国の違う友だち

誰もが「おいしい!」と舌鼓を打つものも
日々
間学級の
連載 夜
国の違う友だち
東京都八王子市立第五中学校
山下 喜世子
あったりと,できあがりもきれいで美味しく
て多国籍料理を楽しめるレストランのようで
す。初めて口にするものもありますが,互い
に笑顔で「おいしいよ!」と言葉を交わし合
いながら心から楽しめる 1 日です。中国人の
グループが皮から作る餃子は毎年見事です。
ネパール人のグループでは,お父さんのお店
のスパイスを特別に分けてもらって本格的な
チキンカレーを作ってくれて,びっくりのお
「こんばんは」で始まる夜間学級の日々。
いしさでした。みんな,「是非友だちや先生
生徒たちは笑顔であいさつしながら教室に向
にこれを味わって欲しい」という強い気持ち
かいます。現在は全国に 31 校ある夜間中学
をもって取り組んでいるのがひしひしと伝
ですが,在籍生徒の様子は年々変わっていま
わってくるのです。そんなごちそうですから,
す。最近は,若い外国籍の生徒が増えていま
一口一口を大切にいただきます。
す。八王子五中でも今まで私が出会った生徒
また,日本の伝統文化を学ぶ授業では,お
たちは,日本だけでなく,中国,フィリピン,
茶会を毎年実施しています。市内の生涯学習
ネパール,メキシコ,ペルー,グアテマラ,
センターにあるお茶室を借りて,お茶の作法
インド,ラオス,タイ,スリランカ,などな
やお点前などについて学び,体験します。生
ど様々な国から来た人たちがいるのです。日
徒たちはお茶席に座ることも,お抹茶をいた
本語がほとんど話せない人も入級してきます。
だくのも初めて,という人ばかり。はじめの
その場合は,日本語のテキストを使って初級
緊張感もしばらくすると解けて,笑顔になり
から教えるのですが,中学校で英語を初歩か
ます。果敢にお点前に挑戦する人もあり,お
ら教える方法と多くの共通点を見いだすこと
抹茶が大好きになる人もあり,お菓子がとて
ができます。言語活動を多く効果的に取り入
も気に入った,という人もあり…。それぞれ
れることや,教材をどのように魅力あるもの
に日本の文化を堪能します。折角の機会です
に見せるか,また生徒の興味・関心を高める
から,私も少しばかりおじゃまして,小さい
ためにどんな工夫をすべきか…など,外国語
頃習っていた箏の演奏を披露し,生徒たちに
を教える,という点で大切にするべきことは
も演奏体験をさせよう,というコーナーを設
同じです。
けます。夜間学級に赴任した当初から続けて
いろいろな国の人が一緒に学んでいること
いますが,箏を弾くのも,聴くのも初めてと
で,楽しみなことが年に 1 回実施されていま
いう生徒たちがほとんどですので,これもま
す。それは,教員と生徒全員で取り組む「お
た楽しんでくれます。演奏体験では曲が弾け
国自慢料理」です。国別のグループを作り,
るまで一所懸命に頑張る姿を見ていると,こ
それぞれのお国自慢を 1 品~ 2 品作り,互い
ちらも力が入ります。いつも「さくらさく
に試食し合うというものです。毎年,どんな
ら」を弾かせていましたが,今年は「ふるさ
料理が味わえるかとても楽しみです。生徒が
と」にしようと決めました。音楽の時間にみ
変われば,同じ国の料理でも違うものが必ず
んなで歌う「ふるさと」は生徒たちの大好き
出てくるのです。時には,辛くて多くの人が
な曲。箏で弾くことができたら,きっとみん
「ちょっと無理…」と思うものがあったり,
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な喜んで素敵な笑顔がはじけることでしょう。
2016/03/09 16:10