特集:研究室紹介 [2017年度卒業研究]

特集
プラズマ物性工学研究室:眞銅 雅子
種子表面滅菌用高周波放電プラズマの生成と
滅菌特性の研究
農産物栽培に用いる種子や医療機器の滅菌には、一般に化学薬
品や熱処理が使用されていますが、プラズマを用いた研究も活発に
特集:研究室紹介 [2017年度卒業研究]
行われつつあります。プラズマ中で生成される活性種の量をコント
ロールすることで、低温滅菌処理が可能となり、かつ環境に無害な
滅菌ができます。本研究では、高周波放電プラズマの発光特性と滅
菌特性の関連を詳細に調べながら、環境に優しい滅菌用プラズマ装
置の作製・改良を行います。
滅菌用低圧高周波プラズマの発光
新エネルギー・プラズマ科学研究室:長田 昭義
ガスの流れを利用した誘電体バリア放電プラズマ
改質装置の作成
単室型燃料電池(SCFC)は混合ガス中で発電可能で、固体高分子型燃料
誘電体バリア放電(DBD)プラズマは、真空容器を用いずに空気中
電池(PEFC)を凌駕する高電池性能を有した小型モバイル発電機です。
で手軽に生成することができるため、ガスや固体材料の改質等に広
く使用されています。プラズマは、ごく限られた空間範囲に生成され
簡便な作製プロセス『ゾルゲル法』を用いて、プロトン伝導を発現するベー
ますが、プラズマが生み出すダイナミックな空気の流れを計測し、プ
マイト電解質膜を調製します。さらに、プラズマプロセス技術によって直並列
ラズマの電磁界と流れとの関係を調べます。さらに、流れを積極的に
接続したマルチセルを作製し、SCFCの高出力密度を達成します。
制御し、効率のよい材料改質を目指したプラズマ改質装置を作成し
ます。
フレキシブルな
ベーマイト電解質膜
(膜厚:3/1000mm)
無加湿混合ガス
Pt
Pt/C
ベーマイト膜
基板
混合ガスで発電するSCFC
誘電体バリア放電プラズマの電極
周りの流れの可視化の様子
水素燃料の需要は増加傾向にあります。将来の水素化社会における『水素
汎用シミュレーションソフトを用いたプラズマの
モデリング
燃料の自消自産』を目指した低コスト・小型モバイル水素製造デバイスを開発
します。水素製造デバイスは誘電体バリア放電(DBD)プラズマアクチュエー
プラズマ中では様々な化学反応が起き、その生成物を利用して材
タ(DBD-PA)を設計基盤として作製します。DBD-PA内に誘起される気体流
料改質や製造、あるいは滅菌などが行われます。本研究では、プラ
と電磁界の相互作用を活用して、気体流(層流,乱流,渦流)の3次元流体制
御を行い、水素改質効率の向上と水素製造技術の確立を目指します。
ズマ中での化学反応の進み方や粒子種や温度の分布、プラズマ中
Induced gas flow
Vortex flow
N
Cusp field
N
上:DBD-PAを応用した水素製造デバイス
下:電磁界による3次元流体制御
での微粒子の動きなどを数値シミュレーション手法を用いて調べ、実
際の実験の計測と照らし合わせて議論します。
微細藻類(マイクロアルジェ)が作るオイルは「緑の原油」と呼ばれ、カーボ
数値シミュレーションで得られたArプラ
ズマ中の正イオン分布の様子
大阪工業大学 工学部 電気電子システム工学科
エネルギー科学研究系ニュース No.12 エネルギー科学研究系発行
〒535-8585 大阪市旭区大宮5-16-1
TEL 06-6954-4422
http://www.oit.ac.jp/www-ee/server/aplab/
ンニュートラルな次世代燃料として注目されています。緑藻類(ボトリオコッカ
ス、クロレラ)から産生される油脂をバイオ燃料に利用する新エネルギー創
成技術について、農学と工学の両視点に立った境界領域において実験研究
A:ボトリオコッカスのコロニー,B-C:
コロニーをつぶした顕微鏡像:黄色の
部分がオイル [出典:筑波大学]
します。緑藻類に電磁界ストレス(刺激)を与えることにより、高増殖化・量産
化に向けた電磁界ストレス培養技術を開発します。本研究は環境工学科と
共同研究を実施しています。
電磁界ストレス培養装置
特集
特集
パルスパワー工学研究室:見市 知昭
プラズマ・環境工学研究室:吉田 恵一郎
[テーマ1] 帯電誘電体と⾮熱プラズマを⽤いたナノ粒⼦の捕集分解
放電生成物のin-situ計測と水処理への応用
放電プラズマを発生させると化学的に活性な物質(活性
酸素種:Reactive Oxygen Species(ROS))が生成します。
研究室ではこのROSを利用した水処理の研究を行っていま
す。しかし、水上で作られたROSがどのように水中に移動
し対象物と反応しているかは未だ不明です。
そこで赤外分光分析を用いて水上で生成したROSを計測
し、水処理実験の結果と併せて、そのメカニズムについて
調べていきます。この研究は水処理だけでなく殺菌などの
医療分野への応用も期待できます。
液中化学プロセスの研究において
水上の放電生成物のその場(in-situ)計測
は未だ行われていない
針電極
検出器
DC
コロナ
放電
そこで特殊な試薬を用いて液中でのROS(オゾンや過酸
化水素)の動きを調査します。この試薬はヨウ素でんぷん
反応を利用したものであり、ROSと反応すると青色に呈色
します。この色の濃淡を測定することでROSの液中での動
きが明らかになります。この試薬は非常に安価で簡単に作
成可能です。
赤外
ビーム
排ガス
FTIR
e-
帯電させた
誘電体
高電圧によって誘電体表面
に発生させたプラズマ
逆極性に帯電させたPM
+
水溶液
平板電極
水処理実験の結果と
放電生成物との関係を調査
+
+
+
+
捕集
DBDプラズマによる分解
[テーマ2] イオン⾵を利⽤した熱伝達技術の研究
針電極
DC
コロナ
放電
どのように液中
に供給されて
いるのか不明
O3, OH,
O2-, HO2
の生成
水溶液
試薬
平板電極
「プラズマ熱スイッチ」の提案・創出
プラズマによる流れの発生技術を洗練させ、任意の温度で熱を遮断したり伝えたりする
Plasma OFF
Plasma ON
TA
TA
プラズマ配置の工夫
による強力な循環流
ギャップ
ROSと反応すると
呈色する試薬を
用いて反応の分布
を調査
TB
放電前
放電後
放電プラズマを用いた色素増感太陽電池の低温焼成技術に関する研究
色素増感太陽電池は低コスト次世代太陽電池として注目
されています。この色素増感太陽電池は透明ガラス基板電
極、多孔質の酸化チタン、色素、電解質、対向電極で構成
されています。この電池を作製する際、最初に基板に酸化
チタンペーストを塗布して450℃で焼成を行い、多孔質酸
化チタンを作るのが一般的です。しかし、高温に耐えるこ
とができる材料を基板や透明電極に用いる必要があり、こ
れが制約を強いています。
燃焼機器から排出される高導電性の微粒子を少ないエネルギーで捕集+その場で分解
O3, OH,
O2-, HO2
の生成
放電プラズマによって液中に供給されたROSの二次元分布
放電プラズマによって生成したROSを液中に供給し、そ
の挙動について調査を行います。前述の研究のように水処
理が可能であることはわかっているのですが、液中でどの
ような振る舞いをしているのかは不明です。
従来にないPM処理技術の創出
TiO2ペースト
450℃
焼成
TiO2に色素吸着
250℃焼成
そこで放電プラズマによる処理を行い、450℃以下の焼
成でも同等の発電特性が得られる太陽電池の作製を行いま
す。
環境に役立つ新しい技術を研究していきます
TB
ギャップがあるので
熱がほとんど伝わらない
[テーマ3] 静電場による相変化制御
静電場による水の蒸発制御原理の提案と実証
対向電極
吸湿材
TiO2
ギャップ間の循環流
が熱を伝える
蒸発潜熱を任意の温度で吸放出させることにより、不要な熱を季節間・離れた場所の間で移動させる
ことに応用できます。
放熱
吸熱
透明ガラス基板
電極
プラズマ処理
DBDプラズマアクチュエータ
電解質
色素増感太陽電池
吸湿材
水蒸気を含む
環境中の空気
水蒸気を
含む冷気
新しいアイデアを実現しよう!