Economic Indicators 定例経済指標レポート

EU Trends
オランダ選挙カウントダウン開始
発表日:2017年2月15日(水)
~自由党外しの勝算は?~
第一生命経済研究所 経済調査部
主席エコノミスト 田中 理
03-5221-4527
◇ 1ヶ月後に迫ったオランダ総選挙では、反イスラムを掲げる自由党が第1党になることが確実視され
ているが、単独での過半数獲得は困難なうえ、他党が自由党との協力に否定的なため、反体制派政権
の誕生が回避されるとのシナリオが有力。だが、オランダ国民の間には、選挙後の連立協議が暗礁に
乗り上げれば、現与党第1党の自由民主国民党が自由党との連立に傾くとの見方も多い。
3月15日のオランダ下院選挙まで1ヶ月となった。今回の選挙戦には28政党が候補者を擁立する。オラ
ンダの選挙法では、前回選挙で議席を獲得した政党は自動的に出馬の権利を獲得するが、それ以外の政党
が選挙戦に参加するには供託金を支払い、一定数の署名を集める必要がある。当初81の政党が選挙登録を
したが、前回選挙で議席を獲得した10政党と、新たに権利を獲得した18政党が最終的に選挙戦に参加する。
投票は現地時間の7時30分から21時00分(日本時間で15日の15時30分から翌16日の朝5時00分)まで行な
われ、投票締切直後に非公式の開票速報が発表される。日本時間で16日の午前中には大勢が判明する可能
性が高いが、政権の枠組みが見えてくるのは長期化が予想される連立協議を待たなければならないだろう。
選挙戦の行方は1月13日付けレポート「次なる標的はオランダ ~寛容なリベラル国家を襲うポピュリ
ズム~」で指摘した通り、反イスラム・反エリート・反グローバル化などを掲げる右派系ポピュリズム政
党「自由党(PVV)」が第1党となる可能性が高いものの、PVV政権の誕生は回避されるとの見方が
引き続き支配的だ。各種の世論調査でPVVの予想獲得議席は30~35議席程度にとどまり、定数150の下院
の過半数には届かない。他党はPVVとの連立に否定的で、現与党第1党の「自由民主国民党(VVD)」
を中心に、PVV抜きでの連立発足を目指すとみられている。ただ、最大政党となる可能性が高いPVV、
さらには左右両極に位置し極端な政策が目立つ「社会党(SP)」や「政治改革党(SGP)」を連立相
手から除外する場合、残りの中道政党で議会の過半数を確保するのは容易でない。場合によっては、5党
や6党による連立合意が必要で、難しい協議となりそうだ。1970年代で5党による連立政権が誕生したこ
とが2度あるが、その時は議会選から政権発足まで各々69日と163日を要した。連立協議が暗礁に乗り上げ
た場合、PVVを連立相手として検討する余地は本当にないのだろうか。
PVVのウィルデルス党首が「民主的な投票で勝者となる可能性が高い自由党を排除することは、数百
万のオランダ国民の民意を踏みにじる行為で、独裁の匂いがする」といった趣旨の発言を繰り返す一方、
VVDを率いるルッテ首相は「PVVと協力する可能性はゼロ」と断言する。だが、多くの国民はこうし
た首相の発言に半信半疑のようだ。調査会社Peilが1月22日に発表した世論調査によれば、「PVV
が第1党となった場合、VVDは自由党と連立を組むべきか?」との質問に対して、有効回答のうち「は
い」と答えた割合が39%(「いいえ」が47%、「分からない」が14%)、未回答者を除外して再集計した
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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「はい」の割合は45%に上る。同様に未回答者を除外して再集計すると、PVV支持層の82%、高齢者の
権利保護を主張する「50プラス」の支持層で74%、VVD支持層の55%が、PVVとVVDの右派政党の
連立に賛成している。自由党が圧倒的な支持を獲得して第1党になるか、連立を組みやすい政党間での獲
得議席の配分などによっても、自由党抜きで連立政権を発足できるかは変わってくる。場合によっては、
自由党抜きで非多数派政権を発足し、法案毎に少数政党に協力を仰ぐ形での政権運営も選択肢となる。
今回の選挙戦では、どの政党を支持するか、まだ態度を決めていない有権者が多いとされる。そのため、
投票日までに2回予定される全国ネットのテレビ討論会が注目を集めよう。2月26日に民放が予定してい
る討論会にはPVVのウィルデルス党首とVVDのルッテ首相が揃って参加に難色を示している。2回目
のテレビ討論会は投票日前日の3月14日に公共放送が予定している。
以上
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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