よく飲むお酒は「ビール系飲料」「チューハイ・サワー」「焼酎」

公益財団法人 地方経済総合研究所
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平成 25 年 2 月
よく飲むお酒は「ビール系飲料」「チューハイ・サワー」「焼酎」
~熊本県内お酒事情:お酒との付き合い方アンケート調査結果概要~
はじめに
酒類全体の消費は 1996 年をピークに減少傾向をたどる中、数年前の焼酎ブームや最近の
第三のビールの登場など、嗜好は多様化している。熊本県内には日本酒と焼酎の両方の製造
元があり、消費量をみると一人当たり焼酎の消費量が多く、酒類の消費には地域性が表れる。
そこで県内の消費者のお酒との付き合い方や地元産の酒類に対する意識などをさぐるため、
アンケート調査を実施した。
【調査結果のポイント】
1.
お酒を「月に 1 回以上」飲む人の割合は 68.3%であった。男性の 77.3%に対して女
性は 59.2%と男性の方が多い。そのうち、
「週 5 回以上」飲む人は 19.3%で年代が上
がるにつれて多くなる傾向がみられ、男性の 50 代以上では 38.8%であった。
2.
「月 1 回以上」飲む人(699 人)が普段飲むお酒の種類(複数回答)で最も多いのは
「ビール」(63.9%)で、以下「発泡酒」「チューハイ・サワー」「第三のビール」が
それぞれ 4 割を超えている。これに対し「芋焼酎」は 29.6%、「米焼酎」は 24.3%、
「日本酒」は 23.9%であるが、何らかの「焼酎」を選んだ人は 41.1%と第三のビー
ルをわずかに上回った。
3.
「月 1 回以上」飲む人のうち、熊本県産の焼酎を「よく飲む」は 12.4%、「たまに飲
む」は 16.7%、熊本県産の日本酒を「よく飲む」は 4.1%、「たまに飲む」は 11.6%
で、生産量の全国シェアから考えると地元で強いことがあらためてわかる。
4.
『あなたにとってお酒とは?』をみると(複数回答)、全体では「仲間と楽しい時を
過ごすためのもの」
(36.6%)、
「ストレス解消」
(35.9%)、
「食事と一緒に楽しむもの」
(31.8%)が多い。「仲間と楽しい時を過ごす」は飲む頻度が「月に 3 回以下」の人
に多く、「ストレス解消」は「週に 1 回以上」の人で多いなど、飲む頻度によってお
酒の位置づけも異なる。
5.
正月のお屠蘇に赤酒を用いたのは 42.4%、一方、お屠蘇そのものをしていないのは
40.2%と拮抗している。男女とも 50 代以上ではほぼ半数が赤酒を用いたお屠蘇であ
るが、20 代男性は半数がお屠蘇そのものをしていない。
【調査の概要】
調査対象:熊本県内の 20 歳以上の男女 1,025 人(男性 509 人、女性 516 人)
調査時期:2013 年 1 月 10 日~14 日
調査方法:調査会社登録モニターへのネット調査(調査会社:㈱マクロミル)
1
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1.飲む頻度:年代が上がるにつれて飲む頻度も上がる
お酒を飲む頻度をみると、「週に 5 回以上」とほぼ日常的に飲んでいると思われる回答
が 19.3%と多かった。
「週に 3~4 回」
「週に 1~2 回」などを含めた「月に 1 回以上」は全
体のほぼ 7 割(68.3%)を占めている。ほとんど飲まないとみていい「年に数回」
「年に 1
回以下」「飲めるが飲まない」「飲めない」の合計は 3 割強(31.8%)となり、思いのほか
飲んでない人が多い印象である(図表1)。
男女別でみると、「月1回以上」飲む割合は男性では 77.3%、女性では 59.2%と男性の
方が多く、飲む頻度も多い。年代別にみると「週に 5 回以上」と日常的に飲んでいる割合
は 20 代が最も少なく、年代が上がるにつれて多くなる傾向がみられ、男性の 50 代以上が
38.8%と最も多かった。逆に「月に 2~3 回」「月に 1 回程度」をみると 20 代男性は両者
の計が 36.9%、20 代女性は 34.1%と多く、20 代は飲まないわけではないが回数は他の年
代より少ない、という特徴がみられ、近年よく指摘される若者のアルコール離れが表れて
いる。
図表1 飲む頻度
月1回以上 約7割
0%
全体
10%
19.3
男性
男性20代
10.7
17.6
13.1
4.7 5.4
女性30代
10.1
16.3
17.1
10.9
14.0
19.4
8.5
14.7
13.2
17.8
9.3
16.3
6.2
5.4
9.3
7.8
3.1
10.9
9.3
11.0
4.1
0.0
4.1
11.6
7.9
10.7
3.14.7 5.4
6.2 3.9 7.8 0.87.0
13.4
100%
6.2 6.20.8 9.3
1.0 12.2
20.2
11.6 0.0
11.6 1.6
16.3
16.3
週に3~4回
週に1~2回
月に2~3回
月に1回程度
年に数回
年に1回以下
飲めるが飲まない
飲めない
5.4
10.1
14.1
1.6 7.8
10.1 0.8 8.5
週に5回以上
2
90%
7.5 1.26.3
13.1
13.2
12.8
19.4
8.5
6.5
13.2
11.6
17.4
10.1
15.5
13.4
18.6
14.7
80%
10.4 1.1
23.8
16.3
8.7
70%
7.5
17.7
38.8
女性20代
60%
25.4
33.3
11.8
50%
12.8
24.0
男性50代以上
女性50代以上
40%
10.7
8.2
男性40代
女性40代
30%
26.9
男性30代
女性
20%
年に数回、飲まない・飲めない 約3割
10.1
13.2
14.0
19.4
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2.何を飲んでいるか:ビール系飲料の人気が高い中、焼酎が健闘
ここからは、お酒を月 1 回以上飲むと回答した 699 人に尋ねた結果である。
普段どんなお酒を飲んでいるかをみると(複数回答)、「ビール」が他を 20 ポイント以
上引き離して最も多く、「発泡酒」「チューハイ・サワー」「第三のビール」がそれぞれ 4
割を超えて続き、ビール系飲料やフルーツ風味などの香りがある酒類に人気があるのがう
かがえる。次いで「ワイン」、
「梅酒」が続いており、熊本県の特産である「米焼酎」は 24.3%
で、
「芋焼酎」
(29.6%)をやや下回った(図表2)。これは複数回答であるので、芋や米・
麦にかかわらず何らかの“焼酎”を選んだ人(重複を除く)をみると 41.1%となり、「チ
ューハイ・サワー」と肩を並べ、焼酎が強いことがわかる。
男女間で差が 20 ポイント以上あったのは、「芋焼酎」(男性 42.5%、女性 13.1%、以下
同順)、「米焼酎」(33.8%、12.1%)、「梅酒」(20.1%、43.1%)、「チューハイ・サワー」
(32.3%、53.6%)、「カクテル類」(18.1%、38.2%)であった。
次に、普段飲むお酒の中から最もよく飲むものを尋ねたところ、多い順に「ビール」
(22.6%)、
「第三のビール」(18.0%)、「チューハイ・サワー」(12.9%)であった。
「第三のビール」は普段飲むお酒では 4 番目に多かったが、“最もよく飲む”では 2 番目
になっており、ビール系飲料の中ではポジションが上がっていると思われる。飲む頻度別に
みると「週に 5 回以上」
「週に 3~4 回」の人ではそれぞれ 27.8%、29.1%と最も多く、飲む
回数が多い人には価格面の優位性が魅力となって、ビールよりも飲まれているのであろう。
また、「芋焼酎」(7.9%)は「ワイン」や「梅酒」を上回り、「米焼酎」(3.9%)のほぼ倍
の回答があり、熊本でも芋焼酎を好む人が多いのがわかる。飲む頻度別では「週に 5 回以上」
の人では「芋焼酎」が 15.2%、
「米焼酎」が 7.1%と全体より高く、いわばヘビーユーザーに
好まれる傾向がみられる。
図表2 飲むお酒の種類
%
70 63.9
普段飲む(複数回答)
最もよく飲む
60
43.8 41.6 41.1 40.8
50
35.3
40
30.2 29.6 26.9
24.3 23.9
30
22.6
18.0
14.7 13.6
13.9
20
10.0 12.9
7.9
6.7
5.4
5.0
3.9
3.4
10
2.4
1.7
0
梅
芋
日
発
米
ビ
ワ
カ
何 第
チ
ウ そ
イ
酒
ク
ュ
ー
焼
本
泡
焼
イ の
ら
三
ー
ン
テ
ル
ス 他
酎
酒
酒
酎
か
の
ハ
キ
ル
の
ビ
デ
イ だ
類
ーー
・ 人焼 ー
サ
・
酎 ル
ブ
ワ
を
ラ
ー
選
ン
ん
3
何らかの
“焼酎”
を選んだ
人
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3.県産の焼酎・日本酒の飲まれ方とイメージ:米焼酎のイメージが強い
(1)飲まれ方
普段飲むお酒で「焼酎」(芋、米、麦、その他)
図表3 県産焼酎・日本酒の飲まれ方(N=699)
焼酎
もしくは「日本酒」を選んだ人に、それぞれ熊本
焼酎・日本酒を普段飲む
県産の日本酒や焼酎を飲むかを尋ねた(図表3)。
県産をよく飲む
県産をたまに飲む
県産をあまり飲まない
県産を飲まない
県産かどうか分からない
焼酎・日本酒を普段飲まない
県産焼酎を「よく飲む」は全体の 12.4%、「たま
に飲む」は 16.7%、県産日本酒を「よく飲む」は
4.1%、
「たまに飲む」は 11.6%であった。他県産
日本酒
41.1%
12.4%
16.7%
7.6%
1.7%
2.6%
23.9%
4.1%
11.6%
4.6%
0.4%
3.1%
58.9%
76.1%
に押されているとも言えるが、県産酒の生産量全
国シェア(単式蒸留焼酎 4.2%、日本酒 0.3%、2011 年)を考えると、地元でそれなりに
飲まれていると言えるだろう。
なお、県産焼酎、県産日本酒のそれぞれについて「よく飲む」、「たまに飲む」と回答し
た人に好きな銘柄を尋ねたところ(複数回答)、上位3つは焼酎では「白岳しろ」「白岳」
「繊月」、日本酒では「香露」「れいざん」「瑞鷹」であった。
県産の焼酎・日本酒を飲む理由(自由回答)は、
「美味しい」といった味を評価する回答
や「地元だから、県民だから」が多く、
「手に入りやすい、居酒屋に置いてある」といった
流通面での回答も目立った。逆に熊本県産の焼酎や日本酒を「あまり飲まない」
「飲まない」
理由(自由回答)では、好きな味・銘柄がないという回答が目立ち、焼酎では「鹿児島産、
芋焼酎を飲む」が多く、日本酒では「好きな銘柄は県外産」、「甘口が多い」といった回答
が多かった。
(2)県産のお酒について感じていること:米焼酎が優勢
熊本のお酒について感じていることを自由回答で尋ね、その結果を全体のイメージ、満
足・肯定、不満・要望の3つに集約したものが図表4である。全体のイメージとしては、
自分で飲むかどうかに関係なく、熊本では“米焼酎”の産地である・有名である、とよく
認知されていた。味などの品質や種類は満足と不満の回答がみられたが、嗜好品であるこ
ともあり、概して県産の焼酎や日本酒を飲む理由、飲まない理由と重複する内容が多く、
好き嫌いに影響されている部分が大きいと感じられた。また、酒造りに欠かせない“水”
を評価する声や、地元産を応援したいという声も目立った。
図表4 熊本県産のお酒について感じていること(自由回答)
内 容
・焼酎中心、米焼酎が有名(焼酎)
全体の
イメージ ・熊本酵母が生まれた土地、日本酒の南限(日本酒)
・おいしい、飲みやすい、すっきり、あっさり、料理にあう(品質)
・おいしい水・きれいな水でつくられている(水)
満足・肯定
・安心、馴染みがある、応援する、頑張ってほしい(地元)
・ワインがおいしい、ビール工場見学(焼酎・日本酒以外)
・宣伝下手、知名度不足、もっと県産や熊本をアピール(PR)
・くまモンを用いたアピール(話題性)
不満・要望
・焼酎は辛く日本酒は甘い、芋焼酎がない(品質・種類)
・デコポンやトマトなどの県産品を使ったカクテル類(要望)
4
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4.あなたにとってお酒とは:飲む頻度によって大きく異なる
全体では「仲間と楽しい時を過ごすためのもの」
(36.6%)が最も多く、
「ストレス解消」、
「食事と一緒に楽しむもの」も 3 割を超えている(図表5)。
飲む頻度による差が大きいのは、
「仲間と楽しい時間を過ごす」が「月に1回程度」
(64.9%)
や「月に 2~3 回」(49.3%)といったライトユーザーで高く、お酒はイベントを楽しむ要
素の一つとなっているのであろう。また、
「人間関係の潤滑油」や「人間関係をひろげるも
の」もライトユーザーで高くなる傾向がみられ、コミュニケーションのツールという感覚
が強いようである。一方、
「週に 5 回以上」の人にとっては「人生の楽しみ」
(39.4%)、
「ス
トレス解消」
(38.9%)、
「毎日の習慣」
(36.4%)、
「食事と一緒に楽しむもの」
(31.8%)と
いった回答が多く、特に「毎日の習慣」が際立って多い。
図表5 あなたにとってお酒とは?(あてはまるもの3つまで)
仲間と
楽しい
食事と
開放感
人間関
時を過 ストレス 一緒に
人生の
元気の 毎日の
を楽し
係の潤
ごすた 解消
楽しむ
楽しみ
素
習慣
むもの
滑油
めのも
もの
の
全体
36.6
35.9
31.8
27.0
23.9
16.7
15.7
12.6
週に5回以上
22.2
38.9
34.8
18.7
39.4
13.6
26.8
36.4
週に3~4回
28.2
39.1
40.0
36.4
27.3
15.5
18.2
9.1
週に1~2回
36.1
40.0
33.9
30.6
20.6
11.1
13.3
2.8
月に2~3回
49.3
26.1
26.9
32.1
13.4
24.6
7.5
0.7
月に1回程度
64.9
31.2
15.6
18.2
5.2
26.0
3.9
0.0
注) は全体を10p以上上回り、 は全体を10p以上下回る
人間関
健康の
係を広
バロ
その他
げるも
メーター
の
10.0
7.1
4.5
11.7
11.2
19.5
3.0
4.5
4.5
2.8
0.7
1.3
4.2
3.5
5.5
4.4
5.2
2.6
40%
60%
80%
5.熊本の伝統酒:赤酒をお屠蘇に使ったのは 42.4%
江戸時代に肥後藩から保護された赤
図表6 正月のお屠蘇
酒は、今でも熊本の正月のお屠蘇とし
0%
て親しまれている。そこで、全員(1,025
全体
20%
42.4
11.2 6.1
40.2
人)に今年の正月に家庭でお屠蘇を飲
んだかを尋ねたところ、全体の 42.4%
男性
が赤酒を用いている一方、ほぼ同程度
男性20代
の 40.2%はお屠蘇そのものをしてい
男性30代
なかった。また「清酒」という回答が
男性40代
11.2%あった(図表6)。
39.1
11.6 6.5
26.2
42.8
9.8 11.5
37.2
12.4 8.5
42.6
男性50代以上
52.5
49.6
41.9
10.9 3.1
43.4
13.2 3.1
34.1
年代別にみると男女とも 50 代以上
女性
45.7
あるが、20 代男性は半数が「なかった」
女性20代
44.2
と回答している。世帯の少人数化が進
女性30代
41.1
み、正月の過ごし方も手間のかかるこ
女性40代
42.6
とは敬遠されがちで、お屠蘇そのもの
女性50代以上
ではほぼ半数が赤酒を用いたお屠蘇で
が減っていくのではないかと思われる。
55.0
赤酒
5
清酒
10.9 5.8
37.6
8.5 7.0
40.3
10.1 7.0
41.9
11.6 6.2
39.5
13.2 3.1
その他・種類不明
なかった
28.7
100%
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一方、最近では料理の際に赤酒を使うと、素材が固くならずふっくら柔らかく仕上がる、
照り・ツヤがいいといった点などが県外の料亭や専門店などでも評価されており、みりん
ではなく赤酒を料理に利用するシーンでの消費が増えつつある。いわば季節商品からプロ
が使う通年商品へと利用シーンを転化しつつあり、こうした高い評価はもっと知られてよ
いのではないかと思われる。
おわりに
熊本県は言わずと知れた米焼酎の産地であるが、米焼酎に限らず地域性を持つ焼酎や日
本酒はヘビーユーザーに好まれる傾向がみられた。蔵元や醸造元はこうしたヘビーユーザ
ーをコアとする現在のファンを大事にするとともに、若い年代に多い「仲間と楽しい時間
を過ごすため」にお酒を飲む層に対する取り組みが鍵になると思われる。お酒そのもので
はなく、
“友人や彼氏・彼女と楽しい時間を過ごす”ためのお酒であり、そのシーンの中で
どのような楽しみ方、飲み方を提供できるかが問われよう。
また、
“県産をなるべく飲むようにしている”という回答者の声は、きっかけがあればさ
らにファンを広げる可能性を感じさせる。消費者の求めるものがどのように変化している
かを常に意識しつつ、ネットでの情報発信や各種のイベントなど、様々な機会をとらえて、
地元のお酒に対して関心を持ち、応援したいと思っている人やファンになってくれそうな
ユーザーを増やす活動を継続していくことが大事だと思われる。
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