緩和す るのにた くさんの原子 クラスターが長距離の相関を もって移動 しなけれ
ばな らないので、 フェイゾンの量が多いほ どその完全消滅は容易でないと考え られている。 し
Pd-Hn系De相や今 回のA1
-CuCr系De相が方 向性 によって フェイゾン歪の緩和 され
か し何故 、A1
る量が異な るのかについては、準結晶の成長機構が解 明されていない現段 階ではは っき りした
答えは得 られていない。平賀 らは安定De相の準周期面での構造を、高分解能電子顕微鏡像 に基
づ く原子 クラス ター間の結合の仕方 によって議論 している。48) 彼 らは、高い準周期性を もつ
Al
-(
Cu、Ni
)
C
o系De相 と多 くの リニ アフェイ ゾンを含むAトPd-h 系De相では、観察 され る高分
1
0回対称 の原子 クラスター)間の結合の仕方 に明 らかな
解能電子顕微鏡像の リングクラスター(
T
'
結合で後者が "
S -L"結合であると考えている。 ここで
違 いがあるとして、前者が "S-SS'
SS、 S、 Lは結合の距離を表 し、それぞれ は L- TS- 72ss(て;
黄金比 )
の関係 にある
。
平賀 らによって示 された二種類 のタイ リングを図 Ⅱ-8
(a)にAl-Cu-Co系I
)
e相、図 Ⅱ-8
(b)
に
Al
Pd-Xn系I
)
e相 と してそれぞれ示 してある。 このタイ リングは高分解能電子顕微鏡像の リング
角形が存在す るが
クラスターの 中心を結んで得 られた ものである。両者のタイ リングには正 5
(a)に
この一辺 の長 さが Sに、対角線の長 さが Lにそれぞれ対応す る。 SSの長 さは図 Ⅱ-8
示 してある。 これ らのタイ リングを見てわか るように、 リングクラスター間の結合の仕方の違
`
Sいは、見方 を換えればタイ リングの中にペ ンローズの尖 った菱形が含 まれているものが `
-
2
12-
Al
-Cu-Cr系合金の準結晶
∼安定 De相の存在 とその近似結 晶∼
(
a)
10 nm
(
b)
囲 Ⅱ-8;Al
Cu-Co系De相 (a)とAl
-Pd-h 系 De相 (b)の リング クラス ター配 列 。(a)に見
られ るペ ンローズ の尖 った菱形 が (b)に は存在 しな いo (
平 賀 ら48)によ る)
ー21
3-
降旗
順一郎
SS'
'
結合であ り、含まれない ものが "
sIL'
'
結合にな っていると考えることができるo この
トC
u
C
r
系D
e相は図 Ⅱ-7
(b)
に示 したタイ リングの様子か らA
トC
u
C
o
系D
e
相
見方に従えば、A
SISS"
結合型であることがわか る. 高分解能電子顕微鏡像の結果に基づいてA
l
C
u
C
r
系
の"
D
e
相の準周期面での実際の構造を特徴づければ、
(
1
)
1
0
回対称を もつ原子 クラスターが配 向秩序を保 ちなが ら非周期的に充填 してお り、
(
2
)
原子 クラスター間の結合の仕方(
充填の仕方)はA
トC
u
C
o系D
e
相に似ていて、
(
3)
AlPdh 系D
e
相のよ うな方 向性を もった リニアフェイゾン歪が多 く存在す る.
とい うことになるであろう。
Ⅹ線粉末 回折の結果をa
s
c
ast
試料の場合 と同様 に図 Ⅱ-9
と表 Ⅱ-3
に示す 。1
0
0
0
℃、1
0
0
時
間の熱処理試料のDe相はA
l
1
7
C
r
9とA
1
2
C
u
の二種類の結 晶と共存 してお り、 この試料を占めるD
e
相の割合 はas
c
as
t
試料 に比べて、む しろ少な くな っていることがわかる。
SEX)で観察す ると、至 るところに窪んだ空洞が見 られた.
試料の破 断面を走査型電子顕微鏡 (
3
(a)に示すような長 さが約 1
5F
L
恥 直
そ してそのなかを拡大 して細か く観察す ると、図 Ⅱ11
径が約 7
F
L
m
程度のきれいなファセ ッ トを もつ正 1
0
角柱がい くつか存在 した. この正 1
0
角柱はD
e
相の成長形態であると考え られ、その対称性をよ く反映 している。 この正 1
0
角柱表面のい くつ
EDS)によって成分分析を行 っ
かの点 につ いて、エネルギー分散型 Ⅹ線マイクロアナライザー(
A1
7
0
C
ul
。
C
r
2
8
か ら少 しずれた以下のよ うな値を得たo
た結果 、(
原子量比で)
A1
-7
1
.
9
2
±0
.
3
6
C
u
-l
l
.
7
8
±0
.
4
6
C
r
-1
6
.
3
6
±0
.
2
2
これ らの値 に近い成分を もつA
171
C
u12
C
r
1
7
合金を作製 し、そのa
s
c
as
t
状態をⅩ線粉末回折に
よって調べた ところ、 この試料 はD
e相がほぼ "
単相"で生成 され ることがわか った。 これはDe相
l71
C
u1
2
C
r
1
7
に近い値であることと同時に、De相の成長形態が正 1
0
角柱であることも
の成分がA
0
にはa
s
-ca
s
t
試料に関 して、A
1
7
1
C
u1
2
C
r
1
7
合金 とA
1
7
。
C
ul
O
C
r
2
。
合金の
意味 している。図 Ⅱ-1
)
e相 の ピー クを示 す 。
Ⅹ線 粉 末 回折パ タ ー ンを 比 較 して 示 して あ る. 図 中の 星 印 は I
A1
7
。
C
ul
。
C
r
2
。
合金 に多 く見 られ る矢印で示 したA
l
1
7
C
r
9の ピークがA
1
7
1
C
u12
C
r
1
7
合金ではほと
171
C
u12
C
r
l
T
合金のパ ター ンで、2β-2
3
0 付近にあるD
e相
ん ど消滅 しているのがわか る。 尚、A
0
1
0
0
10
)
であ り、A
1
7
。
C
ul
。
C
r
2
0
合金に見 られないのは相対的にD
e
相の量が少
ピークの揖数は(
ないためだ と考え られる。
-
2 1
4-
Al
-Cu
-Cr系合金 の準結晶 -安定 De相 の存在 とその近似結 晶∼
!
(S一!
U
nf
q
L
ロ)FlSU小一Ul
50
40
30
60
70
20(
°eg)
図 Ⅱ-9・
'走査速度 2
0/
mi
nで測定 したA
l
70
Cul。
Cr2。合金 1
0
0
0
℃1
0
0時 間熱 処理 試 料 の Ⅹ線 粉
末 回折パ ター ン。 各 ピー クに記 した番号 は表 Ⅱ-3の番 号 に対 応 して い る。 星 印
e
相 の ピー クで あ る。
がつ いて い る ピー クはD
表 Ⅱ-3
β
(
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
.
2 °
eg
)
2
0
.
6
2
4
.
0
2
5
.
4
2
9
.
4
3
7
.
8
3
9
.
9
4
2
.
0
4
2
.
4
4
2
.
5
4
3
.
2
4
3
.
9
4
7
.
3
4
7
.
8
4
8
.
7
4
9
.
2
5
7
.
0
6
1
.
2
6
3
.
6
7
3
.
6
7
4
.
6
7
7
.
4
面 間隔 (A)
物質
4
.
31
3
.
71
3
.
5
1
3
.
0
4
2
.
3
8
2
.
2
6
2
・
1
5
2
.
1
3
2
.
1
3
2
.
1
0
2
.
0
6
1
.
9
2
1
.
9
0
1
.
8
7
1
.
8
5
1
.6
2
1
.5
2
1
.4
6
A1
2C
u
Al
1
7
Cr9
D
e
相
A1
2C
u
A1
2C
u
D
e
相
Al
1
7
Cr9
A
l
1
7
Cr9
A1
2C
u
D
e
相
De相
A1
2C
u
A1
2C
u
Al
1
7
Cr9
Al
1
7
Cr9
A1
2C
u
Al
1
7
Cr9
De8
D
e
相
I
)
e
相
1
.
2
9
1
.
2
7
1
.
2
3
A1
2C
u
Al
17
Cr9
-
2 15
-
積数
(
1
1
0)
(
3
0
0)
、
(
1
0
4)
(1
1
1
1
00)
(
2
0
0
)
(1
21
)
(1
0
0
0
01
/
3
)
(
5
0
2)
、
(
3
3
0)
(
3
2
4)
、
(
3
0
6)
(
1
1
2)
(
0
0
0
0
01
)
(
0
1
1
0
00)
(
1
3
0
)
(
2
0
2
)
(
6
0
0
)
(
2
4
4)
(
2
2
2)
(
6
0
6)
、
(
2
6
2)
(
1
1
0
0
10)
(
01
1
0
01
)
(
1
1
0
0
15
/
6
)
(
1
0
01
00)
(
3
3
2
)
(
6
3
6
)
降旗
順 一郎
T
3
)
All.Sa
u
u
l
l
(
slI.un tq J
40
50
60
70
20(
°eg)
図 Ⅱ-1
0;A1
7
0
C
ul
O
C
r2
0
合金 とA1
7
1
C
u1
2
C
r1
7
合金 のa
s
c
a
s
t
試料の Ⅹ線 粉 末 回 折 パ ター ン。
1
7
0
C
ul
O
Cr
2
0合金のパ ター ンに矢 印で示
星印の ピー クはDe相の ピークであるo A
した結 晶A
l
1
7
Cr9の ピー クがA1
7
1
C
u1
2
C
r1
7
合金のパ ター ンではほ とん ど見 当た
らな
い。
- 1
62
AトCu-Cr系合金 の準結 晶
∼安定 De相 の存在 とその近似結 晶∼
(C)
9
5
0
℃、5
0
時間熱処理試料
1
0
0
0
℃の試料に存在 したDe相は9
5
0
℃ではすでに安定ではな く、De相 と構造が よ く似ている
`
微̀結 晶状態'
'
に相変態 していた。 ここではこの微結 晶状態を疑似De相 と呼び、De相 と比較 しな
)
e相がS.
Eb
al
ar
dら
が ら主 にそれ らの違 いと共通点 について考察す る. 実の ところ、 この疑似I
1
6
5
C
u2。
C
r
1
5
合金の徐冷試料 に観察 した α
De相の近似結 晶'
'
に相 当す るように思われ る(
後で
がA
述べ るように、成分的には異差がある)
0
1には、(a)に1
0
0
0
℃に観察 されたDe相の、(
b)
に9
5
0
℃に観察 された疑似D
e相の、
図 Ⅱ-1
0
回対称軸 と疑似 1
0
回対称軸入射の電子 回折図形の一部 を拡大 して比戟 してある。強
それぞれ 1
い強度を もつ回折点については二つの回折図形にはっき りした違 いは見 られないが、強度 の弱
い細かい回折点に注 目す るとい くつかの違いが生 じていることがわか る。De相の回折図形では、
つの回折点がほぼ正5
角形をつ くっている(リニ アフェイゾン歪の影響で正 5
角形
矢印で示 した5
つの 回折点 はすでに5
か ら少 し歪んでいるが)
一方で、疑似De相の回折図形のこれに対応す る5
角形を も作 らないことが図中の矢印で示 してある. これはDe相における5
つの回折点(なかで も
つの回折点)
が、疑似De相ではかな りシフ トしていることを示 している。平均
特に強度の弱い2
的に見て、疑似De相の回折点 はDe相のそれに比べてかな りブロー ド化 してお り、強度の弱い回
0
0
0
℃のI
)
e相に更 に多量の リニア
折点は消滅 しているもの もある. これ らの事実 は疑似De相が1
0回対称軸方 向の周
フェイゾン歪を導入 した構造であることを意味 している。疑似De相の疑似 1
e相 と変わ らず3
.
7
8
n
m
であることが電子 回折図形か ら確認 されたので、_
疑似De相はDe相の
期はD
準周期面内の構造だけが変化 した ものと考え られ る。
2
(a)は疑似De相の疑似 1
0
回対称軸入射で得 られた図 Ⅱ-3
(a)(,
as-c
ast試料の高分
図 Ⅱ-1
解能電子顕微鏡像)とほぼ同 じフォーカスの高分解能電子顕微鏡像 を示 している。 この図の一
.
26m
mのい くつかのセル
部に示 してあるように、国中の明るい点を結んで行 くと一辺の長 さが 1
2
(b)に示 してある
が周期配置 していることがわか り、その様子を図 Ⅱ一1
。
タイ リングに見 ら
角形'
'
は正5
角形 と王冠型か ら構成 されていると考え られるので、図 Ⅱれ る"
引き伸ばされた6
1
2
(b)のタイ リングはDe相を構成 した四種類のタイルが周期配置 した もの と解釈 できるO引き
角形は、De相のタイ リングにも正 5角形 +王冠型 とい う形で頻繁 に現れている。 図
伸ばされた6
Ⅱ-1
2
(
b)
はこの6
角形のみが周期配置 している結 晶領域 と複数のセルが周期配置 している結
晶領域 に分けて考えることができ、タイ リング中にそれぞれの領域で取 り得 るユニ ッ トセルを
太線で示 してある
。
この二種類の結晶はこれを構成するタイルがDe相 と同 じであるので、D
e相
0
回対称軸 に平行
の近似結晶であると考え られ る。 これ らの結 晶(
ユニ ッ トセル)に対 して疑似 1
- 217
-
降旗
順 一郎
図 Ⅱ-l
l;De相 (1
0
0
0
℃熱処理試料 )
1
0回対称軸入射 (a)と疑似De相 (
9
5
0
℃熱処理試料 )
疑
0回対称 軸入射 (b)
の電子 回折 図形 。De相で は国中に矢 印で示 した5
つ の回
似1
折点がほぼ正 5
角形 を作 っているが、疑似 De相で はそれ らが5
角形を も作 らない。
-21
8-
A1
-Cu-Cr系合金の準結晶
∼安定 De相 の存在 とその近似結晶∼
(a)
図 Ⅱ-1
2;9
5
0
℃5
0
時 間熱処理試料 に観察 され る疑似De相 の疑似 1
0
回対称 軸入射 で得 られ
る高分解能電子顕 微鏡 像 (a)と、その明 るい点 を結ん で作 られ るタイ リング
(b)。De相 を構成 す る複数 のセルが部分 的 に周期配 置 して お り、 タイ リング中
には この領域 で取 り得 るユニ ッ トセル を太線で示 して あ る0
-
219 -
降旗
順一郎
に b軸を とると、各々の格子定数 は高分解能電子顕微鏡像 と電子 回折図形か らほぼ、
as
-3
.
3
0
n
m
bs
-3
.
7
8
n
m
c8
-2
.
4
0
n
m
aL-9
.
2
8
n
m
bL
-3
.
7
8
m
m
cL-2
.
0
4
m
m
で与え られ る。添え字の S、 Lは Sが6
角形の配置のみで生 じる結晶、 Lが複数のセル配置で
、 cs
、 aL
、 CL
はタイル一辺の長 さ dと黄
生 じる結晶を表す.また、幾何学的な関係か ら as
金比 Tを用いて以下のように表せ る.
as
-72d
-(1
+72
)
1
/2d
cs
aL-72cs
+2
(
2T-1
)1
/2d
cL-Td
(ここで、正 5
角形の対角線はその一辺の 7倍であ り、 Tについて T2
-r十1
、2
c
o
s
3
6
0- Tの
関係を使 ってある。)
S、 L二種類の斜方晶の近似結 晶は格子定数のみな らず、図 Ⅱ-1
2
(b)のタイ リングに示すよ
うに方位的にも密接な関係がある。 このような高分解能電子顕微鏡像の観察結果は、疑似De相
の構造 は二種類の近似結晶がある方位関係を もちなが ら、複雑な微結晶状態を形成 しているこ
とを示 して い る。 今 回の場 合 と同 じよ うな微結 晶状 態 を示 す高分解 能 電子顕微鏡 像 が、
A165
C
u2
0
F
el
O
Cr
5
合金の1
2
0
0K、3時間熱処理試料に観察 されている(この合金系には液体急冷
試料にD
e
相 と Ⅰ相が共存す る)64)0
疑似De相の成長形態についてS
E
N
像観察の結果を図 Ⅱ11
3
(b)に示す.I
)
e
相 と同 じような柱
0
角柱ではないことが図 Ⅱ-1
3
(a)との比較で明 らかであるo従 って、
状形態を しているが正 1
疑似De相 は成長形態か らもDe相 と区別す ることができる. この成長形態の成分分析値は原子量
比で
A1
-7
4
.
7
0±1
.
4
2
C
u-9
.
0
21
±0
.
8
3
C
r-1
6
.
2
8±0
.
9
4
であ り、Al
とC
uの比率がDe相の成分 とわずかに異な っていることがわか る. また、S
.
E
b
al
ar
d
らが報告 しているD
e
相の近似結 晶 〝
Al
T
C
u2
C
rl
"に対 して も成分的にはC
uとC
rに異差が認め られ
ー 220-
Al
-Cu-Cr系合金の準結晶
一安定 De相の存在 とその近似結晶∼
(b)
図 Ⅱ-1
3;D
e
相(
1
0
0
0
℃熱 処理試 料 )(a)と疑似 p
e
相(
9
5
0
℃熱 処理試料 )(b)の成 長形 態 を
示すS
E
X
像 .D
e
相 の成 長形態 はきれ いな フ ァセ ッ トを もつ正 1
0
角柱 で あ るの に
対 し、疑似 D
e
相 のそれ は正 1
0
角柱 とは異 な って い る。
- 221 -
降旗
順一郎
る。
図 Ⅱ-1
4と表 Ⅱ-4にⅩ線粉末 回折の結果を示す. この試料のほとん どはAl
1
7
CgとAl
2
Cuの結
晶であ り、疑似De相はごくわずかであることがわかる.疑似D
e相の ピークで、はっき りわか る
0
0
0
0
01)(周期方 向の回折点)に相当す る8
番の ピークのみである。図 Ⅱ-1
5は28
のはDe相の(
走査速度 は0
.
2
5
0
/
凪i
n)
測定 した結果
≒4
2
0-4
5
0の範囲を走査速度を遅 くして(
0
0
0
℃)と疑似De相(
9
5
0
℃)
のパ ター ンを此戟 して示 してある。De相の ピー
であ り、De籾(1
0
1
1
0
00
)
の ピークは準周期面内の回折点であるが、
疑似D
e
クには指数が示 されている。 De相の(
相のパ ター ンにはこの ピークが もはや見 られないことか ら、試料全体を平均的に見て も疑似De
相では準周期性が失われているのがわか る。
(D)
8
2
0
℃、8
7
0
℃5
0
時間熱処理試料
元化合物の結晶が観察
これ らの試料 にはDe相や疑似De相は全 く存在せず、 これに代わ って3
2
0
℃に観察 された六万品の3
元結晶の電子 回折図形を図 Ⅱ-1
6
(a)
(b)(C)に示す。
された。8
(a)は6回対称軸入射、(b)
、(C)はそれに垂直な2回対称軸入射の回折図形である。(b)
、
(C)の回折 図形は6
回対称軸の周 りに3
00
間隔で交互に現れ る。(a)において水平方向の回折点
7
(a)
(b)(C)はそれぞれA事
7
1
C
u1
2
Cr1
7
8
0
0
℃(
5
0
時間)
列が(C)のそれに対応 している。図 Ⅱ-1
、A17。
Cul。
Cr2。
820℃ 、A17
。
Cul
。
Cr2
.
870℃熱処理試料 の Ⅹ線粉末 回折パ ター ンであ る.
A1
7
1
C
u1
2
Cr1
7
8
0
0
℃の試料 にも六万 品の結晶が観察 された。 この結晶について、図 Ⅱ-1
6
(a)
の回折 図形 とそれに垂直な入射で得 られ るい くつかの電子 回折図形か ら回折点の面間隔を測定
7
(a)
の全ての ピークはこの六
し、 Ⅹ線粉末回折パ ター ンの ピークに指数をづけると、図 Ⅱ-1
に示 してある。従 って,
A1
7
1
C
u1
2
Cr1
7
万品の結 晶で解釈 できる。 この結果が指数 と共に表 Ⅱ-5
℃熱処理試料 には六万品の結 晶が単相で存在 し、その成分はほぼAlTl
C
u1
2
C
r1
7
であること
8
0
0
がわか る(
以後 この結晶を六万 品AlTl
C
u1
2
Cr1
7と呼ぶ)
。また、格子定数 は電子 回折図形 とⅩ線
I
粉末 回折の結果か ら、
a-1
.
7
7
n
m
.
2
6
m
m
c-1
のように決定 された.先に §2
において、S
.
E
b
al
ar
dらがAl
6
5
C
u2
。
C
r1
5
合金の7
5
0
℃、2日間の熱
1
6
。
C
u3
。
Crl
.
(面心立方 ;a-1
.
7
5
4
n
m)とA171
C
u1
4
C
r1
5
(
六方 晶 ;
a-1
.
7
6
n
D
)
C-1
.
2
4
処理試料にA
の結 晶を、mS
el
k
eらが同 じ合金にAl
6
8
C
u1
6
Cr1
6
(
六万 品;a-1
.
7
7
3
n
m
、 C-1
.
2
5
9
n
A)
の結
n
m)
C
u1
2
Cr1
7と彼 らが観察 して
晶をそれぞれ観察 していることを述べた。今 回観察 した六万 品A171
-
222 -
AトCu-Cr系合金の準結 晶 ∼安定 De相 の存在 とその近似結 晶-
!
(sl!
Un+
q JD)^1Sualu
l
40
50
20(
de匂)
図 Ⅱ-1
4;走 査 速 度 2
0/
mi
nで測定 したA17。
Cul
。
Cr2。合 金 9
5
0℃5
0時 間熱 処 理 試料 の Ⅹ 線 粉
末 回折パ ター ン。 各 ピー クに記 した番号 は表 Ⅱ-4
の番 号 に対応 して い る。
表 Ⅱ-4
No
1
2
3
4
5
6
2♂(
°
e
g)
2
0
.
6
2
3
.
9
2
9
.
4
3
7
.
9
3
9
.
9
4
2
.1
面 間隔 (
A)
物質
2C
u
A1
Al
17
Cr9
A1
2C
u
A1
2C
u
4
.
3
1
3
.
7
2
3
.0
4
2
.
3
7
2
.
2
6
2
.1
5
疑似De相
Al
1
7
Cr9
相 9
9
9
9
9
uac
r u 也c
r uc
r 也c
r 也c
U
c
q似 17試 U
c
q 17㌶ 17式 17㌶ 1
A
l 疑 A
IA
I A1 A
I A1 A
I A1 A
IA
I A
1
7
00 9
0 1
1 1
2
1
3
1
4
1
5
1
6
1
7
1
8
1
22
3
指数
(
1
1
0)
(
3
0
0)
、
(
1
0
4)
(
2
0
0)
(
1
21)
1
0
0
0
01
/
3)
(
(
50
2)
、(
3
3
0)
(
3
2
4)
、
(
3
0
6)
(1
1
2)
(
0
0
0
0
01
)
(1
5
2)
、
(
0
1
8)
(1
30)
(
2
0
2)
(
6
0
0
)
、
(
2
4
4)
(
2
2
2)
(
6
0
6
)
、
(
2
6
2)
(
2
40)
(
0
8
4)
(
40
2)
(
6
36)
、
(
3
3
2)
降旗
順 一郎
(
slt.
u
n.
q 」?
)
!
^
1Sualut
42
4
3
4
4
eg)
20(
°
図 Ⅱ11
5;20-4
2
-4
5
0付近 を走査 速度 0
・
2
5
0
/
mi
nで測 定 したAl,
o
C
ulO
C
r20合 金 1
0
0
0
℃熱
処 理 試料 と9
5
0
℃熱 処 理 試 料 の Ⅹ線 粉 末 回折パ タ ー ン。9
5
0
℃熱 処 理 試 料 のパ タ
e
相(
0
1
1
0
00
)
の ピー クが ほ とん ど見 られ な い。
ー ンに はD
-2
24
-
AトCu-Cr系合金の準結晶
一安定 De相 の存在 とその近似結 晶-
図 Ⅱ-1
6;A1
7
0
C
ulO
C
r
2
。
合金 8
2
0
℃5
0時 間熱 処理 試料 に観 察 され た六 万 品A
171
C
u12
C
r1
7
の6
回対称 軸 入射 (a)、 それ に垂直 な 2回対称 軸 入射 (C、 d)
の電 子 回折 図形 。(C)
と、(d)に示 す De相 2回対称 の 電 子 回折 図形 を比較 す る と六 万 品 の C 軸 周 期 と
De相 の周期 の 1/3が等 しくな って い る。
-
2
25 -
降旗
順 一郎
.
(
s
l
!
unqJD)FI
T.
S
a
L
P
一
U
l
30
40
50
60
70
20(
de匂)
図 耳-1
7;走 査 速 度 2
0/
mi
nで測定 したAl
71
C
u1
2
Cr1
7
合金8
0
0℃(a)、A1
7。
Cul
。
Cr2。合 金 8
20
℃(b)
、8
7
0
℃(C)、
50時間熱処理試料 のⅩ線粉末 回折パ ター ン。 (a)に示 した
各 ピー ク の 番 号 は 表 Ⅱ -5の 番 号 に 対 応 して お り、 これ らは 全 て 六 万 品
A1
71
C
u1
2
Cr1
7
の ピークである。 (b)と(C)のパ ター ンで 印をつ けた ピークは結
1
7
Cr9であ る。
晶Al
- 22 6
-
Al
-Cu-Cr系合金の準結晶
∼安定 De相の存在 とその近似結晶-
表 Ⅱ-5
N
o
1
2
3
4
5
6
7
8
9
1
0
1
1
1
2
1
3
1
4
1
5
1
6
1
7
1
8
1
9
20
21
2
2
23
2
4
2
5
2♂(
°
e
g)
2
0
.
9
21
.
4
2
3
.
6
2
5
.
4
26
.
4
2
7
.
3
2
8
.
4
3
8
.
6
3
9
.1
.
4
41
42
.
8
4
3
.
2
4
3
.
9
4
4
.
3
4
4
.
7
4
5
.
8
4
7
.1
4
7
.
6
51
.
0
6
3
.
9
6
3
.
9
7
2
.1
7
3
.
8
7
4
.
3
7
5
.
2
面 間隔(A)
4
.
2
5
4
.1
6
3
.
7
7
3
.
51
3
.
3
8
3
.
2
7
3
.1
4
2
.
3
3
2
.
31
2
.
2
0
2
.1
2
2
.
1
0
2
.
0
7
2
.
0
5
2
.
0
3
1
.
9
8
1
.
9
3
1
.
91
1
.
7
9
1
.
4
6
1
.
4
4
1
.
31
1
.
2
83
1
.
2
76
1
.
2
6
一
22 7
-
指数
(1
22
)
(
2
21
)
(
1
1
3
)
、
(
0
2
3)
(
3
20)
(
3
21
)
、
(
1
2
3)
(
0
42)
、
(
0
3
3)
(
0
0
4
)
(
3
42)
(1
25)
(
5
3
0
)
、
(
0
6
3)
(
2
5
3)
(
0
0
6)
(
5
32
)
、
(
0
7
2)
(
3
2
5)
(
1
70
)
(
0
6
4)
(
2
5
4)
、
(
1
7
2)
(
0
8
0
)
、
(
3
3
5)
(
5
3
4)
(1
7
6)
、
(
3
8
3)
(
6
4
5)
(
0
1
95)
(
5
8
3)
(
5
3
8)
、
(
0
7
8)
(
i
i2
0)
、
(
7
7
0)
降旗
順一郎
い る結 晶は、存在温度、成分、格子定数、な どが非常 によ く似 ているため同 じもの と考 え られ
7の (a)と(b)を此戟 す る と、 A17。
Cul
。
Cr2。
820
℃ の X線粉 末 回折パ ター ンは
る。 図 工-1
Al1
7
Cr9の ピーク(図中で印が付 いている)が見 られ る以外 はA1
71
C
u1
2
C
r1
7
8
0
0
℃ のパ ター ンとほ
7。
Cul
。
Cr2
。
820
℃熱処理試料がA1
71
C
u1
2
Cr1
7
(aとん ど同 じであ る ことがわか る。 これ はA1
1
.
7
7
n
m C-1
.
2
6
n
m)
、Al
l
T
Cr9
(a-1
.
2
9
1
0
n
m、 C-1
.
5
6
7
7)とい う二種類 の六万 品の結 晶か ら
構成 されて い ることを示 してい る。
六万 品A171
Cu1
2
Cr1
7(a-1
.7
7
n
m c-1
.26
m
m)とD
e相 は、成分が ほぼ等 しい上 に、六方 晶
A1
71
C
u1
2
Cr1
7の C 軸格子定数 とD
e相の周期の 1
/
3
が完全 に一致 してい る。 図 Ⅱ-1
6
(d)にD
e
相
の 回折 図形 を比較 のために示 してある。I
)
e相の 1
0回対称軸が六万 品A171
C
u1
2
Cr1
7
の6
回対称軸
6
(C)との比軟
に相 当 し、それ らの方 向で強 い強度 の 回折点の周期が一致 して いるのが図 Ⅱ-1
で よ くわか る。 また、二つ の 回折 図形 は回折点 の強度分布 もほぼ似通 っている。 しか し、 この
71
C
u1
2
Cr1
7とD
e
相の 間に回折 図形 と角度 関係の類似性が確認できず、六
他 の方位で は六万 品A1
7I
C
u1
2
Cr1
7
がD
e
相の近似結 晶であるか どうか につ いては問題がある。 更 に詳 しい研究が
万 品A1
必要 であろ う。
図 Ⅱ-1
7(C)に示すA1
7
。
C
ul
。
Cr2
。
8
7
0
℃のⅩ線粉末 回折パ ター ンは印の付けてあるAl
l
T
Cr9の
E
N観察の結果か ら、 この試料 にはまだ知 られて
ピーク以外 は同定 できず、大変複雑であ る。T
いないい くつかの3
元結 晶が存在 していることが予想 され る。
以下 では(A)∼(D)の結果 と考察に基づ いてA1
C
uCr
系安定D
e相の、 (E)安定性 と相変態、
(F)e/a値 とK。
/
2kF、の2
点 について他 の合金系で存在す る安定準結 晶(Ⅰ相 、D
e
相 )と比較
しなが ら議論す る。
(E)
安定性 と相変態
D
e相 は1
0
0
0
℃で安定であ るが9
5
0
℃で はすで に疑似D
e相(微結 晶状態 )に相変態 していて安定
e相が安定であ る温度範 囲を調べ るために、更 に9
7
0
℃ 、1
0
3
0
℃、1
0
5
0
℃の異な る
ではない。D
温度 で5
0
時 間の熱処理 を行 った。熱処理方法 は §4に述べた通 りであ る。 この結果、 どの温度
e相が存在 しない ことがわか った 。9
7
0
℃ の試料 は9
5
0
℃ とほぼ 同 じよ うな状態で あ
の試料 に もD
り二つの結 晶(
Al
1
7
Cr9とA1
2
C
u)と疑似D
e
相が観察 された。1
0
3
0
℃ 、1
0
50
℃の試料 には二つの結
晶(
Al
1
7
CrgとA1
2
C
u)と二種類 の "
近似結 晶"が観察 された。 これ らの近似結 晶はAl
X
n
系合金 6
5
)
6
6
)6
7
)6
8
)やAトは
n
C
u系合金 6
9
)7
0
)に報告 されているよ うな Y相(斜方 晶)、 Z
T相(底心斜方 晶)
- 22
8-
AトCu-Cr系合金の準結 晶
∼安定 De相 の存在 とその近似結 晶∼
型の近似結 晶であ り、疑似De相を構成 していた ものとは格子定数 も異な っていて、電子 回折図
形において回折点が明 らかに周期配置 している単相粒 として存在 していた。図 Ⅱ-1
8
(a)には
Y相の、図 I
I11
8(b)には ZT相の、それぞれ互いに直交す る方位入射で得 られ る電子 回折 図形
を同 じスケールで示す。近似結 晶の格子定数は電子 回折図形の結果か ら、
ay
-1
.
4
8
n
h
by-1
.
2
6
n
帆
cY
-1
.
2
7
n
m
a.
-2
.
41
n
m
b.-1
.
2
6
n
m
c訂
-0
.
7
8
n
m
で与え られる.両者の b軸がI
k相の1
0回対称軸に対応 し、それぞれの回折図形にはDe相 との類
l
C
u
C
r
系合金ではA
l
一
肌1
、Al
hC
u
系合金の場合 とは異 な りb軸格子
似性が認め られ るが、A
8
(C)に示 されている.図中I
)
e
相の回折図形に
定数がⅠ
ね相の周期 とは一致 しない ことが図 Ⅱ-1
矢印で示 した強度の薄い回折点が近似結晶では消えている.また 2T相のほとん どは単相粒 で存
在せず、Y相の所々に[
0
1
0
]
Y)
l
[
01
0
]
.
、(
1
0
0
)
Yl
l
(
1
0
1
)才の方位関係を満た しなが ら[1
0
0
]
Yにのみ
9にY相 [
0
1
0]入射で得 られ る高分解能電子顕微
狭 く帯状 に存在 していた.その様子を図 Ⅱ-1
と a.
のなす角は1
0
8
0 である.以上の結果か ら、A
l
C
u
Cr
系I
)
e
相は 1
0
0
0
鏡像に示す。図中の ay
℃付近の狭い温度範囲でのみ安定であることがわか るo ちなみに、Al
C
u
C
o系D
e
相の安定性は
Y
.
H
eら7
1
)によって詳細 に調べ られてお り、 このDe相は5
5
0
℃∼9
2
0
℃の範 囲で安定であるとさ
Al
P
d
一
肌l
系D
e相については5
5
0
℃ん9
0
0
℃の範 囲で、少な くとも8
0
0
℃付近 では
れている.また、
安定であると報告 されている。17)
1
C
u
F
e
系 、Al
C
u
Li
系 、Al
P
d
一
班
n系の合金 につ いて
安定 Ⅰ相を形成する合金系のなかで もA
は平衡状態図が一応調べ られていて、 これ らの どの Ⅰ相 も液相か ら直接形成 されず、液相 と初
2
4
)38)
特 にAトC
u
Li
系合金 で
晶 した結 晶の包晶反応を通 して形成 され ることが示 されている。
は初晶が R相 と呼ばれ る Ⅰ相の近似結晶であることが分か っている。安定De相については、はっ
1
7
。
C
ul
。
Cr2
。
合金の9
5
0
℃以上の熱処
きりした状麿図がまだ報告 されていない。実の ところ、A
1
2
C
uの融点 は6
0
0
℃付近であ り(
Al
C
u系合金の平衡状態図7
2
)
か ら)、9
5
0
理試料 に観察 されたA
℃以上の高温では液相で存在 していることにな る.A
1
C
u
C
r
系合金の平衡状態図は非常 に複雑
e
相が 1
0
30
℃以上の Y相、 7
T相型近似結晶とAl
2
C
uの液
であると考え られ るが、 この合金系のD
相の包晶反応で形成 されている可能性は十分 に考え られ る。
-
229-
降旗
順一郎
(C)
図 Ⅱ-1
8;Al71
Cu12
Cr1
7
合金1
0
5
0℃熱 処理 試 料 に観 察 され た Y相 (a)と 7
T相 (b)
の それ ぞ
れ直交す る方位 入射 で得 られ る電子 回折 図形 .(C)には Y相 と 7T相 の [
0
01]
入射
の 回折 図形 と これ に対 応す るDe相 の 回折 図形 を比較 して あ る。 近似結 晶に対 し
てDe相 の周期 に変化 が認 め られ る 。
-
230 -
AトCu-Cr系合金の準結 晶
∼安定 De相 の存在 とその近似結 晶-
図 Ⅱ-1
9;Y相 [
0
1
0
]
入射 で得 られ る高分解 能電子顕微鏡 像。 図中の ayと a.のなす 角 は
1
0
8であ る。 方相 は Y相 の所々 に[1
0
0
]
Y方 向のみ狭 く帯状 に成 長 してお り、単
0
相粒 で はほ とん ど存在 しな
い。
-
2
3 1
-
降旗 順一郎
今 回観 察 され た I
)
e相- 疑 似 I
)
e相 (
9
7
0
℃ 付近 )の よ うな準結 晶一徹 結 晶状 態 の相変 態 が
A
トC
u
F
e
系 I相 2
9
)
3
0
)
(
7
0
0
℃付近)
やA
l
C
u
Co系D
e
相3
1)
7
3
)
(
5
5
0
℃付近)で も確認 されている.
0
この相変態の意味するところは準結晶を構成す る複数のセル(タイル)
がその安定温度 よりも低
温では準周期性を保てず、部分的に周期配置 して しまうということである。 もし準結晶が配位
エ ン トロピーによって安定化 し、基底状態では安定であ りえない とす るランダムタイ リングモ
デルで説明 され るな らば、安定準結晶はある温度以下で結晶に相変腰す るであろうし、実際に
トC
u
C
r
系D
e
高温で観察 され る準結晶は多 くのフェイゾン歪を含む ことが期待 される。 安定なA
相は、一見 このようなランダムタイ リングモデルの満たすべき条件を満足 しているようである.
しか し、(B)で考察 したように リニアフェイゾン歪が準結晶の成長段階で導入 されて凍結 し、
しか もこれが熱処理によって緩和 されに くい と解釈することもでき、観察 されたフェイゾン歪
l
P
d
h
がランダムタイ リングモデルによる効果なのかについては問題が残 る。 現段 階では、A
系やA
トC
u
C
r
系安定De相の実際の構造は、1
0
回対称を有す る原子 クラスターが特別なm
a
t
C
hi
n
g
r
u
l
e
を もたずに結合 した〝
ラ ンダムタイ リング"ではあるが、 これが 〝
ランダムタイ リングモデ
ルの考え方"に当てはまっているか どうかについては疑問である。
(F)e/a値 とK。
/
2kF
A
トC
u
C
r
系D
e
相の成分はほぼA
1
7
1
C
u1
2
C
r
1
7
で与え られることが(
B)
の結果か らわか っている
e
相の価電子濃度 は、
ので、 このD
1
3×7
1
+1
2+(
-4
.
6
6×1
7
)
)
/
1
0
0
-土坐亘
とい う値にな る。
一方 K,
/
2kFにつ いて、 I
)
e相 で は K。の値 を Ⅹ線粉末 回折 パ ター ンの一 番強度 が強 い
(
0
0
0
0
01)の ピーク (図 Ⅱ-4
の7
番の ピーク)に取 る. この ピークの面 間隔は0
.
2
1
n
m
であるか ら、
K。
-22
T/
0
.
2
1
m
m-2
9
.
9
2
n
l
m1
になる。I
)
e
相は一方 向に周期軸が存在す るため、そのブ リルア ンゾー ンは Ⅰ相に比べて方 向性
があるように思われる。 この意味で K。はフェル ミ面が 〝
最初'
'
にブ リルアンゾー ンに接触す る
ところの値であると解釈す る。フェル ミ半径 kFは 自由電子モデル近似で計算す る。 この合金
の原子密度 は各元素単体にある時の値を成分 によって平均すれば、
(
6
0
.
2
3×7
1
十8
4
.
9
1×1
2
+8
3
.
2
7×1
7
)
/
l
o
o
-6
7
.
1
0
8
4個/
n
Ⅱ1
3
である。 価電子濃度が1
.
4
5
8
であるか ら、単位体積あた りの電子の数 N/
Vは6
7
.
1
0
8
4×1
.
4
5
8≒
個/
n
m3となる 従 って フェル ミ半径 は kF-(
3万2
N/
V)
1
/
3
よ り求 ま り、 K。
/
2kFは以
9
7
.
8
4
4
.
下のような値にな る。
-2
3
2-
AトCu-Cr系合金の準結晶
∼安定 De相の存在 とその近似結 晶∼
K。
/
2kF-土旦弘
表 Ⅱ-6
に今までに報告 されている安定D
e
相の e/a値 とK。
/
2kF
をAトC
u
C
r
系D
e
相の値 と一
-(
C
u
、P
d)
T
X系安定 Ⅰ相の e/a値が1
.
7
5に集 中す るのに対 してAトT
X系安
緒 に示 してある.Al
e
相のそれは広い範囲に分布 しているのがよ くわかる。中で もAトC
u
Cr
系D
e
相の e/a値 は
定D
e
相 に比べて′
トさい値にな っている. K。
/
2kF
について も、Aト(
C
u、P
d)
T
姓系安定 l相 に
他のD
.
0
付近である程度の範囲で広が りが見 られ る。 これ らの結果 はD
e
相が少な くとも、
比べれば、 1
u
皿
e
R
ot
h
e
r
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o
n
e
s
轟政則を満たす電子化合物的な性質が強 くない ことを示 している.
Ⅰ相ほ どH
)
e
相の電子状態が詳 しく調べ
しか し、 この議論 は安定D
e相が存在す る合金系の平衡状態図と、I
られた後 に行 うのが好 ま しいであろ う。
表 Ⅱ-6
D
e
相の組成
e/a
Kp
/
2kF
C
o1
5
A1
7
。
Ni
1
5
1
.
7
5
1
.
0
0
8
.
C
o2
D
Al
T
.
Ni
l
1
.
7
0
1
.
0
1
9
65
C
u1
5
C
02
。
A1
1
.
7
6
1
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0
0
1
A1
65
C
u2
。
C
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5
1
.
8
9
0
.
9
7
8
P
d13臥 116
A171
1
.
5
4
1
.
0
5
0
★A171
C
u1
2
C
r1
7
1
.
4
6
1
.
0
51
§6
.
結論
AトC
u
C
r
系合金にはp
e相が存在 し、約 1
0
0
0
℃付近の狭い温度範囲で安定である。D
e
相の成長
0
角柱であ り、その成分 はA1
71
Cu1
2
Cr1
7
の近 くであ る
形態はきれいなフ ァセ ッ トを もつ正 1
。
Al
C
u
C
r
系I
)
e
相は、現在までに報告 されているどの合金系のI
)
e
相 よりも長い周期を もち、その
.
7
8
m
m-0
.
42×9
n
Ⅲである。また、準周期面内の構造は1
0回対称を有す る原子 クラスター
値は3
l
P
d
h系D
e
相のように多 くのフェイゾン歪を含んでいる。I
)
e
相 は少
がランダムに結合 して、A
な くとも約 9
7
0
℃以下、1
0
3
0
℃以上では安定でな く、約9
7
0
℃以下ではD
e
相に構造がよ く似 た微
e
相)に、1
0
3
0
℃以上では Y相、 2
T相型近似結 晶に相変態する。
結晶状態(
疑似D
-
23
3
-
降旗
順一郎
く
謝辞)
私 に とって "
準結 晶"を研究できた大学 院生活の2
年 間はとて も有意義で楽 しい もので した0
その間、いつ も暖か く私を見守 って下 さった杉 田吉充教授 と、 "
準結 晶'
'
について私 に数多 くの
問題提起を して頂 いた岡部俊夫助教授 と飯 田敏助手 に心か ら感謝致 します。特 に岡部俊夫助教
授 には無知で生意気な私を、研究 テーマの設定か ら実験装置 の扱 い方 まで直接指導 して頂 き、
感謝の念 に絶えません。本 当にあ りが とうございま した。また、本稿を作成す るにあた り、適
切な助言や議論を して頂 いた教養部物理教室 の森克徳教授 に心 よ り感謝致 します。
準結 晶試料作製時に用 いるアーク炉の設計、製作 に携わ った本研究室卒業生の森下康司 さん、
Ⅹ線粉末 回折装置を使わせて頂 いた理学部地球科学科地殻進化学研究室の堀越叡教授 と氏家治
助教授 、示差熱分析 を行 って頂 いたニ ッコー(秩 )の浦勝彦氏 と工学部生物反応工学研究室 の
島崎長一郎教授 に感謝致 します。
私 に と って良 き先輩で あ り、様 々な面で頼 りにな る相談相手 にな って頂 いた研究生 の神津
康平 さんをは じめ、色々な事を教えて くれた結 晶物理学研究室の仲 間 と、 同 じ時間を楽 しく過
ごせた ことを幸せに感 じています。充実 した 日々を本当にあ りが とうございま した。
ー
23
4
-
Al
-Cu-Cr系合金の準結 晶
∼安定 De相 の存在 とその近似結 晶-
く
参考文献〉
第 Ⅰ章.序論 ∼準結晶につ いて-
1
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日本物理学会第 4
7回年会予稿集第3
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49)平賀賢二,日本物理学会誌.
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