自己決定の大切さ

共創・共育・共感
尾鷲市教育長だより
2017.3.3.(金)
第216号
自己決定の大切さ
3月1日(水)尾鷲高等学校の全日制と定時制の卒業式に出席いたしまし
た。卒業生のみなさんは尾鷲高校を選択し、その学舎を卒業することに誇り
をもっていました。
かつて、卒業式のあと次のような話をしてくれた保護者Aさんがいました。
「毎日通うのは本人なので、最終的に、子ども自身が行きたいという尾鷲
高校を選びました。希望の進路も実現でき、今日の卒業式を迎えることがで
きて本当によかっったです」と。
Aさんには、こんな経験があったそうです。
上のお兄ちゃんが高校を受験するときは、○○高校に行ったほうが進学に
有利だからとがんばらせ、親が勧める高校に進学させたそうです。ところが
進学校ですので、成績も優秀な子ばかりで委縮してしまい、だんだんと元気
を失 っ て しまって 、学校で何か嫌なことがあるたびに、「他 の学校に行 けばも
っと楽しく過ごせたのに…」と訴えるようになり、勉強にも自信が持てない
まま、結局大学受験に失敗してしまいました。
Aさんはこうした苦い経験から、今度は浪人生活を余儀なくされたお兄ちゃ
ん本人の希望に任せることにしました。浪人生活で、お兄ちゃんは自分なり
の方向性を見つけ、自分で選んだ大学に合格することができました。
大学生になって、元気を取り戻したお兄ちゃんから、ある日、こう言われ
たそ う で す。「浪人 して迷 惑をかけて しまったけ れど、何がしたいのかもわか
らないまま大学に入るよりも、一浪してよかったと思っている」。
そ ん な体 験から 、 下の子の時は、「本人に決めさせよう」と 心に誓って 関わ
った そ う です。「子 どもの ためによか れと思って 、親は自分 の意見を押し つけ
てしまいがちですが、親に行かされた学校なのか、自分が選んで行った学校
なのかでは、入ってからの気持ちがまったく違うのだと思いました」。
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Aさんのこの言葉から、子どもが自ら選んで決めることは、その後の満足度
や忍耐力にも大きく影響を与えるものだなと再認識しました。
し か し 、進路 を 決定する 時になって急に 、「自分で 決め なさい 」と言われて
も、どうしていいかわからない子、なんだかつき離されたような気持ちにな
る子 も い るでしょ う。現職の頃、教え子が大学受験の相談に来ると 、「両親に
『お前の好きにしろ』って言われても、正直どうしていいかわからない。親
も別に興味ないみたいだし…」と半ば投げやり的に、寂しそうに話す生徒も
いました。
こ う した ことを 考 えると 、「自分で考え 、自分 で決める」 といったこ とを日
頃から経験させていくことがとても大事だと思います。例えば、何か準備を
する時、「こうして、ああして」と、手や口を出す前に「次はどうする?」「何
時までに終わらせる?」などと聞きながら考える時間をとることも一つです。
そんなことをしている暇はないと思われる方もいるかもしれませんが、手
間暇かけて多少の失敗は受けとめるぐらいの度量も必要です。そうでなくて
は、指示待ちの子に育ち、なかなか「自分で決める力」が育ちません。
人間はもともと「自分で決めたい」という欲求を持っています。とくに子
ど も は そ の 欲 求 が 顕 著 で す 。「 自 分 で 決 め た こ と 」 に は 、「 人 か ら 言 わ れ た こ
と 」 よ り も ず っ と 自 発 的 に 取 り 組 め ま す 。「 今 日 は ど う す る の ? 」「 何 か ら 始
める?」と聞き出すことにより、場面場面で、自分で考えて決める機会を増
やしてあげてほしいと思います。
と こ ろで 、有名 な 心理学者のアドラーも、「自 己決定の大 切さ」 をくり返し
述べています。
『前回失敗したからといって、また今回も失敗するとは限らない。どんな
行動や方法を取るかは、その都度自分の意思で決定するものなのだ。だから、
幸せになりたいのに幸せになれていないのであれば、選びとる行動や方法を、
「幸せになるように」変えればいい。誰かがこうしたからする、誰かに言わ
れたからするのではなく、自分で決める。まわりの言葉や情報に振り回され
ない大人になるためには、子どもの頃から「自分で決められる人になる」こ
とが大切なのだ』。
『超訳こども
アドラーの言葉』著者:齋藤孝
KADOKAWAから
自己決定できる子どもは、大きな課題にも立ち向かうことができる自信と
勇気が育ちます。私たち大人にとって大切なことは、子どもの自己決定の場
面を増やし、子どもを励まし、勇気づけることではないでしょうか。
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