2. 右心系の描出 4. 右室機能評価 1. AR波;心房収縮による逆行性血流

1. 解剖
1. 右室:
1. 自由壁と中隔から構成される非対称な三日月形をしている
2. 右室拡張期径:23-36mm 左室拡張期径の60%未満。
3. 右室面積 拡張期10-20c㎡ 収縮期5-12c㎡ 面積変化率31-57%
4. 後下行枝が後壁、下壁に血流供給
5. 容量は右室の方が左室より大きい
6. 心筋質量は左室の1/6 コンプライアンスがよい 仕事量が少ない
7. coronary flow は全周期で
8. 急激な圧負荷に耐えられない(後負荷に弱い)
9. 左室の影響を大きく受ける
1. 左室を動かすだけで右室機能の68%が維持される
2. 左室の影響が大きい 左室と右室の差が100mmHgくらいあるとうまく動く
3. 圧の差が下がると中隔が有効に働かない 球形の右室二なる
10. 肉柱
1. Moderator bandはほとんどの健常人に存在し、下壁中隔から右室前壁まで伸びている
2. 中隔肉柱
11. 部位の名称
1. 流入部 三尖弁下
2. 心尖部 洞部
3. 流出部 ろうと部
2. 右房:
1. 上大静脈が右房上壁の右前方部から、下大静脈が下壁の右後方部から入る
2. 右房横径:25-42mm(若い人の方が大きい傾向)、右房縦径:36-53mm
3. 三尖弁輪が右房の下方部分を形成し、冠静脈洞がこの構造の直上で右房に開放する
4. ユースタキ弁:右静脈洞の弁の遺残 IVC近傍
5. キアリネットワーク:左ないし右静脈洞弁の遺残 いくつも窓が開いた紐状の構造物 右房内
3. 三尖弁
1. 4つの弁の中で最も大きい
2. 僧帽弁より心尖部がわにある
1. 心内膜欠損症、一次孔欠損の一部では心尖部よりの偏移なし
2. エプスタインでは大きく偏移
3. 前尖、後尖、中隔尖の三尖であり前尖が最も大きい 後尖が最も小さい
4. 同様に3つの乳頭筋がある
1. 前乳頭筋 最も大きい モデレーターバンドに接続
2. 後乳頭筋 小さい 時に欠損
3. 内乳頭筋
4. 肺動脈弁:
1. 前尖、左尖、右尖と呼ばれる三弁尖からなり、直接右室の筋肉組織に付着している
2. 経食道よりも経胸壁のほうが評価に適している
2. 右心系の描出
1. ME four-chamber
1. 右室の心尖部、中部、基部を評価することができる
2. 三尖弁はこの像では中隔尖と前尖であり、プローブを深くすると中隔尖と後尖を確認できる(さらに深くすると冠静脈洞がみえ
る)
2. ME RV inflow-outflow
1. 三尖弁口の面が超音波ビームにほぼ平行になるため、三尖弁血流速度を測定するのに最適であり、右房評価にも使用できる
2. 肺動脈弁は大動脈弁の右冠尖、左冠尖の交連部に接しており、大動脈弁とほぼ直交している
3. ME bicaval
1. 右房自由壁、心房中隔の評価に有用 4. TG short axis、TG RV inflow
1. 右室自由壁や心室中隔の評価、三尖弁が確認できる
2. TG RV inflowは右室の長軸像であり、三尖弁を支える検索や右室乳頭筋を観察するのに優れている
3. 右心室の生理
1. 右室が拡大すると心筋のスパイラル構造がくずれて収縮力が急激に起きる
2. 心室中隔が正常に動くことが右室機能の維持に重要
1. 左室、右室間の圧較差が少なくなると右室が球状になり機能低下
4. 右室機能評価
1. 正常時の呼吸性の心拍出量変動
1. 吸気時
1. 右心系:胸腔内陰圧→SVC,IVCとRA圧の低下→右心系への流入血流増加→右室拍出量増加
2. 左心系:右室からの拍出量は増加するが肺血管がリザーバーとなって左心系流入血流は増えない
2. 呼気時
1. 肺血管から押し出された血液により左室流入血流が増える→心拍出量が増える
3. 自発呼吸下;吸気時胸腔内陰圧→右心系容量20%増加 左心系減少
4. 陽圧換気で逆
5. 拡張能減少で差がより大きくなる(おそらく中隔シフトが関与してくるため)
2. 肥厚
1. 正常:左室壁の半分以下:拡張終期5mm以下
2. 肺動脈圧上昇、肺動脈弁狭窄で肥厚
3. とくに心尖部で顕著となる
3. 拡張
1. 容量負荷、慢性の圧負荷
2. 正常:拡張期で左室面積の60%程度
3. 右室が心尖部を形作る→拡張
4. 収縮能
1. おもに自由壁の内方運動
2. 流出路、心基部の下方運動の寄与は少ない
3. 右心の容量
1. 3DTEEが有用 <45% 三次元
2. RVFAC 4CHでトレース <35% 二次元的
3. TAPSE 一次元的
4. 収三尖弁輪の収縮期移動
1. 三尖弁輪の収縮期の長軸方向偏移は右室収縮能の指標
2. 正常では心尖部方向に20 ~ 25 mm偏移する
3. TAPSE
1. 収縮期の三尖弁輪の心尖部方向への移動距離
2. 側壁で測定
3. 正常値>16mm 4. TTEよりTEEでは精度が劣る
5. RV壁厚 1−5mmが正常
6. 組織ドプラDeep TG RVinoutflow view:
1. IVA(isovolumic acceleration) 正常値1.4±0.5,/s2
s’ 15±2 cm/s
7. RV-MPI (左室のTei indexに相当)
1. 異常>0.43
8. 肝静脈血流パターン
1. 通常収縮期と拡張期にRAに流入する2峰性の波形を示す。
1. AR波;心房収縮による逆行性血流
2. S波:心房弛緩による心房圧の低下と右室収縮時の三尖弁の心尖部の偏位による右房に向かう順行性
血流=X波
3. V波;収縮終期の小さな逆行性血流
4. D波:早期心室充満期の右房圧低下により起こる拡張期の順行性血流
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2. moderate以上のTRでは収縮期血流速度が減少。severe TRでは逆行性となる
3. AR波とV波のTVIの和/S波とD波のTVIの和は右室拡張機能障害、TRで増加
4. 右室コンプライアンス低下;逆光波の増加、S波の減高拡張期優位の血流(PVのS、D波と同じ)
9. 圧波形による右室機能評価
5. 右室拡張能
1. 右房圧上昇(20mmHg以上);IVCと肝静脈拡張、呼吸性変動小さくなる
6. 局所右室機能の評価
1. おもに右冠動脈から
2. 一部は左冠動脈前下行枝の円錐枝から
3. 後負荷に影響されやすいので評価は難しい
右心系への圧、容量負荷
1. 右心機能の特徴
1. 低圧系
2. 前負荷への変化に強い
3. 後負荷の変化に弱い
1. 容量負荷
1. 右室拡大 円形に
2. 動きは亢進
3. 心尖部が右室
4. 右室が拡張して心筋重量が増加し左室重量を超えると中隔の奇異性運動が現れる
5. 右室の拡張期過剰充満がピークとなる拡張終期に中隔のひずみが最大となり、収縮期には奇異性に右室に突出する
2. 圧負荷
1. まず右室自由壁の肥厚として認められ、(6mm以上)慢性的に続くと中隔の肥厚が現れる 2. 動きは低下
3. 心房中隔が左室側にせり出す
4. 右室の収縮期後負荷が最大となる収縮終期と拡張早期に中隔の偏移が最大となる
3. 圧負荷と容量負荷の中隔 *画像につき省略
心房中隔
1. 正常:拡張期に左房側 収縮期に右房側へ
2. 右心不全:拡張期、収縮期共に左房側へ
3. 左心不全:拡張期、収縮期共に右房側へ
心室中隔
1. TSGで決まる:transeptal gradient 左室と右室の圧格差
2. 右室容量負荷:拡張末期に 左室方向へ変位
3. 右室圧負荷:収縮末期に 左室方向へ変位
4. 収縮期肺動脈圧推定=CVP+TRで測った圧格差ー右室流出路の圧格差
二次性TRに
1. A,Pの方向へ弁ん輪拡大
1. 4CHでは拡大した弁輪を過小評価
2. 30−40度で計測する方が正確
2. severe TRの指標
・カラーで逆流ジェットエリアがRA面積の30%以上
・CWDシグナルが濃い
・4cm以上の弁輪拡張ないし、弁尖の接合不良
・CWDシグナル波形が収縮末期に凹面になる(?)
・三尖弁流入速度が1.0m/s以上
・肝静脈の収縮期逆流
・ERO≧0.4cm2
・逆流量≧45ml
・vena contracta≧6.5mm
3. 手術適応
1. 左心系の弁疾患が原因のsevere TRは修復
2. 40mm以上の弁輪拡大、moderate TR
4. 術式
1. 三尖弁置換術 1. 器質的な三尖弁疾患が対象なので症例数が少ない
2. 右心不全が重度のことが多く、肝機能、腎機能低下をともなう →成績はわるい 3. リスクが高い
4. TAPの方が成績がよい
2. 三尖弁形成術 TAP
1. フレキシブルリング
2. セミリジットリング
3. De vega reapir
1. リングを用いない弁輪形成
2. 小児など
3. リングの方が優れている
4. cone reconstruction
1. エブスタイン奇形
5. Kay reapir
1. 小児の症例がほとんど
2. 二尖弁化
6. clover technique
三尖弁狭窄
1. 肥厚した弁尖の輝度上昇
2. 拡張期の弁尖ドーミング
3. 三尖弁開口部の狭小化
4. 正常流速は0.7m/sec以下 1.5m/s以上で狭窄が示唆される
三尖弁疾患の原因
1. 弁輪拡大
1. TR
2. リウマチ性病変
1. 後天性三尖弁狭窄の最も多い原因
2. TS、TR合併
3. 心内膜炎
1. 心房側
2. 左心系の疣贅より多い
4. カルチノイド症候群
1. 回腸に通常できるカルチノイド腫瘍
2. セトロニン、ブラジキニン、ヒスタミン、プロスタグランジン放出
3. 左心系には影響を与えない
4. 三尖弁狭窄、肺動脈弁狭窄
5. エプスタイン奇形
1. 僧帽弁と三尖弁輪面が8mm以上離れている
2. 右室機能障害、伝導障害、TR
3. 中隔尖が落ち込んでいる
4. cone reconstruction
Ross手術
1. 自己の肺動脈を用いた大動脈置換
2. 肺動脈弁逆流、2mm以上のサイズミスマッチがあれば禁
3. 術後ARの観察が必要
4. 肺動脈弁を採る時に、中隔枝を結紮することがある→中隔の壁運動異常に注意
右心不全とLVAD
LV脱血 LA,PA圧減少
→右室前負荷上昇 右室容量負荷 →右室灌流血流減少
不整脈も不利に働く