教育学部 TAKASHIMA CHIZURU 髙 島 千鶴 准教授 「太古の海洋環境の解明を目指した熱水環境における地球生命科 学的研究」 [キーワード] 熱水,水質分析,微生物,先カンブリア紀,古環境 地 球 の 歴 史 に つ い て 勉 強 し て み ま せ ん か ? 研究紹介 ◆研究概要 地球が誕生して約 46 億年が経過しています.初めの 約 40 億年間で海洋が形成され,原始生命が誕生し,多 細胞生物にまで進化しました.この時代を先カンブリア 紀と呼びます.当時の地球環境については主に地質記録 を基に研究されていますが,よくわかっていないのが現 状です.先カンブリア紀の海洋環境を記録している 2 つ の縞状組織を持つ堆積物(縞状鉄鉱層とストロマトライ ト)は,長い年月の間に変質しており,初生的な情報を抽 出するのが困難であるためです. しかし,成分的にも組織的にも非常に似ている堆積物 は現在の温泉においても形成されています.そこで当研 究室は,現世の熱水環境を先カンブリア紀のアナログと して捉え,水質や堆積物及び微生物に焦点を当て研究し, 当時の地球環境の復元を目指しています. これまでの研究結果により,熱水環境の堆積物の沈殿や 組織には化学合成細菌群集や光合成細菌の代謝が大きく 影響していることが判明しています. まだまだケーススタディーは必要ですが,現世における 熱水環境の水-堆積物-微生物の関連性を明らかにするこ とで,先カンブリア紀の海洋環境や微生物群集の手がかり にしていきたいと考えています. (写真左)鹿児島県指宿市たまて箱温泉源泉 (写真右)鹿児島県霧島市塩浸温泉の調査風景 ◆今後の展望 古来より熱水環境は,保養や療養に用いられ,近年では 地熱発電の研究開発も進み,幅広く利用されています.ま た,熱水には多量のミネラル成分や微量元素が溶解してい ることから,金属資源としても高いポテンシャルを持って いると思います.今後はこの点に注目し,熱水の新たな活 用法を探っていきたいと考えています. (写真左)先カンブリア紀の縞状鉄鉱層 (写真右)先カンブリア紀のストロマトライト ◆研究内容 まず温泉の現地調査(水質測定や堆積物の観察)を行 い,水・堆積物・微生物をサンプリングし,研究室で分析 (水の溶存成分測定,堆積物の組織観察や鉱物同定,微 生物の遺伝子解析等)します.それらの結果を総合的に 解析し,温泉水や堆積物の生成過程を明らかにしていき ます. ◆その他の研究 当研究室では熱水環境以外にも,地域に根差した研究も 行っています.例えば,佐賀県の河川の水質と地質の関連 性や,佐賀県の化石について(佐賀県立宇宙科学館の学芸 員の方と共同)研究を進めています. 掲載情報 2017 年1月現在 理科教員を目指す方へ 一言アピール 地球の歴史や地球環境に興がある方,または自然科学に興味を持っている 方は,是非一緒に「地球」について研究をしましょう! 産学・地域連携機構より 髙島准教授の研究は,堆積物の分析に微生物による影響を加味したこと,さらに水質や各地域 における堆積物の特質など,総合的視点から解析することです.本研究室で,太古の海洋環境 の復元を一緒に目指してみませんか? 佐賀大学 佐賀大学 研究室訪問記 産学・地域連携機構 (佐賀県佐賀市本庄町1番地) (お問い合せ先) 国立大学法人 佐賀大学 学術研究協力部 社会連携課 TEL:0952-28-8416 E-mail:[email protected]
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