1. 審査証明対象技術 1.1 技術の概要 本工法は主に浅層から中層域の

1. 審査証明対象技術
1.1 技術の概要
本工法は主に浅層から中層域の軟弱地盤改良を目的に開発したものであり、良好な改良体の
造成を確実に且つ容易に行うことのできる地盤改良工法である。従来専用機で行われていた地
盤改良工法に対し、本工法は汎用のバックホウを使用すること、撹拌混合効果の高い装置の開
発により品質の均一性を高めるとともに、1 台の機械でコラム改良、全面改良両用の施工機能
を兼ね備えることで、施工現場のニーズに広く適応させたものである。
本工法は、バックホウのブーム先端に本体の油圧を動力源とした駆動部と、シャフトを介し
三次元撹拌装置と呼ぶ回転撹拌装置を取り付け(以下、施工機械と呼ぶ)
、三次元撹拌装置先端
部よりセメント系固化材スラリーを吐出しながら土と撹拌混合することで良好な改良体を造成
する。
本工法の特長である三次元撹拌装置は、水平に回転する撹拌翼と、これに連動した垂直回転
する撹拌翼によって構成されており、これを三次元的に連動させることで土とスラリーを効率
よく撹拌混合するものである。また、施工機のベースマシンは汎用のバックホウを使用してい
るため取り扱いが容易で、三次元撹拌装置も簡易に取り付け、取り外すことができる。
1.1.1 本工法の位置付け
セメント系固化材による地盤改良は、軟弱地盤中にセメント系固化材スラリーを吐出しなが
ら撹拌混合して改良体を造成する工法であり、改良目的、改良深さおよび施工方法などの分類
では多岐にわたる技術範囲を含んでいる。
本工法は、スラリー状のセメント系固化材を添加混合し、鉛直方向に撹拌混合しながらコラ
ム形状および縦横方向への改良体を造成していく全面改良が可能な浅層、中層改良を主体とし
た工法である。
1.1.2 施工手順(標準)
(A)コラム改良
本工法の施工手順(コラム改良)を下記①∼⑨および図 1.1.1 に示す。
① 三次元撹拌ヘッドをコラム芯にセットし、低速回転で改良天端レベルまで掘進。
② 固化材スラリーを吐出しながら低速回転で改良先端まで掘進。(掘進スピードは 1m/分)
③ 改良先端まで達したら、高速回転にし、改良先端定着の為、数回反復。
④ 高速回転のまま改良天端レベルまで引き上げる。
(引き上げスピードは 2m/分)
⑤∼⑧
改良天端レベルまで達したら、再び改良先端まで掘進し、地表面まで引き上げる。
(二次撹拌)
(掘進、引き上げスピードは 2m/分)
⑨ 施工完了。
標準として固化材スラリーは、掘進時だけ吐出を行うが、土質が粘性土地盤や高固化材
配合量の場合、掘進時だけで所定のスラリー量を吐出しようとすると固化材スラリーが
地上に溢れでることが考えられ、引き抜き時にも注入して、撹拌混合を行う。
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
現況GL
改良天端
空堀部
1(m/分)
2(m/分)
2(m/分)
2(m/分)
改良部
改良先端
低速回転
高速回転
図 1.1.1 3DM 工法の施工手順(コラム改良)
⑨
(B)全面改良
本工法の施工手順(全面改良)を①∼④、
(イ)∼(ヘ)、図 1.1.2 に示す。
全面改良は、改良範囲全体をコラム状に改良後、高速回転のままコラム間の未改良部の掘
進、引き上げを繰り返し、改良範囲全体を流動化させ、縦、横、斜めとムラが無くなるまで
撹拌混合し、一体化した均質な改良体を造成する。
①
②
③
④
※トルクが低下し、安定した状態を
改良天端
2分以上継続した時点で施工終了とする。
2(m/分)
1(m/分)
改良先端
撹拌手順 (ホ)
撹拌手順 (イ)∼(ニ)
①∼④の手順を行う。
①,② 三次元撹拌ヘッドを改良位置にセットし、固化材スラリーを吐出しながら低速回転で掘
進。
(掘進スピードは 1m/分)
③ 改良先端まで達したら、高速回転にし、改良先端定着の為、数回反復。
④ 高速回転のまま改良天端レベルまで引き上げる。
(引き上げスピードは 2m/分)
(イ) 改良範囲の隅より
コラム改良の要領で改良。
1
(ロ) 同様に反対側の
隅を改良。
1
2
(ハ) 反対側の隅を
改良。
1
2
3
(ホ) コラムとコラムの
間の未改良部分が無
くなる様にコラム間を改良。
(ヘ) 施工完了。
図 1.1.2 3DM 工法の施工手順(全面改良)
(ニ) 反対側の隅を
改良。
1
2
3
4
1.2 本工法の特徴
3DM 工法の特徴は、次のとおりである。
(1) 1 台の施工機械でコラム改良および全面改良が可能
縦横斜めと自在に撹拌が可能な 3DM 施工機により、三次元的に改良が可能となり
1 台の 3DM 施工機でコラム形式の改良と全面の改良が可能である。
(2) 良好な改良体の造成が可能
水平撹拌翼および垂直撹拌翼を装備した三次元撹拌装置により、固化材と土を確実
に立体強制撹拌し、良好な改良体を造成することが可能である。
(3) 三次元撹拌装置は、正回転・逆回転が可能
正逆同等のトルクを有する水平撹拌翼を正回転・逆回転することにより、上部にあ
る垂直撹拌翼も正回転・逆回転し、撹拌効果を高めることができる。
(4) 対象土質
施工可能な土質は、ローム、粘性土、砂質土、礫質土であり、各々対象となる土質、
施工仕様毎に施工機械が選定できる。
(5) ベースマシンにバックホウを使用
小型の汎用バックホウがベースマシンのため、運搬が容易であり、三次元撹拌装置
の着脱が簡便にできる。また、機動性に富んでいるため狭い場所で施工ができる。
(6) 施工状況をリアルタイムに検証
専用計測管理システムにより、土中の施工状況を的確に把握し、施工に反映させる
ことができる。
(7) 騒音・振動
3DM 施工機は、騒音基準値を満足したバックホウを使用しているので低騒音型で
あり、排出ガスも対策型となっている。
1.3 従来工法との対比
本工法と従来工法の対比を表 1.3.1 に示す。
本工法は、コラム・全面改良両用の機能を有しており、従来のコラム改良および全面改良は、
各々専用機での施工となる。
表 1.3.1 従来工法との対比
既存の
技術と
の対比
対比項目
改良体の
均一性
ベース
マシン
施工性能
組立解体
3DM
(三次元撹拌方式)
コラム改良/全面改良
水平回転するV字形撹拌翼と、
縦回転する垂直翼の組み合わせ
による立体的な三次元撹拌で、
固化材と土を強制撹拌すること
により、改良を行う。
従来の技術
(水平羽根方式)
コラム改良
水平回転する撹拌翼により、平
面的な動作で撹拌を行うもの
で、鉛直方向への掘進、引き抜
きによりコラム全体の改良を行
う。
従来の技術
(トレンチャー方式)
全面改良
トレンチャー形状を用いた全面
改良方式であり、ブームに装着
した攪拌機により、本体の走行
軸線上、または走行側部の改良
を、走行動作、本体アームによ
り行う。
スラリーは撹拌翼中心部より吐
出し、その外周に位置する水平
撹拌翼と、その上部にある三次
元撹拌翼によって即時土と混合
することで、改良体を造成す
る。
スラリーは撹拌翼中央、または
シャフト先端部より吐出され、
水平翼を回転させながら、鉛直
方向への掘進、引き抜きの上下
動作によって、土と撹拌混合す
るものである。
スラリーはトレンチャーの先端
部より吐出する。上部全体まで
スラリーを拡散させるため、ト
レンチャーの掻き上げ機能に
よって全体の均一性を確保す
る。
汎用機械であるバックホウの
改良機構を搭載する専用機であ トレンチャー自体の重量が重い
3
る。移動時の平坦性を確保する ため、0.80m3クラス以上の比
0.28∼0.80m 級を使用してい
較的大型の改良型バックホウを
るため、機動性が高く、比較的 必要がある。
使用する。
狭隘な場所や、軟弱な地盤、勾
配のある場所でも施工が可能で
ある。
ベースマシンの機動性が高く、
かつ安定性がよいため、移動完
了後すぐに作業ができ、時間の
短縮につながる。
最大深度7mまで改良可能。
ベースマシンが専用機のため改 施工面積の広い比較的軟弱地盤
良時の施工は安定している。施 の改良に適す。
工時には転倒防止のアウトリ 最大10mまで改良可能。
ガー設置が必要となる。
最大13mまで改良可能。
撹拌装置は汎用のバックホウに
容易に取り付けることが出来
る。装置全体もコンパクトであ
るため、機種によってはベース
マシンに装着した状態でも運搬
が可能である。
専用のベースマシンと、撹拌
機、リーダーの組立、解体を現
場で行う。また運搬は各々構成
機器毎に必要となる。
改良型のバックホウと、トレン
チャーの組立、解体を現場で行
う。また、運搬は各々構成機毎
に必要となる。
※対比技術は、ダブルミキシング工法およびパワーブレンダー工法の協会資料を参照した。