移ろう建築 ー竜ヶ崎駅前における公共建築のあり方ー

法政大学大学院デザイン工学研究科紀要 Vol.5(2016 年 3 月) 法政大学
移ろう建築 ー竜ヶ崎駅前における公共建築のあり方ー
METABOLISM OF ARCHITECTURE
THE WAY OF THE PUBLIC ARCHITECTURE IN THE RYUGASAKI STATION SQUARE
河村優太
Yuta KAWAMURA
主査 下吹越武人 副査 渡邉真理・高村雅彦 法政大学大学院デザイン工学研究科建築学専攻修士課程
I made a plan of a public architecture in the Ryugasaki city.
It is important to consider the way of developmet in the suburbs. The suburbs have some problems. For
example reducing in populatin and diluting of local communties . Therefore I consider the Ryugasaki station
square about the way of a new pubilc architecture.
Key Words : ryugasaki,station,public,traffic,metabolism
0. はじめに
竜ヶ崎駅前を変えたい。
私は茨城県龍ヶ崎市で生まれ育った。
龍ヶ崎市には、たくさんの思い出があり私にとって非常に大切な場所である。しかしニュータウンの開発に伴い、
ロードサイドの店舗により無個性な街に変化しているように感じる。便利な街となる反面、かつてより栄えてき
た市街地が急激に衰退した。車社会が進む一方で、ローカル線である関東鉄道竜ケ崎線の廃線が噂されている。 私はかつてより市街地の中心にあり、終着駅である竜ケ崎駅前を変えることで、もう一度市街地を中心とした
街づくりができるのではないかと考え、修士設計に取り組んだ。
1. 論文概要
現在の日本は少子高齢化が進み、衰退していくこと
が予想される。特に東京のベッドタウンとして開発さ
れたニュータウンはオールドタウンと呼ばれ、人口が
流出していくなど様々な問題に直面している。東京で
仕 事 を し て い る 多 く の 人 は、 住 ん で い る 地 域 で の コ
ミュニティーを持たず、退職した際に人との繋がりが
薄れてしまうと感じる。地方にはそれぞれのコミュニ
ティーのあり方があるのではないかと考える。
ゆえに、本研究では、地方における問題について茨
城県龍ケ崎市の駅前を事例として考える。地方が衰退
していく中で、今後の新しい公共性のあり方について
提案する。
2. 敷地
(1) 茨城県龍ヶ崎市
茨 城 県 南 部 に 位 置 し て い る、 人 口 8 万 人 の 市 で あ
る。東京都心から約 50km の距離であり、現在ではベッ
ドタウンとして多くの市民が東京に勤めている。主な
交通手段は自動車であり、典型的な地方郊外の街であ
る。
龍 ケ 崎 市 は 市 街 地、JR 駅 前、 ニ ュ ー タ ウ ン の 4 つ
の エ リ ア に よ っ て 構 成 さ れ て お り、JR 駅 前 と 市 街 地
は関東鉄道竜ケ崎線によって繋がれている。
(2) 関東鉄道竜ケ崎線
JR 常 磐 線 と 市 街 地 を 接 続 す る 全 長 4.5km か ら な る
ロ ー カ ル 線。 始 点 か ら 終 点 ま で 7 分 間 で、JR 駅 の 接
続駅である佐貫駅、入地駅、竜ヶ崎駅の3駅から構成
されている。竜ヶ崎線は JR 常磐線の開通に伴い 1900
年より開通した。
竜 ヶ 崎 線 の 一 日 平 均 乗 降 車 数 は 約 2500 人 で あ り、
主な利用者サラリーマン、学生である。利用者数は年々
減少しており、廃線になるのではないかと噂されてい
る。また各駅舎には簡素な待ち合いスペースしか設け
られていないため、日常的生活に使用されていない。
a) 「旧市街地を中心としたマチ」
佐貫駅
日本各地で地方が衰退している。龍ヶ崎市も例外で
はない。外部の資本によって街を発展させていくので
はなく、 今後は住民主体のまちづくりが必要である。
入地駅
そこで歴史とともに発展し、様々な用途の建築が混在
している旧市街地に新たな公共施設のあり方があるの
4.5km
ではないか。
竜ヶ崎駅
図1
b) 「代謝する建築」
路線図
今までの公共施設は、図書館なら図書館、市庁舎な
(3) 竜ヶ崎駅前
ら市庁舎とプログラムと空間が非常にフィットしてい
旧市街地の東側に位置しており、1600 年ごろより
る。 こ れ か ら の 公 共 性 を 考 え た 時 に、 様 々 な プ ロ グ
栄えた場所とされている。江戸時代に伊達藩の飛び地
ラ ム が 同 じ 建 築 の 中 に あ る こ と で、 地 域 の コ ミ ュ ニ
として、物流の拠点が置かれ商店街が発展した。
ティーが形成されていくのだと考える。また 10 年後、
竜ヶ崎駅周辺には住宅、市役所、図書館、商店街な
20 年 後 を 見 据 え た 時 に、 現 在 と 同 じ 空 間 が 必 要 と は
ど様々用途が混在しているが、ニュータウンの開発に
限 ら な い。 そ こ で 今 ま で の ビ ル デ ィ ン グ タ イ プ と 違
伴い衰退している。
う、新陳代謝していく建築を考察していく。 (2) 新しい公共性
今までのビルディングタイプを解体する。インフラ(水
回り、ガス、電気)をまとめるコアを手がかりとして、
建築が更新される。 公共施設を中心として商業施設、
屋根の下で自由に行われる活動が全体に広がり、豊か
な空間が形成される。今までにはない公共性が作られ
site
る。
大型店舗
(3) 設計手法
小売店
飲食店
クリニック
代謝する建築を構成するために 4 つのスキームを設
シャッター
住宅
etc
10
図 2 竜ケ崎駅周辺
定する。
30
50
100
a) インフラと架構の配置
線上にインフラ(トイレ、 キッチンなどの水回り)
とラーメン構造の架構を配置することで、全体がシス
テムとして構成される。
図 3 ショッピングセンター
図 4 竜ヶ崎駅
図 7 phase1
b) 各 場 所 に お い て コ ア と な る 公 共 施 設 と、 イ ン フ ラ
を手がかりに投入されるボリュウームからなる。
図 5 駅前広場
図 6 商店街入口
3. 設計
(1) 建築計画
図 8 phase2
竜ヶ崎駅前に公共施設を中心としたマチを形成す
c) 屋根を掛けることで、半屋外空間が生じ、内部と緩
る。マチには商業施設、オフィスなど様々な用途が混
やかに繋がる。
在する施設を提案する。
4. 謝辞
修士設計の指導教官として、多くの先攻研究と参考
文献を紹介して頂いた下吹越武人教授、ならびにお忙
図 9 phase3
d) 市 民 に よ っ て 更 新 さ れ る 建 築。 屋 根 が 外 さ れ、 ボ
リュームが増えていく。市民の活動が活発になること
で、駅前に様々な分野の人達が訪れる。市民を中心と
したマチが形成されていく。
しい中ご指導して頂いた飯田先生、大変ありがとうご
ざいました。そして、方針やプレゼンテーションのア
ドバイスまでご指導していただいた渡邉教授、高村教
授、本当にありがとうございました。
5. 参考文献
建築の解体 / 磯崎新 / 鹿島出版会
新建築 / 新建築社 / 2014 年5月号
2005 年 11 月号
図 10 phase4
龍ヶ崎市史
龍ヶ崎市 HP(http://www.city.ryugasaki.ibaraki.jp/)
山本理顕設計工場 HP (http://riken-yamamoto.co.jp)
http://www.toto.co.jp/gallerma/ex030311/lctr_rpt.htm
10+1 web site (http://10plus1.jp/monthly/2011/08/
post-26.php)
(http://10plus1.jp/monthly/2013/11/post-91.php)