エコタンカル、PAdeCS の技術開発、その成果と実証

2016 年度第 16 回早稲田大学リンアトラス研究所セミナー
2017 年 1 月 10 日
エコタンカル、PAdeCS の技術開発、その成果と実証
日本コンクリート工業株式会社
技術顧問
環境・エネルギー事業部
部長
早川康之
吉田浩之
1. はじめに
生コンクリート及びコンクリート製品の製造時に発生するコンクリートスラッジは、高アルカ
リ性のスラリー状廃棄物である。その処分には、多額の費用を要し、年間処理量は日本全国の生
コンクリート工場で160万トン、主なコンクリート2次製品工場で20万トンと推定される。また、
コンクリート2次製品工場では、製品養生のため化石燃料を燃焼させ二酸化炭素を排出している。
コンクリート使用時に発生する廃棄物量を削減することを目的として、コンクリートスラッジ
と二酸化炭素を利用して炭酸カルシウム(エコタンカル)とリン等の吸着材に再資源化する技術
の開発を行い、コンクリートスラッジの再資源化設備を設置し、炭酸カルシウムと高性能脱リン
材 PAdeCS(Phosphorus Adsorbent derived from Concrete Sludge)を製造し、その用途開発(リン除
去、水質浄化、中和剤利用、ヒ素除去)を行い、その成果について説明する。
2.コンクリートスラッジの現状と問題
コンクリートポールを遠心成型により
製造する際、コンクリートポール内面に
水分の多いコンクリートスラッジが発生
する。このコンクリートスラッジの処理
工程を図1に示す。この工程にてコンク
リートスラッジを固液分離し、固形分は
産廃処理、水溶分は高アルカリ性のため、
硫酸により中和処理を行っている。これ
ら処理に多大な費用が発生している。
図1
現状のコンクリートスラッジ処理工程
3.PAdeCS、炭酸カルシウム製造設備(コンクリートスラッジ再資源化システム)
茨城県筑西市の工場内に
PAdeCS、炭酸カルシウム製造
設備を H26 年 3 月に設置し、
現在、稼働している。
工場で発生するボイラー排
ガス中の二酸化炭素によりア
ルカリ水を中和し、炭酸カル
シウムを製造。また、コンク
リートスラッジ固形分から
PAdeCS を製造している。
図2.PAdeCS、炭酸カルシウム製造フロー図
4.用途開発の実施例
4.1
リン除去・水質浄化
PAdeCS を用いた脱リン実験を A 浄化センターの返流水にて行った結果を図3に示す。0.2wt%
添加で 90%以上のリンが除去できている。また、低濃度に対するリン除去実験を D 市公園の湖水
にて行った結果を図4に示す。低濃度のリンに対しても効果があることが確認できた。
図3.A 浄化センターの場合
4.2
図4.D 市公園の湖水の場合
酸性坑廃水の中和
A 鉱山酸性坑廃水処理施設にて
(1/500 スケール)実証実験装置にて従前の中和剤
(消石灰)と PAdeCS
の比較中和実験を行なった。消石灰の 1.6 倍で坑廃水の中和が可能となり、又、有害元素のヒ素、
鉄、鉛の除去にも有効であることが分かった。
(表1、図5参照)更に、発生殿物が少なくなるこ
とも判明している。
表1.中和剤による中和前後の水質比較
図5.中和剤使用量の比較
4.3
ヒ素除去
A 鉱山坑廃水のヒ素に対する除去実験を行い、排水基準以下にヒ素濃度を低減できることが確認
できた。(図6参照)今後、天然由来のヒ素に汚染された建設残土に対し、方策提案していきたい。
図6.A 鉱山坑廃水を用いたバッチ式のヒ素除去事例
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