旭 川 市 空 家 等 対 策 計 画(案) 旭 川 市 目 次 第1 計画策定の趣旨 1 計画策定の背景と趣旨・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 2 計画の位置づけ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 3 計画期間・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 4 計画の対象・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 ⑴ 対象とする地区・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 ⑵ 対象とする空家等の種類・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 第2 現状と課題 1 空き家の現状・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 ⑴ 全国の空き家の推移・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 ⑵ 旭川市の空き家の推移・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 ⑶ 旭川市の類型別空き家の推移・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 ⑷ 旭川市の住宅数と世帯数の推移・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 ⑸ 旭川市の人口と世帯数の推移・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 ⑹ 空家等に関わる苦情,相談件数及び内容・・・・・・・・・・・・・・・・ 8 ⑺ 実態調査結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8 ⑻ 特定空家等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 ⑼ アンケート等の結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 2 調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 3 課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 課題1 所有者としての意識・責務の欠如 課題2 悪影響を及ぼす空き家の解消 課題3 相続先,情報及び支援等の不足 第3 基本方針 1 基本目標・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13 基本目標 総合的な空家等対策による安全安心なまちづくり 2 基本方針・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13 基本方針 多様な連携による空家等対策の推進 第4 空家等対策 1 空家等に対する施策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15 ⑴ 空き家や特定空家等の発生自体を抑制する・・・・・・・・・・・・・・・15 ⑵ ⑶ 施策1 適切な管理の周知・啓発 施策2 相続・売買等の相談体制・窓口の構築 施策3 不動産業者等との連携による流通の促進 施策4 良質な住宅のストックの形成 空き家を活用する・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17 施策5 多様な連携による利活用 施策6 政策課題とのマッチング 施策7 改修による利活用の促進 施策8 空き家情報バンク 適切に管理されていない空家等への対応・・・・・・・・・・・・・・・・19 施策9 行政指導・措置 施策10 所有者不在空家等の法的手続 施策11 解体等の補助・支援 2 実施体制等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21 ⑴ 実施体制・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21 ⑵ その他・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21 第5 目標・評価指標 1 目標・評価指標・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24 ⑴ 空き家率等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24 ⑵ 第8次旭川市総合計画等による指標・・・・・・・・・・・・・・・・・・24 ⑶ 特定空家等の除却等の件数・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24 ⑷ 所有者不在等空き家への取組み・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24 第1 1 計画策定の趣旨 1 計画策定の背景と趣旨 近年全国的に,地域における人口減少や核家族化,既存の住宅・建築物の老朽化,社会的 ニーズの変化及び産業構造の変化等に伴い空家等が増加し,その中には適切に管理が行われ ず,地域の良好な生活環境に悪影響を及ぼしているものがあり,今後,空家等の数が増加す れば,それらがもたらす問題が一層深刻化することが懸念されています。 こうしたことから本市では,空家等がもたらす問題の早期解決を図り,空家等が放置され 適切に管理されなくなることを未然に防止するため,平成 26 年 7 月に「旭川市空き家等の 適正管理に関する条例」を制定しました。 その後,国において同年 11 月に「空家等対策の推進に関する特別措置法(以下「法」とい う。)」が制定され,その中で国が別に定める「空家等に関する施策を総合的かつ計画的に 実施するための基本的な指針(以下「基本指針」という。)」に即した「空家等対策計画」 や,その作成のための「協議会」を設けることができるとされ,平成 27 年 2 月にその「基 本指針」が示されたところです。 こうしたことを受け,一層の空家等対策の推進のため同年 12 月に旭川市空き家等の適正 管理に関する条例を改正し,新たに計画の策定や協議会の設置に関する規定を設け,また同 時に法と旭川市空き家等の適正管理に関する条例との規定の整理・整合を図り名称を「旭川 市空家等及び空地の適切な管理に関する条例(以下「条例」という。)」に改正しました。 2 計画の位置づけ 本計画は国の基本指針を踏まえ,法及び条例の規定に基づくもので,策定にあたっては計 画が行政だけの視点ではなく,地域住民のほか専門家や学識経験者等の幅広い意見が反映さ れるよう「旭川市空家等対策協議会」による協議を経て作成されたものです。 また,「旭川市総合計画」及び「旭川市都市計画マスタープラン」を上位計画とし,「旭川 市住生活基本計画」などの住環境に関連する計画等との整合を図ります。 3 計画期間 本計画は平成 29 年度から平成 33 年度までの 5 年間とします。 また,5 年毎に実施される国勢調査や住宅・土地統計調査,また市に寄せられる苦情・相 談等により提供される情報,さらに実態調査の実施結果を分析し,空家等の状況の変化を踏 まえ 5 年毎に計画を見直します。 2 4 ⑴ 計画の対象 対象とする地区 本計画の対象地区は旭川市全域とし,当面は重点地区等を定めません。 ⑵ 対象とする空家等の種類 特定空家等を含む空家等のほか,将来的に空家等となる可能性がある建築物を対象とし, 主に一戸建ての住宅・長屋・併用住宅・2 階建て以下の共同住宅等の居住の用を目的とす る建築物とします。 3 第2 4 現状と課題 1 空き家の現状 ⑴ 全国の空き家の推移 全国の空き家の推移は,年々増加傾向にあり,平成25年度の住宅・土地統計調査(総務省) によれば,全国の住宅総数は6,063万戸,空き家総数は820万戸になり,前回調査に比べて63 万戸増え,空き家率13.5%と過去最高となりました。現在では7~8軒のうち1軒が空き家とい う状況にあります。また,空き家総数は昭和63年と比較すると,倍増しています。 全国の空き家の推移 70,000 11.5 60,000 戸 数 ( 千 戸 ) 50,000 9.4 9.8 昭和63年 平成5年 12.2 13.1 13.5 12 10 空 き 8 家 6 率 ( 4 % ) 2 40,000 30,000 20,000 10,000 0 14 平成10年 平成15年 平成20年 平成25年 0 住宅総戸数 42,007,300 45,878,800 50,246,000 53,890,900 57,586,000 60,628,600 空き家総数 空き家率 3,940,400 4,475,800 5,764,100 6,593,300 7,567,900 8,195,600 9.4 9.8 11.5 12.2 13.1 13.5 住宅土地統計調査(総務省) ⑵ 旭川市の空き家の推移 本市の空き家の推移をみると,平成5年までは空き家率が12%を超えていましが,平成10年 にかけては空き家実数の減少と空き家率の低下が見られます。空き家実数は平成15年から増 加傾向に転じ,平成20年には6,000戸余りの大幅な増加が見られ,直近の平成25年度の住宅・ 土地統計調査によれば,空き家総数は23,470戸,空き家率は13.3%と双方ともに過去最高と なり,全国の割合とほぼ同程度となっています。 旭川市の空き家の推移 250,000 12.5 13.2 10.3 200,000 戸 数 ( 戸 ) 12.8 13.3 12 10.1 150,000 100,000 50,000 0 16,950 19,120 15,810 16,430 22,440 23,470 昭和63年 平成5年 平成10年 平成15年 平成20年 平成25年 住宅総戸数 135,800 144,500 154,190 162,070 175,810 176,170 空き家 16,950 19,120 15,810 16,430 22,440 23,470 12.5 13.2 10.3 10.1 12.8 13.3 空き家率 14 10 空 き 8 家 6 率 ( 4 % ) 2 0 住宅土地統計調査(総務省) 5 ⑶ 旭川市の類型別空き家の推移 住宅・土地統計調査において空き家は,次の表のように分類されており,これらの空き家 のうち,「二次的住宅」,「賃貸用の住宅」,「売却用の住宅」は利用目的がはっきりしている ので,所有者や管理者によって管理されていると考えられ,問題となっている空き家及び将 来的に問題となりうる空き家は「その他の住宅」に存在していると推察されます。 空き家 別 荘 二次的住宅 その他 週末や休暇時に避暑・避寒・保養などの目的で使用される住宅で, ふだん人が住んでいない住宅 ふだん住んでいる住宅とは別に,残業で遅くなったときに寝泊まり するなど,たまに寝泊まりしている人がいる住宅 賃貸用の住宅 新築・中古を問わず,賃貸のために空き家になっている住宅 売却用の住宅 新築・中古を問わず,売却のために空き家になっている住宅 その他の住宅 上記以外の人が住んでいない住宅で,例えば,転勤・入院などのため居住世帯 が長期にわたって不在の住宅や建て替えなどのために取り壊すことになっている 住宅など 本市の空き家の類型別推移をみると,平成 15 年から平成 20 年にかけ「賃貸用の住宅」と 「その他の住宅」が約 3,000 戸ずつ急増しています。平成 20 年から平成 25 年にかけては, 「その他の住宅」以外に大きな変化はありませんが,「その他の住宅」だけは引き続き増加 傾向にあり,平成 15 年と比較すると,その戸数は倍増しています。 住宅土地統計調査(総務省) 6 ⑷ 旭川市の住宅数と世帯数の推移 本市の住宅数と世帯数は,年々増加傾向にあり,住宅数は世帯数に対して約 15%多く, 量的には充足しています。 住宅数と世帯数の差がおよその「空き家数」と考えられ,全体に占める割合はほぼ一定で すが,実数としては増加傾向にあります。 旭川市の住宅数と世帯数の推移 250,000 住 宅 数 ・ 世 帯 数 ( 戸 ) 200,000 150,000 100,000 50,000 0 昭和63 年 平成5年 平成10 年 平成15 年 平成20 年 平成25 年 住宅総戸数 135,800 144,500 154,190 162,070 175,810 176,170 世帯数 118,440 125,270 138,590 146,000 153,380 152,690 1.15 1.15 1.11 1.11 1.15 1.15 住宅数/一世帯 1.20 1.15 1.10 1.05 1.00 0.95 0.90 0.85 0.80 一 世 帯 当 た り の 住 宅 数 住宅土地統計調査(総務省) ⑸ 旭川市の人口と世帯数の推移 本市の住民基本台帳における人口は,昭和 63 年から平成 15 年まで 36 万人前後で推移し ていましたが,それ以降は減少傾向にあり,平成 25 年には,34 万人台となっています。 一方,世帯数は,人口減少にもかかわらず,緩やかではありますが年々増加傾向にあるた め,一世帯当たりの人数が減少しており,状況としては高齢者等の一人住まい,核家族化な どの世帯となっていることが予想され,今後もこの傾向が進行するものと想定されます。 旭川市の人口と世帯数の推移 380 375 370 人 口 ( 千 人 ) 365 360 355 146 139 118 363 153 153 125 360 180 160 140 363 120 世 帯 100 数 ( 80 千 362 356 350 345 350 60 340 40 335 20 330 昭和63年 平成5年 平成10年 平成15年 平成20年 平成25年 人口 362,523 359,803 362,603 362,484 356,239 349,740 世帯数 118,440 125,270 138,590 146,000 153,380 152,690 戸 ) 0 旭川市住民基本台帳・住宅土地統計調査(総務省) 7 ⑹ 空家等に関わる苦情,相談件数及び内容 平成 24 年 7 月に相談窓口を開設しており,相談件数は次のとおりとなっています。 平成 24 年度 受付件数 相談内容(受付1件に対し複数項目あり) 受付件数 倒壊 飛散 防犯 防火 落雪 衛生 景観 他 10 2 4 7 65 6 0 4 計82件 平成 25 年度 受付件数 相談内容(受付1件に対し複数項目あり) 受付件数 倒壊 飛散 防犯 防火 落雪 衛生 景観 他 16 13 7 9 92 15 1 6 計119件 平成 26 年度 受付件数 相談内容(受付 1 件に対し複数項目あり) 受付件数 倒壊 飛散 防犯 防火 落雪 衛生 景観 他 19 26 12 8 63 17 10 24 計 138 件 平成 27 年度 受付件数 受付件数 相談内容(受付 1 件に対し複数項目あり) 倒壊 飛散 防犯 防火 落雪 衛生 景観 他 12 39 11 3 93 30 1 20 計 178 件 相談件数は年々増加傾向にあり,内容としては落雪に関するものが最も多く,平成 24 年 度と平成 25 年度は相談件数全体の約 8 割,平成 26 年度と平成 27 年度では,全体の約 5 割 を占め,その時期は 1~3 月に集中しています。 次いで,建物の倒壊や部材等の飛散のおそれがあるものが多く,全体の 2 割から 3 割を 占めています。 そのほか,火災や犯罪のおそれ,雑草の繁茂,ねずみ・害獣の繁殖,スズメバチの営巣 など多岐にわたる相談が寄せられています。 ⑺ 実態調査結果 平成 27 年度に実施した調査の結果,市街化区域内の空き家であると判断した建築物は 2,452 棟であり,その位置は市街化区域の全域に分布しています。 空き家であると判断した建築物のほとんどは木造の一戸建ての住宅であり,そのうちの 2 割程度は不動産業者等の看板が掲げられていることから,市場に流通している状態にあると 考えられます。 実態調査にあたっては,外観目視により建築物の老朽度を危険度 1 から 4 の 4 区分し,ま た屋根からの落雪により近隣周辺に危害をおよぼすおそれがある場合は,落雪の状況により 8 2 区分して危険度判定をしております。 空き家であると判断した建築物のうち,約 900 棟が何らかの危険度判定に該当しており, その割合は空き家総数の 36.7%を占めています。 危険度判定(老朽度)で,屋根の破損に関するものは約 300 棟であり,何らかの危険度判 定に該当したものの約 1/3 を占めています。 また,危険度判定の落雪に関するものは約 600 棟であり,何らかの危険度判定に該当した ものの約 2/3 を占めました。 ⑻ 特定空家等 「空家等」とは,法第 2 条第 1 項に「建築物又はこれに附属する工作物であって居住その ※ 他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着す る物を含む。)をいう。」と規定されており,誰にも使用されていない住宅などのほか,それ に附属する塀などの工作物及びその敷地をいいます。 また,「特定空家等」とは法第 2 条第 2 項で「そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危 険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態,適切な管理が行 われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図る ために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう。」と規定されて います。 本市では,実態調査のほか苦情や相談を受けて本市で所有者等に助言や指導等を行ってい る空家等を特定空家等と位置付け,その数は平成 27 年末で約 400 棟あります。 また,特定空家等のうち,危険度判定において老朽度の著しい 3 及び 4 に該当し並びに落 雪による危険度判定に該当する,「住民や近隣周辺に危害を及ぼすおそれがあると認められ た特定空家等」の数は平成 27 年末で約 250 棟あります。 ※本計画中,附属する塀など工作物及びその敷地を含まない場合は「空き家」と表記しています。 ⑼ アンケート等の結果 平成 25 年に市内の 1,251 町内会に対し「空き家の適正管理」に関するアンケート調査を 9 行ったところ,その回答数が 899 件(回収率 71.9%)となっており,地域問題となっている 適切に管理されていない空き家に対する地域住民の関心の高さがうかがえます。 町内に適切に管理されていない空き家が「ある」と回答した町内会は約 40%となってお り,その件数は 956 件に上ります。平成 20 年住宅・土地統計調査において,本市の一戸建 ての住宅の空き家は 890 戸あるとされており,アンケート調査による数値と近い数値の結果 となっています。 また,その空き家のうち,所有者が死亡又は不明であると回答されたのは約 2 割の 226 件 に上りました。 適切に管理されていない空き家が引き起こしている問題としては,「屋根からの落雪等に よる危険な状態のもの」が最も多く 26.6%,次いで,「草木の繁茂,害虫の発生」などの環 境衛生面に関わる問題が 25.4%,「火災・犯罪等の誘発される危険な状態もの」が 23.1%と なっており,問題の原因については,防災・防火・防犯・環境・衛生に係るものが平均的に 分散されています。 そして,「老朽化や台風等により倒壊や建材の飛散など危険な状態のもの」が 19.2%にと どまっていますが,今後,放置され維持管理されない状態が続いた場合,老朽化が進み増加 していくことが予想されます。 2 調査 空家等の所在や状態等の把握は,5 年に一度,国が実施している国勢調査や住宅・土地統 計調査等のほか,実際に市民から寄せられた相談等の分析や,実態調査等により行っていき ます。 また,「特定空家等」の調査については,現地調査を行うほか特定空家等と認められる場 合は,今後の動向等の確認や必要に応じた助言,指導,措置等を行うため,不動産登記簿情 報,住民票情報,戸籍情報,固定資産の課税情報等を活用して所有者等の調査を行います。 3 課題 空家等の数は,全国的に増加傾向にあり,本市においても同様の傾向となっています。 空家等のなかには,適切に管理されていないものが多く存在し,これらを原因とする問 題が地域住民に多大な不安や迷惑を与えており,数多くの相談や苦情が寄せられていま す。 これらの相談や苦情等により提供される情報のほか,実態調査の結果によると,空家等 は比較的に新しい住宅造成地並びに工業系及び商業系の業務用地では,多くないものの, 一定の地域的に集中するなどの特徴はなく,広く市内全域に存在しています。 また,空家等の用途は,主に居住の用を目的とする小規模な建築物が多く,その形態等 から個人の所有によるものが多いと推測されます。 本来であれば,個人財産である空家等は,所有者等が適切な管理を行わなければなりませ んが,管理者としての意識が低いことや,解体費用が工面できない等の経済的な理由,また 10 権利関係が複雑で相続人が定まらない等の法律的な理由などの所有者等の抱える複雑な状況 が,適切に管理されず放置されている要因であると考えられます。 本市ではこれらの対応にあたり,所有者等に対し,適切な管理のために必要な措置を講じ るよう行政指導等を行うほか,空家等の売買や相続手続等について相談窓口を紹介していま すが,具体的に解決に至るまでには多くの労力と時間が費やされている現状があります。 空家等の増加は,総合的な社会問題のひとつの現象の表れであり,その現象に対する対処 療法的な対応では抜本的な問題解決には至りませんが,まずはこれら空家等の所有者等へ適 切な管理を促し,地域住民の不安を解消することが求められているところです。 また,権利関係が複雑で相続人が定まらない等の法律的な理由や,相続人が不存在により 問題の解決が長期化する空家等が増加していることから,管理責任を明確にするための相続 手続や相続人が不存在の空家等の管理・処分について,民事的な法律手続の支援や実施も重 要な課題となっています。 そして,空家等の対策は,空家等の適切な管理の促進のほか,空家等の絶対数の減少が目 標であり,直接的な除却の促進とともに空家等の利活用も有効な方法であると考えられてい ますが,情報や知識不足のためどうしたらよいか分からない所有者に対する支援が不足して いることが課題となっています。 さらに,未利用地や空家の除却後の敷地については将来的に地域活力の低下や雑草の繁茂 などの空地問題の発生が推測されるため,その利活用も課題となっています。 課題1 所有者としての意識・責務の欠如 課題2 悪影響を及ぼす空き家の解消 課題3 相談先,情報及び支援等の不足 11 第3 12 基本方針 1 基本目標 適切な管理が行われていない空家等に関する問題の早期解決とともに,空家等が放置さ れ,管理されなくなることを未然に防止し,市民のみなさんの良好な生活環境の保全及び 安全で安心なまちづくりのため,総合的な空家等対策計画を推進します。 基本目標 2 総合的な空家等対策による安全安心なまちづくり 基本方針 総合的な空家等の対策の推進には,庁内の関係部局の情報共有と連携がより一層求めら れるほか,専門知識や幅広いネットワークを有する民間の方々や地域住民の方々の協力が 必要です。そのため,庁内外における多様な連携体制を構築し,相互に協力しながら空家 等対策を進めます。 基本方針 多様な連携による空家等対策の推進 13 第4 14 空家等対策 1 空家等に対する施策 ⑴ 空き家や特定空家等の発生自体を抑制する 施策1 ア 適切な管理の周知・啓発 所有者等の責務の周知 空家等は,法及び条例にも規定されているとおり,第一義的に所有者等に管理責任 があり,その管理責任の実行性が求められています。また,空家等の倒壊及び部材の 飛散等により,第三者や周辺家屋等に被害を及ぼした場合は,被害者から損害賠償な ど管理責任を問われることもあることから,空家等が起因する問題の拡大や複雑化を 未然に防止するために,所有者等への管理責務の周知を図ります。 イ 適切な相続手続の必要性の周知 空き家の問題は,所有者等の死亡により相続が発生し,順位が先の相続人の相続放 棄等により,順位が後の者が共同相続人になり,本人の知らない間に管理責任が生じ ている事案も少なくありません。 よって,親族等で所有している,または所有していた家屋や土地の不動産について, 適切な所有権の保存登記が行われていることの確認が必要であることをお知らせして いきます。 ウ 民間管理サービスとの連携 増加する空き家問題を背景に,空き家の管理サービスを提供する民間事業者が現れ てきています。これは空家等の遠方に住む所有者等や高齢等により自ら管理等が困難 な場合に委託契約等により,空家等の点検や通風の日常的な行為のほかに,雪下ろし や損傷部分の修理・修繕等も含めるなど多種多様の形態があり,市内においても警備 会社,不動産業者,建築業者,便利屋等の参入が見受けられます。 このような民間管理サービスの拡大は,空家等の所有者はもとより,地域住民に安 心をあたえるものであり,より一層の拡大と利用の促進のために,空き家所有者等へ の事業者情報の提供など,事業者と連携を図ります。 施策2 エ 相続・売買等の相談体制・窓口の構築 相談体制の整備 本市では,増加する空家等が起因する問題に,迅速かつ円滑に対応するために,市 15 の関係部局による「旭川市空家等対策連絡会議」を設置し,関係部局の役割や連携, 情報共有,相談窓口の設置など空き家対策に取り組んできました。 今後も一本化された相談窓口による対応の充実化,また関係部局の連携及び情報の 共有並びに所有者等に対する管理責務の啓発を図るとともに,所有者等からの空き家 の適切な管理や処分又は相続関係の法的手続の相談等にも対応できるよう,関係団体 等と連携を図り相談体制を整備していきます。 施策3 オ 不動産業者等との連携による流通の促進 外部機関との連携 空家等は,その適切な管理や処分について,所有者等が自ら行うもののほか,その 専門性から建築業者や宅地建物取扱業者への委託による場合も多いところです。 また,相続や不動産登記等において,空家問題の原因のひとつでもある相続問題の 整理等には,弁護士や司法書士等の専門性の高い法務的な知識や見識が必要となるこ とが多く,弁護士会や司法書士会等の連携強化が望まれていることから,市内の建築 関係団体や不動産業団体等と相談対応について連携を図り,空家等の適切な管理や処 分が円滑に行われるような体制を整備していきます。 施策4 カ 良質な住宅のストックの形成 住宅ストックの性能の維持・向上 空家等の発生の抑制には,既存住宅に長く住んでいただくほか,利活用されやすく なるように,リフォームや改修が適切に行われることによる住宅の価値の温存が必要 です。こうした良質な住宅のストックの形成は,空き家となるリスクを低減すること から良質な住宅のストックのための支援やリフォームの普及を図ります。 さらにマイホーム借上げ制度等の周知や金融機関の融資・支援等の情報提供に努め ます。 16 ⑵ 空き家を活用する 施策5 ア 多様な連携による利活用 宅建協会等との連携 空家等の所有者等に,当該空家等の賃貸又は売却等の意思がある場合は,同時に管 理責任を自覚していることから,空家等が問題化することは多くありません。問題化 する空家等の多くは賃貸又は売却等の意思がなく,かつ管理責任の希薄が生じている ことの結果と推測されます。高齢等による判断能力の低下も原因の一つでありますが, 相続手続が整理されないことによる,あいまいな管理責任の所在によるところも多く 見受けられます。 このような売却等の意思がない,又は売却等を進めたくてもどうしたらよいか分か らない,さらに相続手続の整理ができない所有者等への支援など,空家等及び除却し た空家等に係る跡地の利用の促進には,宅建協会や司法書士会等の団体との協力・連 携は不可欠であり,所有者等が気軽に相談できる相談体制を整えるほか,空家等の所 有者等に利活用を働きかけることによって不動産の流通の促進を図ります。 また,地域包括支援センターなど高齢者等の身近な相談窓口となっている団体等に, 施設入所などの住み替えの結果生じる空き家の管理や売却等の相談があった場合に, 適切な窓口を紹介することができるような連携に努めます。 イ 町内会,市民委員会等との連携 町内会は,町内会費の徴収や行事などによる各戸とのつながりがあるため,居住者 不在の情報が容易に得られることや,町内会等が空家等の所有者の所在や連絡先を認 知している場合は,空家等の問題が拡大する前に解決に至ることがあります。 また,空家等が存在する町内会等では,その空家等が起因する問題やその解決にも 直面しているほか,空家等の集会所等としての利用や,空き地については冬期の雪押 し場としての利用の実例や要望があります。 このように地域住民から組織される町内会等と空家所有者等の連携や協力又は情報 の共有は,空家等の利活用のほか,空家等が起因する問題解決や未然の防止に大変有 効であることから,自治会や町内会の取組の支援を行うとともに,アンケート調査等 の実施による空き家情報の共有など空家等の早期把握に努めます。 ウ NPO 団体等との連携 本市内では,国土交通省のモデル事業の活用により,空家等を含む住宅の流通・活 用と生活利便・支援サービスの促進,ひいては地域の維持・活性化を目標に地域自治 組織として取り組む NPO 団体が活動しております。 17 先進的かつ地域自治組織の積極的な取組は,行政に頼らない自主的な活動として, これからの空家対策において参考とするところが多くあることから,地域自治組織と して取り組む NPO 団体等の他の地域での新たな組織化や活動を支援できる仕組みを検 討します。 施策6 エ 政策課題とのマッチング 庁内関係部局との連携 本市では移住・定住政策や新規就農政策,地域コミュニティーの推進,住宅困窮者 の支援などさまざまな課題を抱えており,そのなかには空家等を有効に活用すること で,合理的かつ効果的な対策につながることも考えられることから,関係部局の連携 を図り有効な対策を検討します。 施策7 オ 改修による利活用の促進 支援・情報提供等 多様なニーズに合わせて改修,リフォームすることは,良質なストックが形成され, 空家等の利活用の促進に寄与するため,空家等の利活用に伴う改修工事等を支援する 制度を検討します。 また,所有者の不安を解消するため,工事契約や工事の内容に関する相談に対応で きる窓口の周知・案内など,リフォームに関する情報提供を行います。 施策8 カ 空き家情報バンク 空き家情報バンクへの登録の支援 北海道では,移住・定住の促進や住宅ストックの循環利用を図るため,道内全域を 対象区域とする「北海道空き家情報バンク」を開設します。本市は北海道空き家情報 バンクの運営に協力し,広く市民へ制度の周知や紹介を図るほか,特に空家等の所有 者等に北海道空き家情報バンクへの登録を促し,そのための支援に努めます。 18 ⑶ 適切に管理されていない空家等への対応 施策9 ア 行政指導・措置 特定空家等に対する方針 特定空家等については,第一義的には所有者等の管理責任があることから,原則的 に所有者等がその改善のための措置を講じる必要があります。 ただし,所有者等が不存在の場合や,やむを得ない事情により所有者等が自ら特定 空家等に対する措置を講じることができない場合は,その理由,特定空家等の状態や 周辺に及ぼす影響等を総合的に判断し,市が所有者等に代わって措置することもあり ます。 イ 特定空家等の認定 特定空家等は,将来の蓋然性を含む概念であることから,定量的な基準で一律に判 断することはできません。 周辺の建築物や通行人等に対する影響の有無並びに悪影響の程度及び切迫性につい てガイドラインで示す基準や,外観目視による適切に管理されていない空き家の危険 度判定基準を定め,その結果を参考に認定します。 また,特定空家等の認定は保安,衛生,景観,その他生活環境の保全の観点から判 断されることから建築部のほか保健所,環境部,土木部等の関係部局と連携を図りま す。 ウ 法による指導・勧告・命令等手続き 特定空家等に対する措置は,法の規定及びガイドラインに示す基準により,次のと おり実施します。 前述のとおり,特定空家等については,第一義的には所有者等の管理責任があるこ とから,原則的に所有者等がその改善のための必要な措置を講じるよう,助言又は指 導をします。 また,助言又は指導した場合において,なおもその状態が改善されない場合は,必 要な措置を講じるよう勧告します。 さらに,勧告を受けた者が,正当な理由がなく必要な措置を講じない場合において, 特に必要と認められる場合は,必要な措置を講じるよう命令します。 そのほか,命令を受けた者がその措置を履行しない場合は,行政代執行法の定める ところにより,市が所有者等の代わりに措置を講じ,その措置に要した費用を所有者 等に請求します。 19 エ 条例による公表 前述の特定空家等について,必要な措置を講じるよう命令を受けた者がその措置を 履行しない場合は条例の規定により,あらかじめ意見を述べる機会を設けたうえで, 所有者等の氏名や住所,空家等の所在,命令の内容等を公表することができます。 オ 緊急安全措置 特定空家等の倒壊等により,人の生命などに重大な損害をおよぼす等の危険な状態 が切迫している場合は,助言・指導,勧告,命令等によらず,その危険を回避するた め,市が必要最小限の措置を講ずることができ,その費用を所有者等に請求すること ができることを条例に規定しています。 施策10 カ 所有者不在空家等の法的手続 相続財産管理人又は不在者財産管理人選任の申立て 特定空家等には,所有者等が死亡しており相続人が存在しない,又は存在が明らか でない,若しくは相続人全員が相続を放棄している事例,さらに所有者等の所在や生 死が不明であるといった事例が増加しています。 このような特定空家等は,そのまま放置すれば空家等の老朽化が進行し,地域の生 活環境に及ぼす影響が,ますます大きくなることが明白なことから,利害関係者の申 立てがない場合は,本市が家庭裁判所へ相続財産管理人又は不在者財産管理人選任の 申立てを行い,相続財産管理人,又は不在者財産管理人,若しくは新たな所有者によ る空家等の管理や処分に導きます。 施策11 解体等の補助・支援 キ 補助・支援等 解体費用が工面できない等の経済的な理由により,長期間放置され,老朽化による倒 壊や建材の飛散等,生活環境への悪影響など,地域住民の安全で安心な生活への問題 が直面している空家等について,除却費の一部を補助することで早期の解体を促進し ます。 また,隣地や隣家に対する被害を減少させるため,空家等の改修や落雪防止措置等 を支援する制度を検討します。 さらに,金融機関等の解体に伴う融資・支援等の情報提供に努めます。 20 2 実施体制等 ⑴ 実施体制 ア 空家等対策について庁内関係部局から構成する連絡会議を設置しているほか,事案 に応じて各部局が空家等に関係する業務を担当します。 イ 法に基づき,附属機関として「空家等対策協議会」を設置し,本計画の策定や見直 しに係る審議を行いますが,必要に応じ次の事項などに関して答申を図る事ができま す。 (ア) 行政措置に関しての妥当性 (イ) 立入調査の方針 (ウ) 特定空家等の判断 ウ 空家等対策においては,外部団体等の連携が必要不可欠であることから,次の団体 等と施策の実施や相談体制の整備について協力を図ります。 (ア) (公社)北海道宅地建物取引業協会旭川支部 (イ) 旭川弁護士会 (ウ) 旭川司法書士会 (エ) 地域まちづくり推進協議会 (オ) 北海道警察 (カ) NPO 団体 (キ) 町内会・市民委員会 (ク) 地域包括支援センター ⑵ その他 ア 税制上の措置 法による勧告の対象となった空家等は,地方税法の規定により住宅用地に対する固 定資産税及び都市計画税の課税標準の特例(固定資産税の場合 200 ㎡まで 1/6,200 ㎡ を超える部分 1/3 に低減等)の適用対象から除外されることから,勧告を実施すると きは,関係部局の連携を図ります。 また,特定空家等の納税義務者に市税等の滞納がある場合には,該当不動産の差押 え及び公売の検討を行い,滞納処分を通して,特定空家等の解消に努めます。 21 イ 補助・交付金の活用 良質な住宅のストックのための改修補助や空き家の除却補助のほか,既存建築物の 有効利用の促進等の支援制度や補助制度を検討します。 また,空き家所有者等の要望等を調査し,また他の自治体の事例を研究しながら, 空家等の適切な管理につながる施策の充実と展開を図ります。 さらに,空き家再生等推進事業や空き家対策総合支援事業等の国や道が実施する事 業や交付金を有効に活用した施策の展開に努めます。 22 第5 目標・評価指標 23 1 目標・評価指標 ⑴ 空き家率等(住宅・土地統計調査) 住宅総戸数における空き家総戸数の占める割合である「空き家率」並びに住宅総戸 数における二次的住宅,賃貸用の住宅及び売却用の住宅以外のその他住宅の占める「そ の他空き家率」について,全国及び全道を下回る率を維持することを目標とします。 ア 空き家率(平成 25 年度 住宅土地統計調査) 全国 13.5%,全道 14.1%,旭川市 13.3% イ その他空き家率(同調査) 全国 5.24%,全道 5.08%,旭川市 4.44% ⑵ 第 8 次旭川市総合計画等による指標 空家等対策は第 8 次総合計画の目標達成にむけた展開施策のひとつと位置付けられ, その推進計画の評価指標として,住民や近隣周辺に危害を及ぼすおそれがある適切に管 理されていない空き家の数を次のとおり定めています。 ア 平成 27 年 250 棟 → 平成 31 年 230 棟 ⑶ 特定空家等の除却等の件数 本市で把握している特定空家等について,年間 50 件の除却,また除却以外として年 間 15 件の是正を目標とします。 ⑷ 所有者不在等空き家への取組み 増加傾向にある所有者不在等の空き家について,計画的に年間 2 件程度の相続財産 等管理人選任の申立てを行います。 24
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