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Title
長崎大学の3箇所のキャンパスにおけるエネルギー消費に関する調
査研究
Author(s)
源城, かほり; 大脇, 崇
Citation
長崎大学大学院工学研究科研究報告, 47(88), pp.13-16; 2017
Issue Date
2017-01
URL
http://hdl.handle.net/10069/37010
Right
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長崎大学工学研究科研究報告 第47 巻 第88 号 平成29 年1 月
長崎大学の 3 箇所のキャンパスにおける
エネルギー消費に関する調査研究
源城かほり * ・大脇崇 **
Research on Energy Consumption at Three Campuses of Nagasaki University
by
Kahori GENJO*, Takashi OWAKI**
The objective of this study is to clarify energy consumption at three campuses of Nagasaki
University. Firstly, annual primary energy consumption trend through 2003 to 2014 are analyzed by
energy source, i.e., electricity, gas, heavy oil, kerosene. Secondly, energy consumption and utility
cost for each energy source are compared among three campuses. Finally, annual primary energy
consumptions, annual primary energy consumptions per unit floor area and annual primary energy
consumptions per head in 2014 of three campuses are compared.
Key words : university, campus, energy consumption, primary energy consumption
1.はじめに
大学という大型建築物が消費するエネルギーは膨大
2.1
対象キャンパス
対象としたのは,1949 年創立の国立大学法人長崎大
であり,エネルギー資源の枯渇や地球温暖化が深刻化
学であり,文教キャンパス(以下,文教 C),坂本キャ
している現在,省エネルギー化は極めて重要である。
ンパス(以下,坂本 C),片淵キャンパス(以下,片淵 C)
建物のエネルギー消費の実態を把握することは省エ
の 3 つのキャンパスを調査対象とする。坂本 C は医学
ネルギー推進の第一歩となる。これまでに大学キャン
部のある坂本 C1 と歯学部,大学附属病院のある坂本
パスを対象としたエネルギー消費の実態やその特性
C2 の 2 つに分かれる。各キャンパスの建物概要(2015
を明らかにした研究事例がいくつか報告されている。
年度)を Table 1 に示す。9 つの学部が設置されており,
例えば,永峰らはエネルギー消費の長期間の記録を調
その他に附属図書館や,附属病院などが設置されてい
査し,消費量に影響を与える要因を重回帰分析によっ
る。なお,文教 C には,附属小学校や附属幼稚園もあ
て検討し,明らかにしている 文 1) 。また,菊田らは大規
るが,大学外の施設であるため,除外して分析する。
各キャンパスの熱源は電力,ガス,重油,灯油の 4
模総合大学キャンパスのエネルギー消費構造を分析
し,論じている 文 2) 。しかし,大学のような大型建築物
は用途も様々であり,大学ごとにエネルギー消費特性
が全く異なる。そこで,本研究では長崎大学の 3 箇所
のキャンパスを対象としてその実態を調査し,省エネ
ルギーの推進に向けた基礎資料として整備すること
を目的とする。
2.調査概要
種類である。
2.2
調査方法
電力に関しては,長崎大学事務局の施設部が運用し
ている,電力使用状況の見える化を目的とした電力速
報システムによって収集されたデータを使用して調査
する。本システムは,各電気室における消費量の把握
が可能であり,年報,月報,日報と最小 1 時間毎の消
費量を閲覧することができる。本システムは片淵 C で
平成28年12月 9日受理
*
システム科学部門(Division of System Science)
**
工学部構造工学コース(School of Engineering, Structural Engineering Program)
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源城かほり・大脇崇
は採用されていないため,片淵 C の電力に関しては,
Table 1
各キャンパスの概要(2015 年度)
各月の光熱費請求資料に基づいて調査する。
ガス,灯油,重油に関しては,電力のようなリアル
タイムに消費量を把握できるシステムがないため,各
月の光熱費請求資料を基に検討する。
これらのデータが得られた期間を Table 2 に示す。
文教キャンパス
所在地
長崎市坂本
敷地面積
187125㎡
91231㎡
86807㎡
51843㎡
建物延面積
120775㎡
55018㎡
169771㎡
16422㎡
1724人
学生・
教職員数
学生数
4931人
1331人
308人
310人
369人
244人
59人
合計
5241人
1700人
552人
1783人
教育学部・工学部・
薬学部・環境科学部・
水産学部・
医学部・
歯学部・
多文化社会学部・
動物実験施設・
病院(医学・歯学)
附属図書館・事務局棟・ 熱帯医学研究所
学生会館・
データセンター
大学全体における 1 次エネルギー消費量
大学全体の年間 1 次エネルギー消費量の 2003 年度以
Table 2
長崎市片淵
教職員数
学部・主な施設
降 12 年間の推移を Fig. 1 に示す。なお,熱源別エネ
片淵キャンパス
長崎市坂本
3.調査結果
3.1
坂本1キャンパス 坂本2キャンパス
長崎市文教町
経済学部・
附属図書館(分
館)
エネルギー消費データの取得期間
ルギー換算係数については電気 9.97GJ/MWh,ガス(都
市ガス 13A)46.2GJ/km3,重油 39.1GJ/kL,灯油 36.7GJ/kL
を用いる。
大学 全 体の 年 間 1 次 エ ネ ルギ ー 消費 量 は, 500~
文教キャンパス
2010年1月~現在
坂本キャンパス
2011年6月~現在
電力速報システム
電力:2004年4月~2015年3月
光熱費請求資料
600TJ/年で推移し,過去 10 年で見ると増加しており,
ガス:2006年4月~2015年3月
重油・灯油:2007年4月~2015年3月
過去 5 年で見ると減少傾向にある。2008 年度以降,ガ
ス消費量が格段に増加し,全体の消費量も増加してい
る。これは,大学附属病院における新病棟の増築開院
や,学部棟でのガス式空調機の多数導入によるものだ
と考えられる。また,2011 年度~2012 年度にかけて大
学全体の年間 1 次エネルギー消費量に減少が見られる
が,これは各建物における省エネルギー対策の取り組
みのほか,病院本館のボイラー熱源を重油から都市ガ
スへ変換したことによるものと推測される。Fig. 1 よ
り各年とも電力の占める割合が 75%以上と高く,電力
の削減が重要であると言える。
3.2
各キャンパスにおける電力消費量及び使用料金
各キャンパスにおける電力消費量の推移を Fig. 2
に示す。電力消費量は毎年 50%以上を附属病院の立地
Fig. 1
大学全体の年間 1 次エネルギー消費量の推移
する坂本 C2 が占め,25,000MWh/年と最も多く,続い
て文教 C,坂本 C1 の順に多い。また,片淵 C は他の
キャンパスに比べ,電力消費量が非常に小さい。この
原因として,片渕 C が経済学部という文系学部である
ことが影響していると推測される。
推移としては,坂本 C2 は 2007 年以降の電力消費量
増加が他のキャンパスに比べ大きいが,これは,附属
病院増設部分の本格稼働によると考えられる。
各キャンパスにおける電力使用料金の推移を Fig. 3
に示す。なお,坂本 C については坂本 C1,坂本 C2 を
合算した使用料金データしか入手できなかったため,
合算した値を坂本 C として示す。近年,電力消費量の
Fig.2
各キャンパスの電力消費量の推移
増加は緩やかであるにもかかわらず,料金の増加は顕
著である。電力使用料金は 2007 年以降の 8 年間で 4
28%値上がりされたことが大きく影響している。電力
億 6 千万円から 7 億円を超えるまでに増加している。
使用料金の急増からも電力の省エネルギーが急務であ
これには,料金単価が 2012 年度から 2014 年度までに
ると言える。
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長崎大学の3箇所のキャンパスにおけるエネルギー消費に関する調査研究
3.3
各キャンパスにおけるガス消費量及び使用料金
各キャンパスにおけるガス消費量の推移を Fig. 4
に示す。3 キャンパスのガス消費量の合計は 600km3/
年から 2700km3/年の範囲にある。2008 年以降,ガス消
費量が前年度に比べ急増しているが,これは大学附属
病院の本格稼動や,ガス式空調機の導入によるものと
考えられる。次に,ガス消費量は 2010 年及び 2013 年
度においても増加が見られる。2014 年度のガス消費量
は 2008 年のそれに比べ 46%増加している。同じ期間
における 3 箇所のキャンパスの延床面積の合計値は 7
年間で 18%増加しているが,それ以上の増加がガス消
Fig.3
各キャンパスの電力使用料金の推移
費量で見られるのは,各所で空調熱源を電力や重油か
らガスへ転換したことが大きな要因と推測される。ガ
ス使用量のキャンパス別内訳は,2007 年度において,
文教 C 54%と半分以上を占め,坂本 C1 11%,坂本 C2
33%,片淵 C 1%であったが,その後 2014 年度には坂
本 C2 が 75%と大半を占め,使用量そのものも急増し,
残りは文教 C 14%,坂本 C1 11%,片淵 C 1%となって
いる。
各キャンパスにおけるガス使用料金の推移を Fig. 5
に示す。ガス使用料金は 2007 年以降の 8 年間で 7 千万
円から 3 億円の範囲にある。2012 年度から 2013 年度
Fig.4
各キャンパスのガス消費量の推移
以降にかけて使用料金の増加が著しいが,これは 2014
年度におけるガス使用料金の単価が 2012 年度のそれ
に比べ,20%値上がりしたことが影響していると考え
られる。ガスについても,電力と同様,省エネルギー
への努力が必要であると言える。
3.4
各キャンパスにおける重油・灯油消費量及び使用
料金
各キャ ンパス におけ る重 油・灯油 消費量 の推移 を
Fig. 6 に示す。重油は文教 C と坂本 C にて使用され
ているが,灯油は島原の研修センターにおいてのみ使
Fig.5
各キャンパスのガス使用料金の推移
用されており,その消費量は 6.3~12kL/年と少量であ
る。重油に関しては 2007 年度において 2000kL/年の消
費があったが,2014 年度には 400kL/年と 20%程度に
まで減少している。2010 年度までの減少に比べ,2011
年度以降は緩やかに減少している。重油の減少要因は,
地球温暖化ガスの削減を目的とした重油からガスへの
転換によるものであり,具体的には 2008 年度において
坂本 C1 に立地する動物実験施設における空調設備の
熱源を灯油からガスへ変更したことや,2010 年度にお
いて附属病院の立地する坂本 C2 でのボイラー設備の
熱源をガスに変更したことなどが挙げられる。2011 年
Fig.6
各キャンパスの重油・灯油消費量の推移
度についてもボイラー設備稼働台数の削減や,省エネ
ルギーへの取り組みにより電力消費量の原単位が減少
もあって重油の消費量は減少の一途を辿っている。
し,自家発電に使用する重油消費量が削減されたこと
2014 年度における重油・灯油の合算値は 2007 年度のそ
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源城かほり・大脇崇
れに比べ 80%の減少が見られる。
重油・灯油使用料金については図示はしないが,2008
年度において大学全体で 1 億 6000 万円であった使用料
金が,2014 年度において 3000 万円程度まで減少して
おり,ガスへの熱源の転換が進んだことがわかる。
3.5
3 箇所のキャンパス間の 1 次エネルギー消費量の
比較と分析
2014 年度における各キャンパスの年積算 1 次エネル
ギー消費量及び人数と延床面積を Fig. 7 に示す。人数
Fig.7
各キャンパスの年積算 1 次エネルギー消費量
及び人数と延床面積(2014 年度)
には教職員数と学部生,大学院生を合算した値を用い
ている。但し,坂本 C1,C2 の人数には大学病院の医
師,スタッフ,患者や研究施設で活動する教職員数が
正確には含まれていないため,参考値と考える。Fig. 7
より,2014 年度における大学全体の年積算 1 次エネル
ギー消費量は 591TJ/年であり,キャンパス別内訳は大
学病院の立地する坂本 C2 が 356TJ/年と最も多く,大
学全体の消費量の 60%を占めている。その他のキャン
パスが大学全体の消費量に占める割合は,文教 C が
20%,坂本 C1 が 17%であり,片淵 C は 1%に止まる。
Fig.8
各キャンパスにおける単位床面積当たり
の年積算 1 次エネルギー消費量(2014 年)
3 箇所のキャンパス中,人数は文教 C が最も多く,延
床面積は坂本 C2 が最も大きい。
次に,2014 年度における各キャンパスの単位床面積
当たり及び 1 人当たりの年積算 1 次エネルギー消費量
をそれぞれ Fig. 8,Fig. 9 に示す。単位床面積当たり
の年積算 1 次エネルギー消費量は坂本 C2 が 2.1GJ/m2
年と最も大きい。文教 C は他のキャンパスに比べ人数,
延床面積ともに大きいわりに年積算 1 次エネルギー消
費量が抑えられている。坂本 C1 は延床面積が他のキ
ャンパスに比べて小さいにもかかわらず,文教 C と同
等のエネルギーを消費している。坂本 C2 は延床面積
Fig.9
各キャンパスにおける 1 人当たりの年積
算 1 次エネルギー消費量(2014 年)
が大きいためエネルギー消費量が非常に大きいが,単
位床面積当たりのエネルギー消費量も他のキャンパス
ため,抑制が必要である。2014 年度におけるエネル
に比べて大きい。文系学部(経済学部)の立地する片淵
ギー使用料金は電力 7 億円,ガス 3 億円,重油・灯油
キャンパスは単位床面積当たり,1 人当たりのエネル
0.3 億円と年間で 10 億円を超えており,省エネルギー
ギー消費量共に 3 箇所のキャンパス中最も小さい。
の推進が急務の課題である。
4.まとめ
参考文献
本学のエネルギー消費実態を大学全体,キャンパス
1) 永峯章,高草木明,成實悠樹,吉野大輔:東洋大学
別,熱源別に示した。大学全体の年間 1 次エネルギー
の4箇所のキャンパスにおけるエネルギー消費量に
消費量は,2003 年~2014 年の間,500~600TJ/年で推
関する調査研究,日本建築学会環境系論文集,第75
移しており,電力の占める割合が 75%以上と高い。
巻,第653号,pp.661-668,2010.
2014 年度における大学全体の年積算 1 次エネルギー消
2) 菊田弘輝,羽山広文:大規模総合大学キャンパスの
費量は 591TJ/年であり,キャンパス別内訳は大学病院
エネルギー消費構造の分析
の立地する坂本キャパス 2 が 60%を占めており最も高
ンパスを対象として,日本建築学会環境系論文集,
い。同キャンパスは単位床面積当たりの消費量も高い
第80巻,第711号,pp.461-469,2015.
北海道大学札幌キャ