育児休業、介護休業

ポイント
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育児休業、介護休業
育児休業・介護休業に関する制度等(育介法)
パートタイム労働者にも、育児・介護休業法の定めるところにより、次の措置を講
じなければなりません。全ての措置について、男女両方の労働者が対象となります。
また、一定範囲の有期契約労働者も育児・介護休業の対象となり、子の看護休暇や介
護休暇についても対象です(日々雇用されるものを除く。以下
(1)
∼
(9)
について同じ)
。
(1)育児休業
育児休業は、労働者が事業主に申し出ることにより、子が1歳に達するまで(両親
ともに育児休業を取得する場合は、子が1歳2か月に達するまでの間に1年間(パ
パ・ママ育休プラス))の間(子が1歳を超えても休業が必要と認められる一定の場
合には、子が1歳6か月に達するまで)
、育児休業をすることができます(育介法5
条、9条、9条の2)
。
また、出産後8週間以内に父親が育児休業を取得した場合、2度目の育児休業取得
が可能になります(育介法5条2項)
。
※ パートタイム労働者についても、期間の定めのない労働契約で働いている場合
や、実質的に期間の定めのない契約と異ならない状態となっている場合には対象とな
ります。また、期間を定めて雇用されていても、申出時点において①、②の要件をい
ずれも満たす場合については対象となります。
① 同一の事業主に引き続き雇用された期間が1年以上であること
② 子が1歳に達する日を超えて引き続き雇用されることが見込まれること(子が
1歳に達する日から1年を経過する日までに雇用関係が終了することが申出時
点において明らかである者を除く)
(2)介護休業
介護休業は、労働者が事業主に申し出ることにより、要介護状態にある家族(配偶
者、父母、子、配偶者の父母並びに労働者が同居しかつ扶養している祖父母、兄弟姉
妹及び孫)1人につき、常時介護を必要とする状態ごとに1回、通算して93日まで
介護休業を取得することができます(育介法11条、15条)
。
※ 介護休業についても育児休業と同様の考え方でパートタイム労働者も対象となります。
(3)子の看護休暇
小学校就学前の子を養育する労働者は、事業主に申し出ることにより、小学校就学
前の子が1人であれば年5日まで、2人以上であれば年10日まで、病気・けがをし
た子の世話のためのみならず、子に予防接種または健康診断を受けさせるためにも、
休暇を取得することができます。パートタイム労働者についても期間の定めの有無に
関わらず看護休暇の対象となります(育介法16条の2)
。
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(4)介護休暇
要介護状態にある家族の介護を行う労働者は、その事業主に申し出ることにより、
要介護状態にある家族が1人であれば年5日まで、2人以上であれば年10日まで、
介護休暇を取得できます(育介法16条の5)。
(5)勤務時間短縮等の措置
事業主は、3歳に満たない子を養育する労働者で、育児休業をしない者(育児休業
取得済みで現在育児休業をしていない者も含む)について、労働者の申出に基づき短
時間勤務(1日原則6時間)の措置を講じなければなりません。
また、事業主は、常時介護を必要とする状態にある家族の介護を行う労働者で介護
休業をしていないものについて、次のいずれかの措置を講じなければなりません(育
介法23条)。
短時間勤務制度、フレックスタイム制、始業・終業時刻の繰り上げ下げ、介護費用
の援助措置
(6)育児のための所定外労働の免除
事業主は、3歳に満たない子を養育する労働者が請求した場合は、所定労働時間を
超えて労働させてはなりません(育介法16条の8)
(7)時間外・深夜業の制限
事業主は、小学校就学前の子を養育し、又は要介護状態にある家族を介護する労働
者が請求した場合は、時間外労働を制限(上限:月24時間、年150時間)しなければ
ならず、また深夜において労働させてはなりません。パートタイム労働者についても
期間の定めの有無にかかわらず対象となります(育介法17条、18条、19条、20条)。
※ 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者は対象外(育介則31条の3、31条の12)
。
(8)不利益取扱いの禁止
事業主は、労働者が上記(1)∼(7)の申出等をしたこと等を理由として、解雇その
他の不利益な取扱いをしてはなりません(育介法10条、16条、16条の4、16条の7、
16条の9、18条の2、20条の2、23条の2)
。
(9)法の実効性の確保
① 紛争解決援助、調停制度
育児・介護休業法に定める事項についての紛争に関し、紛争の当事者である労働
者、事業主の双方又は一方からその解決について援助を求められた場合、都道府県労
働局長による解決援助及び調停委員による調整制度があります(育介法52条の4、52
条の5、52条の6)。
② 企業名公表制度
育児・介護休業法の規定に違反している事業主に対して、厚生労働大臣が法違反の
是正についての勧告をした場合に、勧告に従わないときは、その旨を公表できること
とされています(育介法56条の2)。
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③ 過料
厚生労働大臣及びその委任を受けた都道府県労働局長は、同法の施行に関し必要が
あると認めるときは、事業主に対して報告を求めることができることとされています
が、この報告の求めに対して、報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、20万円以下
の過料に処することとされています(育介法68条)。
ワンポイントQ&A
Q.パートタイム労働者にも産休、育休、介護休業等を付与しなければなりませんか。
A.労働基準法で定められている産前・産後の休業、育児時間等は、パートタイ
ム労働者を含むすべての女性労働者に適用されます。
育児・介護休業法で定められている育児・介護休業、子の看護休暇や介護休
暇は、一定範囲のパートタイム労働者についても、原則として男女ともに適
用されます。
育児・介護休業法を改正する法律が成立しました
子育てや介護と仕事が両立しやすい就業環境の整備等を進めていくために、「育児
休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(育介法)を
改正する法律が平成28年3月29日に成立、同年3月31日に公布され、平成29年1月
1日から施行されます。
主な改正のポイントは以下のとおりです。
1 有期契約労働者の取得要件の緩和
有期契約労働者の方については、申出時点で次の要件を満たす場合に育休の取得
が可能になります。①過去1年以上継続し雇用されていること、②子が1歳6か月
になるまでの間に雇用契約がなくなることが明らかでないこと。
また、介護休業の取得要件については、申出時点で①過去1年以上継続して雇用
されていること、②介護休業を取得予定日から起算して93日経過する日から6か
月を経過する日までに、雇用契約がなくなることが明らかでないこと、となります。
2 介護休業の分割取得
対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限として、介護休業を分割して取
得可能になります。
なお、対象家族の範囲は、配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、
祖父母、兄弟姉妹及び孫です。(※祖父母、兄弟姉妹、孫については、同居・扶養
要件は不要となります。)
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3 介護休暇の取得単位の柔軟化
介護休暇は、1日単位だけでなく半日単位(1日の所定労働時間の2分の1。労
使協定によりこれと異なる時間数を半日と定めた場合には、その半日。)での取得
が可能になります。
※ 1日の所定労働時間が4時間以下の労働者は、半日単位での取得はできません(育介則39条)
。
4 介護のための所定労働時間の短縮措置等
介護のための所定労働時間の短縮措置等について、介護休業とは別に、利用開始
から3年の間で2回以上の利用が可能になります。(介護休業と通算して93日まで
とする規定はなくなります。)
5 介護のための所定外労働の制限(残業の免除)
対象家族1人につき、介護の必要がなくなるまで、残業の免除が受けられる制度
が新設されます。要介護状態にある対象家族を介護する労働者(労使協定で定めた
者を除く)が、当該家族を介護するために請求した場合には、事業の正常な運営を
妨げる場合を除き、事業主は、所定労働時間を超えて労働させてはなりません。
6 子の看護休暇の取得単位の柔軟化
子の看護休暇について、1日単位だけでなく半日単位(所定労働時間の2分の
1。労使協定によりこれと異なる時間数を半日と定めた場合には、その半日。)で
の取得が可能になります。
※ 1日の所定労働時間が4時間以下の労働者は、半日単位での取得はできません(育介則33条)
。
7 育児休業等の対象となる子の範囲
育児休業などが取得できる対象について、法律上の親子関係がある実子・養子の
みならず、特別養子縁組の監護期間中の子、養子縁組里親に委託されている子等も
新たに対象になります。
8 いわゆるマタハラ・パタハラなどの防止措置義務の新設
事業主による妊娠・出産・育児休業・介護休業等を理由とする不利益取扱いの禁
止に加え、上司・同僚からの、妊娠・出産、育児休業、介護休業等を理由とする嫌
がらせ等(いわゆるマタハラ・パタハラなど)を防止する措置を講じることが、事
業主へ新たに義務付けられます。マタハラ・パタハラなどに関する事業主の方針の
明確化、社内への周知・啓発、相談窓口の設置など体制を整備することが大切です。
また、派遣労働者については、派遣元事業主のみならず、労働者派遣の役務の提
供を受ける者(派遣先事業主)も、自ら雇用する労働者と同様に、措置を講じる必
要があります。
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