<参考資料> 県内ヒノキ雄花の着花量調査について 1 ヒノキ花粉の飛散予測について ヒノキの花粉は、スギよりもやや遅い3~4月にかけて飛散しますが、ヒノキはスギ同 様に花粉症の原因植物で、スギ花粉症患者の7~8割がヒノキ花粉でも陽性反応を 示します(注1)。 また、スギよりも植栽された時期のピークが新しく、近年、雄花を着ける樹齢に次々 と達してきたことから、花粉飛散量も増加傾向にあり、平成 26 年春には大手町や横浜 の観測で初めてヒノキの花粉飛散量がスギを上回り、ヒノキを単独で予測する必要性 が生じています。 このため、県では平成 24 年度から林野庁の調査事業で、ヒノキの雄花量の調査を 試行しています。今回の調査方法は、林野庁の調査事業で検討中のもので(注2)、 ヒノキ雄花はゴマ粒大(5mm 程度、記者発表資料写真参照)で、スギに比べ極めて小 さいことから、雄花が判断できる 12 月以降に調査を行い、調査を容易に行うために調 査林を見通しのよいヒノキ林(記者発表資料写真参照)に限定し、調査木を固定する ことで年次間の比較を行えるように配慮して実施しております。ヒノキの雄花による飛 散予測として昨年初めて行い、全国で唯一の公表となります。 2 ヒノキ雄花の着花量の調査結果と年次比較 今回の結果は、昨年から減少し一昨年度とほぼ同等で、調査を始めてから最も低 い着花点数となりました(図1)。 着 花 点 数 また、地域別の着花点数は、県北部が 46.8 点とやや県内平均値より高くなっていま すが、これまでの調査でいずれも同地区が最高の値になっていることから、地域的な 差ではなく、元々雄花が多い調査地を選定した可能性があります(図2)。今後の調査 により解明していく予定です。 着 花 点 数 3 雄花の着花量減少の原因について 一般に、ヒノキ雄花の着花形成は、スギ同様に花粉が飛散する前年の夏(7~8月) の気象条件との相関が高いとされています。高温少雨で、日照時間が多い気象条件 は、着花形成が促進され、雄花が多く着く傾向がみられます(図3)。 図3 保全センター所内のヒノキ花粉飛散量と前年7~8月の日照時間の関係 平成 28 年夏の気象(横浜地方気象台「海老名観測所」)は、7月の平均気温は平年 の 100%で平年並み、降水量は 96%と平年より少ないものの、日照時間は平年の 98%と雄花がやや少なくなる気象条件となりました。一方、8月の平均気温は平年の 102%と平年並みですが、降水量は平年の 167%と多く、日照時間は平年の 94%と雄 花が少なくなる気象条件となりました。今回の着花点数は、データ数が少なく気象要因 との関係はまだ得られていませんが、8月の日照時間が短くなった影響で着花量がや や少なくなった可能性があります。 4 平成 29 年春の花粉飛散量の予想について 今回調査の結果が一昨年とほぼ同等であることから、別に平成3年から小田原市久 野のヒノキ林で行っている、飛散後落ちてきた雄花を捕捉する雄花トラップによる雄花 量調査(図4)について、一昨年とほぼ同等とすると、平成 29 年春は 6,241 個/㎡程度 になると予測されます。これは 25 年間の平均 10,471 個/㎡を下回り少ない雄花量とな ります。 また、平成 13 年度から当センター施設内のスギ・ヒノキ林において実施している花 粉飛散量調査(図5)について、一昨年とほぼ同等とすると、平成 29 年春は平成 27 年 春のヒノキ花粉飛散数 1,279 個/㎡程度になると予測されます。これは平均の 3,144 個 /㎡の半分以下で少ない飛散数となります。 こうした過年の調査数値との比較から、平成 29 年春の花粉飛散量は、昨年(平成 28 年春)と比べると減少し、例年よりやや少なくなると予想されます。 平成 20 年度から当センターのホームページでスギ・ヒノキの1日ごとの花粉飛散量 のデータを公開しています。 http://www.agri-kanagawa.jp/sinrinken/index.asp (研究企画部トップページからリンクいたします。) 5 その他の花粉対策について 併せて、当センターでは、花粉の発生源対策として「花粉の少ないスギ・ヒノキの品 種」の選抜と実用化を行っています。現在、県内で生産されているスギ・ヒノキの苗木 は、全て「花粉の少ないスギ・ヒノキ」となっています。さらに、全く花粉を飛散させない 「無花粉スギ・ヒノキ」の開発も進めており、無花粉スギは、平成 29 年春に 5,000 本程 度の苗木を出荷できる見込みです。事業的に無花粉スギを生産しているのは、富山 県と神奈川県のみです。また、平成 25 年に全国で初めて無花粉ヒノキを発見し、実用 化研究を進めています。 (注1) 齋藤洋三・井手武(1994)花粉症の科学、科学同人、京都 (注2) (一社)全国林業改良普及協会(2014)平成25年度森林環境保全総合対策事業 スギ・ヒノキ花粉発生源地域推定事業報告書(平成 21 年~25 年度)、(一社)全 国林業改良普及協会(林野庁補助事業)、東京
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