太陽ASGグループ~グラント・ソントン加盟事務所

太陽 ASG
エグゼクティブ・ニュース 2006 年 6 月 第 40 号
テーマ:
テーマ:CSR 企業の
企業の社会責任
∼現状と
現状と日本企業が
日本企業が取り組むべき真
むべき真の課題∼
課題∼
以下の要旨は 71 秒でお読みいただけます。
要
旨
企業では CSR 報告書の発行や、CSR 推進室などの設置が相次いでいます。新聞や雑誌でも CSR の特集
をよく目にします。その一方で、企業の現場では CSR の取り組みについてとまどいも広がっています。
CSR とは Corporate Social Responsibility、翻訳すれば企業の社会的責任です。しかし、この CSR は従来か
ら日本で議論されていた社会的責任論とは、どうも、異なる概念です。CSR とはいったい何なのか。その
点が多くの企業で消化されていないようなのです。
ここ数年、CSR に対する関心が高まっていますが、実は、今回起こっている CSR のムーブメントは欧州
発のものであり、その発想は日本や米国で考えられている CSR とはまったくといっていいほど異なってい
ます。それが明確に認識されていないことが混乱の原因となっているようです。
欧州と米国では CSR の具体的内容は相当異なっています。しかし、よりよい社会のために企業として何
ができるか、何をすべきかを追求しているという点では共通しています。企業の社会的役割を認識し、その
役割を果たすことが CSR であるという基本理解は欧州、米国とも一致しているのです。
では、欧州発の CSR とは一体どのようなものなのか。また、日本企業はどのように対応すべきなのか。
それには、「社会」の視点が必要なのではないか。社会的責任というより、社会的役割ではないか。その場
合、日本企業にとって、なにが真の課題になるのでしょうか。
今月は、CSR 問題に取り組むみずほ総研研究開発部眞崎昭彦主任研究員
に、CSR の実情と、日本企業が取り組むべき課題について解説いただき
ます。企業の社会的役割としての CSR 論を通じて、従来とは異なる明快
で実行性に富む新たな CSR 像が見えてきます。
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©太陽 ASG グループ 2006
太陽 ASG エグゼクティブ・
エグゼクティブ・ニュース
第 40 号
2006 年 6 月
みずほ総合研究所株式会社
主任研究員
研究開発部
眞崎 昭彦
CSR 企業の
企業の社会責任
∼現状と
現状と日本企業が
日本企業が取り組むべき真
むべき真の課題∼
課題∼
1.CSR 日本の
日本の現状
まず日本企業の CSR の現状について、実態調査結果をもとに見ていきたい。調査は、みずほ総合研究所の
会員企業に対して昨年行ったもので、大企業から中小企業まで 2,400 社を対象に実施したものである(回答
企業 619 社、有効回答率 25.8%)。
取り組みの進
みの進む CSR
CSR の取り組み状況はどうか。CSR に取り組んでいると回答している企業(CSR の内容は問わない)は規
模が大きいほど高くなっており、大企業(注)では約 6 割が積極的に取り組んでいるが、従業員 10∼50 人
の企業では積極的な取り組みは約 2 割にとどまっている。しかし従業員 100 人以上の中小企業では過半が取
り組みを開始しており、中小企業の中でも比較的規模の大きな企業は取り組みつつある状況が明らかになっ
た。
図表 1 CSR の取り組み状況
50 %
経営の重要課題として
戦略を立案、実行
41.2
40
35.4
37.0
積極的に取り組んでい
る
27.8
取り組みを開始した
31.7
30
27.8
28.0
24.4
20
20.4
17.6
16.7
15.9
12.4
13.7
10
16.7
13.3
12.2
23.8
23.0
19.0
15.0
14.9
13.0
12.9
11.9
9.7
0
自社での取り組みを調
査検討中
7.4
4.6
5.6
4.4
3.9
2.9
22.2
3.0
1.0
ほとんど取り組んでい
ない
0.9
人
~
1,
00
1
人
30
1~
1,0
00
30
0人
~
20
1
10
1
~
20
0人
人
10
0
51
~
10
~
50
人
よくわからない
(注)本稿では便宜上、従業員 1,001 人以上を大企業、301~1,000 人を中堅企業、300 人以下を中小企業とする。
メリットが
メリットが感じられない CSR
CSR のメリット・効果について質問したところ、CSR に取り組み中の企業全体で最も多かったのは「特に
メリット・効果は感じない」の 28.4%である(図表 2)。また「よくわからない」も 16.9%と、3 番目に多
い回答である。それ以外の具体的な効果・メリットの選択肢の中では、「従業員の志気が向上」(21.6%)、
「知名度・ブランド力が向上」(15.8%)が比較的目立つものの、その他は一ケタ台の回答にとどまってい
る。CSR に取り組んでみたものの、具体的なメリット・効果が認識できず困惑しているという様子がうか
がえる。
2
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図表 2
0%
2006 年 6 月
CSR のメリット
10%
20%
30%
40%
50%
28.4%
特にメリット・効果は感じない
21.6%
従業員の志気が向上
16.9%
よくわからない
15.8%
知名度・ブランド力が向上
9.8%
さまざまなトラブルが減少
7.9%
売上が増加
その他
6.8%
いい人材が採用できる
6.3%
資金調達が容易になった
第 40 号
n=366
1.1%
(資料)みずほ総合研究所「企業の社会的責任に関するアンケート調査」
CSR の範囲をどうとらえているか
範囲をどうとらえているか
企業は、CSR をどのようなものと考えているか。CSR に含まれるものとして回答のあったのが、図表 3 で
ある。これを見ると、非常にさまざまな内容が CSR と考えられていることがわかる。CSR とは何かに対す
る明確なイメージが定まっていない様子がうかがえる。
図表 3
CSR とは何
とは何か
%
85.1
より良い商品・サービスを提供
76.3
収益を上げ、税金を納める
65.9
地域社会の発展に寄与
63.0
社会的に有害な商品・サービスを提供しない
61.2
地球環境の保護に貢献
58.2
雇用を創出
55.1
株主に配当
45.1
人権を尊重・保護
36.3
経営理念に忠実
32.6
新たな技術や知識を生み出す
23.1
慈善事業など社会貢献活動を行う
世界各地の貧困や紛争の解決に貢献
6.8
効果がつかみにくいことが
効果がつかみにくいことが課題
がつかみにくいことが課題
一方、CSR の課題として回答企業全体で最も多かったのは「効果がつかみにくい」の 55.7%であり、過半
の企業が CSR 活動について具体的にどのような効果が得られるのかがわからないという認識を持っている
(図表 4)。さらに「実施状況の評価・チェックができない」(25.0%)とあわせると、延べ 80%以上の企
業が、CSR 活動における効果確認や評価方法について悩みを抱えていることがわかる。本来、CSR は即物
的な見返り・リターンを求めて行うものではないが、現実の企業活動では何らかのフィードバックがないと
動けないというのも事実であり、そうしたジレンマがこの回答結果からうかがえる。
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図表 4
0
第 40 号
2006 年 6 月
CSR の課題
10
20
30
40
50
60
%
55.7
効果がつかみにくい
32.1
取り組む人手がいない
29.4
コストがかかる
25.0
実施状況の評価・チェックができない
23.9
従業員の意識が低い
20.2
取引先への徹底は困難
16.0
他社の動向がわからない
14.5
何をしたらいいかわからない
7.9
特に問題は感じない
よくわからない
2.6
その他
2.3
n=619
(資料)みずほ総合研究所「企業の社会的責任に関するアンケート調査」
2.欧州発の
欧州発の CSR
CSR という言葉
という言葉は
言葉は 2002 年に登場
このように、日本企業の多くは CSR とは何かについて具体的イメージをつかめないまま、取り組みを行っ
ているという状況が浮かび上がった。
日本で CSR という言葉が使われ始めたのは、2002 年頃からである。図表 5 は CSR という言葉が新聞記事
で使用された件数の推移であるが、これを見ると、2001 年以前はまったく使われていなかった言葉である
にもかかわらず、2002 年以降、急激に増加していったことがわかる。これだけ短期間にこの言葉が普及し
たのは、従来からあった企業の社会的責任という概念を表現する外来用語として使用されたからと考えられ
る。
実は、2002 年は ISO で CSR の規格化が検討され始めた時期であり、その報道と同時に CSR という言葉が
日本に入ってきたと考えられる。そして、ISO での検討は、EU(欧州連合)での CSR の議論に強い影響を
受けて始まったのである。
図表 5
1000
CSR の記事件数
件
937
900
801
800
700
600
CSR記事件数
うち会社人事記事
500
443
400
300
183
200
179
100
0 0
2000
0
2001
10 2
22
2002
2003
2004
年
2005
(注)「CSR」という言葉が見出し・本文で使用された記事の件数。日経テレコン 21 で日本経済新聞4紙を検索。
4
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第 40 号
2006 年 6 月
EU の CSR は戦略的概念
EU において CSR が公式の議論に登場したのは、2000 年に開かれたリスボン EU サミットである。同サミ
ットの宣言では、持続可能な開発のための欧州戦略を打ち出した。これは、「より多くより良い雇用とより
強い社会的連帯を確保しつつ、持続的な経済発展を達成し得る、世界で最も競争力があり、かつ力強い知識
経済となること(外務省 HP より)」と、あくまで欧州の経済的繁栄をゴールにおいている。この発展戦略
目標を達成するために産業界に協力を呼びかけたのが、CSR である。
EU が CSR の前提として問題にする持続可能性は、環境よりも雇用と社会的連帯がメインテーマであり、社
会を持続させるためには経済的発展が不可欠だという考え方である。
EU と一口に言っても多様な国の集合体であり、最近参加した東欧諸国では経
済の遅れが目立っている。そうした国も含めて EU の求心力を保つためには、
EU 全体での経済発展を続けることが必要という事情がある。また、欧州では
失業問題が非常に深刻な問題になっている。失業は単なる経済問題ではない。
失業による家庭の崩壊や犯罪の多発、移民労働力の大量流入など、欧州の伝統
的な共同体社会の基盤を揺るがす社会問題となっており、EU の行く末に重大
な影響をおよぼすからである。
米国の
米国の CSR はコミュニティへの
コミュニティへの貢献
への貢献が
貢献が中心
米国では企業の社会的責任という考え方は古くから存在した。その内容は欧州とはかなり異なっており、社
会貢献、具体的には地域社会(コミュニティ)への慈善活動、寄付などのイメージが強い。
これは米国社会が、移民時代以来歴史的にコミュニティを中心に発達してきたからである。19 世紀に米国
を旅行したフランス人のトクヴィルは、「アメリカの民主政治」という著書で米国のコミュニティ自治の様
子を克明に記録している。
米国人はコミュニティを大切にする。コーポレートシチズンシップとは、企業もコミュニティの一員として
貢献せよ、という意味である。外国企業といえどもコミュニティに貢献する姿勢を示さないと、米国では厳
しく批判される。80 年代に日米間で貿易摩擦が激化した際、米国に進出した日本企業は地域社会を無視し
ていると批判された。このため多くの企業が慈善活動や寄付などを行うようになった。これがバブル時代に
フィランソロフィー(社会貢献)ブームが起こった背景である。
3.日本は
日本は CSR で何をすべきか
日本の
日本の CSR に欠けているのは「
けているのは「社会」
社会」の視点
欧州と米国では CSR の具体的内容は相当異なっている。しかし、それは社会のあり様が異なるからである。
よりよい社会のために企業として何ができるか、何をすべきかを追求しているという点は共通している。企
業の社会的役割を認識し、その役割を果たすことが CSR であるという基本理解は欧州、米国とも一致して
いる。
一方、日本では不祥事対応、環境問題が CSR の中心的トピックスとなっている。不祥事対策は当然だし、
環境問題が重要であることも間違いない。しかし、日本の CSR に欠けているのは「社会」という視点では
ないだろうか。日本社会、さらに言えば日本という国が持続可能であるために企業がしなければならないこ
と、してはならないことは何かという発想が必要だ。
「社会」
社会」の視点で
視点で見た CSR の本命
現在の日本社会にとって最大の脅威は、少子化問題であろう。わが国の 2005 年の
合計特殊出生率(女性が産む子どもの平均数)は 1.25 と、過去最低だった 2004 年
の 1.29 を下回ってしまい、減少に歯止めがかかっていない状況だ。長期的に人口
が維持できるには出生率が 2.07 以上であることが必要といわれているが、その数
字に近づくどころかむしろ少子化が加速している。このままではあと 100 年で日本
の人口が半分になってしまうらしい。
このため政府も、少子化対策を国を挙げて取り組むべき最大の問題と位置づけている。
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第 40 号
2006 年 6 月
CSR が社会の持続可能な発展という目的を達成するための手段であるならば、日本企業は少子化問題を
CSR の本命として真正面から取り組むことが必要だ。
企業ができる
企業ができる少子化対策
ができる少子化対策
少子化の問題に関しては、日本企業、特に就業者の大半を占める中堅・中小企業の現状ははなはだ心許ない
のが現状だ。日本は世界でも突出した長時間労働の国である。少子化の歯止めには、仕事と育児の両立を実
現するための働き方改革が必要だが、現状では相当ハードルが高い状況だ。
従業員面の取り組みに関しては、採用・昇進での機会均等については多くの企業が取り組んでいるが、育
児・介護支援や柔軟な勤務制度など、多様な働き方を支援する取り組みに関しては、総じて低く、中小企業
では 1∼2 割にとどまっている(図表 6)。
図表 6
従業員面の
従業員面の取り組み状況
90 %
84.3
82.4
80
77.0
70
62.8
60
59.0
55.6
52.9
50
68.3
67.3
65.6
57.4
52.8
44.2
40
40.7
36.1
37.6
30
29.4
20
18.6
15.7
10.8
10
9.8
22.2
20.0
12.2
21.0
19.0
15.0
従業員の育児・介護支
援について法令以上の
取り組み
柔軟な勤務時間・勤務
制度の導入
25.0
18.6
17.7
11.5
従業員の採用・昇進等
で性別・年齢・学歴等に
よらない機会均等の取
り組み
多様な研修・研修による
従業員の能力向上の取
り組み
22.8
15.8
オフィス環境の改善
~
人
10
01
30
1~
10
00
人
30
0人
20
1~
20
0人
10
1~
人
10
0
51
~
10
~
50
人
0
年次有給休暇の計画的
取得制度など取得率向
上の取り組み
(資料)みずほ総合研究所「企業の社会的責任に関するアンケート調査」
仕事と
仕事と生活の
生活の調和の
調和の CSR
日本企業は従業員重視といわれている。しかし CSR の取り組みとしては採用・昇進などの人事施策面に偏
っており、「ワーク・ライフ・バランス」(仕事と生活の調和)という面での配慮は不十分といわざるをえ
ないのではないか。
例えば「有給休暇の取得率向上」については大企業の約 6 割が取り組んでいる。しかし実際の有給休暇の取
得率はそれほど高くなく、大企業でも 4 割の企業は取得率 50%未満にとどまっている。取得率向上という
スローガンは存在しても、実際には有給休暇はなかなか取れていないのが現実だ。
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2006 年 6 月
有給休暇取得率向上の
有給休暇取得率向上の CSR
図表 7
1,001人~ 1.4 11.1
9.7
12.5
年次有給休暇取得率の
年次有給休暇取得率の現状
6.9
9.7
4.2 6.9
11.1
10%未満
26.4
10~20%未満
7.3
12.7
301~1,000人
18.2
14.5
14.5
7.3 1.8
5.5
20~30%未満
18.2
30~40%未満
201~300人 2.0 8.0
10.0
10.0
4.0
10.0
14.0
14.0
2.0
26.0
40~50%未満
50~60%未満
101~200人 4.4 6.7 4.4
15.6
15.6
11.1
17.8
6.7
11.1
6.7
60~70%未満
9.1
51~100人
9.1
7.3
10.9
12.7
12.7
9.1
10.9
70~80%未満
18.2
80%以上
10~50人 2.3 9.3
0%
23.3
10%
20%
16.3
9.3
30%
40%
50%
4.7 7.0
60%
18.6
70%
80%
9.3
90%
無回答
100%
(資料)みずほ総合研究所「企業の社会的責任に関するアンケート調査」
そもそも「有給休暇取得率」を把握していない企業は大企業でも約 3 割、中堅・中小企業では 4∼5 割に上
る。これはすべての企業規模で環境面の「総エネルギー消費量」を把握していない企業の比率を上回ってい
る(図表 8)。企業全体の総エネルギー消費量を把握するのはそれなりに大変だと思うが、実際にはそれよ
りも有給休暇取得率を把握していない企業の方が多い、というのが実情である。
図表 8
年次有給休暇取得率と
年次有給休暇取得率と総エネルギー消費量
エネルギー消費量を
消費量を把握していない
把握していない比率
していない比率
28.7
26.9
1001人~
301~1000人
年次有給休暇取得率
総エネルギー消費量
41.6
25.7
201~300人
43.0
21.0
101~200人
45.6
32.2
51~100人
46.9
23.9
10~50人
39.2
0
10
20
30
40
48.0
50
60
%
70
(資料)みずほ総合研究所「企業の社会的責任に関するアンケート調査」
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第 40 号
2006 年 6 月
働く環境づくり
環境づくり問題
づくり問題の
問題の CSR
柔軟な働き方ができるかどうかは、企業の競争力という点でも今後大きな問題になることが予想される。
従業員が働く環境づくりは、企業が知的付加価値を持続的に生み出せるかどうかを左右する重要なポイント
である。
すでに企業にとって、知識に代表される無形資産が最大の価値の源泉となりつつある。知識や能力は人間の
頭の中に蓄積されるもので、どのように活用していくかは最終的には個人の自由意思次第である。
企業といえども社員の頭の中まで「管理」することは不可能であり、企業ができることは、いかに社員に知
識や能力を自主的に発揮・蓄積してもらうかを「支援」するしかない。岩井克人東京大学教授は、そのため
の唯一の方法は「昇進制度や退職制度を工夫したり、自由な勤務時間や仕事の自主管理などのような知的作
業に適した環境を整え」ることだと指摘している(「これから会社はどうなるのか」、平凡社、2003 年)。
「勤務時間をフレキシブルにするとか、オフィスを居心地の良いものにするとかいった、いわゆるソフトな
インセンティブが重要になって」来るというのである。
筆者はこれを“もう一つの環境問題”と呼んでいる。人間の知恵や創造性は、周囲の環境に大きな影響を受
ける。柔軟な働き方や職場環境の整備は、「人間系の環境保護」といえる。
日本企業は自然環境の問題同様、いやそれ以上に、人間系の環境問題にも取り組む必要があるといえるので
はないだろうか。
以上
執筆者紹介:
執筆者紹介 :
眞崎 昭彦(
昭彦 ( まさき あきひこ)
あきひこ )
みずほ総合研究所株式会社
みずほ 総合研究所株式会社 研究開発部
1983 年
同
年
1996 年
2002 年
主任研究員
東京大学経済学部卒業
富士銀行入行
名古屋営業部、総合企画部等を経て
富士総合研究所 経営コンサルティング・グループ
会社分割に伴いみずほ総合研究所に移行、現在に至る
高崎経済大学大学院 経済・経営研究科非常勤講師
所属学会:組織学会、日本テレワーク学会
著
書:「サバイバル経営術」(日経 BP 社、共著)
「IP ネットワーク社会と都市型産業」
(日本経済評論社、共著) その他寄稿等多数
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