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新垣 毅(あらかき・つよし)
沖縄県那覇市出身。1998 年、琉球新報社入社。中部支
社報道部、沖縄県議会・政治担当、社会部遊軍キャップ、
編集委員、社会部デスク、文化部記者兼編集委員を経て
2016 年から東京支社報道部長。
著書『沖縄の自己決定権 』(高文研)、共著『沖縄自立と
東アジア共同体』(花伝社)等。
米軍普天間基地に配備されたオスプレイ(著者撮影、1 面も)
てきた。基地面積縮小ばかりをPRする政府
地建設や北部訓練場ヘリパッド建設を強行し
けているにもかかわらず、名護市辺野古新基
沖縄の民意が選挙の度に﹁ノー﹂を突きつ
もある。しかしなかなかそうならないのは、
オーストラリアに撤退して機能するとの見方
兵隊は米国の軍事戦略上、グアムやハワイ、
と米本国でも不要論が根強い。また、在沖海
兵隊については、財政的に﹁金食い虫﹂など
決まる近年において、役割が後退している海
空爆やミサイル攻撃などで戦況がほとんど
身に付けないといけない要素が3つあると思
沖縄の視座から日本社会を見た時、市民が
ことができたからだ。
担、すなわち安保の犠牲を沖縄に背負わせる
それを選べたのは、沖縄の有事や平時の負
日本政府が米国との軍事一体化を目指す狙いとは
の﹁沖縄の負担軽減﹂の実体は、沖縄県内で
むしろ日本政府が、海兵隊を沖縄に欲してい
う。ヒト、カネ、夢︵ビジョン︶だ。
安倍政権は、沖縄から見ると驚きの政権で
最新鋭施設を新設し機能を強化する﹁基地押
るからではないか。理由は主に2つあると推
米兵絡みの事件や米軍機墜落事故が起こり、
り命が奪われることであり、平時においては
争︶においては、基地があるゆえに標的とな
沖縄の言う﹁負担﹂とは、有事︵紛争や戦
したい安倍首相にとって、海外で紛争・戦争
つは、憲法を改定し、自衛隊を﹁国防軍﹂に
合がよいと考えているように思える。もう一
には、沖縄に多くの米軍基地があった方が都
え、米国に﹁安保の適用範囲﹂と認めさせる
一 つ は、 尖 閣 問 題 だ。 中 国 と の 衝 突 に 備
目を光らせることだ。日本が買うオスプレイ
防衛費、その税金の使い道に対して徹底的に
2つ目のカネ、これは今や5兆円を超えた
対する差別を食い止めることにもつながる。
だ。その姿勢は、沖縄や在日コリアンなどに
人 種 主 義・ 排 外 主 義 を 絶 対 に 許 さ な い こ と
を徹底的に磨くこと。ヘイトスピーチなどの
1つ目のヒトは、すなわち人権感覚。これ
命や人権が脅かされる状態だ。沖縄戦で﹁捨
に参加している米兵は絶好の〝家庭教師〟に
機は3600億円、1機当たり200億を
ある。
し付け﹂なのである。
﹁半永久的に基地の島
測する。
﹁人々の共生﹂
見つめ直しを
であり続けるのはもうごめん﹂というのが沖
て石﹂になった恐怖、日常は強姦や殺人が繰
なる。基地の共同使用や共同演習は増える一
縄の民意だ。
年
その上、安倍内閣は、ヘリパッド建設に反
権 の 行 使 が で き る よ う に し た の も、 そ の 肝
な訓練地域がある。新安保法制で集団的自衛
方だ。沖縄は陸域だけでなく、海域にも広大
3 つ 目 の﹁ 夢 ﹂ は、 主 に ビ ジ ョ ン の こ と
う実体がある。
さえめどが立たない日本が欠陥機に大金を使
超える。相場は
り返される恐怖を担わされている。戦後
対 す る 市 民 に 対 し て 機 動 隊 員 が 吐 い た﹁ 土
は米軍と自衛隊の一体化であることを考える
だ。私は東アジア共同体構想を支持する。安
億といわれる。社会保障費
人﹂﹁シナ人﹂発言を﹁差別と断定できない﹂
と、沖縄はその訓練場として都合がいいとい
もだ。
との見解を閣議決定した。沖縄の人々への人
倍政権の安全保障政策は、北朝鮮・中国への
ない。そんな米国に対し、日本政府は日米同
的世界戦略上も、沖縄の基地を手放したくは
隊員を犠牲にして沖縄を占領した米国。軍事
一方、歴史的に見ればどうだろう。米海兵
だ。そんな理想や夢を抱かないと、今の内向
を緩和するか、火種を除去できるのかが重要
言わざるを得ない。そうではなく、どう緊張
保障政策など、火種や危機を抱えた欠陥策と
古くは対日講和条約3条のもととなった天
2017年は、世界的に強まっている排外
き志向の社会情勢では排外主義を招きやす
で初めて踏み込む決議をした。背景には、在
皇メッセージ、沖縄返還協定における密約の
主 義 に 対 し、
﹁人々の共生﹂を再び見つめ直
盟至上主義的な考えから、沖縄を〝貢ぎ物〟
%が海兵隊基地であ
数々⋮。日本は米国の世界的軍事戦略の傘に
し、それを大切にすることに多くの人々が目
い。
り、 米 国 で 海 兵 隊 は﹁ 荒 く れ 者 ﹂ と 呼 ば れ、
入ることで、自らの安定を築いてきた。いわ
沖米軍基地面積の約
犯罪をよく引き起こす存在として認知されて
として差し出してきた。
敵視政策だ。周辺諸国と仲良くできない安全
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覚める年であってほしい。
視した沖縄県議会は在沖海兵隊撤退要求にま
昨年4月の米軍属女性暴行殺人事件を深刻
高まる
﹁海兵隊不要論﹂
の中で
めてではないか。それが﹁驚き﹂の理由だ。
る。ここまで沖縄をばかにする政権は戦後初
うわけだ。
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種差別容認につながる差別助長見解ともとれ
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ゆる対米従属を主体的に選んできた。
いることがある。
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第 1155 号(第三種郵便物認可)
2017 年 1 月 1 日
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PEACE
沖縄をまた戦場にするのか