歯学科 4 年生講義,口腔生命科学各論 II,歯科放射線学 放射線治療 担当:勝良剛詞 Ⅰ.口腔癌の特徴 ・全がんの 1~5%の発生率で、舌癌が最も多い ・多機能器官、複雑な形態をしている口腔に発生する Ⅱ.代表的な口腔がん治療 1)外科療法(手術) 利点:術後の予測をつけやすい、病気の大きさや病期に左右されない、繰り返し行える 欠点:切除範囲が大きくなると機能の温存が困難、患者の全身状態に左右される 2)放射線治療(放射線療法) 利点:機能, 形態を温存に優れる、患者の全身状態に左右されにくい、手術不可能部位の治療が可能。 欠点:術後の予測がつけにくい、病気の大きさや種類に効果が左右される、繰り返し行えない、周囲正 常組織の被曝が避けられない、誘発癌の可能性がある Ⅲ.放射線治療とは ・電離放射線を利用し、腫瘍細胞を死滅させ治癒に導く治療 電離放射線: DNA を損傷させ、細胞を傷害したり死滅させたりする電離作用を有する放射線 Ⅳ.放射線の影響 1)分子レベル DNA 損傷、間接作用、直接作用、Single-strand break、Double-strand break 2)細胞レベル 増殖死、間期死、アポトーシス、ネクローシス 3)組織レベル Bergonie-Tribondeau の法則、Linear-Quadratic(L-Q)モデル、早期反応、晩期反応 Ⅴ.治癒率(放射線感受性)を左右する因子 ・細胞周期:細胞周期により放射線感受性が異なる ・酸素効果:組織内の酸素分画(濃度)により放射線感受性が異なる ・温熱効果:加温により放射線感受性が上昇する。 ・4R⇒5R:Repair、Redistribution、Repopulation、Re-oxygenation、Radiosensitivity ・線質:線質により放射線感受性が異なる。 線エネルギー付与(LET)、RBE(生物学的効果比)、酸素増感比(OER) ・線量率:線量率により放射線感受性が異なる ・防護剤:SH 基や S-S 結合化合物、血管収縮剤 1 ・増感剤:ハロゲン化核酸前駆物質、低酸素細胞増感剤 Ⅵ.放射線治療 1)放射線治療の種類 ・外部照射、内部照射 ・単独照射、術前照射、術後照射、化学・生物学的放射線治療 ・根治照射、姑息照射、緩和照射 2)照射野 ・GTV(肉眼的標的体積) 、CTV(臨床的標的体積)、PTV(計画標的体積)、TV(治療体積) 、 OAR(リスク臓器) 3)外部照射 ・二次元照射(Conv RT)、三次元原体照射(3D CRT)、 強度変調放射線治療(IMRT)、定位放射線治療(SRT) ・過(多)分割照射(Hyper fractionation)、寡分割照射(Hypo fractionation) 4)内部照射(組織内照射・密封小線源治療) ・一時刺入、永久刺入 ・低線量率、高線量率 ・192-Ir、198-Au、137-Cs 5)放射線治療の適応 ・口腔がん:T1-2N0 ・唾液腺がん:病理組織学的高悪性度症例、術後残存症例、切除不能例、局所再発例 ・上顎洞がん:三者併用療法(手術・放射線・化学療法) ・内部照射:T1-2N0、T3 表在型、術後残存症例 ・術後照射:顕微鏡的切除断端陽性、被膜外浸潤あり、複数の転移リンパ節 6)放射線治療の考え方 治療可能比(TR) = 正常組織耐用線量(TTD) 腫瘍致死線量(TLD) 7)治療期間と予後との関係 治療期間の延長により、局所制御率は 1.5~2.3%/日の低下 Ⅶ.有害事象 1)正常組織反応 ・急性反応:可逆的、α/β比が大(10 Gy 程度)、総線量・感受性・組織代謝回転に依存 ・晩期反応:不可逆的、α/β比が小(3 Gy 程度) 、時間・1 回線量に依存 2)頭頸部の耐用線量と体積 ・照射体積が広くなるほど低線量で発症、高線量ほど高頻度 3)口腔がん放射線治療で起こる有害事象 ・放射線性口腔粘膜炎 2 ・放射線性口腔乾燥症、味覚異常 ・放射線性う蝕 ・放射線性顎骨壊死 ・成長障害・形成不全 Ⅷ.放射線治療患者の歯科管理 ・教育 ・コンディショニング ・オーラルケア、オーラルマネジメント ・メンテナンス 2017/01/20 版 3
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