岡山県水産振興プラン2017(素案) 目 第1章 次 策定にあたって 1 1 策定の経過・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 2 位置付け・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 3 計画期間・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 第2章 岡山県水産業の現状と課題 2 1 海面漁業・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 内水面漁業・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13 第3章 目標と基本方針 2 15 1 目標・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15 2 基本方針・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15 3 施策体系・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16 4 数値目標と指標・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 第4章 具体的な施策 20 1 美しく豊かな海づくり・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20 2 魅力ある水産物づくり・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25 3 活力ある漁村づくり・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33 4 豊かで清らかな川づくり・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36 参考資料 42 生産量等の推移と予測・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・42 用語集・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・43 注)本文中の右肩に*が付いた語句については、用語集に説明を記載しています。 第1章 1 策定にあたって 策定の経過 平成13年度に初めて策定した「岡山県水産振興プラン」は、計画期間中に海域 環境等が大きく変化したことを受けて、平成20年度に「岡山県水産振興プラン 2008改訂版」として改訂しました。 このたび、このプランの目標年度である平成28年度を迎えたことから、新たに 「岡山県水産振興プラン2017」として策定しました。 2 位置付け このプランは、水産振興施策の基幹となる計画と位置付けており、本県水産業の 現状と課題を分析し、今後推進していく施策を明確にしています。 なお、このプランのうち、内水面漁業に関する部分については、内水面漁業の振 興に関する法律(平成26年法律第103号)第10条第1項に規定する県計画と して位置付けます。 3 計画期間 このプランの計画期間は、平成29年度から5年間とし、平成33年度を目標年 度とします。 内水面漁業の振興に関する法律 この法律は、内水面漁業の振興に関する施策を総合的に推進するために、 制定されました。 都道府県は、当該都道府県の区域にある内水面について、内水面資源の回 復に関する施策及び内水面における漁場環境の再生に関する施策を総合的か つ計画的に実施する必要があると認めるときは、農林水産大臣が定める基本 方針に即して、これらの施策の実施に関する計画を定めることができるとさ れています。 また、ウナギ養殖業が指定養殖業となり、ウナギ養殖業を営もうとする者 は、農林水産大臣の許可が必要となりました。 1 第2章 1 岡山県水産業の現状と課題 海面漁業 (1)海域環境 ア 藻場 (ア)現状 魚介類の発生や育成場所となっている藻場*は、 「海のゆりかご」と呼ばれる など重要な役割を担っています。砂泥域に分布するアマモ場 *は、大正年代に は約4,300ヘクタール存在していましたが、大規模な干拓などにより大幅 に消失し、その後も透明度の悪化等により衰退を続け、平成の初めには約550 ヘクタールまで減少しました。しかし、透明度等の環境の改善や漁業者等によ る再生活動により、近年では約1,850ヘクタールまで回復しています。 また、岩礁帯に分布するガラモ場*は、昭和50年代に約720ヘクタール 存在していましたが、近年では約180ヘクタールとなっています。 (イ)課題 アマモ場については近年回復傾向にありますが、引き続き、漁業者等が中心 となって実施している再生活動を拡大させ、面積を増加させる必要があります。 また、減少が続いているガラモ場についても新たに再生活動に着手し、面積 を増加させる必要があります。 (ha) アマモ場 5,000 3,000 ガラモ場 4,300 4,000 2,500 1,845 2,000 1,221 1,500 1,000 584 720 500 549 385 575 308 176 179 0 T14 S53 H1 H7 H19 H27 岡山県の藻場面積の推移 (県調べ、環境省「自然環境保全基礎調査」に基づき県で作成) 2 イ 干潟 (ア)現状 干潟は二枚貝類等の重要な生息場所であるとともに、水質浄化機能を有する など重要な役割を担っています。昭和20年代に約4,000ヘクタールあっ た干潟は、大規模な干拓などにより平成18年度には約530ヘクタールまで 減少しています。また、残された干潟の一部には、砂れき化や底質の悪化によ り、機能が低下している場所もあります。 (イ)課題 干潟の底質環境を把握し、機能が低下している干潟については、改善策を講 じる必要があります。 (ha) 2,000 5,000 4,085 1,500 4,000 1,000 702 559 566 527 H1 H7 H18 500 0 S20 S53 岡山県の干潟面積の推移(環境省「自然環境基礎調査、 瀬戸内海干潟実態調査」に基づき県で作成) ウ 海水温 (ア)現状 海水温は、過去30年間で約1℃上昇しています。特に10月と11月の上 昇は顕著であり、過去30年間で約2.5℃上昇しています。 海水温の上昇は、魚介類の産卵時期の変化、漁獲対象種や漁獲時期の変化等 を招く可能性があります。特に秋季の 海水温上昇はノリ養殖の生産開始時 期の遅れや養殖カキの身入り不良を 招くなど、様々な影響を与えています。 (℃) 20 19 18 (イ)課題 17 海水温の変化に合わせて養殖や操 業の方法を見直す必要があります。 16 15 S48 S53 S58 S63 H5 H10 H15 H20 H25 岡山県海域の年平均水温の推移(県調べ) 3 エ 栄養塩濃度 (ア)現状 水質汚濁防止法(昭和45年法律第138号)及び瀬戸内海環境保全特別措 置法(昭和48年法律第110号)に基づく水質総量削減等により、海域への 窒素やリン等の負荷量が削減された結果、栄養塩(特に溶存態無機窒素*)濃 度は低下傾向にあります。栄養塩濃度の低下によりノリ養殖業が低迷するとと もに、漁船漁業やカキ、アサリなど二枚貝類の生産量が減少している可能性が 指摘されています。 (イ)課題 栄養塩濃度と漁業生産量との関係を調べ、栄養塩濃度の低下が漁業生産に与 えた影響を検証する必要があります。 (μM) 16 12 8 4 0 S48 S53 S58 S63 H5 H10 H15 H20 H25 岡山県海域の年平均栄養塩(溶存態無機窒素)濃度の推移(県調べ) 瀬戸内海環境保全特別措置法 水質汚濁防止法の特別法で、平成27年度の改正により、瀬戸内海を「豊 かな海」とすることを基本理念として、規制の措置のみならず、藻場、干潟 の保全及び再生等の措置を併せて講ずることとされました。 なお、附則には、栄養塩類の減少が水産資源に与える影響に関する研究等 に努めるものとし、法律の施行後5年を目途として、瀬戸内海における栄養 塩類の管理の在り方について検討を加えること等が明記されました。 4 オ 海底 (ア)現状 (%) 8 海底は、比較的泥分が少なく、経 年的な悪化の傾向も見られていま 6 せんが、一部の閉鎖的な海域では底 質がヘドロ化するなど、悪化してい 4 る場所が存在しています。 2 0 (イ)課題 S62 底質の悪化している場所におい H8 H17 H27 備讃瀬戸海域における底質の強熱減量* て、カキ殻の敷設や海底耕うんなど の推移(環境省「瀬戸内海環境基本調査」 の改善策を講じる必要があります。 に基づき県で作成) 海底耕うんによる環境改善の事例 くわ えい 船を使って鍬のような道具を曳航し、海底 を耕します。耕うんによって、有機物が堆積 (ヘドロ化)した海底環境が改善するととも に、海底から栄養塩が供給されます。 海底耕うん(イメージ) ノリの色落ち被害の軽減、漁獲量の増加 生物の増加 海底環境の改善 微生物による有機態窒素の分解の活性化 海中への栄養塩の供給 →海底の有機物の減少 海底耕うん(海底に酸素を供給) 海底耕うん(海底の栄養塩が溶出) 大量の有機物が堆積(ヘドロ化)した海底 5 カ 海ごみ* (ア)現状 「海底ごみ適正処理体制構築事業フォローアップ調査」(平成26年 岡山 県)では、本県海域には約200トンもの回収可能な海底ごみが堆積している と推計しています。このほか、漂流ごみ、漂着ごみも多く存在しており、景観 や自然環境に悪影響を与えるほか、漁業操業に支障を来しています。 また、高梁川を通じて、1年間に約130トンものごみが海域に流入すると いう調査報告もあり、漁業者による海底ごみ回収のほか、ボランティア活動に よる漂流ごみ、漂着ごみの回収が行われています。 (イ)課題 海ごみを減らすには、不法投棄の防止、河川や用水路でのごみ回収、県民へ の意識啓発など、発生源対策を強化する必要があります。また、海ごみの回収、 運搬、処理等について、関係機関が役割分担を行いながら進める必要がありま す。 このほか、近年注目されているマイクロプラスチックなど、新たな問題にも 対応する必要があります。 河川のごみ 底びき網で回収された海底ごみ マイクロプラスチック 海洋などの環境中に拡散した微小なプラスチック粒子で、大きさがおおむね5 ミリメートル以下のものを指します。海洋を漂流するプラスチックごみが太陽の 紫外線や波浪によって微小な断片になったものや、合成繊維の衣料の洗濯排水に 含まれる脱落した繊維などが含まれます。有害物質が付着しやすいことや魚など に誤食されやすいことから、新たな環境への懸念材料となっていますが、人体へ の影響など不明な点も多く、様々な研究が進められています。 6 (2)漁業就業者・漁業経営体 ア 現状 漁業就業者数は減少を続けています。また、60歳以上の割合が約6割と高齢 化しています。漁業経営体数も同様に減少を続けており、特にノリ養殖業におい て減少率が高くなっています。 イ 課題 漁業を魅力ある産業にし、安全で活力ある漁村づくりを推進しながら、漁業者 の子弟等を中心とした担い手の育成を図る必要があります。 (%) 100 4,000 80 3,000 60 2,000 40 1,000 20 0 0 S48 S53 S58 S63 H5 H10 H15 H20 H25 就業者数の推移(農林水産省 「漁業センサス」に基づき県で作成) ノリ・カキ養殖漁業 25~39歳 40~59歳 54 57 59 58 33 31 29 30 12 1 H10 10 2 H15 10 2 H20 9 3 H25 カキ養殖業 漁船漁業 (経営体) 1,400 250 1,200 200 1,000 150 800 100 600 50 400 0 200 H10 H12 H14 H16 60歳~ 就業者(男)の年齢別割合(農林水産省 「漁業センサス」に基づき県で作成) ノリ養殖業 (経営体) 300 15~24歳 H18 H20 H22 H24 H26 経営体数の推移(県調べ、農林水産省「漁業センサス、 農林水産統計年報」に基づき県で作成) 7 漁船漁業 (人) 5,000 (3)漁船漁業 ア 現状 漁獲量、生産額ともに減少が続いています。 魚種別の漁獲量を見ると、マダイ、サワラで増加傾向にありますが、その他の魚 種については減少傾向にあります。 平均単価について見ると、マダイ、サワラについては単価が下がっていますが、 その他の魚種については、単価が上昇しています。 イ 課題 資源の増大を図るため、 漁獲量 (t) 8,000 生産額 (億円) 50 栽培漁業及び資源管理型 7,000 40 漁業 * を引き続き推進す 6,000 30 5,000 20 4,000 10 る必要があります。 3,000 0 H10 H12 H14 H16 H18 H20 H22 H24 H26 漁獲量と生産額の推移 (農林水産省「農林水産統計年報」に基づき県で作成) 栽培漁業 卵から稚魚になるまでの最も減耗の大きい時期を人間が育てた後、海に放流し、自然界 で成長したものを漁獲することで、「つくり育てる漁業」とも言います。 卵から稚魚になるまで育てることを「種苗生産」、その後、海上生けすや砂地の池等の 自然に近い環境でさらに大きくし、自然環境下で生き延びる能力を高めることを「中間育 成」と言います。 漁獲量 放流量 (万尾) 600 250 500 200 400 150 300 100 200 50 100 0 0 H10 H15 H20 H25 ガザミの漁獲量と放流量の推移 (県調べ、農林水産省「農林水産統計年報」に 基づき県で作成) 栽培漁業の効果(イメージ) 8 放流量 漁獲量 (t) 300 タイ類 (t) サワラ類 (円/kg) (t) 500 1,000 120 4,000 400 800 90 3,000 300 600 60 2,000 200 400 100 200 30 1,000 漁獲量 単価 0 0 0 H10 H14 H18 H22 2,000 300 1,500 200 1,000 100 H18 H22 600 600 400 400 200 200 0 400 800 300 600 200 400 100 200 0 H14 H18 H22 H18 H22 H26 (円/kg) タコ類 1,500 1,200 1,000 800 500 400 0 H10 0 H14 (t) (円/kg) 1,000 (円/kg) カレイ類 1,000 H10 500 H26 800 H26 スズキ類 (t) H22 800 0 H14 H18 1,000 500 0 H14 (t) (円/kg) 400 H10 0 H10 H26 アナゴ (t) (円/kg) 0 H26 0 H10 H14 H18 H22 H26 (円/kg) (t) 500 1,500 500 2,000 400 1,200 400 1,600 300 900 300 1,200 200 600 200 800 100 300 100 400 (t) エビ類 0 0 H10 H14 H18 H22 カニ類 (円/kg) 0 H26 0 H10 H14 H18 H22 魚種別漁獲量と平均単価の推移 (農林水産省「農林水産統計年報」に基づき県で作成) 9 H26 (4)ノリ養殖業 ア 現状 海域の栄養塩濃度の低下による色落ち被害、秋季の海水温の上昇による養殖開 始時期の遅れや育苗期の生長障害が見られる年があります。また、魚類や鳥類に よる食害も発生しています。 イ 課題 漁業者が実施可能な色落ち対策、食害対策、海水温上昇に対応した養殖を行う 必要があります。また、県産ノリの消費拡大を図るため、安全・安心な製品づく りの徹底や認知度を上げるための取組などが必要です。 (千万枚) (億円) 40 生産量 生産額 35 30 25 20 15 10 5 0 H10 H12 H14 H16 H18 H20 H22 H24 H26 ノリ養殖業の生産量と生産額の推移(県調べ) 栄養塩濃度の低下 色落ちしたノリ 正常なノリ 高品質 低品質 ほし 乾ノリ(色落ちすると品質が低下) 10 (5)カキ養殖業 ア 現状 平成20年度以降、安定した生産を続けていましたが、平成26年度は原因不 明の身入り不良が発生し、大きく生産量が落ち込みました。また、養殖に使用す る種苗は、県内で採取する種苗のほか、広島県産や宮城県産の種苗にも大きく依 存していますが、平成26年度には広島県で採苗が不調となり、広島県産種苗が 必要数確保できない漁業者が出るなど、安定生産に対する不安が生じました。平 成27年度には、生産開始当初から需要が伸び悩み、計画どおりの出荷ができな いという事態が生じました。 イ 課題 安定的な養殖を行うため、安定的に種苗を確保する必要があります。また、身 入り不良の原因を解明するための調査、研究を充実させるとともに、身入り向上 のために、筏の配置の見直しや垂下連数の減少などの対策が必要です。 このほか、県産カキの消費拡大を図るため、安全・安心な製品づくりの徹底や 認知度を上げるための取組などが必要です。 (t) 生産量 生産額 (億円) 5,000 50 4,000 40 3,000 30 2,000 20 1,000 10 H10 H12 H14 H16 H18 H20 H22 H24 H26 カキ養殖業の生産量と生産額の推移(県調べ) 11 (6)水産物流通、消費 ア 現状 岡山市中央卸売市場における県産生鮮水産物の取扱いは、数量、金額ともに減 少が続いています。また、岡山市における1世帯(2人以上の世帯)当たり年間 魚介類購入金額についても、減少が続いています。 魚の消費量が減少する一方で、健康志向により、魚を積極的に食べたいという 意識が強く、平成27年度の農林水産省のアンケート調査によると、消費者の約 7割が「今後、魚介類を食べる頻度を増やしたい」と答えています。 イ 課題 魚介類の旬や料理方法などの情報提供を行い、魚食普及を推進する必要があり ます。 (t) (百万円) 数量 金額 4,000 3,500 3,000 2,500 2,000 1,500 1,000 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26 H27 岡山市中央卸売市場 県産生鮮水産物取扱実績の推移 (岡山市「岡山市中央卸売市場年報」に基づき県で作成) (円) 90,000 80,000 70,000 60,000 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26 岡山市の1世帯あたり年間魚介類支出金額 (総務省「家計調査年報」に基づき県で作成) 12 H27 2 ア 内水面漁業 現状 河川の主要な魚種であるアユ、オイカワ、アマゴ、ウナギなどの資源は、内水 面漁業協同組合(以下「内水面漁協」という。)等の放流や産卵場造成等により 支えられてきましたが、近年、その漁獲量は大きく減少しており、原因としてア ユの冷水病*やカワウ、ブラックバス等による食害、水温の上昇や工事等による 漁場環境の変化などが考えられています。また、遊漁者数も減少傾向にあり、釣 りなどを通じた川と親しむ機会の減少が懸念されます。 内水面漁業の漁獲量のうち、約2分の1は湖沼でのフナ、コイですが、フナに ついては減少傾向にあるものの、全国1位の生産量となっています。コイについ ては平成15年のコイヘルペスウイルス(以下「KHV」という。)病*の発生以 降、漁獲量は激減しています。 養殖業については、アマゴ、ニジマス、コイ等が行われていますが、需要の低 迷、疾病の常在化や配合飼料の高騰等により、生産量は減少傾向にあります。一 方、ウナギ養殖業については、経営体数の増加により、生産量も増加傾向にあり ます。 イ 課題 漁獲量の減少要因と考えられるアユの冷水病やカワウ等による食害について は、これまでの対策を引き続き行うとともに、漁場環境の悪化について原因を究 明し、対策を講じる必要があります。また、内水面漁業の魅力を情報発信し、釣 りなどを通じて水辺への親しみを深める必要があります。 養殖業については、安定生産を図るために引き続き防疫体制の充実を図る必要 があります。 漁獲量 アユ漁獲量 (t) 600 養殖生産量 漁獲量 1,200 1,000 500 800 400 600 300 400 200 200 100 0 0 H10 H12 H14 H16 H18 H20 H22 H24 H26 内水面漁獲量と養殖生産量の推移 (県調べ、農林水産省「農林水産統計年報」に基づき県で作成) 13 養殖生産量・アユ漁獲量 (t) (人) 14,000 12,000 10,000 8,000 6,000 4,000 2,000 0 H10 H12 H14 H16 H18 H20 H22 H24 H26 内水面遊漁者数の推移(県調べ) 冬期生息数 (羽) 6,000 被害金額 (千円) 70,000 60,000 5,000 50,000 4,000 40,000 3,000 30,000 2,000 20,000 1,000 10,000 0 0 H14 H18 H20 H22 H23 H24 H25 H26 H27 カワウの冬期生息数と被害額の推移(県調べ) 技術指導数 KHV病 (件) 700 12 600 10 500 8 400 6 300 KHV病 技術指導数 (件) 4 200 2 100 0 0 H10 H12 H14 H16 H18 H20 H22 H24 H26 内水面の技術指導の実施件数とKHV病の発生件数の推移(県調べ) 14 第3章 1 目標と基本方針 目標 「魅力ある水産物を育む豊かな海と川の実現」 本県の海面漁業は、漁船漁業とノリ、カキ養殖業を主体として成り立っています。 漁船漁業では、少量ながら季節ごとの旬となる魚介類が漁獲されており、また、ノリ 養殖業においては全国第10位、カキ養殖業においては全国第3位の生産地として、 全国各地に水産物を供給しています。 内水面漁業は、三大河川の恩恵を受け、アユを始めとする様々な水産物を供給する ほか、自然と親しむ機会を県民に提供するなどの多面的機能を発揮しています。また、 川から供給される栄養塩は海の豊かな漁業生産を支え、アユ、ウナギ、モクズガニな ど川の生き物は、海と行き来しながら生活するなど、海と川は密接につながっていま す。 しかし、海面漁業、内水面漁業ともに環境の変化、漁業資源の減少、水産物の消費 低迷など、様々な課題を抱えており、これらに対処するには、漁業生産の基礎となる 海と川が豊かであることが重要であるため、 「魅力ある水産物を育む豊かな海と川の実 現」を目標に掲げ、諸施策を推進します。 2 基本方針 目標実現のため、次のとおり基本方針を定め、これに沿って施策を展開します。 「美しく豊かな海づくり」 漁場環境の改善や資源管理型漁業の推進により豊かな海づくりに努めます。 「魅力ある水産物づくり」 養殖業の安定生産や県産水産物の情報発信により魅力ある水産物づくりに努めます。 「活力ある漁村づくり」 漁村の安全対策や担い手の育成により活力ある漁村づくりに努めます。 「豊かで清らかな川づくり」 アユ等の資源回復の取組や漁場環境の改善により豊かな川づくりに努めます。 15 3 施策体系 基本方針 具体的な施策 ア 藻場の保全及び再生 イ 干潟の保全及び再生 ア カキ殻の敷設や海底耕うんの実施 ア 海域の栄養塩濃度と漁業生産量の関係解明 イ 海域環境のモニタリングによるデータの蓄積 ア 種苗の放流 イ 施設の更新及び長寿命化 ア 近隣県と連携した資源管理の取組 イ 県内における資源管理の取組 ウ アナゴ、シャコ及びタイラギの不漁対策 エ 海面の適正利用の推進 (6)海ごみ対策 ア 海ごみの処理と発生源対策 (7)有害生物対策 ア クラゲ、ナルトビエイ等の被害対策 ア 色落ち対策 イ 環境変化に適応した養殖技術の開発 ウ 養殖指導 エ 衛生管理体制の確立 オ 県産ノリのPR ア 安定生産及び品質向上 イ 衛生管理 ウ 県産カキのPR エ 種苗の安定確保 オ 疾病対策 カ 廃筏の再資源化 ア 疾病等の防除 イ モガイ養殖の不漁原因究明 ウ 新しい養殖魚種の検討 ア 地魚のおいしさの科学的検証 イ 旬の地魚や料理方法等のPR ウ 未利用・低利用魚の活用 ア 一次加工、活けじめ等の取組 (1)藻場、干潟の保全及び再生 (2)海底環境の改善 1 (3)栄養塩濃度の減少対策 美 し く 豊 か な 海 づ く り (4)栽培漁業の推進 (5)資源管理型漁業の推進 及び水産資源保護対策 (1)ノリ養殖業対策 2 魅 力 あ る 水 産 物 づ く り (2)カキ養殖業対策 (3)その他の養殖対策 (4)魚食普及の推進 (5)流通改善 16 基本方針 具体的な施策 ア 浜の活力再生プランの推進 イ 収入対策及び支出対策 ウ 共同利用施設の整備 (2)担い手の育成 ア 研修会等の開催 (3)漁協等の基盤強化 ア 合併等に対する指導 (4)安全操業、海難防止 ア 事故防止に関する啓発 ア 災害対策 イ 漁港施設等の整備 ア 地域資源の再発見 イ 子ども達への自然環境学習の展開 ア アユ等の資源回復対策 イ 河川のモニタリング調査 及び資源の減少要因の究明 ウ モクズガニ種苗の安定生産 及び効果的な放流手法の研究 エ ウナギの資源保護対策 オ カワウ、外来魚の被害対策 カ 疾病のまん延防止対策 キ 内水面漁協の基盤強化 ク 内水面養殖業の振興 ア 遊漁者確保の取組 イ 地域住民等の活動に対する支援 ウ 自然に優しい河川整備の促進 エ 漁業者による森づくり (1)漁業経営の改善 3 活 力 あ る 漁 村 づ く り (5)漁村の安全対策 (6)地域資源の活用 4 豊 か で 清 ら か な 川 づ く り (1)豊かな川づくり (2)清らかな川づくり 17 4 数値目標と指標 本プランでは、漁業種類別に数値目標を設定し、さらに、この目標を達成するため、 基本方針ごとに指標を設定しました。 (1)数値目標 1経営体あたりの生産額(現況)の5%アップを目指します 現況注1) 漁業種類 漁船漁業 生産量 生産額 1経営体あたり の生産額 経営体数 4,845トン 25.7億円 870 295万円 ノリ養殖業 2.1億枚 17.5億円 82 2,135万円 カキ養殖業 3,761トン 31.4億円 156 2,015万円 合 計 - 74.6億円 1,108 - * 注1)漁船漁業の生産量、生産額は、平成22年から26年の5中3平均値 、経営体数は2013 年漁業センサス。ノリ養殖業、カキ養殖業は平成23年度から27年度の5中3平均値 平成33年度の見込み 漁業種類 漁船漁業 生産量 生産額 4,800トン 25.4億円 目標 経営体数 820 1経営体あた りの生産額 310万円 ノリ養殖業 1.5億枚 12.3億円 55 2,240万円 カキ養殖業 3,500トン 29.0億円 137 2,120万円 合 計 - 66.7億円 1,012 - <参考:現況から推移した場合> 平成33年度の予測注2) 漁業種類 生産量 漁船漁業 ノリ養殖業 カキ養殖業 合 計 4,200トン 1.5億枚 3,200トン - 生産額 21.8億円 10.2億円 25.9億円 57.9億円 経営体数 820 52 130 1,002 1経営体あたり の生産額 265万円 1,952万円 1,993万円 - 注2)既存データに基づいて近似曲線を作成し、平成33年度の値を予測、詳細はP42を参照 18 (2)指標 基本方針 現況値 目標値 1 美しく豊かな海づくり 藻場の面積 アマモ場及びガラモ場の合計面積注1) 2,024ha 2,085ha 2ha 10ha 0ha 140ha 452回 490回 20件 33件 217人 240人 43ha 56ha 66トン 73トン 23か所 21か所 海底環境の改善面積 カキ殻を使用した底質改良面積注1) 年間の海底耕うん面積 注1) 2 魅力ある水産物づくり 養殖業の安全・安心対策数 ノリ、カキ養殖業の年間衛生検査回数注2) 地魚のおいしさ研究数 県産魚介類の栄養成分の延べ調査件数注1) 3 活力ある漁村づくり 研修会等の参加人数 県が主催する研修会等の年間延べ参加人数注2) 高潮被害が解消される防護面積 注1) 4 豊かで清らかな川づくり アユ漁獲量注2) 冬季におけるカワウのねぐら数 注1) 注1)現況値は平成27年度末の数値 注2)現況値は平成23年度から27年度の5中3平均値 19 第4章 1 具体的な施策 美しく豊かな海づくり (1)藻場、干潟の保全及び再生 ア 藻場の保全及び再生 アマモ場については、漁業者を主体とし た種まき等の再生活動の支援に重点を置き、 県下全域へ取組を拡大させることで、アマ モ場の面積の増加を目指します。併せて、 民間団体や学生など多様な主体の参加や持 続的な実施体制の構築に努めます。 ガラモ場については、現在、再生活動が アマモ場のメバル 行われていないことから、アマモ場と同様 ぼそう に漁業者を主体とした母藻投入*等の再生活動に着手します。 アマモ場再生活動 春 夏 アマモの繁殖は、種子によるものと株分かれに 秋 冬 株分かれによる繁殖 よるものがあります。アマモを増やすには、それ ぞれの特性から、種をまく方法とアマモの株を植 える方法があり、本県で主に行われている方法 は、海上から種をまく方法です。 分枝 衰退期 繁茂期 伸長期 6月頃、成熟して種をつけたアマモを採取し、 葉体ごと袋に入れ、秋頃まで海中で保管します。 10月頃、葉体と種を分け、アマモを増やしたい 生長 種子 花枝形成 種子による繁殖 場所に種をまきます。まいた種の数を把握し、発 芽状況を調査することで、活動の効果を確認して アマモの生活史 います。 6月 7~9月 採取 保管 10月 選別 アマモ場再生活動のスケジュール 20 種まき 発芽 イ 干潟の保全及び再生 航路等のしゅんせつ土砂の有効利用に よる干潟の保全の可能性については、関係 機関と検討を進めます。 また、干潟の主要な生物であり、資源の 減少が見られるアサリの回復を目指して、 被覆網の設置による稚貝の保護、育成等の 技術開発や漁業者による耕うんなどを実施 します。 被覆網によるアサリの保護 (2)海底環境の改善 ア カキ殻の敷設や海底耕うんの実施 生物の生息環境を改善し、資源の増大を図るため、かつて本県海域で見られた かいどこ カキ礁*や貝床*のような良好な漁場を参考にして、カキ殻の敷設による海底環境 の改善を推進します。 また、漁業者が主体となって実施する海底耕うんの取組に対して助言や支援を 行い、海底環境の改善につなげます。 カキ殻の敷設による海底環境の改善 有機物が堆積(ヘドロ化)した海底 有機物が堆積(ヘドロ化)した海底 本県海域の一部には、海底がヘドロ化 し、生物が生息できない場所があります。 カキ殻の敷設 水産資源の増大 海底環境の改善 生物の増加 県ではカキ殻に注目し、カキ殻を使用した 海底環境の改善に取り組んでいます。 カキ殻の敷設による海底環境の改善(イメージ) 敷設前 敷設直後 敷設 6 か月後 底生生物が増加、ナマコも確認 カキ殻を敷設した海底の変化 21 (3)栄養塩濃度の減少対策 ア 海域の栄養塩濃度と漁業生産量の関係解明 海域の栄養塩濃度が減少し、その結果と してノリの色落ちが発生しており、漁船漁 魚 エビ等 業やカキ、アサリなどの二枚貝の生産量が 魚 エビ 減少している可能性も指摘されています。 そこで、海域の栄養塩濃度と二枚貝の成長 動物プランクトン 動物プラ ンクトン 栄養塩の減少 や身入り等の関係について調査し、栄養塩 濃度と漁業生産量の関係を明らかにします。 また、下水処理施設の管理運転やため池 のかいぼり *等の栄養塩の管理手法につい て調査、研究を行います。 植物プラ ンクトン 植物プランクトン 食物連鎖 海域の栄養塩 海域の栄養塩 栄養塩濃度と漁業生産量の関係 イ 海域環境のモニタリングによるデータの蓄積 温暖化の進行等に伴い、水温、透明度等 の海域環境が変化し、海の生態系や水産資 源の動態は大きく変動していると考えられ るため、浅海定線調査 *等のモニタリング 調査を継続的に実施し、水産資源への影響 の把握に努めます。 (4)栽培漁業の推進 ア 種苗の放流 モニタリング調査風景 本県では、市場価値、技術的知見、漁業 者の要望等を基にして栽培漁業の対象魚種 や数量等を決定し、適地への放流等を推進 しています。引き続き、これらの取組を推 進し、その結果、資源が回復した魚種につ いては、資源管理を中心とした取組に移行 します。 イ 施設の更新及び長寿命化 本県の種苗生産施設については、老朽化 種苗の放流 が著しく、種苗生産業務に支障を来してい るものが多いことから、計画的な施設の更新について検討します。 県下3か所に設置している中間育成施設については、機能保全計画* に基づき 計画的な改修を行うことで、施設を長寿命化させ、修繕費等の維持管理費の削減 を図ります。 22 (5)資源管理型漁業の推進及び水産資源保護対策 ア 近隣県と連携した資源管理の取組 サワラ等の広域回遊魚の資源回復には、 複数県が連携して禁漁期を設定する等の取 組が効果的です。サワラについては、瀬戸 内海沿岸11府県の漁業者による網目拡大 や禁漁期の設定等により漁獲量の回復傾向 が見られることから、今後も関係府県と連 携しながら継続して取組を実施します。 また、資源量が減少しているトラフグ等 トラフグの採卵 については、関係府県と連携しながら効果 的な手法を検討し、漁業者への提案や助言を行います。 イ 県内における資源管理の取組 ガザミ、マダコ、エビ類等を対象として、漁業者が自主的に網目の拡大、禁漁 期や禁漁区の設定、抱卵ガザミの再放流等の資源管理を行っています。この取組 を引き続き推進していくとともに、資源管理に取り組んでいない漁業種類や魚種 について、効果的な手法を検討し、漁業者へ提案や助言を行います。 ウ アナゴ、シャコ及びタイラギの不漁対策 アナゴ等の魚介類の漁獲量は大きく減少しており、原因として生息環境の悪 化、食害、疾病等が複合的に影響していると推測されています。そこで、漁業者 と連携して魚種ごとの不漁原因を解明するための調査、研究を行い、資源量の回 復手法の立案につなげます。 エ 海面の適正利用の推進 水産資源を適切に利用するためには、漁 業者だけでなく釣りなどを楽しむ遊漁者の 協力が不可欠です。これまで、遊漁者が使 用できる漁具・漁法や保護水面などの禁漁 区等について、看板の設置や釣具店等での 冊子の配布等により普及啓発を行うととも に、現場での遊漁者への指導を実施してき ました。今後は、これらの活動に加え、ホ ームページや情報誌等を活用した普及啓発 を実施します。 23 禁漁区の啓発 (6)海ごみ対策 ア 海ごみの処理と発生源対策 海ごみは、平成27年度に「岡山県海岸 漂着物等対策推進地域計画」を策定して対 策を推進しており、海底ごみについては、 沿岸7市に16基の海底ごみステーション を設置し、底びき網漁業者が日常の操業で 引き揚げたものを、市等の協力により、運 搬、 処理する体制が概ね構築されています。 今後は、この取組に参加する漁業者をさら に増加させ、海底ごみの回収活動を促進さ 海底ごみステーション せます。 漂流ごみについては、小型船舶愛好団体がボランティアで実施している回収活 動を引き続き支援します。 また、発生源対策として、県内市町村や庁内関係課から構成される「岡山県海 ごみ対策県市町村連絡調整会議」において、情報交換や県下全域での海ごみに関 する普及啓発等を行うとともに、海ごみの回収、運搬、処理について関係機関が 役割分担して対応します。 さらに、マイクロプラスチックについては、実態や生態系への影響等の情報収 集を行います。 (7)有害生物対策 ア クラゲ、ナルトビエイ等の被害 ミズクラゲ等の小型クラゲが大量に発生し、定置網や底びき網に混入するため、 操業に支障が生じるとともに、漁獲物の品質低下も生じています。また、ナルト ビエイの食害により、カキ、アサリ、モガイ等の二枚貝が大きな被害を受けてい ます。そこで、有効なクラゲ防除技術等について先進事例の情報収集を行うとと もに、被覆網、食害防止ロープ等を用いたナルトビエイの食害の軽減手法の開発 に努めます。 ミズクラゲの大量発生 ナルトビエイ 24 2 魅力ある水産物づくり (1)ノリ養殖業対策 ア 色落ち対策 (ア)栄養塩濃度変化の予測技術の開発 海域の栄養塩濃度の減少が予測でき れば、早期の刈取り等による色落ち被害 の軽減が可能になります。沿岸域の栄養 塩濃度は、河川からの供給量、隣接海域 からの貧栄養水塊の流入、植物プランク トンによる消費などで変化すると言わ れていますが不明な点が多くあります。 そこで、近年導入した現場設置型の栄 養塩モニタリング装置等を用いて連続 栄養塩モニタリング装置 的にデータを取得し、その情報提供を行 うとともに、海水の流れやクロロフィル量 *、塩分などの連続観測を併せて実 施し、海域の栄養塩濃度の予測技術の開発を進めます。 (イ)海域における栄養塩の循環及び供給方法の検証 海水中の栄養塩が減少している一方で、湾奥部等の一部の海底には栄養塩を 含む有機物が過剰に堆積しています。このような海域において、漁業者による 海底耕うんを実施し、海底をかくはんすることで、有機物の分解を促し、海水 中への栄養塩の供給を促進させます。また、この活動を県下全域に拡大させる ことを目指します。 イ 環境変化に適応した養殖技術の開発 高水温に耐性のあるノリの品種改良等 の研究を行います。 また、秋季の海水温低下の遅れにより、 ボラ、クロダイ、カモ類の食害が長期化し ていることから、効果的な食害対策や他地 区における防除対策等の情報を収集して漁 業者へ助言を行います。 魚類による食害 ウ 養殖指導 県下で漁場ごとに地区協議会が組織され、適正水温での育苗や本張りの開始、 赤ぐされ病*をはじめとする病害対策等の集団管理が行われていますが、漁期中 の降雨や高水温等の影響により、赤ぐされ病のまん延や葉体の傷み等が発生し、 ノリの生産が不安定となる年が見られました。そこで、過去の環境データを解析 25 することにより不作に至った要因を検証し、漁期中の気象、海況から病害等の発 生を予測して指導を行い、徹底した集団管理を行うことで、まん延防止に努めま す。 エ 衛生管理体制の確立 食の安全・安心が消費者に強く求められ るなか、乾ノリの製造工程から出荷に至る までの衛生管理を徹底するため、漁期前に 岡山県漁業協同組合連合会(以下「県漁連」 という。)職員が県の協力のもと、加工場の 点検を実施します。 また、漁期中においても、日常的に漁業 者が加工場の清掃状況等について点検し、 その状況を海面漁業協同組合(以下「漁協」 漁期前の加工場の点検 という。)及び県漁連が定期的に確認するなど、連携した管理体制を構築します。 オ 県産ノリのPR 県産ノリは、県漁連の入札で商社に落札 された後、複数の加工・流通段階を経て販 売されることから、消費者に産地情報等が 十分に提供されていません。県産ノリの知 名度を向上させるため、県漁連では、焼き ノリや味付けノリに加工し、 「ほんに良い味 岡山海苔」ブランド表示を行って販売して きましたが、さらなるブランド化を図るた め、生産地、生産者等の情報をわかりやす 初摘みノリのブランド化 く表示し、厳選した最高品質の初摘みノリ の販売を行っています。県は、ホームページやイベント等を活用して県内外の消 費者に対して、県産ノリの特徴やおいしさをPRします。 26 ノリ養殖の作業工程 さいびょう 1 採 苗 (10月) 陸上の水槽内でノリ網を巻いた水車を回転させ、 かくほうし 網に種(殻 胞 子 )を付着させます。 いくびょう 2 育 苗 (10~11月) 採苗後の網を5~10枚重ねて、海面に張り込 みます。網を毎日数時間干し上げ、健全なノリ芽 に育てます。 ほんばり 本張り(11月) 育苗が終わった網を1枚ずつ張り直します。 岡山県では、浮きで網を海面に浮かす「浮流し」 養殖が主流です。 3 4 刈取り(11~翌年3月) 伸びてきたノリ葉体を1~2週間おきに刈り取り ます。養殖期間中、10数回程度刈り取ります。 5 加工(11~翌年3月) 刈り取ったノリを陸上の加工場に運び、全自動乾 燥機で乾ノリに加工します。 6 入札(12~翌年3月) 乾ノリを箱詰めして出荷します。集荷されたノリ は、箱ごとに等級が付けられた後、入札にかけられ、 値段が決まります。 27 (2)カキ養殖業対策 ア 安定生産及び品質向上 漁協と連携して、漁場の海水及びカキを定期的に採取し、海水中のクロロフィ ル量、カキ殻の成長、身入りや生残率等のモニタリングを行います。得られたデ ータを基にして、筏の配置の見直しや垂下連数の減少など、漁場環境に応じた養 殖方法を検討し、安定生産及び品質の向上に努めます。 また、筏から海底に落下した、いわゆる「落ちガキ」やカキの排せつ物等が堆 積すると海底環境の悪化を招くため、漁業者は、海底耕うんを兼ねて底びき網に よる「落ちガキ」の回収を行っており、この活動を引き続き推進します。 イ 衛生管理 食の安全・安心に対する消費者の関心が 高まる中、県漁連等ではノロウイルスや大 腸菌などの検査を行い、衛生管理に努めて います。また、トレーサビリティシステム* により、消費者が購入した商品の養殖海域 や検査履歴を検索できるようにしています。 県は、ノロウイルスや貝毒*のモニタリン グを実施するとともに、県漁連等が実施す るノロウイルス検査に対して支援を行って おり、引き続き、現在の衛生管理体制を維 トレーサビリティシステム 持します。 ウ 県産カキのPR 県産カキは、餌となる植物プランクトン が豊富な海域で養殖されるため成長が速く、 垂下してから1年以内に出荷する、いわゆ る「1年カキ」が主流となっています。ま た、養殖する全ての漁場が生食出荷に適し た清浄な海域であり、このような海域で育 つカキは、甘みのあるくせのない味わいが 特徴となっています。 生産者で組織する「岡山かき流通対策協 カキのPRレシピ 議会」において、県産カキを「岡山かき」 としてブランド化し、レシピやパンフレットを作成してPRを行っていますが、 引き続き、これらの取組に対して支援を行うほか、ホームページやイベント等を 活用して県内外の消費者に対して、県産カキの特徴やおいしさをPRします。 28 エ 種苗の安定確保 東部地区では、養殖に使用する種苗の7 割程度を漁業者自らが採取し、残りの3割 を県外から購入していますが、西部地区で は、すべてを県内外から購入しています。 他県での採苗不調に対するリスク回避のた め、 東部地区では種苗の採取量を増加させ、 西部地区では種苗採取の可能性について検 討し、種苗の安定確保につなげます。 カキの種苗 オ 疾病対策 ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ*による赤潮やカキヘルペスウイルス1 型変異株感染症*などの持込みによる漁業被害発生の危険性があります。そのた め、種苗導入の方法について指導するとともに漁場のモニタリング等を行い、発 生時には被害の拡大防止について指導します。 カ 廃筏の再資源化 養殖で使用する筏は、老朽化により通常 5年程度で廃棄処分されていますが、一部 の地区では、この廃筏をチップ化し、バイ オマス発電の燃料等として再利用すること を目指しています。 このような廃筏の再資源化について、企 業と連携するなど、新たな活用方法を検討 します。 破砕機による廃筏のチップ化 29 カキ養殖の作業工程 1 採苗(7~8月) ホタテガイの貝殻を海中に吊るし、カキの幼生を 付着させます。1枚の貝殻に100個以上の幼生が 付着します。 2 抑制(8~翌年4月) 採苗したカキを岸際に設置した抑制棚に垂下し、 翌年の春まで育てます。干満差を利用して一日数時 間干出させることで健全なカキに育てます。 3 本垂下(4~5月) カキをロープに挟みこみ、筏に垂下します。秋ま で餌の少ない内湾で育てることで成熟を抑制し、産 卵・放精による疲弊死を防ぎます。 4 沖出し(9~10月) 餌の多い沖合漁場へ筏を移動させ、カキの身入り を良くします。 5 取揚げ・出荷(10~翌年4月) 成長したカキを筏から取り揚げ、加工場に持ち帰 ります。加工場で殻をむいて出荷します。また、一 部は殻付きカキとして出荷します。 30 (3)その他の養殖対策 ア 疾病等の防除 一部の地区では、ヒラメ、トラフグ、アサリ等の養殖が営まれています。これ らの養殖に用いる種苗は、すべて県外から導入していることから、クドア・セプ テンプンクタータ *やカイヤドリウミグモ * 等の疾病の持込みの危険性がありま す。 そのため、種苗導入時の検査の徹底について指導するとともに、不調等がみら れた際には診断を行い、その対処方法について指導します。 クドア・セプテンプンクタータ カイヤドリウミグモ イ モガイ養殖の不漁原因究明 西部地区で行われているモガイ養殖については、近年、不漁が続いており、漁 業者と連携して不漁原因を解明するための調査を行っています。 引き続き、漁業者と連携して調査、研究を行い、モガイの安定生産につなげま す。 ウ 新しい養殖魚種の検討 本県で既に行われているノリ、カキ、ヒラメ等に加え、新たな養殖魚種の可能 性について検討を行います。 (4)魚食普及の推進 (mg/100g) ア 地魚のおいしさの科学的検証 地魚の付加価値向上、消費拡大を図るた め、マダイ、スズキ、キジハタ等の12種 4,000 3,000 について筋肉中の脂肪、遊離アミノ酸量等 を調査し、地魚の旬を科学的に解明しまし た。今後は、新たに味覚センサー *も用い て、より詳細に味覚特性を把握し、 “おいし さの見える化”に取り組みます。また、得 られた結果は、ホームページや流通関係者 と連携して作成するPOP広告等により広 31 2,000 1,000 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 雌ガザミの旨味成分の月別変化 (筋肉中の遊離アミノ酸量) く発信し、おいしい地魚のPRに努めます。 イ 旬の地魚や料理方法等のPR 複雑な潮流と豊富な餌で育った地魚は、 身がしまり味が良いと言われており、魚種 ごとの漁獲量は少ないものの、季節ごとに 旬となる魚介類があります。漁協直売所等 において、地魚の特徴や調理方法を消費者 に直接伝えることでその魅力をPRします。 また、漁協女性部と連携して、栄養士や 栄養委員に対して地魚の魅力や料理方法等 を紹介し、栄養士等を通じて栄養特性等も 含めた情報提供を広く消費者に行うことで、 栄養委員への地魚の魅力紹介 地魚の普及を図ります。併せて、季節ごとの旬の地魚や料理方法について、ホー ムページやレシピ掲載サイト等を活用したPR活動に取り組みます。 ウ 未利用・低利用魚の活用 食味は優れているが、 「小骨が多い」 「調理がしにくい」などの理由から未利用・ 低利用となっている魚について、栄養士や食品加工会社等と連携して、これらを 活用した加工品を開発することにより地域特産物としての定着を図ります。 (5)流通改善 ア 一次加工、活けじめ等の取組 漁獲量が多いために単価が低い魚種に ついては、漁協等において、通常出荷して いる市場以外への出荷や、一次加工後の出 荷などの可能性を検討します。 また、個々の漁業者が行う漁獲物の品質 向上の取組として、市場等の流通関係者の 意見を聞きながら、活けじめ方法の改善等、 漁獲物の取扱い方法の見直しについて助言 を行います。 32 活けじめ方法の勉強会 3 活力ある漁村づくり (1)漁業経営の改善 ア 浜の活力再生プランの推進 「浜の活力再生プラン*」を沿岸7地区 平成26年度に、漁業者と市が連携し、 において策定しました。さらに平成28年度には、「浜の活力再生広域プラン *」 を県下3地区において策定しました。これらの取組が円滑に実施されるように国 の施策を活用しながら取組を推進します。 浜の活力再生プランの概要(水産庁ホームページより) イ 収入対策及び支出対策 収入対策として、養殖業と漁船漁業又は数種類の漁業種類を組み合わせた複合 経営や漁業共済制度を活用した収入安定対策事業への参加を漁業者に促します。 また、支出対策として、漁業経営セーフティーネット構築事業*等の活用、制 度資金等の活用による機器の導入、省エネ運転による燃料油消費量削減等の取組 を推進します。 ウ 共同利用施設の整備 これまで、漁業生産の効率化や衛生管理 機能の向上等を目指し、荷さばき施設やカ キ加工処理施設等の共同利用施設の整備を 支援しており、引き続き、必要となる支援 を行います。 (2)担い手の育成 ア 共同利用施設(カキ加工処理施設) 研修会等の開催 本県では、新規就業者の多くが漁業者の 子弟です。新規就業者が安心して働くこと ができ、自立した漁業者へと成長するため には、 それぞれの地域に応じた情報の提供、 技術指導を行う必要があります。そこで、 若手漁業者で構成する漁協青壮年部や指導 的漁業者で構成する漁業士会との交流、研 修会、地域のイベント等への積極的な参加 を促し、学習の機会を提供します。 若手漁業者を対象とした研修会 また、魚価向上のための鮮度向上技術や 33 養殖方法についての先進的事例等に関する研修会を実施し、漁業者の技術の向上 を目指します。 (3)漁協等の基盤強化 ア 合併等に対する指導 漁協は漁業権の管理のほか、販売事業や購買事業等により漁業者の経済活動を 多岐にわたって支えており、本県水産業の振興を図る上で重要な組織です。しか しながら、漁業者の減少等によりその経営基盤は弱体化しているため、合併等に よる基盤強化の取組に対して指導や助言を行います。 (4)安全操業、海難防止 ア 事故防止に関する啓発 本県では一人で出漁する漁業者が多く、漁船 からの転落は重大な事故につながるケースが多 くあります。これまで、ライフジャケットの着 用、防水機能がある携帯電話の携行や漁船から の転落防止用の手すりの設置等を啓発してきま したが、引き続き、海上保安部署や漁協等と連 携を図りながら効果的な啓発を行います。 啓発パンフレット (5)漁村の安全対策 ア 災害対策 大規模な災害の発生に備え、水産物の生産拠点となる漁港において、地震及び 津波に対する安全性を診断し、安全性が不足する箇所について岸壁の耐震化など の対策を講じます。 また、平成16年の台風16号により、県下の多くの沿岸で高潮や波浪による 浸水被害が発生しました。高潮被害から背後地を守り、漁村における安全・安心 な暮らしを確保するために、岡山沿岸海岸保全基本計画 *に基づいて、護岸のか さ上げ等の海岸保全施設*の整備を進めます。 胸壁の整備(左:施工前、右:施工後) 34 イ 漁港施設等の整備 漁業者の高齢化に対応するためには、安全で働きやすい漁港施設を整備する必 要があります。そこで、浮桟橋や照明の設置等、就労環境の向上に資する施設整 備を推進します。 また、水産物を安定的に供給していくためには、漁業活動に必要な漁港の機能 を将来にわたり適切に保つことが必要となります。漁港ごとに策定した機能保全 計画に沿って、早期の段階で予防的な対策を講じることで、維持管理費や更新費 の削減を図ります。 (6)地域資源の活用 ア 地域資源の再発見 漁村における伝統的な魚料理や一般の流通に乗りにくい地魚を提供すること により、漁村にある地域資源の再発見につなげるとともに、漁協による朝市や直 売所での販売、観光漁業、宿泊施設との連携等により、消費者を漁村に呼び込む ための取組を推進します。 漁業者による直接販売 ヒイラギ(ケッケ)の煮つけ イ 子ども達への自然環境学習の展開 自然環境の保全に対する意識を醸成す るため、小学校等と連携してアマモ場再生 活動や海ごみ回収活動に取り組みます。 また、小学生等を対象とした漁業体験イ ベントの開催や水産研究所での見学者の積 極的な受け入れなど、海や漁業に関する理 解を深める取組を推進します。 小学生による漁業体験 35 4 豊かで清らかな川づくり (1)豊かな川づくり ア アユ等の資源回復対策 岡山県内水面漁業協同組合連合会(以下「内漁連」という。)は、平成23年 度に「おかやまの川再生プラン」を策定し、様々な対策を講じることで川を再生 させることを目指しています。 県としても、引き続き放流用アユの種苗生産を行うとともに、アユ等の資源増 し 大のため内漁連等が実施するふ化仔魚放流*等の取組に対する支援、産卵場の保 護等に対する適切な助言を行います。また、産卵時期、場所等の調査を実施し、 必要があると認められる場合には、禁漁期間等の見直しを行います。 し また、アユのふ化仔魚が海へ到達できない事例も確認されていることから、仔 魚の流下に必要な河川流量の確保について、関係機関との調整に努めます。 ふ化仔魚放流(左上はふ化直前の卵) コケを食むアユ イ 河川のモニタリング調査及び資源の減少要因の究明 アユ等の資源は、冷水病等の疾病、工事等による生息環境の変化などによって 減少していると考えられています。そこで、継続的なモニタリング調査を実施し、 河川の状況を把握するとともに、関係機関と協力しながら原因の究明を行い、対 策を検討します。 ウ モクズガニ種苗の安定生産及び効果的な放流手法の研究 平成26年度からモクズガニの種苗生 産を行っていますが、原因不明の大量死が 発生するなど、生産が安定していません。 そのため、他県の優良事例や手法等を参考 にして飼育方法の見直しや改良を行い、安 定生産を目指します。併せて、効果的な放 流手法等について調査、研究を行います。 モクズガニの種苗 36 エ ウナギの資源保護対策 ウナギは全国的に減少しており、資源保 護対策が強く求められています。本県にお いても、これまで内水面漁協により放流が 行われてきましたが、漁獲量は減少傾向に あるため、その原因についての調査に着手 します。 また、養殖用種苗としてのシラスウナギ の採捕について引き続き禁止するととも に、密漁対策として、関係機関と連携した シラスウナギ 取締りを行います。 オ カワウ、外来魚の被害対策 カワウは広範囲に移動することから、中四国地方の関係県と共同で広域的な被 害軽減対策に取り組みます。また、県内においては関係者による協議会を開催し、 情報共有を図るとともに、カワウの生息状況及び被害状況を図示化したマップを 作成するなどして、カワウ個体群の管理と被害の防除に努めます。 ブラックバス等の外来魚については、内水面漁協等が実施する外来魚駆除活動 等を支援するとともに、外来魚の違法放流禁止が厳守されるように指導します。 カワウ テープ張りによるカワウのコロニーの除去 カ 疾病のまん延防止対策 アユに深刻な影響を与える冷水病につ いては、内水面漁協等が中間育成している 稚魚の保菌検査や飼育管理の指導等を通じ て発病の抑制に努めます。また、ニシキゴ イ及びマゴイに甚大な被害を及ぼすおそれ のあるKHV病の発生が確認された場合に 冷水病でへい死したアユ は「岡山県KHV病発生対策マニュアル」 に基づき迅速かつ適切な対応を行い、まん延防止に努めます。 37 キ 内水面漁協の基盤強化 内水面漁協は漁業秩序の維持や適切な漁場管理による内水面資源の増殖に必 要不可欠な組織ですが、資源量の減少、組合員及び遊漁者の減少により経営が弱 体化していることから、内水面漁協間の連携、経営や事業改革、合併等による組 織の基盤強化に対して指導や助言を行います。 ク 内水面養殖業の振興 養殖生産量は減少傾向にありますが、引 き続き、疾病等の情報提供や養殖技術の指 導や助言を行い、内水面養殖業の振興を図 ります。 養殖指導 内水面の漁業による食文化の伝承 岡山県では、古くから川の魚介類を食べ る文化が培われており、食文化を伝承する ためにも、内水面の資源や環境を保護する ことが重要です。また、道の駅や直売所等 では、アユやアマゴといった川魚が販売さ れていることも多く、観光資源としても非 常に重要です。 フナ飯 モクズガニの塩ゆで 焼きハエ(オイカワの素焼き) 38 (2)清らかな川づくり ア 遊漁者確保の取組 内水面漁協等は、遊漁者確保のため、河 川での釣りイベントの開催、釣り場を案内 する看板の設置、広報誌を利用した情報発 信等、様々な取組を行っています。引き続 き、このような取組を支援するとともに、 市町村、内水面漁協等と連携して、川の魅 力を情報発信し、遊漁者確保の取組を進め ます。 釣り場を紹介する看板 イ 地域住民等の活動に対する支援 地域の住民、NPO等が実施するごみ拾 い等の河川愛護ボランティア活動、大学等 が子ども達を対象として実施する内水面 資源や河川環境に関する教育活動、内水面 漁協が行う園児や小学生の放流体験等に 積極的に協力し、川の恵みや水辺の豊かさ の体験等を通じて、水辺への親しみを深め ます。 NPOや大学等との協働での教育活動 ウ 自然に優しい河川整備の促進 多様な生物が生息する豊かな自然環境を維持するため、自然との共生及び環境 との調和に配慮した河川の整備について関係者に協力を求めます。特に、魚道* については、経年変化によりその機能が低下していることがあることから、改修 が行われる際には関係機関と連携した協力を行い、効果的な改修につなげます。 遡上しやすいように改修した魚道(左:改修前、右:改修後) エ 漁業者による森づくり 森林は、水源の涵(かん)養*や河川流量の安定に寄与するほか、土砂流出防 止等の役割もあります。また、落葉等の有機物に由来する栄養塩は、河川を通じ 39 て海に供給され、海域の漁業生産量の維 持に重要な役割を果たしています。この ため、河川の源流域における森林で、海 の漁業者による森づくり活動を推進し ます。 漁業者による植樹活動 40 41 エビ・カニ類 ノリ・植物プランクトン 栄養塩の供給 魚類 漁獲 二枚貝(カキ・アサリ) 市場等 海の恵みの供給 川と海のつながりのイメージ 水揚げ 溯上 堰 産卵 成長 稚アユ アユ ふ化 流下 成長 産卵 レプトケファレス シラスウナギ 溯上 ウナギ 降河 <生産量等の推移と予測> (1)生産量 (t) (十万枚) 8,000 漁船漁業 ノリ養殖業 カキ養殖業 6,000 漁船 予測4,200→目標4,800 4,000 カキ 予測3,200→目標3,500 2,000 ノリ 予測・目標 1,500 0 H10 H12 H14 H16 H18 H20 H22 H24 H26 H28 H30 H33 (2)生産金額 (億円) 45.0 カキ 予測25.9→目標29.0 30.0 漁船 予測21.8→目標25.4 15.0 ノリ 予測10.2→目標12.3 0.0 (3)経営体数 H12 H14 H16 H18 H20 H22 H24 H26 H28 H30 注) (経営体) 1,400 漁船漁業 H33 (経営体) 350 1,200 300 1,000 250 漁船 予測・目標820 800 200 600 150 400 カキ 予測130→目標137 100 200 ノリ 予測52→目標55 0 H10 H12 H14 H16 H18 H20 H22 H24 H26 H28 H30 50 0 H33 注)漁船漁業の経営体数は、前年に比べて急増した平成15年、平成20年の データを除外して近似曲線を作成 42 ノリ養殖業・カキ養殖業 H10 用語集 説 明 ア 【赤ぐされ病】 行 糸状菌がノリ葉体の細胞に寄生して発生する病害のこと。小さな赤さび状のは ん点が次第に大きくなり、病状が進行すると葉体が流失する。高水温期や小潮で 干出時間が短く、かつ低塩分条件下で急速にまん延する。 【アマモ場】 アマモとは、稲に似た細長い葉を持つ多年生の種子植物のことで、水深が比較 的浅く、底が砂や泥の穏やかな場所に繁茂する。アマモが群生した場所をアマモ 場と呼ぶ。 【海ごみ】 河川等に投棄されたものが海に流れ込んだり、海に投棄されたごみのこと。海 岸にたどり着いた「漂着ごみ」、海面に流れ出て漂っている「漂流ごみ」、海底に 堆積した「海底ごみ」の3つに大きく分けられる。 【岡山沿岸海岸保全基本計画】 「海岸の防護」、 「海岸環境の整備及び保全」、 「海岸における公衆の適正な利用」 に配慮した総合的な海岸管理を行うために平成25年度に改訂された計画のこ と。南海トラフ巨大地震等の予測に基づいて、堤防高等の設定を行っている。 カ 【海岸保全施設】 行 海岸保全区域内にある堤防、護岸、胸壁等、海水の侵入又は海水による浸食を 防止するための施設で、高潮や津波等の自然災害から背後地の人命や財産を守る 役割を担っている。 【貝毒】 アサリ、カキなどの二枚貝等が餌として有毒プランクトンを食べることで、毒 素が一時的に蓄積され、貝が毒化すること。これを食べた人が中毒症状を起こす ことがある。下痢性貝毒や麻痺性貝毒などに分類される。 【貝床】 小型二枚貝のホトトギスガイが海底に形成するマット状の群落のこと。多くの 個体が集まり足糸と呼ばれる物質を分泌して絡ませることによって群落を形成す る。ゴカイなどの多毛類が多量に生息し、魚介類の餌場となるため、好漁場とな る。 【かいぼり】 ため池の管理作業の一つで、農閑期にため池の水を抜き、堆積した有機物や土 砂を取り除く作業のこと。他県では、海への栄養塩供給機能に着目して行われて いる事例がある。 【カイヤドリウミグモ】 アサリなどの二枚貝類に寄生する節足動物で、寄生すると宿主の見た目が悪く なり、商品価値を著しく損なう。体液を吸って成長するので、宿主は衰弱し、死 に至ることがある。東京湾では、本種の寄生が原因でアサリが大量死した事例が ある。 43 カ 【カキ礁】 行 主に泥質干潟に形成されるカキ類の群落のこと。生息するカキの上に新たなカ キが付着するため、立体的な構造となる。 小型生物の生息場所となるほか、多くのカキが海水を濾過することから、その 浄化能力は非常に高い。 【カキヘルペスウイルス1型変異株感染症】 マガキのウイルス感染症で、幼生から稚貝の感受性が高く、主に高水温期に発 生する。発症は急性で、感染から1週間程度で死亡する。なお、マガキ以外の貝 類には感染しない。 本症は、ヨーロッパ等での発生事例はあるが、日本では確認されていない。 【ガラモ場】 ガラモとは、褐藻類のホンダワラ科に属する海藻の総称で、岩などに付着し、 大きい種では数メートルに生長する。空気を含んだ気泡と呼ばれる器官を持ち、 浮力により海中に立ち上がることができる。ガラモが群生した場所をガラモ場と 呼ぶ。 本県のガラモ場では、アカモク、ヒジキ、タマハハキモク、ノコギリモク等が 見られる。 【機能保全計画】 施設の老朽化が進行した後に修繕等を行う「事後保全」中心の維持管理から、 早期の段階で予防的な修繕等を実施する「予防保全」を取り入れた戦略的な維持 管理への転換により、施設の有効活用やコスト縮減を図り、施設の長寿命化のた めに策定する計画のこと。 【強熱減量】 試料を高温で加熱して有機物を焼失させた後の減量重量のこと。有機物の総量 の指標となる。 【漁業経営セーフティーネット構築事業】 漁業者と国の資金拠出により、燃油価格や配合飼料価格が高騰したときに補塡 金を交付し、経営の安定を図るための事業である。 【魚道】 サケ・マス類、アユ、ウナギなど河川の上流と下流を移動する習性をもつ魚の通 行が、ダムやえん堤などの障害物によって妨げられる場合に、これらの魚が往来 できるように設けられる通路のこと。 魚の種類や地形に応じて、いろいろな構造のものがある。 【クドア・セプテンプンクタータ】 魚の筋肉に寄生する粘液胞子虫と呼ばれる寄生虫の一種で食中毒の原因とな る。本種による食中毒は、生鮮ヒラメに関連するものが多く、食後数時間程度で 一過性のおう吐や下痢を発症するが、軽症で終わり、速やかに回復する。 【クロロフィル量】 植物、藻類等に広く含まれる光合成色素の一種で、海中のクロロフィル量は、 植物プランクトン量の目安としている。 44 カ 【コイヘルペスウイルス病】 行 ニシキゴイ、マゴイに高い致死性を示す伝染病で、水温が20~25℃程度で 発生しやすいため、主に春と秋に発生がみられる。コイ以外の魚や人には感染し ない。 県内では、平成15年に初めて発生し、その後も河川などの天然水域、養殖場 などで発生している。 【5中3平均値】 直前5年間のうち、高値1年分と低値1年分を除いた3年間分の平均値のこと。 サ 【資源管理型漁業】 行 水産資源を適切に管理し、持続的に利用していくための取組のこと。漁業許可 のように国や県などの公的機関が行うものと、漁業者が自主的に行うものに大き く分けられる。本県では、漁業者が自主的に底びき網の網目の拡大やガザミのサ イズ制限等を取り決めるなどの漁獲制限を行っている。 【水源の涵(かん)養】 樹木や土壌が水を保持し、大雨が降った時の急激な河川等の増水を抑え、しば らく雨が降らなくても水の流出が途絶えないようにするなど、水源山地から河川 に流れ出る水量や時期に関わる機能のこと。 【浅海定線調査】 毎月1回、設定した定点で水温、塩分、透明度、栄養塩濃度などを測定する調 査のこと。本県海域の水質を把握するための基礎データの収集を目的として昭和 47年度から実施している。 タ 【トレーサビリティーシステム】 行 トレーサビリティ(traceability)とは「trace」(追跡、足跡)と「ability」 (可能性、能力)を組み合わせた造語で、食品の生産履歴、加工・流通履歴など を必要なときに遡って確認できるシステムのこと。 ハ 【浜の活力再生広域プラン】 行 浜の活力再生プランの取組と併せて、競争力強化を図るため、広域の漁村地域 が連携して、市場機能の集約や流通の合理化による浜の機能再編、中核的担い手 の育成等を推進するための具体的な取組を漁業者が策定する計画のこと。 【浜の活力再生プラン】 漁業所得の向上を通じた漁村地域の活性化を目指し、具体的な取組を実行するた めに漁業者が策定する総合的な計画のこと。 【ふ化仔魚放流】 ふ化直前のアユの受精卵を河川に設置し、ふ化仔魚を直接河川に放流する方法 のこと。河川の下流で行うことで、海への流下にかかる日数が短縮し、生残率の 向上が期待される。 【ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ】 二枚貝類を特異的に死亡させる渦鞭毛藻類のプランクトンのこと。過去に他県 ではこの種の赤潮が発生し、カキや真珠の養殖などに大きな被害が出たが、本県 での被害報告はない。 45 ハ 【母藻投入】 行 ガラモ場造成手法の1つで、成熟した藻体(母藻)を網袋やゴムバンドなどで コンクリートブロック等に固定して海中に投入し、胞子や遊走子を供給する方法 のこと。 マ 【味覚センサー】 行 味覚を定量的な数値データとして出力できる機械のこと。 「酸味」、 「苦味」、 「甘 味」、「塩味」、「旨味」、「渋味」の6項目が数値化され、客観的に表現することが できる。 【藻場】 海藻又は海草の群落で、海草のアマモ類が主体の「アマモ場」、褐藻のホンダワ ラ類が主体の「ガラモ場」、大型褐藻のコンブ類が主体の「コンブ場」等がある。 光合成による一次生産だけでなく、多様な生物のすみかや隠れ場となり、産卵場、 稚仔の育成場、餌場としても利用されるほか、光合成による酸素の放出などの効 果がある。 ヤ 【溶存態無機窒素】 行 水中に溶けている無機態の窒素のこと。植物プランクトン等の増殖に必要な成 分で、食物連鎖を支える重要な役割を担っている。 ラ 【冷水病】 行 フラボバクテリウム属細菌による感染症で、アユに深刻な被害を与える。水温 が低い状態で発症するため、冷水病といわれ、体側や尾柄部の筋肉に壊死を伴っ た潰瘍が認められる。 46
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