小国杉精油およびアロマウォーターの 揮発成分・抗菌活性および ヒトの生理・心理に及ぼす影響 九州大学 大学院 農学研究院 清水 邦義 小国杉精油・アロマウォーター 爽やかな香りと、森林浴のようなリラックス効果 抗菌作用や免疫力アップにも期待 小国杉精油・アロマウォーター 採取時期による香りの 違いは・・・ 香りによるヒトの生理・心理に 及ぼす影響は・・・ ヒトを用いた試験 揮発性成分分析 POMS短縮版 評定尺度法 TIC :total ion chromatogram 1.0E+07 GC-MS 9.0E+06 8.0E+06 7.0E+06 Abundunce 季節ごとにサンプリング 心電図 唾液アミラーゼ濃度 血圧・脈拍 6.0E+06 5.0E+06 4.0E+06 3.0E+06 2.0E+06 1.0E+06 0.0E+00 5 15 25 35 45 Reten on Time (min) MS: Mass Spectrum 55 65 1.季節ごとの精油・アロマウォーター分析 2.ヒトを用いた生理・心理応答に関する試験 1.季節ごとの精油・アロマウォーター分析 【サンプル】 精油 (2月, 3月, 4月, 5月, 6月, 7月, 8月, 9月, 10月, 11月, 12月) アロマウォーター (5月, 6月, 7月, 8月, 9月, 10月, 11月, 12月) 【分析方法① 精油】 アセトンに溶解(5 μl/ml)し、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)に導入 【GC-MS 分析条件 〜精油〜】 GC-MS (Agilent 5975c/7890) カラム HP-5ms : Agilent (30 m×0.25 mm, 膜厚 0.25 µm) 気化室温度 250℃ イオン化電圧 70 eV 昇温条件 60℃(5 min)‐3℃/min‐165℃ - 10℃/min - 300℃(3 min) ガス He スプリット比 スプリットレス 測定モード TIC 1ml/min 1.0E GC-MS 9.0E 8.0E Aroma office ソフト(Ver. 3.0, 西川計測(株)製) により成分の同定を行った。 Abundunce 7.0E 6.0E 5.0E 4.0E 3.0E 2.0E 1.0E 0.0E 【分析方法② アロマウォーター】 SPME用バイアルにNaCl 1 gを測りとり、サンプル3 mlを添加 撹拌後、30分以上静置し、SPMEファイバー(PDMS 100 μm)で30分間捕集 捕集後は、直ちにGC/MSに導入 【SPME GC-MS 分析条件 〜アロマウォーター〜】 GC-MS (Agilent 5975c/7890) カラム HP-5ms : Agilent (30 m×0.25 mm, 膜厚 0.25 µm) 気化室温度 250℃ イオン化電圧 70 eV 昇温条件 80℃(3 min)‐10℃/min‐100℃ - 3℃/min - 200℃-10℃ /min‐250℃(10 min) ガス He スプリット比 10:1 測定モード TIC 1ml/min Aroma office ソフト(Ver. 3.0, 西川計測(株)製) により成分の同定を行った。 SPMEファイバー GC-MS 【結果① 精油】 【結果① 精油】 全ての採取月において、 -pinene Sabinene Limonene Terpinen-4-ol を中心としたモノテルペン類が多く含有さ れていることがわかった(全体の85〜 95%)。 【結果② アロマウォーター】 Z-3-hexenol Terpinen-4-ol Thujone Z-3-hexenol: 秋頃から増加,Thujone: 夏頃から増加,Terpinen-4-ol: 初夏頃から増加 揮発成分の直接分析 〜サーマル・セパレーションプローブ(TSP-GC/MS)〜 前処理はほとんど不要 固体、液体、スラリーなどのサンプルの分析が容易にできる TIC :total ion chromatogra 今回、8/4の精油およびアロマウォーターを 1.0E+07 8.0E+06 7.0E+06 Abundunce GC-MS TSP-GC/MS分析に供した 9.0E+06 (注入口温度:80℃) 6.0E+06 5.0E+06 4.0E+06 3.0E+06 2.0E+06 1.0E+06 0.0E+00 5 15 25 35 45 Reten on Time (min) 55 揮発成分分析 〜サーマル・セパレーションプローブ(TSP-GC/MS)〜 【8/4 精油】 直接導入時と類似のクロマトグラムが 得られた。 【8/4 アロマウォーター】 Terpinen-4-olが大部分を占め、その他 微量成分はほぼ検出されなかった。 ※SPME-GC/MS分析とTSP-GC/MS分析との違い SPME- は、ファイバーに吸着された成分を分析するため、定性的 TSP- は、揮発成分をそのまま分析するため、定量的 小国杉精油・アロマウォーター 抗菌活性試験 Nutrient broth 5 mL 培養 37 ℃, 18時間 菌濃度を105 CFU/mLに調製 E.coli (大腸菌) S.aureus (黄色ブドウ球菌) NA培地に100 μL添加し、 塗り拡げる コロニーの有無を目視で確認 シャーレを裏返し、フタに敷いた濾紙に、 各サンプルを添加 NA培地 培養 37℃, 18時間 濾紙 【抗菌試験結果】 vs. 大腸菌(Escherichia coli):精油・ウォーターとも、コントロールと同様に菌が蔓延 vs. 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus):ウォーターでは菌が蔓延 精油では、菌のコロニーが観察されず(下図)、完全に抑制 Control 8 月精油 1.季節ごとの精油・アロマウォーター分析 2.ヒトを用いた生理・心理応答に関する試験 2. ヒトを用いた生理・心理応答に関する試験 供試精油およびハイドロゾル 熊本県産 小国杉 枝葉 水蒸気蒸留 精油 ハイドロゾル サンプル条件 (精油・ハイドロゾルは8月調製分を使用) ・高濃度精油 : 1000倍希釈 in RO水 ・低濃度精油 : 2500倍希釈 in RO水 同程度の ・ハイドロゾル : 8倍希釈 in RO水 におい強度に調整 ・コントロール : RO水のみ サンプル呈示方法 防音室 サンプルの揮発性成分が含まれた空気 清浄空気 香り呈示 流量計 空瓶 被験者 サンプル(抽出物 or 水入り) 活性炭 香りの有無で生理・心理指標ごとに 差異を比較し、抽出物の香りの効果を評価 実験手順 安静 作業 安静 正常な 脳波を 示すか チェック 【被験者情報】 大学生11名 ●年齢 21.5 ± 1.6歳 ●身長 158.8 ± 5.1 cm ●体重 48.6 ± 5.5 kg •サンプル毎に4日に分け、呈示順をランダム化した(11名 計22回) 測定項目 ● 生理指標 : 心電図 → 交感神経活動の指標 唾液アミラーゼ濃度 → ストレスの指標 血圧・脈拍 → 自律神経活動の指標 6下位尺度:緊張-不安、抑うつ、怒り-敵意、活気、疲労、混乱 ●心理指標 : POMS短縮版 → 主観的な気分状態を評価 評定尺度法 → 香りの強さ・好ましさを評価 ●課題成績 : 正答率 → 課題への取り組み方を評価 結果および考察 – 交感神経活動 (n = 10) 活動・緊張・ストレス時に高まる = 「アクセル」の働き 高濃度精油 水 交感神経活動 低い 高い つまり 高濃度精油による リラックス効果が期待 Paired t – test †:P < 0.1 結果および考察 – 唾液アミラーゼ 有意差なし 結果および考察 – 血圧・脈拍 Paired t-test *:P < 0.05、†:P < 0.1 高濃度精油: 最高血圧、最低血圧、脈拍が低下 他グループ:変化なし 副交感神経が優位 すなわち 高濃度精油のリラックス効果が期待 結果および考察 – POMS 材料 高濃度精油 他グループ 緊張-不安: 低下 変化なし 活気: 低下 変化なし 評価 項目 心理指標でも高濃度精油の リラックス効果が期待 Paired t-test *:P < 0.05、†:P < 0.1 結果および考察 – 香りの印象 匂いの強さ: 同じ強さに感じられる 匂いの好ましさ: ハイドロゾルが好まれる Paired t – test with Bonferroni correction *:P < 0.05、†:P < 0.1 結果および考察 – 課題成績 90.0 85.0 正答率 (%) 80.0 有意差なし 75.0 70.0 高濃度精油: リラックス効果が 期待される上、 課題への取組み方 に悪影響はなし 65.0 60.0 55.0 2 4 6 8 課題経過時間 (分) 10 12 ヒト試験のまとめ 評価 項目 材料 高濃度 精油 交感神経活動 低い 生 理 拡張期血圧 指 標 収縮期血圧 脈拍 心 緊張-不安 理 指 標 活気 低濃度 ハイドロゾル 精油 水 考察 高い 高濃度精油 リラックス 効果 中間 中間 低下 無変化 無変化 無変化 低下 無変化 無変化 無変化 低下 無変化 無変化 無変化 低下 無変化 無変化 無変化 低下 無変化 無変化 高濃度精油 副交感神経 活動亢進 =リラックス 高濃度精油 リラックス 無変化 効果 結論 ある濃度以上のスギ精油吸入によるリラックス効果が期待 まとめ 1. 季節ごとの精油・アロマウォーター分析および精油の抗菌活性 精油: モノテルペン類(-pinene, Sabinene, Limonene, Terpinen-4-ol) が多く含有されている(全体の85〜95%) アロマウォーター: Z-3-hexenol: 秋頃から増加,Thujone: 夏頃から増加, Terpinen-4-ol: 初夏頃から増加 抗菌活性: 精油では、黄色ブドウ球菌を完全に抑制 2. ヒトを用いた生理・心理応答に関する試験 一定以上の濃度で小国スギ枝葉精油を 吸入すると鎮静的な効果が得られる可能性あり
© Copyright 2024 ExpyDoc