伊藤 翔紀 Yasunori Ito 元野 優 Yu Motono

..... Secretariat of the House of Councillors .....
委員部
立法過程の中心である委員会の運営をサポート
委員会の運営においては、委員長はその運営を公正かつ円滑に進めるため、各理事等の意見を聴く。そして、委員会の運営は、憲法、
国会法、参議院規則のほか、先例など様々な会議運営のルールにのっとったものでなければならない。このように委員会の運営では
「意
見の調整」
と
「適正な審議手続の確保」が重要な課題となるが、
この両面で委員長を補佐するのが委員部の運営スタッフである。
各委員会の運営スタッフは主任(主幹、課長補佐)
、サブ(係長)
、サード
(係員)
で構成され、中でも主任は、
「委員会運営の責任者」
として、
日々運営の最前線で活躍している。
運営スタッフがその使命を果たすためには、常に政治情勢を読み、国会の動きを把握することが必要である。また、議員のニーズ
を十分に把握し、的確な情報提供を行うことが重要だ。そして何よりも大切なことは、運営スタッフが不偏不党の立場で職務を行っ
ていることを理解してもらい、議員との間に信頼関係を構築することである。それでこそ委員会運営に当たって必要な議員からの率
直な考えを述べてもらうことができる。
■現在設置されている委員会・調査会は次のとおり(平成29年(2017年)1月1日現在)
常任委員会
内 閣
総 務
法 務
外交防衛
財政金融
文教科学
厚生労働
農林水産
経済産業
国土交通
環 境
国家基本政策
予 算
決 算
行政監視
議院運営
懲 罰
災害対策
特別委員会
沖縄及び北方問題
北朝鮮による拉致問題等
政治倫理の確立及び選挙制度
政府開発援助等
消費者問題
東日本大震災復興
調 査 会
鶴岡 貴子
国際経済・外交
VOICE
Takako Tsuruoka
平成10年入局 委員部第一課調整主幹(予算委員会担当)
国会は、国民の代表者である議員が有権者の声を
背に真剣勝負の議論に臨む場であり、委員会の現場
はまさにその最前線です。その中で委員部の主任は、
国会運営関連の法規・先例を拠りどころとし、委員会
の運営が、
民主主義の根幹である公正な審査手続の
下に行われるよう、委員長の職務を補佐することを最
大の任務としています。また、委員会開会等に必要な
協議が適時、円滑に行われるよう、委員長、理事等関
係者の間を回って対面で話をしながら、各会派間の協
議をサポートする役割を担っています。
例えば、委員会開会についての協議が行われる場
面であれば、主任は理事等に対し、委員会運営面での
懸案事項や、開会までに決定しておく必要のある事項
などについて整理して伝えます。また、国務大臣の日程、
衆・参本会議の想定、衆議院での委員会審査の状況
等、必要な情報を収集し説明にあたります。このため、
議員会館の事務室から事務室へと資料を抱えて渡り
歩くこともあれば、本会議前後に議員を廊下で待ち構
え、一緒に歩きながら説明することもあります。昨今で
は携帯電話を通じても、今後の委員会の見通しその他
の照会、確認、依頼等が頻繁に入ってきますので対応
します。
理事の間での事前協議が進むと、理事会
(理事懇
談会)
の場での協議が行われます。理事会室では、委
員長のすぐそばに座って委員長を補佐します。理事会
協議の途中では、急に
「ちょっと委員部に確認したいん
だけど…」
と、過去の同様の事例の取扱いや国会法、
参議院規則の解釈等、
質問が飛んでくることがあります。
また、委員長から
「今までの協議の決定事項を整理し
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国会 豆 知識・2
国民生活・経済
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て」
などと指示を受けて発言することもあります。
委員会の開会中は、
理事会と同様、
委員長のすぐそ
ばに座り、
委員長が委員会をスムーズに進行できるよう、
委員会全体の状況に気を配ります。
以上、委員部の主任は、
委員会の運営に関連し、
議
員を始め関係各方面の方々と密にコミュニケーション
を図りながら仕事を進める最も国会職員らしい職です。
同時に、朝刊を賑わす国内外の政治・経済・社会情勢、
時事問題と自分の仕事が直結しており、現場ならでは
の醍醐味を味わうことができます。採用されたら是非一
度は委員部へ。国政の最前線で、大小様々なハプニ
ングに見舞われつつ、
やりがいも苦労もぎっしり詰まっ
た濃厚な経験を楽しめること間違いなしです。
資源エネルギー
伊藤 翔紀
VOICE
Yasunori Ito
平成24年入局 委員部第七課厚生労働委員会係長
委員会の運営には、主任、
サブ及びサード間のチー
ムワークが欠かせません。その中でもサブには、上司で
ある主任をサポートするとともに、部下であるサードをフォ
ローする
「調整力」
が求められます。
具体的な職務の例として、
過去の事例調査及びサー
ド作成資料の確認が挙げられます。主任は委員長や
理事等と今後の委員会の日程等について打ち合わせ
ますが、
その際、議員から、
「 過去に類似する法案を審
査したときには、
どのような議事を行っていたのか」
など
質問を受けることがあります。議員からの問合せに迅
速に対応できるよう、過去の事例を事前に調査し、資
料をまとめておくことなどを通じて主任をサポートします。
また、委員会の開会に当たっては、当日の委員会で必
要となる決裁や議事進行表を始めとする多くの書類を
作成する必要があります。主任からの情報をサードに
伝達し、情報共有を徹底するほか、今後の委員会日程
を想定して書類の作成を指示するとともに、
その内容
を確認するなど、
適宜サードをフォローします。
そのほか、
サブは、委員会における委員長の発言草
案の作成も行っています。委員長が、国会法や参議
院規則等にのっとり、適正な議事を進行するためには
誤りが許されません。また、政治情勢は刻一刻と変化
するため、
その状況に応じ、限られた時間の中で様々
な議事進行を想定して準備を進める
「即応力」や「想
像力」
が求められます。
実際、私が担当した委員会においても、急きょ委員
会の開会が決まったり、委員会開会中に議事が追加
されたりするなど、突発的に生じた事態に迅速かつ正
確に対応しなければならない状況に直面することがあ
広島にも議事堂が存在した 現在の議事堂が完成する昭和11年
(1936年)
11月以前は、現在の霞が関に設置された仮議事堂で議事が行われていました。また、明治27年
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りました。
「会議は生き物」
と言われるように、委員会開
会中は不測の事態に備えて常に気を配る必要があり、
極度の緊張が続きます。
しかし、
その分、委員会を無事
に終えられたときの達成感はひときわ大きいものとなり
ます。
委員会中心主義を採用している我が国国会におい
て、委員部職員の職責は非常に重く、国政の重要課
題が議論される政治の最前線に身を置き、議員同士
のやり取りを肌で感じながら意思決定のプロセスに携
わることができるのは、大きな魅力であると思います。
皆さんも一緒に、
その醍醐味を味わってみませんか。
元野 優
VOICE
Yu Motono
平成27年入局 委員部第一課(国家基本政策委員会担当)
サードの業務は多種多様です。
例えば、
委員会開会までの段階では、
委員への連絡、
委員会当日に必要な書類の作成、委員会室の準備等
を行いますが、
その中でも一番難しく緊張するのが、質
疑者と政府側との間に立って行う答弁者の調整です。
複数の質疑者がおり、
それぞれ出席を要求する省庁や
対応が異なるため、同時並行で調整を行いつつ、
その
時の状況に合わせた臨機応変な対応が求められます。
この答弁者が確定されないと当日の委員会に支障を来
すため、
かなりの緊張感がありますが、
うまく調整できた
時には、
ほっとすると同時に達成感があります。また、
人
と人との間に立った調整ということもあり、必ず押さえ
るべき点はあるものの、具体的な対応については自分
の経験や持ち味を活かしたやり方で行うこととなります。
ここが難しくも面白いところであり、サードの腕の見せ
所の一つではないかと思います。
委員会当日は、
定足数を満たしているか委員の出席
状況を確認しつつ、政府側の答弁者の到着状況にも
気を配り、滞りなく質疑が行われるようにするとともに、
開会・散会等の時間の確認のほか、質疑者の質疑時
間を確認して残り時間をお知らせするメモを入れたりし
ます。また、委員会室中に目を配り、空調やマイクの調
節等も行います。委員会には独特の雰囲気があり、状
況が突然変わることもありますが、
そのような中でも慌
てずに、
一つ一つの業務を着実に行っていきます。
委員会散会後は、
委員会室の片付け等の事後処理
に加えて、
次回の委員会に向けた準備が始まります。
さらに、衆議院の委員会の動きなどの情報収集や、
多くの委員会に影響を与える予算委員会や本会議に
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関する情報の課内への共有もサードの大切な仕事です。
これらに加え、調査等のために現地に直接赴く委員派
遣等が行われる際には、委員の移動手段の確保や写
真撮影といった、
一味違った業務を行うこともあります。
また、
与野党が対立する重要法案が付託されるいわ
ゆる大型特別委員会ともなると、通常の委員会運営と
は異なる点が多く、大きな重圧もありますが、
そこでの
経験は非常に貴重な経験となります。私は入局1年目
に大型特別委員会を担当しました。たとえ新人であっ
ても重要な役割を担うことができる点が委員部の特長
だと思います。
私たちの生活を支える法律がどのようにして作られ
ているのか。国政はどのように動いているのか。それらを
正に目の前で体感でき、
関わることができるのが、
委員部
の仕事の大きな魅力であり、
やりがいを感じるところです。
(1894年)
に日清戦争が始まった際、大本営が広島に置かれたことに伴い、広島臨時仮議事堂が建設され、第7回帝国議会(会期4日間)
が広島に召集されました。
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