№ sma0026 (2017.1.5) サントリー美術館 「六本木開館10周年記念展 絵巻マニア列伝」 開催 会 期:2017年3月29日(水)~5月14日(日) 重要文化財 病草紙断簡 一幅 平安時代 不眠の女 12 世紀 サントリー美術館 サントリー美術館(東京・六本木/館長 鳥井信吾)は、2017年3月29日 (水)から5月14日(日)まで、 「六本木開館10周年記念展 絵巻マニア列伝」 を開催します。 文学と美術を融合させた「絵巻」は、日本で隆盛をみた芸術様式です。 現代人にとって絵巻といえば、美術館や博物館でガラス越しに出会うことが多いの ではないでしょうか。しかし絵巻は本来、鑑賞者が実際に手にとって楽しむもの であり、中世以来日本人は、その掌中で展開する絵物語に魅了されつづけてきま した。 ご しらかわいん はなぞのいん ご す こういん さんじょうにしさねたか 本展では、後白河院や花園院、後崇光院、三 条 西実隆、そして足利歴代将軍など 《絵巻マニア》とでも呼ぶべき愛好者たちに注目し、鑑賞記録などをたどりながら、 その熱烈な絵巻享受の様相を探ります。 1 マニアたちの絵巻愛は、鑑賞や蒐集だけにとどまりません。彼らの熱意は同時代 の美術を牽引し、新たな潮流を生み出すエネルギーとなりました。有力パトロン でもあった絵巻マニアたちの姿を追うことで、知られざる絵巻制作の実態と背景 もご紹介します。 絵巻マニアたちはそれぞれ個性に満ちています。この展覧会では、その列伝を お楽しみいただくとともに、歴代のマニアを俯瞰することで見えてくる、繰り返される 絵巻の憧憬と再生の歴史を描き出します。かつて誰かが確かに愛した絵巻の名品 が一堂に揃う本展は、絵巻マニアたちの狂おしいほどの情熱を追体験できる貴重 な機会となるでしょう。今までにない絵巻展をぜひお楽しみください。 《 展示構成 》 序章 後白河院 12世紀後半は、絵巻制作の質・量ともに、ひとつの頂点を迎えた時代でした。 ご しら かわ いん その潮流の中心にあり、歴代の絵巻マニアの筆頭に挙げられるのが後 白 河 院 (1127~92)です。 りょうじん ひ しょう れん げ おういん 今様を好み『 梁 塵秘 抄 』を撰したことでも知られる後白河院は、蓮華王院に ほうぞう 設けた宝蔵に和漢の典籍や宗教的な宝物、楽器など多様な文物を秘蔵し、院の趣味 や嗜好を超えた、いわば文化的事業の集積所を作り上げていました。なかでも注目 されるのは、コレクションに占める絵巻の多さです。宮廷の儀式や祭礼などを描く ねんじゅうぎょう じ え まき 大部の「年 中 行 事絵巻」ほか、後白河院は自ら積極的に絵巻を制作させて宝蔵 に納めていたようです。 やまいのそう し だんかん ふ みん 近年当館の所蔵となった「 病 草紙断簡 ろくどう てんどう にんどう おんな 不眠の 女 」も、かつて蓮華王院宝蔵 が き どう あ しゅ ら どう ちくしょうどう じ ごくどう に納められていた六道(天道、人道、餓鬼道、阿修羅道、畜 生 道、地獄道)絵巻 のうち、病に苦しむ人道の苦悩を表したものの可能性が指摘されています。 序章では、蓮華王院宝蔵ゆかりと考えられている絵巻をご紹介するとともに、 史料を通して、絵巻に限定されない後白河院コレクションの姿を探ります。 【おもな出品作品】 ・重要文化財 やまいのそう し だんかん 病 草紙断 簡 ふ みん おんな 不眠の 女 一幅 平安時代 12世紀 サントリー美術館 やまいのそう し だんかん い ねむ おとこ ・ 病 草 紙 断 簡 居 眠 りの 男 ・重要文化財 一幅 平安時代 12世紀 個人蔵 はくびょう え りょう し こんこうみょうきょう まきだい に だんかん め なしきょう 白 描 絵 料 紙 金 光 明 経 巻 第 二 断 簡 (目 無 経 ) 一巻 平安時代 12世紀 公益財団法人阪急文化財団 逸翁美術館 ねんじゅうぎょう じ え まき ・年 中 行 事絵 巻 た なかしん び 模本 第十五巻 伝田 中 親 美筆 一巻 明治時代 20世紀 京都市立芸術大学芸術資料館 2 第1章 花園院 重要文化財 石山寺縁起絵巻 第一巻(部分) 鎌倉時代 正中年間(1324~26)頃 滋賀・石山寺 ふし み はなぞの 伏見天皇の第三皇子・花園天皇(1297~1348)は、父から貸し与えられた れん げ おういんほうぞう ほうぞう え 蓮華王院宝蔵の絵巻(宝蔵絵)を興奮気味に鑑賞し、 「予、幼年の時より絵を好む はなぞのいんしん き ものなり」と日記『花園院宸記』で自ら告白しています。 え どころあずかり この伏見院と花園天皇父子の周辺で絵画制作に従事していたのが、絵 所 預 ・ たかしなのたかかね か す が ごんげんげん き え 高 階 隆兼でした。隆兼の代表作である「春日権現験記絵」 (宮内庁三の丸尚蔵館蔵) ねんじゅうぎょう じ え まき の制作には、 「年 中 行 事絵巻」などの宝蔵絵を研究した痕跡が指摘されています。 平安時代以来の絵画伝統を継承し、さらに昇華させた高階隆兼の様式は、もうひとつ の絵巻黄金期を生み出しました。 本章では、絵巻マニアたちが牽引し、新たに誕生した絵巻の一時代の例として、 高階隆兼様式の貴重な作品を一堂にご覧いただきます。 【おもな出品作品】 か す が ごんげんげん き え ・春日 権 現 験 記絵 第九巻 たかしなのたかかね 高 階 隆 兼筆 二十巻のうち一巻 鎌倉時代 延慶2年(1309)頃 ・重要文化財 いしやまでらえん ぎ え まき 石 山 寺 縁 起絵 巻 第一巻 宮内庁三の丸尚蔵館 七巻のうち一巻 鎌倉時代 正中年間(1324~26)頃 ・重要文化財 こまくらべぎょうこう え まき 駒 競 行 幸絵巻 一巻 鎌倉時代 14世紀 滋賀・石山寺 和泉市久保惣記念美術館 えしのそうし ・絵師草紙 一巻 鎌倉時代 3 14世紀 宮内庁三の丸尚蔵館 第2章 後崇光院・後花園院 父子 国宝 玄奘三蔵絵 第四巻(部分) 鎌倉時代 14 世紀 藤田美術館 画像提供:奈良国立博物館(撮影:佐々木香輔) 放屁合戦絵巻 一巻(部分) 室町時代 文安 6 年(1449) サントリー美術館 今日伝存する中世の絵巻は、必ずしも制作年代や背景が明らかではありません。 さだふさ ご す こういん かんもん そのようななか、伏見宮貞成親王(後崇光院/1372~1456)の日記『看聞 にっ き 日記』は、絵巻に関する記事が豊富であり、当時の伝来・制作環境・評価を知る ことのできる第一級の史料といえます。 ご はなぞの 後崇光院の第一皇子・後花園天皇(1419~70)もまた、絵巻に強い関心 を持ち、『看聞日記』の記事からは、父子が方々から絵巻を召し出し鑑賞したり、 親子の間で絵巻を貸借していた様子が見てとれます。例えば興福寺大乗院で重宝 げんじょうさんぞう え とされた「玄 奘 三蔵絵」(現・藤田美術館蔵)も、都に運ばれ、後花園天皇から 父・後崇光院へと転貸されています。 本章では、後崇光院・後花園院父子の姿を通して、古今の絵巻を楽しむだけでなく、 気に入った絵巻を自ら写し、また新規制作していくマニアの姿をご紹介します。 4 【おもな出品作品】 ひこ ほ ほ で みのみこと え まき ・彦 火々出 見 尊 絵 巻 第三・四巻 六巻のうち二巻 江戸時代 17世紀 宮内庁三の丸尚蔵館 ・国宝 げんじょうさんぞう え 玄 奘 三 蔵 絵 第四・八巻 十二巻のうち二巻 鎌倉時代 14世紀 藤田美術館 ほう ひ かっせん え まき ・放 屁 合 戦 絵 巻 ・重要文化財 一巻 室町時代 文安6年(1449) サントリー美術館 あしびき え 芦 引 絵 第四巻 五巻のうち一巻 室町時代 15世紀 公益財団法人阪急文化財団 逸翁美術館 第3章 三条西実隆 地蔵堂草紙絵巻 一巻(部分) 室町時代 15 世紀 個人蔵 さんじょうにしさねたか 室町時代後期を代表する学者公卿・三 条 西実隆(1455~1537)は、日記 さねたかこう き 『実隆公記』を残しました。当時の政治や社会情勢のみならず、文化的な事象に 関する記事も豊かな『実隆公記』は、朝廷周辺や地方へもたらされた絵巻の記載 ご す こういん かんもんにっ き が多数見られ、後崇光院の『看聞日記』と並び、中世絵巻を研究する上で重要な 史料となっています。 実隆の絵巻愛好は、古画・名作の鑑賞にとどまりません。当代一流の文化人で あった実隆は、詞書の清書や物語の草稿執筆など多くの絵巻新作に関与し、晩年 くわのみでらえん ぎ え まき の「桑実寺縁起絵巻」 (滋賀・桑實寺蔵)制作では、チーフプロデューサーの役割 を担っていました。 ほうじょううじつな 本章では、寺社の縁起絵巻のほか、東国の戦国大名・北 条 氏綱の依頼によって しゅてんどう じ え まき こ え (サントリー美術館蔵)やお伽草子の小型絵巻(小絵) 制作された「酒伝童子絵巻」 など、宮廷・将軍家・寺社の交流から生み出された多様な室町絵巻の名品をご覧 いただきます。 5 【おもな出品作品】 ・重要文化財 いしやまでらえん ぎ え まき 石 山 寺 縁 起絵 巻 第四巻 七巻のうち一巻 室町時代 明応6年(1497) 滋賀・石山寺 じ ぞうどうそう し え まき ・地 蔵 堂 草 紙絵 巻 ・重要文化財 一巻 室町時代 15世紀 しゅてんどう じ え まき 酒 伝 童 子絵 巻 か の う もとのぶ 狩野 元 信 筆 個人蔵 三巻 室町時代 大永2年(1522) サントリー美術館 ・重要文化財 たい ま でらえん ぎ え まき 当 麻 寺 縁 起絵 巻 と さ みつもち 上巻 土佐 光 茂 筆 三巻のうち一巻 室町時代 享禄4年(1531) 奈良・當麻寺 第4章 足利将軍家 重要文化財 誉田宗庿縁起絵巻 中巻(部分) 室町時代 永享 5 年(1433) 大阪・誉田八幡宮 室町幕府は、宮廷文化の中心地であった都に初めて成立した武家政権といえます。 足利歴代将軍は、朝廷を凌駕するために、武力や政治経済力のみならず、伝統的 な貴族文化への適応をもって政権の安定を図ったと考えられます。 かんもんにっ き あしかが その文化的方策の最大ツールが絵巻でした。 『看聞日記』からは、第六代将軍足利 よしのり ご す こういん ご はなぞのいん 義教(1394~1441)が、後崇光院・後花園院父子とともに絵巻貸借の輪 さんじょうにしさねたか くわのみでらえん ぎ のなかに加わっていたことが知られ、また、三 条 西実隆が尽力した「桑実寺縁起 え まき あしかがよしはる 絵巻」 (滋賀・桑實寺蔵)の制作も、第十二代将軍足利義晴(1511~50)に よる依頼でした。そして、足利家歴代のなかでも天性の絵巻好きであった第九代 あしかがよしひさ 将軍足利義尚(1465~89)の存在も欠かせません。 本章では、第2章と第3章に挙げた公家層の絵巻マニアたちと同時代に、時に 競い、時に協調しながら熱中した、武家層の絵巻愛好の様相をご紹介します。 6 【おもな出品作品】 ・重要文化財 こん だ そうびょうえん ぎ え まき 誉 田 宗 庿 縁 起絵 巻 中巻 三巻のうち一巻 室町時代 永享5年(1433) 大阪・誉田八幡宮 は せ でらえん ぎ え まき ・長谷 寺 縁 起絵 巻 と さ みつもち 第二・三巻 土佐 光 茂 筆 六巻のうち二巻 室町時代 16世紀 奈良・長谷寺 終章 松平定信 とくがわよしむね まつだいらさだのぶ 江戸幕府第八代将軍・徳川吉宗の孫である松 平 定信(1758~1829)は、 全国各地の寺社や旧家に伝わる古文化財の調査・記録を行い、一大文化財図録 しゅう こ じっしゅ 『 集 古十種』を出版するなど、その好古趣味が有名です。 なかでも古画の愛好家であった定信は、 『集古十種』の続編ともいわれる故実の こ が るいじゅう 図譜『古画類 聚 』の制作にも着手します。 「古画」と題しながらも、素材となった 作品の大半は150点近い絵巻であり、定信がとりわけ絵巻好きであったことを 物語っています。さらに、古文化財の調査・整理分類だけでなく、絵巻の模写・ 修復・補作事業に尽力する気概は、彼の絵巻愛なくして語れないでしょう。 終章では、江戸時代後期において、現代につながる文化財行政の先駆けともいう べき事業を積極的に進めた、いわば「近代的」絵巻マニアの姿をご覧いただきます。 【おもな出品作品】 もう こ しゅうらい え ことば ・蒙 古 襲 来 絵 詞 後巻 二巻のうち一巻 鎌倉時代 13世紀 宮内庁三の丸尚蔵館 いしやまでらえん ぎ え まき ・石 山 寺 縁 起絵 巻 たにぶんちょう 谷文 晁 筆 七巻 江戸時代 19世紀 サントリー美術館 7 【本展における展覧会関連プログラム】 ◎記念イベント「現代絵巻マニアが語る 講 師:岡本麻美 氏 上野友愛 絵巻に恋するトークショー♡」 山口県立美術館 専門学芸員 当館学芸員 日 時:4月16日(日)14時~15時30分 会 場:6階ホール 定員:100名 聴 講 料:700円(別途要入館料) 対象:一般 応募締切:3月26日(日) 【サントリー美術館 六本木開館10周年記念イベント】 ◎「プレミアムトークシリーズ」 さまざまな業界の第一線で活躍されている著名人をゲストにお迎えし、当館の 所蔵品をテーマに多彩なトークを展開します。 絵画Ⅰ ゲスト:舘鼻則孝 氏 聞き手:池田芙美 4月2日(日) アーティスト 当館学芸員 日本近世絵画史専門 会場:東京ミッドタウン・カンファレンス(ミッドタウン・ タワー4階) 陶磁Ⅰ ゲスト:中島誠之助 氏 聞き手:安河内幸絵 古美術鑑定家・エッセイスト 当館学芸員 日本陶磁史専門 4月20日(木) 会場:東京ミッドタウン・カンファレンス(ミッドタウン・ タワー4階) 料金:2,500円 *入館料込み。詳細は、決まり次第、当館ホームページにてご案内いたします。 *メンバーズ・クラブの優待はありません。 「六本木開館10周年記念展 絵巻マニア列伝」 開催 ▼会 期:2017年3月29日(水)~5月14日(日) ※作品保護のため、会期中展示替を行ないます ▼主 催:サントリー美術館、朝日新聞社 ▼協 賛:三井不動産、三井住友海上火災保険、サントリーホールディングス ▼会 場:サントリー美術館 港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア3階 〈最寄り駅〉 都営地下鉄大江戸線六本木駅出口8より直結 東京メトロ日比谷線六本木駅より地下通路にて直結 東京メトロ千代田線乃木坂駅出口3より徒歩約3分 8 【基本情報】 ▼開館時間:10時~18時 ※金・土、および5月2日(火)~4日(木・祝)は20時まで開館 ※いずれも入館は閉館の30分前まで ※shop×cafeは会期中無休 ▼休 館 日:火曜日(ただし5月2日は開館) ▼入 館 料:一般1,300円、大学・高校生1,000円、中学生以下無料 ※20名様以上の団体は100円割引 ▼前 売:一般1,100円、大学・高校生800円 サントリー美術館、 チケットぴあ、 ローソンチケット、 セブンチケット、 イープラスにて取扱(各種プレイガイドは一般のみ販売) ※前売券の販売は1月25日(水)から3月28日(火)まで ※サントリー美術館受付での販売は1月25日(水)から3月12日(日)までの開 館日 ▼割 引: ■きもの割:きものでのご来館で100円割引 ■HP割:ホームページ限定割引券提示で100円割引 ■携帯割:携帯サイトの割引券画面提示で100円割引 ■あとろ割:国立新美術館、森美術館の企画展チケット提示で100円割引 ※割引の併用はできません ▼点茶席(お抹茶と季節のお菓子) 1日限定50名(当日先着順) 1,000円(別途要入館料) 6階茶室「玄鳥庵」にて 日 時:3月30日(木) 、4月13日(木)、27日(木) 、5月11日(木) 11時30分~17時30分(入室は17時まで) 13時、14時、15時にはお点前があります。 ※点茶券は当日10時より3階受付にて販売(予約不可、お一人様2枚まで) ▼一般お問い合わせ:03-3479-8600 ▼ホームページ: http://suntory.jp/SMA/ ▽次回展覧会 「六本木開館10周年記念展 玉手箱」(仮称) 2017年5月31日(水)~7月17日(月・祝) ▽プレスからのお問い合わせ:〔学芸〕上野、 〔広報〕光田 TEL:03-3479-8604 FAX:03-3479-8644 メールでのお問い合わせ、及びプレス用画像ダウンロードのお申し込み: 2017年1月5日(木)から http://www.suntory.co.jp/sma/info_press/ 以 9 上
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