文字式の計算順序に関する指導:「かけ算記号省略優先」 規則に焦点を

SURE: Shizuoka University REpository
http://ir.lib.shizuoka.ac.jp/
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文字式の計算順序に関する指導 : 「かけ算記号省略優先
」規則に焦点を当てて
熊倉, 啓之
静岡大学教育実践総合センター紀要. 25, p. 33-42
2016-03-31
http://doi.org/10.14945/00009429
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静 岡大学教育学部附属教育実践総合 セ ン ター紀要
No25 p 33∼ 42(2016)
論文〉
く
文字式の計算順序 に関する指導
― 「かけ算記号省略優先」規則に焦点を当てて 一
熊倉
啓之
'
Teaching of Calculation Order in the Formula
Focus on the Rule of PriOrity by Omission of
Hin崎はk
‖uitiplication Symbols
KUMAKURA
Abtrrct
The purpnse
ofthis pap€r is to investigate teachitrg the rule of 'Idority by omission of multiplication syobols" @OMS rule)
in the Past, plca€rrt and in the foreign couatries, ed to cousidfi the m€aning ofusiry POMS rulc, and to get Eomc suggestions
about reaohing of cdqrlation order in the fonnula" Firs! it was clearcd that there are 2 rules except 4 rules in the fapanese
textbook and the students don't uuderstand suffici€otly about POMS rule. Second, it was cleared that POMS rule is used fron
Meiii era in
Japan, but
it iEl't used iD some coutraies. Finally, the author summarized usefulness ofusing pOMS rule and got
t[e formula as follows;
3 suggestions about teaching ofcalculation order iu
l)
2)
3)
To teach POMS rule exactly,
To explain the meaning offormula io words,
To confi n other nrles through concrete example.
+-7-
lt
:
A+il, F}IEF, ,DlrIEEifE
1.目 日の所在と研究の 目的
の規則 を適 用す る ことの意義は どこにあるのか .こ
中学校第 2学 年で は,例 えば,12ab■ 3bの よ うな単
項式同士の除法の計算の指導が行われ る
ここで
れ らの疑間 について調査・ 検討す る ことは大きな価
値があると考える
,
この 式 をか け算記号 を省略せず に表す と,次 のよ う
そ こで ,本 研究 では,「 か け算記号省略優先」規
に3× bの 部分は,カ ッコを付ける必要がある
則 の扱 い を含 めた文字式の 計算順序の指導 について
12ab■ 3b=(12× a× b)■ 0× b)
,
現在および過去 ,海 外 にお ける実態 を調査 した上で
,
=12×
a× b÷ (3× b)
この規則 を使用す ることの意義 を考察 し,文 字式 の
つ ま り,こ の計算 を実行す るには 「か け算記号 ×
計算順序に関する指導 へ の示唆 を得 る ことを 目的 と
を省 略 した部 分 については,優 先 して計算 を行 う」
する
.
とい う規則 (以 下 「か け算記号省略優先」 規則 と呼
なお ,「 か け算記号省略優先」規則 の適用 の是非
ぶ )を 適 用 して ,「 3× b」 の部分 を先に計 算す る必
について ,数 学的 には正 解 があるわ けではな い.規
要がある,と い うことである
則は約束事であ り,矛 盾が生 じない限 り,是 非 は決
しか し, この規貝1は ,い ずれの現行の教科書にも
め られな い ものであるか らである
記述されていないため,い わば,暗 黙の規則として
したが って ,本
論文は,あ くまで も教育 的な観 点か ら,考 察 を進め
使用されて いる その影響もあって,単 項式の除法
るものである
の計算は正 しくできる一方で,式 の意味を必ずしも
2.研 究の方法
正 しく把握 していない生徒が少な くないとい う実態
が報告されている
以下の手順に したがって,研 究を進める
(1)式 の計算順序に関する現行 の指導について ,小 学
(熊 倉,20∝ )
では,な ぜ この規則は教科書に記述されていない
のか
過去の指導ではその扱いはどうであったのか
校・ 中学校・ 高等学校の教科書
び先行研究の
分析を通 して,そ の実態を明らかにする。
'及
c)特 に「かけ算記号省略優先」規則に関わって,過
,
また海外での扱 いは どうであるのか そもそも,こ
*静 岡大学学術院教育学領域
33
熊倉啓之
去の 日本 の中学校 ,高 等学校 の,お よび海外の教
のそれぞれについて,乗 除混合 .I算 を扱って いるが
その扱 い方 は教科書 によってまちまちであ り, しか も
部分的である 実際,小 数 の乗除混合計算 を扱 って い
,
科書 )を 分析す る
(3)(1),(2)の 分析結果 を踏まえて ,「 かけ算記号省
るのは 2社 のみであ り,小 数 と分数 の混 じつた乗除混
合計算を扱 つているのは 3社 のみである 例え ば,次
略優先」規則 について考察する
14)(3)の 考察結果か ら,文 字式の計算順序に関する
のような計算 問題が扱われて いる
指導へ の示唆を得る
3.式 の計算順序 に関する指導と子どもの実態
(1)小 学校での指導
小学校での式 の計算順序 に関する内容 については
各学年で次のような指導が行われて いる
表
:
ア
2.5x15■ 7.5
イ
:・ :X:
(東
ウ 1_6■ 025×
,
式の計算順序に関する内容
〈
啓林館・ 6年 上 ,39)
京書籍・ 6年 上 pp)
: (学
校図書・ 6年 上 p62)
質
危
[igI号 彙 :Л L握冦
橿
[負 渠
菅
可
畠
董
轟
´
`
75俯
に
つ
い
る
て
内
容
「
県
19意 [會 馨
塀
]祇 署
は
曇
,霙 簡
6「
( )が 付 いた式
,
表 2 式の計算順序 に関する内容
分配法則 の考え
式の計算IIE序 の規則
(平 方根 の乗除混合計
1学 年で は,H-3■ 4の ような 3つ の整数の計算を
扱 うが ,こ の場合は,左 か ら順に計算す ることを指導
① l学 年の指導
1学 年では,正 負の数 の四則混合計算を扱 う中で
各教科書で ,計 算順序 に関する次 の 3つ の規則 を扱 っ
する
,
2学 年では,(32+7)+3=32+(7+3)な どのような加
法 の結合法則を扱 い,加 える順序 を変えてもよいこと
ている ただ し,1社 のみは規則市に触れて いな い
を指導する
3学 年 では,2学 年 と同様な内容を乗法について扱
規則 ■
に計算す る
う
4学年では,整 数 の四則混合計算を扱 う中で ,計 算
規 則 il 加 減 と乗 除が 混 じって い る場 合 は ,乗
順序 に関する次の 3つ の規員」を指導する
除 を先に計算 す る
規則 市
規則
か っ こが あ る場合 は ,か っ この 中 を先
i
規則 ■
ふつ うは,左 か ら順に計算する
( )が
ある ときは,(
)の
る
中 を先
小学校 4学 年 の規則 と比較す ると, 1に 代わって lt7
が加わつて いる 規則 iが な いのは,中 学校段階では
に計算す る
規則 血
累乗 が あ る場 合 は ,累 乗 を先 に 計 算 す
+,一 ,× ,■ が混 じって いるときは
,
X,■ を先に計算する
定着 しているので改めて記述す る必要がな い と判断 し
たためと考 えられる また規則 市が加わつているのは
累乗 につ いて中学校で新た に学習する ことによ り必要
,
特 に,次 の分配 法則 が成 り立 つ ことを確 認す る指 導
の 中で ,左 辺で は ( )の 中 を先 に計算す る ことを
また右 辺 では乗法 を先 に計算す る ことを強調す る こ と
性が生 じたため と考えられる
また,文 字式で表現する ときの約束事項 として,次
がで きる
の 4点 を扱 う
.
,
.
(0+口 )× △=0× △+□ ×△
5,6学 年 で は ,小 数 ,分 数 につ いて ,そ れ ぞれ 交
換・ 結 合・ 分配 法則 が 成 り立 つ ことを扱 う 特 に,分
配 法則 を扱 う中で ,整 数 の場合 と同様 に,規 則 il,m
・か け算記号 ×は省略できる
・ 数 と文字の積は,数 を先に書 く
。同 じ文字 の積は,累 乗 の指数で表す
・ わ り算記号 ÷は分数 の形で表せ る
この約束 を理解 し定着 させる問題の中 に,式 の計算
を振 り返 る指導 が可能 で ある
また ,小 数 ,分 数 ,お よび小数 と分数 の混 じつた式
lle序
34
に関わって ,次 のよ うな問題がある
文字式の計算順序に関す る指導
7
6xa+b+3=6a+!
イχ
ッ=等
2■
(啓 林館・1年
3
(数
2√ =“ x√ )÷ 。xJう =3√
キ 6√ ■
p53)
(学 校図書・ 3年 p Sl)
ここで も規則宙を使 用 しているが ,2学 年 と同様 に
・
版
研
出
1年 ,5め
,
そのことについて教科書 に一切の記述はな い
アの問題解決 を通 して規則 ■を,イ の 問題解決 を通
して規則 iを 確認す ることができる
一方で,文 字式の計算の場合は,カ ッコがあって も
(3高 等学校での指導
高等学校では,式 の計算手順に関する指導は直接行
われていない。そ こで,「 かけ算記号省略優先」規則
(規 則宙)に 関わる式の除法の指導において,ど のよ
うに式を表現しているかについて,現 行の教科書を調
,
カッコの中が これ以 上計算できな いために,ウ のよ う
に分配法則を使って式を変形することが多 い
ウ
2X(x+1)=2x+2
査した
そのため,文 字式の計算においては,規 則 1を 意識
数学 Iの 「い ろいろな 式」 の 中で ,整 式 の 除法 を
する場面はあま りないといえる
扱 っているが ,÷ 記号を用 いた式表現は,次 のよ うに
一部 の教科書 に見 られるにとどまる
上記 の規則 とは別に,次 の問題 も,分 数の形 の式の
計算順序を理解する上で重要である
∠
工二
=け ガ
書■年
,0
・3雌 図
昔
オ
多
ァ Ox2_5x2+llx_1)÷ ←-3)
(啓 林館・ 数 ■308,p51)
イ (4x3+3x-1)÷ OX+1)
=6■ (5× x)(日 本文教出版・ 1年 pSの
い
い
は
を
序
,次 の
規
則
用
て
る
と
:2飛 2馨「
見
警
考
警
:規 則 v
:
分数 は ,分 子 ,分 母 の部分 を先に計 算
一方で,分 数式 の除法では,多 くの教科書が次のよ
分子や分母 に加減乗除を含むタイプの式は,数 のみ
の式ではほとん ど登 場 しないため,生 徒は初めて出会
醐 出版・ 数 B呻
つ
・ 昌
考∵チ
多 くの教科書が ,■ 記号を,整 式 の除法で用 いずに
工
う式と言ってよい それだけに,分 数 の形をした文字
式の計算順序を理解する上で重要な 内容である しか
分数式の除法で用いているのは,整 式 の範囲で の除法
し,現 行 の教科書では,工 のタイプは 3社 のみ,オ の
と有理式 の範囲で の除法を区別 して いるのか もしれな
い
タイプは 2社 のみ しか扱って いない しか も,扱 って
い る教科書 には,規 則 vに 関わる記述は一切ない
また,除 数が多項式の積の形になって いるオのよう
な式は,規則宙を使用しているが,こ のような式表現
2,3学 年の指導
2学 年では,単 項式の乗除混合計算を扱う中で,小
②
は一切見 られない
学校で学習した規則 iに ついて振 り返る指導が可能で
ある
6a'
t?axb
(大
ォ (x,+x2+x+1)÷ (X+1)0-1)
141 計算順序についての子 どもの理解の実態
次 に,式 の計算順序について ,子 どもが どの程度理
日本図書・ 2年 p19)
5
解 しているかの実態 に関する先行研究 を分析 した
また ,12ab■ 4bの よ うな単項式の除法 を扱 う際に
1で 述 べたように,次 の「か け算記号省略優先」規則
,
l:″
例えば,安 藤 (1977)は ,中 学校 1年 生を対象に
小学校の四則混合の計算問題の理解 を調査 して ,ア
イの ような誤答が顕著に見 られることを指摘 した
,
を使用 している
品
多 くの教科書で は,「 整式 Aを 整式 Bで 割 る」 と
い う日本語 の表現 と筆算形式 の表現 ,お よび A=BQ
+Rの 乗法の形に書き直 した表現 をしている
する
)t
(東 京書籍・ 数 Ⅱ303,p24)
ウ (3x3_x2+5)÷ (x2+2x-1)
(実 教出版・ 数 ■306,p18)
,
1
_
荘ユ
』
露轟
1孫 薯
悪誓
環暮
ご
1_________11?:I盆 :i型 :ifill,1________― ―
‐
―
―
│‐
ア
:― :+:=:―
¥=:-1=:
│
しか し,こ の規則宙に関わる記述がある教科書 は
社 もない 。
1
ィ
:+:X:=¥X:=:X:=:
「鼻
こ
る
[if曹 [糠 t萌
::l昂 †
嘉薄
li:理
垢
`
賛瑾
源
基
じ
雪
ξ 最
書
象
花
島
:曇 静
専
曇
雷
る
3学 年では,平 方根 の計算を扱 うが,す べて文字式
の計算 の場合 と同様である.ま た,一 部 の教科書では
,
ttξ :`
例えば次 のキ のよ うな平方根 の除法 の計算を扱 つてい
る
“
;│さ
i、
熊倉啓之
いえる 高等学校 では,特 に規則 i∼ 市を確認 した り
規則 v,Ч を意識させた りする指導場面はな い
梶 (2003)は ,小 学校 6学 年 を対象に同様な関査 を
実施 し,次 の ウ,工 のような誤答が顕著に見 られる こ
,
の 先行研究から,特 に繰則 i,正 の子どもの理解
が十分でないことが指摘され,そ の要因として,「 結
合法則の誤用」 「計算のしやすさという心理的要因J
を挙げている。また,規 則 v,宙 に関わつて,除 法や
分数の形の式め意味の理解が十分でないという実態が
とを指摘 した
ウ
HO-7+3=HO-10=lllll
ェ
νЮ+5× 2=2Ю ■ 10=24
これ らの誤 りは,後 ろの 2項 を先 に計算す る ことに
よ る もので ,安 藤 の調査結果 と同様 な もので ある 梶
指摘された
は ,誤 答 の要 因 と して,加 法 のみ ある いは乗法 の み の
式 に適 用 され る結合法則 を,ウ ,工 のよ うな混合計算
.
4.過去の教科書の分析
の 場合 に も勝 手 に適 用 して しまちて い る と分 析 して い
ここでは,特 に規則宙,す なわち 「かけ算記号省略
優先J規 則 に関わつて,単 項式や多項式 の除法の問題
る.
小原 (2005)は ,四 則混 合式 の 計算順 序 に関す る理
解 の状 態 を分析す るため に,小 学校 4∼ 6学 年 を対 象
に調査 を行 つた
間
1
について,中 学校 ,高 等学校用 の過去 の教科書 を分析
した:
例 えば,次 の よ うな調査 問題で ある
)戦 前の教科書
・
“明治 17年 の教科書 (成 美堂 代数 3千 題上,尾 関
正求撰)の 「除法第 1例 (1)」 に,単 項式の除法 に関す
る次の問題 と解答 が掲載 されていた
次 の式 は どんな順番 で計算すれ ばいいので
しょ うか。 Oの 中に番 号 を付 けて くだ さい。
2×
8+5 3+6× 4 5× 8-2 8-3×
2
00 00 00 00
8■ 2+2
ア 6●ι
4+6■ 3 4■ 4-1 6-4■ 2
`■
2α
b=1盛E=3σ
2α う
ここでは,規 則宙が使用されて いる
oo 00 00 00
しか し,特 に
規則 Чに関わる記述はなかった
また,昭 和 18年 の検定教科書 (中 等学校教科書株
式会社 `中 学校第 一類)の 1年 「3式 の計算 §1単 項式
の乗除」 には,次 のように,分 数式 の約分や ,分 数式
同士の除法は掲載 されているが ,十 単項式の問題は見
.
この問題の結果について,い ずれの問題も正答率は
7割 以上で高いといえる一方で14学 年よりも 5学 年
の方が正答率が低く,必 ず しも学年進行に伴つて理解
が向上していないことを指摘 した
熊倉 (2000は ,中 学生を対象に実施 した調査結果
において,次 の誤答が目立つことから,規 則 vお よび
宙に関わつて,式 の意味を十分に理解できていない生
〃
ゥ fx3_5x2=2x+3)■ o一 の (258)
ェ lx3_3x2+x+2)■ cx2_x_2) (p59)
いずれにせよ,規 則宙を使った問題は掲載されてい
〔
中 1・ 21%, 中 2・ 28%, 中 3・ 7%〕
x
〔
中 1・ 45%, 中 2・ 49%, 中 3・ 39%〕
さ らに,過 去 の教育課程実施状況調査 の次 の正答率
(長 崎他 ,211113)か らは,特 に規lll iの 理解が十分で
なかつた
{2}戦 後の中学校・高等学校教科書
昭和 26年 の検定教科書 (大 日本図書 。日常の数学)
の 2年 下 「S式 とそのやくめ 1」 には,例 えば次のよ
うな単項式の除法の問題と解答が掲載されて いた
な い ことを指摘する ことができる。
中 1・ 525%〕 (2002)
キ a■ bXc 〔
ク 24■ 6× 2
687%〕 (1959)
中 2・ 473%〕
ケ (-10÷ (+0× (-3) 〔
Jヽ
〔
"
4多 項式のわり算」には,次
また,3年 「3多 項式§
のような問題が掲載されていた
オ X ツ =■ ―ノ■3
yT3x=y=3×
――÷
α
x2ッ
徒が少なくないことを指摘した
力
次 の式 を簡単 にせ よ.
堕売
イ
嚇
当た らなか つた
6・
.
o299)
(1961)
ァ 助 ザ → あ牲
以 上の分析結果か ら,式 の計算順序 に関わ る指導 と
子 どもの理解 の実態 について,次 のよ うにまとめる こ
三瀬:二
=誓 XttX← ″
また,昭 和 22年 の教科書 (中 等学校教科書株式会
・
社 数学静析編 I)に も,同様に次のような問題が掲
とができる
.
1)小 学校 では,第 4学 年で ,規 則 i∼ ■をまとめ
て指導す る。中学校では,正 負 の数 の指導の中で新た
に規則 市を指導 し,さ らに,文 字式および平方根の指
導 の中で,規 則 vお よび宙を説明な しに使用す る 特
に,規 則 V,宙 は ×や ÷記号省略 に伴 う固有 の規則 と
載 されていた
イ 3ab2c■
.
12a2b3。
2
(p45)
ウ c2x2+7x+9)÷ ←+2) ●45)
しかし,い ずれの場合も,規 則宙に関わる記述はな
か った .
36
文字式の計算順序に関する指導
その後は,上 EnLの ような単項式や多項式の除法に関
する問題が,中 学校や高等学校の教科書のどこかに掲
載されていて,現 在に至っている
697.a)o・
:;
B)÷・
5`
6)÷ :島
→
"::: →&:等 : →け争
:
5.海外の教科書の分析
図
ここでは, 4と 同様に,規 lll宙 に関わつて,単 項式
や多項式の除法の問題について,海 外の教科書を分析
した.分 析した教科書は,ヨ ーロッパ,ア ジア,ア メ
リカの各地域からいくつか選んだ 具体的には,表 3
の通 りである
て いる 乗法の問題では,乗 数は B)の ように,2つ 以
上の積の形の単項式 (5x〉 があるが ,除 法 の問題では
除数は 1文 字 の単項式あるいは分 数 の形の式の いずれ
,
ドイツ
.
Cambrldge
9c2003
蘭
Interact
ンド
② フィンラン ドの場合
中学校の教科書では,単 元 「多項式の除法」 におい
て,図 2の ように,例 では除法の計算が分数の形で表
現されている (Pli9 ,244)
Cambridge
gherl,22007
Marhematik 8
Cornelsen
Schuljabr I 994
14ATEMATIKKA
フィ ンラ
かであ り,規 則●を使用しな い もの となっていること
がわかる
SNIP Intcract
SMP
ロ シアの問題
EIシ アでは,わ り算記号 として ■ではな く :を 用い
表 3 分析した海外の教科書
イギリス
:
縁 4_2'3+4χ 2
Otal・ a
Pi19 211118
加
Lt100N LYHT
MATEMAmKKA
2
sallcl剛 a pro
SICMA1 2014
ロシ ア
アメ リカ
中国
韓園
代 数学
普通 教 育 学
力
交7 2003
育省
´ knt10n_
ALCEBRA N
図 2 フィンラン ドの例
Wesicy
“
1978
代数
tlシ ア連邦教
publiding
第 1冊 (下 )
1993
中学校数学
一方 ,練 習問題 の 中には,図 3の ようにカ ッコ を用
いた表現が見 られた (Pi19 p γ 7)
人民教育出版
社中学数学室
8-1
141.Laske.
替引彎企
2001
al(2x4+4r-6r):← 力′)
り (204'″ -344´ ):(4● 3が 》
0(5″メ ‐10ば り :く _5“ 2の
PAN
台湾
PACIFIC
PtlBLICATIO
数学 中学校 2年
1989
NS LTD
図 3 フィンラ ン ドの 問題
Curriculum
シ ン ガ
ポール
なお ,わ り算記号は tlシ アと同様に :を 用いている
練習問題の a),c)は ,マ イナス│●L号 が あるので
カ ッコ を用 いる必要があるが ,b)は ,規 則●を用 い
Development
中学数学 2A1992
Institute
.
of
,
Singapore
ればカ ッコは不要 であるにもか かわ らず,カ ッコを用
いている
分析の結果,次 の4つ の扱 い方 に分類できた
(11 規則Иを使用した式表現は一切ない
式の除法の計算の仕方を説明する本文や例,練 習間
題の中に,規 則Ⅵを使用した式表現が一切見当たらな
い教科書は,以 下の通 りである
① ロシアの場合
式の乗法・ 除法の単元における練習問題には,図 1
のように乗除の混在 した問題があるが,こ の中に規則
宙を使用 した表現の問題は見当たらない (p147)
高校の教科書では,中 学校 のようなカッコを用いた
式表現はな く,例 や練習問題では,次 のような分数 の
形の式で割 る問題が見 られる
アキ:尭
.
イ 券
:■
.
GM理
は
,%鋤
IGMAい 8練
●
l∋
これ らは,規 則宙を使用 しな い式表現である
_
W
熊倉啓之
〔
a 線習同題の―部で規則Mを 使用 している
式の除法の計算の仕方を説明する本文や例,例 題で
は記載 されていないが,練 習問題の中に,一 部規則■
を使用している問題が見 られる教科書は,以 下の通り
である.た だし,い ずれの場合も,規 則宙に関わる記
述はない
OM“ メ│+1"│+“
"2. lon to show
We wrlte a lraclona:expぃ
憮e dlvlsbn.
x3+1● 1+0
① イギリスの場合
中学校 (9年 生)の 教科書には,式 の除法の場面で
図 4の ように 12pq■ 4pと は表現せずに,最 初から分
国 5 アメ リカの例
,
一方で,そ の後の練習問題の中に,規 則宙を使用し
た表現 (キ ,ク )と ,そ うでない表現 (ケ ,コ )が 混
在している. ●355)
キ (15f+24t2_6tp■ 3t´
ク ●5F+lSt2_30tb■ 5t
ケ K24x5_40x4+6x3)■ K4x3)
コ (18x6_27x5_3x3)÷ θx3)
この 4問 だけを見る限 りは,次 数 1の 単項式で割 る
場合は規則宙を使用し,次 数 2以 上の単項式で割る場
数の形で示 している。 (9c p37)
日 4 イギリスの例
合 はカ ッコをつけて いる
{0
高等学校 (1,2年 生)の 教科書においても,単 元
「累乗と指数」の式の除法の場面で,次 のように最初
から分数の形で示 レている
.
□
42′ 7に 当
て
る
は
ま
ア3み □
嗜
4等手
規則 ‖に相当する説明がある
最初に規則宙を使用する段階で,そ の式の意味を説
明 している教科書は,中 国の教科書のみであり,具 体
的には図 6の 通りである. 0161)
12●
OighCrl p.95)
イキ
2■
:+α
b(ILgter2メ
ψ
.●
彙銅E畿知遭,上 式中的還界,納 是要求一介単環
式(宙 式),使 t与 3ar(餘 式)相 栞的猥等予 124'゛ご
一方で,単 元 「分数式と方程式」の除法の練習問題
の中に次の 2つ の問題がある.し かし,こ のタイプの
式表現は他 に見 られない
.
│ltr■
(被 除式)`
⑩
∵
∴
ドイツの場合
8年 生の教科書で,除 法の例題は,次 のように分数
4● 七 J‐ 12a13tr,
lた り ‐ ジ ‐ ・ノ
:・
3●
4●
.
②
の 形 で示 され て い る .
● 遂↑式子●最(12・JP)÷ C3aF)的 な思
・
ウサギ〒
…浩 いゆ
国 6 中国の例
また,除 数が分数式であったり,多 項式であったり
するときは,次 のようにわり算記号 (:)を 使ってい
るが,こ こでは規則宙は必要ない
二̈角
工争二
,:・ 薫
2+税
カッコを付けた式と同じ意味であることを説明した
上で,そ の後は,単 項式同士の除法に限らず,次 のよ
うな多項式■単項式においても,規 則宙を使用してい
る
ア ●8′ -1482+7● ■7● (p147)
.
,0
+8):(″ +41=x+2
(p187)
ォ (″
一方で,練 習問題の中に次の問題が見られた
2+18″
141 緑則」を説明なく使用 している
2):助
8"
力 o5“
'′
"2,2 (,■
しかし,こ の1問 以外lま ,こ のタイプの問題は見当
2″
た らなか つた
③ アメリカの場合
単元 「多項式の除法」において,例 題では,図
ように最初から分数式で示されている.(p352)
日本と同様に,規 則Ⅵに関わる説明の記述は特にな
いが,規 lll宙 を使用している教科書は,次 の通 りであ
る
.
シンガポールの場合
はじめに言葉で 「何を何で割るのか」を示 した上で
図 7の ように規則 uを 用 いた式表現をして いる
①
50
,
082)
38
文字式の計算順序 に関す る指導
ごく一部,規 則宙を用いた式表現が見 られた
EFmpre 3.2.2
6.「 かけ算記号省略優歩J規 則に関する考察
Dvide
o琴 by 2y,
3∼ 5を 踏まえて,こ こでは 「かけ算記号省略優先」
規則
S″″わ″=
oキ
■
“まず,「 かけ算記号省略優先」規則を使用しない理
由について考察する 実際,規 則宙を使用している教
科書とそうでない教科書があったが,こ れは使う必要
=キ X毒
2ッ
=毒
(Allsb
がないからである.す なわち,ア メリカやヨーロッパ
の多くの教科書がそうであったように,分 数の形で表
図 7 シンガポールの例
したり,わ り算記号を用いる場合でもフィンランドや
アメリカの一部の問題に見 られたように,カ ッコをつ
図 7の (ぅ の言葉の説明を挿入することによ り,少 な
くとも 「■2y」 の意味が明確 になるといえる
② 韓国の場合
けたりすればよい
ア 単項式 12abを 単項式 3aで 割る場合
.
.
かけ算の式の日に当てはまる式を求めるために,図
8の ように規則宙を用いた式を示している.(p51)
9■ ■■■■■■
颯 げ
=■
■ ■■●
l`。 :オ
6´ ●
l●
12α み
3α
□
・ 1"■ げ=等
イ c12xα xら >(3× 4)=(12あ)÷ (3α )(× の省略)
×う
ウ o2xα xb>OXα )=12xα
(■ の省略)
=半 Xt窮 →│」 笏
韓国の例
ェ o2xα xみ 卜(3× a)=2墨
規則宙に関わる記述はな いが ,「 6′ ×口=1233の ロ
に当てはまる式を求める」 とい う文脈があることで
少な くとも 「÷6a2」 の意味が明確 になるといえ る
用するのか,こ の規則宙を使用することの意義につい
③ 台湾の場合
例題で,次 の問題を扱 い,練 習で類似問題を多 く
扱 つている
ox+
^ 6x 6xx
zx=2x 2xx
` (文
.の 省略)
(21 規則 jを 使用する意義
次 に,使 用する必要のない規則Ⅵをなぜわざわざ使
,
,
(12α b)÷ (342)
また,記 号の省略には,か け算記号の省略とわり算
記号の省略があるが,一 方のみではなく,工 のように
両方の省略を同時に行う方が,表 現の統一 という観点
からは,す っきりしてぃる
2子 oモ を■■ : :●
X□ =1″ 朝■ 444
図 8
(規 則宙)に 関して考察を加える
)規 則口を使用しない理由
て考察する
.
① 単項式同士の四則演算を簡潔に表現する
小学校では,整 数や小数,分 数の四則演算について
加法,減 法,乗 法,除 法の順に,+,一 ,× ,■ 記号
を用いて学習する また,中 学校第 1学 年でも,IE負
の数の四則演算について記号を用いて順に学習する
これに倣えは 単項式同士の四則演算についても,次
のように,四 則演算の記号を用いて指導することが教
育的であるといえる
,
^
(p79)
以 上の海外 の教科書分析 か ら,規 則宙の扱 いは,国
.
によって多様であることがわかった 多様性 を具体的
にまとめると次 のようになる
1)東 アジアや東南アジアの調査 した教科書では
日本 と同 じよ うに,規 則 宙を頻繁に用 いていて,ほ と
,
んどは規則宙の説明 もな い
当する説明を記載 して いた
ア 単項式 3aと 2aの 四則演算
●→+0→ ,0リ ー¢り,13o× cal,Cal■ 0→
中国のみが,規 則宙に相
このうち,次 のように,加 法,減 法については規則
.
m(乗 除優先)に より,ま た乗法については結合法則
2)ロ シアや フイ ンラン ドの調査 した教科書には
,
によ り,そ れぞれカッコをはずす ことができる。一方
除法の場合は,規 則 1に より前のカッコをはずすこと
はできるが,規 則宙を使用しなければ後ろのカ ッコを
はずす ことはできない
イ o→ +(2a)=3a+2a ∵規則■
∵規則血
ウ Oal-0り =3a-2a
工 0→ XO→ =3a× 23
∵結合法則
オ (3→ ■o→ =3a■ θ⇒ ∵規則 i
規則宙を用 いた式表現は一切見当た らなかった ロシ
アの場合は分数 の形のみで示 され ,フ ィンラン ドの場
,
合 は,分 数 の形以外 のわ り算 の式 もあったが,カ ッコ
を用いて表現 していた
3)ア メ リカや フィ ンラン ド以外 のヨー ロ ッパの調
査 した教科書では,基 本的 には規則宙をできるだけ用
いず に,分 数 の形で表現 しているが ,練 習問題 の中 に
39
熊倉啓之
7.式 の計算順序に目する指導への示唆
逆に言えば,規 則宙を使用することで,四 則演算の
4つ の式について,す べてカッコを省略して簡潔に表
現する ことができるといえる なお ,上 記 のことは
6の 考察結果を踏まえると,「 かけ算記号省略優先」
規則の使用を前提 とした文字式の計算順序に関する指
導への示唆として,次 の 3点 を挙げることができる
(1}親 則 Mに ついてきちんと指導する
「かけ算記号省略優先」規則 (規 則宙)を 理解する
ためには,中 国の教科書のようにカッコのついた式を
示してもとの式の意味をはっきりさせる,あ るいは明
確 に「かけ算記号を省略 している部分は優先して計算
,
平方根 の加減乗除の式表現について も同様である
.
② わり算記号省略の場合と統一する
わり算記号を省略して分数の形にした場合,分 数の
でj次 の力のよ う
部分は,そ の商を先に計算する
'の
コ
にカ ッ をはずすことができる
これと同様にして,か け算記号を省略する場合も
キのようにわり算記号省略の場合と同様な規則として
規則宙を使用すれば,統 一的に表現す ることができる
,
力 F・ 0・ の =α
・
する」ことを説明することが重要であると考える 例
えば,次 のアあるいはイのように示すことが考えられ
る
÷
:
(:)=α
ア 12α ι=3ら
=1を 生
イ 12α ι■3ら
=l≧ 生
_
÷
キ ・
α OXの =α
・ (bο )=′ ろσ
③ 式を計算結果 とみる捉え方を促進する
文字式の提え方 には,計 算の過程 (prOcess)と みる
捉え方と,計 算 した結果lpDduCう とみる捉え方があり
「2つ の提 え方 をす る ことが 困難 であること」
「
.rOccssと みる捉え方が prOductと みる捉え方に先行
すること」が指摘されている ● Sard&LB山 輻
,
3ら
,
12× aXb,3×
.
1994:清 水,1998:小 岩,21X15等 )
例えば,単 項
式 3aを 単項式 2aで 割る場合は,規 則宙を使用するこ
とで,除 数の 2aは ,除 法の計算をする段階では,あ
らかじめ計算した結果である pmdudと しての提え方
をすることになる.す なわち,規 則宙を使用すること
により,prOductと しての捉え方が促進 され ることが
:で
′
(2)式 の意味を言葉で3t明 する
現行 の 中学校教科書では,タ イ トルが 「単項式 の除
法」 とあるだけで,次 にいきな り式が示されている も
の が少な くな い しか し,こ れでは,式 の意味を必ず
しも正 しく理解 しない可能性がある。例えばアメ リカ
やシ ンガポールの教科 書 のよ うに,「 式 12abを 式 3b
期待できる
④ 除数が分数の形の式の場合に統一する
例えば,単 項式 3aを 単項式
bを 先に計算 してか ら,12ob
を 3bで 割る
,
で割 る」など,は じめに式 の意味を言葉で説明 した上
で ,12ab■ 3bと い う式 を示す ことが重 要である と考
割る場合こ
:α
える
で割る場合の 2つ の式を,規 則宙を使用せずに表現
さらには,イ ギ リスや韓国のように,「 かけ算
の式 の口に当てはまる式 を求める」 とい う文脈の中で,、
すると,次 のようになる
除法 の式を示す ことが望 ましいといえよう 例えば
除法 の導入 の場面で,次 のよ うに示す ことが考え られ
,
ク 3α
F:
3α
:(:α
)
一方はカ ッコが 不要 で,他 方 はカ ッコが必要であ
る
.
例)3b× 口=12abの 日に当てはまる式を求めるには
12abを 3bで 割れ ばよ い
,
る 類似 の式であ りなが ら,カ ッコの必要 の有無が 異
なるのは,子 どもの理解 に混乱 を生 じさせる要因とな
.
□=12ab■ 3b
りかねない。 しか し,規 則 宙を使用す ることで,両 方
ともカッコが不要になつて簡潔に表現できる 少な く
ともこのよ うな分数倍 の単項式で割る場合に,子 ども
が表現方法 について混乱する ことはな くなるであろう
旧}規 則 i∼ vを 具体例を通 して確認する
先行研究か ら,規 則 iや 五の理解 が必 ず しも十分で
ないことが指摘 されている そこで,文 字式の計算 に
お いて も,こ れ らの規則 についてて ぃねいに確認 しな
が ら進 めるよ うに した い。 また ,規 則宙 の理解 に 関
.
以 上,「 かけ算記号省略優先」規則 を使用 しない理
由と使用す る意義について考察 してきた .そ れでは
わって,規 則 vを 理解 させることも重要である.例 え
ば,次 のア∼力 のよ うな式を取 り上げて ,そ れぞれ の
,
この規則 は使用す る方 がよいのか,そ れ とも使用しな
い方がよ いのか_教 育的な観点か ら考えると,筆 者は
場合に計算順序の規則 を確認することが考えられ る
この規則 を使用す ることがよいと考え る。なぜな らば
,
ァ χ■2xy=0■ 2)xノ
上で述べた意静①―Oは ,規 ■lJを 積極的に使用する理
由 に値す る と考 え るか らである
40
=:Xy=1チ
(規
則 i)
文字式の計算順序に関する指導
4 x+(2xy)=x*(zi=*
もの,お よび筆者の手元 にあるものか ら選択したも
のであり,必 ずしも最新の教科書というわけではな
槻 則 il)
い
ウ α×2-う ■3=(ax2)―
(ら
■3)=2α ―
4)教 科書以外の文献に,次 のよ うな規則vlと 同じ記
:
述があった。
「乗法記号を省略して書いた積は,他 の演算記号に
(規 則 ■)
工 18× a■ 32二 (18× a)÷ (3X3)=28
オ
ギ
(規 則 市
)
優先する たとえば a÷ b。 は三二であって,a■ b
=(a+2の ■3=(a+2xb)■ 3 (刃巳則 v)
力」
}=4÷
(3♭ )=α
■
(3x,)
Xcの 省略ではな い.」
(規 則 v)
"
(島 田茂,1990)
5)次 の規則 を,7番 目の規則 として追加する ことも
考え られる
指導 の際には,計 算順序 を確認す るために,カ ッコ
のついた式を挿入する等 ,て いね いに扱 いた い
Ⅶ 割 り算記号を省略 して分数の形で表され
ている場合は,そ の部分を先に計算する
8.今 後の朦■
この規則 に関わって,次 のように,小 5で 割 り算
を分数 の形で表す ことを学んだ後に,小 6で 分数 で
割る計算について学習するが , このとき特 に,規 則
¶ を意識する必要はない
今後 の課題 として,次 の 2点 を挙げる ことができる
(1)規 則 vお よび規則 宙についての子 どもの理 解 の
実態 を明 らかにする
o)本 研究 で得 られた示唆 をもとに指導 を実践 し
,
ガヽ5:2■ 3=: , 71ヽ 6:5÷
その有効性 を実証的に明 らかにする
.
0.お わ りに
筆者 が以前に執筆 した論文 (熊 倉 ,2006)に 対 して
論文 を読んだ方か ら,そ こで述べ た規則宙に相当する
果 ととらえて いるか らである したがって,規 則前
を意識 しないことによ り,計 算で つ まずいた りして
不都合が生 じることはな い と考え られるため,本 文
,
内容 について質問を頂 いた ことが,本 論文執筆の発端
では規則 として取 り上げなか った
である。結果 として,規 則宙は世界的には必ず しも一
般的 に使用されて いな いこと,他 にも規則 vに ついて
く引用・ ●考文献>
安藤―郎 (1977)「 四則混合演算における計算過程の
考察」日本数学教育学会議,59巻 12号 ,pp 226‐
の指導 の重要性 を明 らかにすることができた.こ れか
らの学校教育の中で,規 則 vお よび規則宙について
,
意識 して指導されることを期待 したい
.
231
梶孝行 (21D3)「 数式の計算 の順序 に関する考察 (Ⅲ )
、
小学校教科書の分析 を通 して‐
」第 36回 数学教育
く臓>
1)調 査した現行の小学校算数,中 学校数学,高 等学
校数学の教科書は,次 の通りである
<小 学校>全 学年・2010年 検定済
東京書籍,大 日本図書,学 校図書,教 育出版,啓 林
論文発表会論文集,pp 16%174
.
小岩大 (21D4)「 文字式の理解 を提えるための調査問
題 の開発 prOcess_prOductに 焦点を当てて」 第 37
回数学教育論文発表会論 文集 ,pp 259‐ 264
熊倉啓之 (2006)「 乗除混合演算式についての理解 と
指導 に関す る研究 」静 岡大学教育 実践総合セ ン
ター紀要第 12号 ,pp4766
館,日 本文教出版
<中 学校>全 学年 '20H年 検定済
東京書籍,大 日本図書,学 校図書,教 育出版,啓 林
館,数研出版,日 本文教出版
<高 等学校>数 学 工・ 20H年 検定済
長崎栄三他 (21X13)「 算数・ 数学 の内容 とその配列に
関する基礎的・ 実証的研究」文部省科学研究費補
東京書籍 301∼ 303,実 教出版 304∼ 306,
啓林館 3",08,数 研出版 309γ 313,
第一学習社 314,315
2)調 査 した過去の教科書は,次 の通りである。
代数 3千 題上・ 成美堂 (尾 関正求撲),1884
助金特定領域研究報告書
小原 豊 (2∞ 5)「 小学校算数科 にお ける四則混合式に
関す る計算順序の理 解 J筑 波数学教育 研究 ,24
巻,pp H‐ 20
坂本雄士 (211117)「 中学校 1年 生の 「文字式 に関する
規則」 の理解 に関する 一考察‐
記号的表現 の結約
‐
40回
性 を視点にして 」第
数学教育論文発表会論
中学校第 1類・ 中等学校教科書株式会社,1943
日常の数学 。大日本図書,1951
数学解析編 I・ 中等学校教科書株式会社,1947
文集 ,pp 349‐ 354
3)調 査 した海外の教科書は,教 科書研究センター附
属教科書図書館
:=5x:
これは,分 数で表された式を,す でに計算 した結
Sfard&…
(東 京都江東区)に 保存されて いる
41
(1994),'TIIE CANS AND皿
熊倉啓之
PrrFALLS OF RHFICAnON THE CASE OF
嗣 鮨
h
ALGEBRA',
Edum● onal
mathmatcs,Volmc26oβ ),pp 871124
島田茂 (1990)『 教職数学 シリーズ実践編
10・
教師
のための問題集』共立出販,p18
清水宏幸 (1997)「 中学校数学 における文字式の理解
に関す る研究 ‐
文字式 をひ とまとま りと見 ること
の 困難性 に焦点 を当てて‐
」第 30回 数学教育論文
発表会論文集,pp 247‐ 252
42