化粧品をつくる仕事

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化粧品をつくる仕事
今や女性だけでなく男性でも日々愛用する人が多
い化粧品。化粧品を製造販売する会社は 4,000 近く
に上り、年間出荷額は 1 兆 5,000 万円を超えるという
巨大市場。商品についてはよく知っていても、その化
粧品をつくっているのはいったいどんな人なのでしょ
う? 今回は国内最大手の化粧品会社の研究員に、
化粧品はどのようにしてつくられるのか、どうして化
粧品の研究員の仕事を選んだのか、そのおもしろさ大
今回の働く先輩
杉光則子さん(左)
変さは? などなど、
ぶっちゃけトークしてもらいます!
ナビゲーター:野呂佳代
働く先輩紹介
杉光則子(すぎみつ・のりこ)さん
▼
研究員として 10 年目になる 34 歳 *。熊 本県出身
で、大学院で薬学を学んだ後、資生堂で商品開発を担
当。4 年前からは主にスキンケアの処方開発に携わり
今、注目の「肌温に着目した美容法」の中の「メーク落
とし」の開発を行いました。
子どものころから実験が好きな「理系女子」。元々薬
剤師を目指していたが「研究者なら新発見すればノーベ
ル賞が取れる ?! チャンスはみな平等」と、研究職を
目指すことに! 化粧品の研究を選んだのは学生時代
ひどいニキビで、自分も肌に合う化粧品選びに苦労し
た経験があったためだとか。しかし、学校では化粧品
について学んではいなかったので、入社と同時に会社
の長い研究の歴史や業界の最新の研究成果まで山ほど
勉強することに。時には「辞めたい」
「逃げたい」と思っ
たことも…。でも、良いものができるとそんな思いも
吹っ飛んでしまうとか。およそ 1,000 人の研究員はラ
イバルでもあり、困ったときには助け合えるかけがえの
ない仲間でもあるそうです。
化粧品研究の発想の元には、時に文房具やおもちゃ、
食品など異業種の新しい技術が役に立つことがあるそ
うです(詳しくは放送で!)
。だから、ちょっと気になる
おもしろいものがあると街なかでもどこでも「どうしてこ
うなってる?」と、すぐに調べなければ気がすまないの
が研究者のサガだとか…。
休みの日にはウインドーショッ
ピングで化粧品チェック! 自社はもちろん他社の製品
でもカワイイものがあると「悔しいけど気になっちゃう」
そうです。もちろん研究材料にも、するのだとか…。
* * * 夢は「文化や生活習慣が異なる海外でも、ヒットする
商品を手がける」こと! 外国では美的感覚のみならず、
宗教や文化などで化粧方法が日本とまったく違うこと
があるので、その国に合わせた化粧品をつくる必要が
あるそうです。
「化粧品を使うすべての人たちの心に働
きかける新しい商品を生み出したい」と熱く語ります。
①使用性や効果をチェックする杉光さん。納得
するまで妥協しません/②試作品を顕微鏡での
ぞいて微細な状態まで観察します/③アドバイ
スをしあいながら楽しく化粧品開発をしていま
す(左から2人目が杉光さん)/④化粧品に使
われる原料1つ1つの性質もよく知っておく必
要があり、日々勉強/⑤どんな化粧品があった
らいいか、常にディスカッションしてアイデア
を磨いています(左が杉光さん)
*:2016 年収録
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高校講座
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お仕事データ【化粧品の研究員になるには?】
化粧品の研究員になるための、特別な資格はありません。
化粧品開発を行っている会社に就職し、研究所に配属になることが必要ですが、その条件や規定
は会社ごとに異なります。
今回ご紹介した化粧品会社では、大学を卒業していることは必要ですが、最近の化粧品の研究範
囲は「脳科学」や「心理学」、「医療」など、とても広くフレキシブルなので、学部や学科は問わな
いそうです。
ゲストの杉光さんからのアドバイスでは、研究員を目指すなら学生時代に「実験を経験しておく
こと」が大事なのだそうです。
化粧品をつくるまでの流れ
研究には長い年月をかけて新製品の「種」となるものを探す「基礎研究」と「新製品の処
方の開発」の 2 種類があります。中には 10 年以上にわたり研究を続けるものもありますが、
画期的な新製品の開発には「基礎研究」は欠かせないものです。
また「新商品の開発」には、市場のニーズから新しい化粧品の処方箋を生み出す場合と、
▼
研究者が開発したアイデアを商品化する方法とがあります。多くの商品はニーズと新アイデ
アの両方を反映してつくられます。
しかし、研究の成果は必ず商品化されるというわけではなく、
販売までにはさまざまな部署の評価を受けて決定されるので、
研究の成果が実らず研究員が涙をのむシーンもあるそうです。
世の中にない「まったく新しい商品」を生み出すときにも、
肌への効果はもちろん、安全性を担保するための品質検査を全
試作品。新たな技術がつ
まった、新製品の卵たち。
てクリアすることが重要なことです。
市場の
ニーズ
➡
基礎研究
製品開発
処方開発
容器・用具開発
品質保証・
安全性保障
量産化検討
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製 造
補填・仕上げ
品質検査
➡ 店 頭
高校講座