低温及び降雪による農作物被害防止対策 Ⅰ 寒害対策

低温及び降雪による農作物被害防止対策
平成29年1月13日
農業技術課 農業革新支援センター
Ⅰ
寒害対策
1 野菜・花き
<一般管理>
(1) かん水をする場合は、地温低下や根傷みを防止するため晴天日の午前中に行い、少量
多回数かん水とする。また、かん水量が過剰とならないように注意する。
(2)晴天日には短時間だけでも換気を行い、ハウス内の乾燥に努める。
(3)曇雨天が多く、昼間の温度の低い日が続く場合には、暖房機を運転して加温、除湿を
図る。
(4)灰色かび病、疫病、菌核病などの病害が発生しやすいので、晴天日を選んで薬剤散布
を行う。また、曇雨天が続く時はくん煙剤を利用する。
(5)マルハナバチの訪花温度の下限は5~6℃、ミツバチは10~15℃である(1993、松浦)。
空中湿度が高いと温度が確保されていても活動しない場合があるので、除湿の意味でも
適宜暖房機の運転を行う。低温、寡日照が続くとミツバチの活動が鈍くなるので、施設
内が18~22℃の温度域を保つよう(メロンの場合は品目の適温優先)心がける。
(6)いちごの花蕾は、開花前後に寒害の障害が発生しやく、最低夜温が-2℃以下では開
花約3日前から被害を受けやすい。栽培管理においては、午前中22~23℃(品種共通、
但し「さがほのか」のみ、さらに2~3℃高め)、夜間最低温度5℃以上確保を目標に、
生育(草勢)を維持し果実着色を促すよう努める。
(7)無加温ハウスでは、小型のストーブ等を利用して凍害を回避する。この場合、一酸化
炭素中毒の恐れがあることから換気を十分行った後にハウスに入る。
(8)すいか・メロンは交配後、できる限り適温を保つよう努める。なお、装備があれば暖
房機による加温を実施する。
<低温対策>
(1) 温度確保、燃料節減のために、ハウスやカーテンの破れ、隙間等を補修し、密閉度を
高める。特にカーテンの裾部分や合わせ部分に隙間ができやすいので注意する。
(2)ハウス内の実温度を確認し、適正な最低夜温管理を確保する。
(3)暖房機のバーナー及びサーモスタット、並びに電源、配線、燃料を点検し、不良部分
を補修する。
(4)二層カーテンを設置する。この場合、光線不足になりやすいためカーテンの開閉を徹
底する(日の出後開け、日没前閉める。)。
2 果樹
<事前対策>
(1)収穫時期を迎えている品種については収穫を急ぐ。
(2)予措および貯蔵中の果実については、庫内が0℃以下にならないように庫内の密閉・
保温に留意する。
(3)施設で保温できる園では、最低温度0℃で設定し防寒対策を行う。また、無加温施設
等の完熟栽培園でも、ストーブ等の補助加温機で保温する。
<低温被害後の対策>
(1)低温により果実が凍結したと考えられる園では、必ず区分貯蔵を行う。
(2)果実が凍結した場合は、低温被害後約3週間後からす上がりの発生が確認できるため、
出荷前には果実を輪切りにして確認し、出荷時のす上がり果混入を防ぐ。
(3)葉の萎れ、落葉等の症状がみられるかんきつ園では、被害部位のせん除は春梢の新葉
が緑化した後に行う。
(4)落葉が目立つかんきつ園では、被害樹のせん定は他の樹より遅れて実施する。
(5)樹勢低下を防ぐため、発芽期前から窒素主体の葉面散布を実施する。
3 麦類
<低温害>
(1)麦類については、分げつ期に、-5℃~-10℃程度の強い低温にあうと葉先が黄化
し、枯死する被害が発生する。枯死した葉は切れて流れ葉状になる。
また、霜柱による凍り上げと溶融を繰り返すと、根が持ち上げられ、地表面に露出し
枯死する場合もある。
<低温対策>
(1)麦類生育期の降雪や低温対策については、基本的な地表面排水対策を徹底しておくこ
とが大切である。
(2)降雪や霜柱等により土壌湿度が高い場合は、麦踏み作業は実施しない。
(3)土壌が乾燥している場合、霜柱対策としての麦踏み作業は、根の凍り上げを防止する
効果がある。
(4)追肥作業は、分げつが旺盛となり、麦踏みや土入れ作業ができるようになった時点で
実施する。原則的には、1月末、2月末に追肥を行う。
4 畜産
<家畜の管理>
(1)幼畜、子畜、老畜および病畜については観察の強化に努める。
(2)畜体を濡らさぬよう留意し、体が濡れた幼畜等は乾いた布等で拭きあげる。
(3)すきま風は、体に直接当たると外気温以上に体感温度が低下する。コンパネやカーテ
ン等ですきま風を防ぐ。
(4)幼畜等は、投光器やヒーター、幼畜用ベスト、ネックウォーマー等を活用して保温す
る。
(5)感染性疾病に対して免疫抵抗性も低下しているため、通常期以上に衛生対策を徹底す
る。
<施設等管理>
(1)防寒対策ではすきま風の対策は重要であるが、密閉状態にならないよう保温と換気を
うまく調節する。
(2)畜舎等の敷料は厚く敷き,乾燥した状態に保つ。畜体の腹を濡らして冷やさないよう
注意する。
(3)水道管の凍結に備え,保温断熱材を巻くなどの対策を行う。
Ⅱ 降雪対策
1 事前対策(部門共通)
(1)各対策ともに、積雪状況によっては万全ではないので、融雪水等の排水が図られるよ
うハウスの間に排水溝を掘るなど降雪後の対策等を迅速にできるよう準備を進めておく。
(2)屋根被覆資材の表面に雪の滑落を妨げるような突出物がないかを事前に点検する。
特に、防風ネットや外部遮光等は忘れずに撤去する(特に無加温ハウス)。
また、燃油残量を確認するとともに、暖房機や電源、配線等についても、正常に機能す
るか事前に確認を行う。
(3)栽培が終了しているハウスでは、次作の準備に影響がない場合は、天井ビニルは除去
しておく。
(4)加温施設のあるハウスは、積雪と同時に可能な範囲で二層カーテンを開き設定温度を
高めて融雪させて雪の滑落を促進する。
暖房機が設置されていない場合は、施設の気密性を高め、可能な範囲で内部被覆(二
重カーテン)を開放し、地熱の放射により室温を上昇させることで屋根雪の滑落を図る。
(5)散水による除雪・融雪については、雪の積雪を防ぐ目的で積雪前から行う場合は有効
であるが、積雪後に行うと水を含んだ雪の重量が予想外に増大し、施設の倒壊を引き起
こす可能性があるので実施しないようにする。
(6)適宜、支柱やスジカイ等で補強し、雪が積もり始めたら、早めに雪下ろしを開始する。
支柱を使用する場合は、主骨組材の棟部、及び棟部を中心に対称となる位置に取り付ける
と効果的である。
なお、補強材については予め利用しやすい場所に整備・保管しておくよう心がける。
(7)積雪が10㎝を超え、雪の重さによってハウスが耐えられないと判断したらビニルを
切り裂き、雪を落としてハウスの倒壊を防ぐ。
(8)果樹では樹体の枝折れ、枝裂け防止のため支柱で誘引補強(特に高接ぎ樹)を行って
おく。また、積雪の場合は、果実障害(ヤケ果)、樹体損傷につながるので除雪に努め
る。
(9)降雪により停電の心配があるため、発電機の準備をしておく。
2 事後対策(部門共通)
(1)基本的には降雪が収まり、施設の安全が確認された時点で確認・除雪作業等を行う。
また、除雪は周到な計画をたて、新雪のうちに行うよう心がける。
(2)降雪初期において屋根への積雪がほとんど見られない場合は、安全を確認した上で除
雪作業や加温機等の起動を行う。
ただし、屋根への積雪が確認できる場合は、施設倒壊の可能性があるので、内部への進
入は控える。
(3)日照や風の影響等で屋根の片側に積雪が偏ると、主骨組に予想外の大きな力が加わり、
施設倒壊の危険を生ずることもあるので、十分に注意する。
(4)降雪後、施設倒壊の恐れがなくなったことを確認の上、施設各部の損傷や緩み等を総
点検する。
(5)軒下の堆積雪は、屋根雪の滑落を妨げ、施設の側壁に側圧を加えることとなるので、
軒下の堆積雪もなるべく速やかに除雪する。また、積雪沈降力が発生しないよう、温室
の全部や被覆材を撤去した後の骨組が完全に雪に埋没しないようにする。
(6)施設の損傷や被覆資材の切断等を早急に修復し、室温の確保に努め、低温による栽培
作物の生育障害・枯死等の被害を防止する。
このため、修復作業はハウス内温度ができる限り低下しない時間帯や、被害状況に応
じた作業手順を選んで行う。
(7)融雪水による湿害対策のため圃場排水に努める。