近ごろ気になるこころの病気 ―軽度認知障害(MCI)― 認知症を心配して当院を受診される患者さんで、最終的には軽度認知障害の 診断を受ける方が増えています。軽度認知障害は、英語で MCI(=Mild Cognitive Impairment)と言いますが、最近は健康関連の書籍でも、そのまま「MCI(エ ム・シー・アイ)」として紹介されることが多くなりました。記憶障害を含む認 知障害が進んで、日常生活を妨げるような病的状態となった場合を認知症と呼 びますが、MCI では認知障害はあったとしても“軽度”であり、基本的には日常 生活は自立しています。しかしながらよく聞けば、年を重ねるごとに自覚する物 忘れの進行に不安を抱いていたり、原因のはっきりしない心身の不調を感じて いたりすることが多いようです。 通常は、認知能力の衰えの程度を評価したり、その 原因となっているかもしれない脳神経系の病気の有無 を検査したりして、慎重に対応を検討します。軽度認知 障害(MCI)と診断された人は、そうでない人よりも、 確かに認知症になりやすい傾向があるのですが(=認知 症の危険因子)、必ずしも認知症になるわけではなく、 中には軽度認知障害とも言えない“正常”に戻ってしまう人もいるくらいです。す なわち、臨床診断される軽度認知障害は、実に様々な病態が混じり合った混合物 であって、これを峻別して、高い将来予測(認知症をどのくらいの確率で発症す るのか、発症するとすれば、どんな種類の認知症になりやすいのかなど)が可能 となるような診断技術や検査法の開発が待たれています。
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