微小粒子状物質 (PM2.5 : Particulate Matter 2.5)とは 様々な成分から構成される混合物 PM2.5における 植物燃焼の影響について SO42-:硫酸イオン NO3-:硝酸イオン Cl-:塩化物イオン Na+:ナトリウムイオン K+:カリウムイオン Ca2+:カルシウムイオン Mg2+:マグネシウムイオン NH4:アンモニウムイオン OC:有機炭素 EC:元素状炭素 無機元素:鉄、アルミニウム、亜鉛など 環境科学室 池盛文数 炭素成分が多い 平成27年度大気汚染常時監視結果(本編) より 1 炭素成分の発生源 有機物を用いた発生源解析 VOC: 揮発性有機化合物 特にOCは、 ・生成機構 ・発生源 が多様である 一 次 粒 子 粒子生成 (二次粒子) 2 個別の発生源からはそれぞれ特徴的な有機物が排出されることがある 生物起源VOC 化石起源VOC 燃焼 ・有機溶剤からの揮発 ・化石燃料の燃焼 (自動車など)から放出 ガ ・化石燃料の使用 のス ・生物から放出 排状 出物 (花粉、細菌など) ・生物から放出されるガス 質 ・植物燃焼 (野焼き、森林火災など) ・植物燃焼(野焼き、森林 火災など)で放出されるガス 生物活動 セルロース ・植物繊維の主成分 レボグルコサン 燃焼生成物の一つ 植物燃焼の指標 植物燃焼 これらの発生源について情報を得る手立てはないか? Simoneit. et al., Atmos. Environ., 33, 173–182 (1999) 3 4 PM2.5のサンプリング 関東域のレボグルコサン濃度 群馬 ・冬季に濃度が上昇 ・東京のような大都市 でも検出 採取地点 採取機器 フィルター 採取時間 採取期間 名古屋市環境科学調査センター 米国標準機 石英フィルター 一週間の捕集 2011年4月~2015年2月 (192試料) Kumagai et al., Aero, Air, Qual, Res, 10, 282–291, 2010 名古屋におけるレボグルコサン濃度 や植物燃焼の影響については よくわかっていない 東京 名古屋のPM2.5について 植物燃焼の影響を調査する 上野ら:大気環境学会誌、241-251、2012 環境科学調査センター 5 成分分析 6 レボグルコサン、OC濃度の季節変動 石英フィルター OC、EC分析(炭素分析計) 水抽出 水抽出 2011 2012 2013 2014 2015 イオン成分分析(イオンクロマトグラフ) レボグルコサン分析 (イオンクロマトグラフ質量分析計) 秋冬に高く、夏に低い季節傾向 特に11-12月に高濃度を観測 陽イオン: Na+, NH4+, K+, Mg2+, Ca2+ 陰イオン: Cl-, NO3-, SO42-, (COO-)2 7 国内の既報の結果と 同様の傾向 8 OC、レボグルコサン濃度、 レボグルコサン/OC比の季節比較 レボグルコサン/OC比 比:大 レボグルコサン濃度 OC濃度 比:小 ① 0.067 OCに対するレボグルコサンの影響大 =OCに対する植物燃焼の影響大 OCに対するレボグルコサンの影響小 =OCに対する植物燃焼の影響小 0.0012 ③ ② 0.073 ① OC: 5.1 µg/m3 レボグルコサン:0.34 µg/m3 ② OC: 2.2 µg/m3 レボグルコサン:0.16 µg/m3 季節 試料数 春(3-5月) 夏(6-8月) 秋(9-11月) 冬(12-2月) 42 51 51 47 OC (µg/m3) 2.2 1.7 2.5 1.8 OC濃度:春、秋>夏、冬 レボグルコサン (µg/m3) 0.032 0.0038 0.063 0.074 レボグルコサン/OC 0.014 0.0022 0.022 0.039 レボグルコサン濃度:秋、冬>春>夏 レボグルコサン/OC比:冬>秋>春>夏 ③ OC: 4.0 µg/m3 レボグルコサン:0.0048 µg/m3 OCに対する植物燃焼の寄与:秋、冬>春>夏 9 10 他都市とレボグルコサン濃度の比較 まとめ1 東海近畿北陸の都市、都市郊外、 遠隔地におけるレボグルコサン等の データを取得 • レボグルコサン濃度(植物燃焼の指標) 秋、冬>春>夏(群馬、東京と同様) 12 • OCに対する植物燃焼の寄与 冬>秋>春>夏 13 11 3 8 4 PM2.5に対する植物燃焼の寄与はどれくらい? 他の都市と比べて、その寄与は大きいのか? 5 10 11 6 7 9 1 2 • レボグルコサン濃度の比較 • 統計的手法によりPM2.5に 対する植物燃焼寄与率の推 定とその比較 No. 所在地 1 名古屋市 2 名古屋市 3 豊岡市 4 神戸市 5 泉大津市 6 守口市 7 大阪市 8 長浜市 9 天理市 10 海南市 11 白山市 12 輪島市 13 射水市 測定地点 八幡中学校 元塩公園 豊岡市役所 兵庫県環境研究センター 泉大津市役所 淀川工科高校 聖賢小学校 長浜 天理 海南市役所 松任 輪島 小杉太閤山 12 レボグルコサン、OC濃度の 季節別平均値の比較(2014年度秋冬) PM2.5のサンプリング 採取地点 東海近畿北陸の13地点 採取機器 米国標準機 フィルター PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)フィルター、 石英フィルター 採取時間 24時間捕集 採取期間 2014年10月~11月中に14日 2015年1月~2月中に14日 測定成分 イオン成分、金属成分、炭素成分(環境省の測定法マニュアル準拠) レボグルコサン レボグルコサン(秋) レボグルコサン(冬) OC(秋) OC(冬) シリル誘導体化法 石英フィルター 有機溶媒抽出 ガスクロマトグラフ質量分析 13 レボグルコサン/OC比の季節別平均値の比較 (2014年度秋冬) 植物燃焼の 影響大 レボグルコサン、OC濃度の全測定地点の傾向・・・秋>冬 名古屋の傾向・・・八幡中学校、元塩公園が比較的高濃度 14 PM2.5に対する植物燃焼の寄与推定 PMF(Positive Matrix Factorization)法 測定成分データを統計処理することにより、発生源とその寄与率を推定 使用したソフト・・・PMF5.0(米国EPAが無料公開しているソフト) 植物燃焼の 影響小 全測定地点の傾向・・・豊岡、天理、射水で高比率 名古屋の傾向・・・八幡中学校が比較的高く(局所的発生源?) 15 元塩公園は他都市並み 解析に使用したデータ(試料数361) PM2.5質量濃度 イオン成分(Na+, NH4+, K+, Mg2+, Ca2+, Cl-, NO3-, SO42-) 金属成分(Al, V, Cr, Fe, Ni, Zn, Sb, Pb) 炭素成分(OC、EC) レボグルコサン 16 植物燃焼の寄与濃度、寄与率および、 OC、ECに対する植物燃焼起源OC、ECの割合 PMF解析の結果(2014年度秋冬) 植物燃焼 寄与濃度 3.2 2.1 1.6 1.8 1.4 1.6 3.4 2.0 3.6 1.8 1.0 2.8 0.98 µg/m3 地点 ×PM2.5質量濃度 八幡 元塩 神戸市 泉大津市 淀川市 大阪市 天理市 海南市 豊岡市 長浜市 白山市 射水市 輪島市 発生源 植物燃焼 硫酸塩 重油燃焼 硝酸塩、塩化物 道路交通 海塩、土壌 PM2.5に対する OCに含まれる ECに含まれる 植物燃焼起源OC 植物燃焼起源EC 寄与率 24 46 25 13 24 11 13 26 14 14 29 17 12 25 12 13 27 14 24 10-30% 48 20-60% 27 10-40% 18 42 29 31 62 42 16 38 20 10 20 12 30 56 36 15 30 21 % % % 工業 17 OCに対する植物燃焼の影響は比較的大きい可能性 まとめ2 18 炭素成分の発生源 • 東海近畿北陸のレボグルコサン濃度比較 ・他の発生源指標とな り得る有機物の測定 ・春や夏に寄与の高い 発生源について解析 名古屋(八幡中学校、元塩公園)は比較的高濃度 VOC: 揮発性有機化合物 粒子生成 (二次粒子) • 植物燃焼のPM2.5に対する寄与濃度と寄与率 PM2.5に対する寄与率は13地域で10-30% 八幡中学校:比較的高濃度、高い寄与率(24%、局所的な発生源?) 元塩公園:他の都市並み 一 次 粒 子 ・化石燃料の使用 ・生物から放出 (花粉、細菌など) ・植物燃焼 (野焼き、森林火災など) 生物起源VOC 化石起源VOC ・有機溶剤からの揮発 ・化石燃料の燃焼 (自動車など)から放出 ・生物から放出されるガス ・植物燃焼(野焼き、森林 火災など)で放出されるガス ガ のス 排状 出物 質 • 植物燃焼起源のOC、ECがOC、ECに占める割合 OCに占める割合20-60%、ECに占める割合10-40% OCに対する植物燃焼の影響は比較的大きい可能性 生物活動 19 植物燃焼 秋や冬に植物燃焼の影響が大きくなる理由 20 謝辞 • 本研究は国立環境研究所と地方環境研究所による Ⅱ型共同研究(PM2.5の環境基準超過をもたらす 地域的/広域的汚染機構の解明)として、また一部 を、環境省の環境研究総合推進費(5-1604)により 実施した。 21
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