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Ⅰ 白子川整備事業の概要
白子川は、練馬区の大泉井頭公園七福橋を起点として、同区内を北東に流れ、途中埼玉県和光市を通り、板橋
区と埼玉県の都県境を流下し、新河岸川に合流する流域面積約25k㎡、河川延長約10kmの河川です。
白子川流域は、昭和30年代からの急速な都市化に伴い雨水の地下浸透が減少し、雨が地表面を流れて一気に
河川に流入する「都市型水害」が頻発するようになりました。これに対し、白子川では昭和55年度から 1 時間
50mm規模の降雨に対応するための河川改修を進めており、現在は、比丘尼橋付近に「白子川調節池群」を整
備し、下流域の洪水に対する安全性を確保するとともに、調節池群から上流に向けて護岸の整備を行っています。
白子川調節池群
白子川地下調節池群は、比丘尼橋上流調節池、下流調節池、白子川地下調節池の 3 つの施設から構成されて
います。このうち比丘尼橋上流調節池、下流調節池については、平成 14 年度迄に完成しています。白子川地下
調節池の取水施設は、比丘尼橋下流調節池の内部にあります。洪水はまず白子川左岸の越流堰から比丘尼橋下流
調節池内に流入します。その下流調節池がほぼ満水になると、連結管を通って白子川地下調節池に流入します。
連結管
Ⅱ 白子川地下調節池事業の概要
白子川地下調節池事業では、練馬区大泉二丁目地内の東京外環自動車道大泉ジャンクション内の発進立坑(内
径 21.0m、深さ 45.0m)から、石神井川と都道環状八号線の交差点付近、同区高松三丁目地内にある到達立
坑(内径 19.5m、深さ 46.5m)への延長約 3.2kmをシールドトンネルで繋ぎ、発進立坑側に、管理棟、排水
設備、換気設備等の維持管理施設、到達立坑側に排水設備を整備する工事を行っています。
■トンネル断面図
■平面図
(1)白子川立坑(発進立坑)
白子川立坑(発進立坑)は、練馬区大泉町二丁目の外環自動車道から関越自動車道へ連絡している高架橋(大泉ジ
ャンクション)に囲われた敷地にあります。白子川立坑は内径約 21m深さ約 45mの立坑で、比丘尼橋下流調
節池との連結管と合わせて平成 10 年度に完成しました。
(2)シールドトンネル工事
シールドマシン
今回トンネルを造るために、泥水式シールド工法を採用しました。立坑からシールドマシンと呼ばれる掘削機
械を発進させて、掘削しながらトンネル本体の組み立てを行う工法です。
シールド工法は、地表面への影響が少ない工法として、都市内の地下鉄、下水道や高速道路などの建設でも多
く採用されています。
今回使用したシールドマシンは、外径で 10.8m、長さが 11.1mあり、総重量は約 1,000tです。薄緑の
部分の円盤が回転しながら、先端についている黄色のカッタービットで地盤を削りながら掘削します。ビットは
約 400 個ついています。
<標準断面図>
正面図
断面図
到達立坑内に周辺の地下水位と同じ水位まで水を入れ、水
中でシールドマシンを到達させました。
セグメント
下図は、トンネル本体となるセグメントです。写真のようなブロックを7個組み合わせてリングを形成します。
今回、使用したセグメントは、外側が鉄で出来ており、その中にコンクリートを充填したもので、合成セグメ
ントといいます。セグメントをつなぐため、嵌合構造(かみ合い構造)の継手を有しており、十分な耐力と内水
圧に抵抗する性能を確保しています。
(3)石神井川立坑(到達立坑)
石神井川立坑(到達立坑)は、練馬区高松三丁目に、目白通りと環状八号線が交差する練馬中央陸橋近くの敷地
にあります。石神井川立坑は内径約 20m深さ約 49mの立坑でニューマチックケーソン工法により平成25年
度に完成しました。
ニューマチックケーソン工法
ニューマチックケーソン工法とは、内部の空気が逃げないようコップを逆さまにして水中に押し込んだ状態の
ように、水の侵入を空気の圧力によって防ぐ原理を応用したものです。実際の施工では、鉄筋コンクリート製の
躯体を地上で構築し、躯体下部に気密な作業室を設け、そこに地下水圧と同等の圧縮空気を送り込むことにより
地下水の侵入を防ぎながら、掘削、排土の作業を行います。
躯体
地下水圧と同等
の圧縮空気
ニューマチック
ケーソン工法
深さ20mまでは人がケーソン
シャベルを操作して掘削します。
深さ20mを越えると気圧が高い
ため遠隔操作により掘削します。
ニューマチックケーソン工法原理図
※「完成写真については、表紙中央右側写真を参照」
(4)インバート・内部構築工事
「インバート」工事とは、トンネル本体内にコンクリートで床や排水溝を作る工事で、トンネル断面図で赤く
示した部分になります。「内部構築」工事とは、発進立坑内にコンクリートで壁や床を造る工事になります。
(5)今後の予定工事
白子川立坑内の設備工事
○ 発進立坑内に構築された部屋に、機械
設備を据え付けます。
○ 換気ファンは、トンネル内の空気の入
れ替えを行うための設備です。
○ 排水ポンプは、トンネル内に貯留した
水を、河川に排水するための設備です。
○ 車両ゴンドラは、トンネル内のメンテ
ナンスや清掃に使用する車両を降ろす
ための設備です。
白子川立坑地上部の工事
○ 地上では、受変電設備や監視制御設備を収容する管理棟などの建築物を造ります。
○ 受変電設備は、受電した電気を変圧した後、各機械設備に配電するための電気設備です。
○ 監視制御設備は、各機械設備を操作したり、白子川の水位や機械設備の運転状況を監視したりす
るための設備です。
○ 敷地内を造成し、建築物の周辺は緑化していきます。
Ⅲ 石神井川取水施設
緊急豪雨対策:石神井川側の工事
○平成 22 年 7 月の記録的豪雨により、石神井川
流域にて、大きな浸水被害が発生
○東京都は「緊急豪雨対策」を策定
白子川だけでなく、石神井川の洪水も白子川
地下調節池に取水することで、石神井川の安全性
向上を目指す。
○到達立坑敷地に石神井川から取水する施設を構築する。
石神井川取水施設工事の概要
○敷地が石神井川に接している部分の護
岸を造り直し、取水口とします。
○取水口から取り込んだ水を敷地奥に導
く導水路、水をトンネルに落とすための
ドロップシャフトを構築します。
○地下にインバート、減勢工、バルクヘッ
ド(トンネル蓋)を構築します。
○排水ポンプ、受変電設備、ゲート設備、
自家発電設備、監視制御設備などを据
え付けます。
○それらの設備を収容する建築物を造り、
緑化などの地表面の整備をします。
石神井川取水施設の機能
○石神井川の水位が一定以上になった際、
河川水が堰を越えて取水施設に流入し
ます。ゲートを操作することにより、河
川水はドロップシャフトを落下し、トン
ネル内に貯留されます。
○貯留された河川水は、石神井川の水位が
十分に下がっていることを確認した上
で、排水ポンプにより石神井川へ排水さ
れ、石神井川取水施設は、次の洪水に備
えます。
白子川地下調節池 管理棟等イメージ (白子川発進立坑上部敷地)
表紙写真の説明
トンネル内部
完成状況
発進立坑
到達立坑
連結管
シールドマシン
到達状況
平成 27 年 3 月発行 平成 26 年度登録第 18 号