‒ 都立・公社病院診療データバンク構想の‒ 基本的方向性と課題について‒ (中間のまとめ)‒ 平成28年12月‒ 都立・公社病院診療データバンク構想検討委員会‒ はじめに 近年、我が国は、急速な高齢化の進行により、疾病構造の変化とそれに伴う 医療需要・財政負担の増加という課題に直面しています。これを受け、国から は、今後の医療改革の方向性として、「健康の維持増進・疾病の予防及び早期 発見の促進」「医療機能の分化・連携の推進」「地域包括ケアシステムの構築」 が示されています。このような中、医療 ,&7 によるビッグデータ活用は、医療 資源を有効に活用し、より質の高い医療提供体制を実現する解決ツールの一つ として期待されています。 また、都立・公社病院においても、医療 ,&7 の進歩を背景に、電子カルテシ ステム等に蓄積された診療データを利活用するニーズが高まっています。 このような背景のもと、本検討委員会は、平成 年 月に策定された「東 京都長期ビジョン」を受け、都立・公社病院の電子カルテシステム等に蓄積さ れた膨大な診療データを、診療支援、治験・臨床研究支援、経営マネジメント 支援に活用する診療データバンクを構築することを目的とし、平成 年 月 に設置されました。 東京都長期ビジョンでは、「全都立・公社病院の電子カルテシステムに蓄積 された約 床の診療データを集約し、診療支援情報等を提供するデータバ ンクシステムを構築することで、臨床現場での医療水準の向上を図る。」 「デー タバンクシステムを活用し、安全で質の高い先進医療の提供とあわせて、臨床 研究や治験の推進に取り組む。」とされています。 そこで、検討委員会では、東京都長期ビジョンで示す、東京が目指す将来像 を踏まえ、診療データバンクの機能と活用方法、整備の進め方と運用体制、個 人情報保護とセキュリティ、ビッグデータ活用への対応などについて、議論を 重ねてまいりました。 本まとめは、都立・公社病院診療データバンクを構築・運用するに当たって の基本的方向性と課題を取りまとめたものであり、今後、試行の結果や国の動 向等を踏まえ、更に本委員会において議論を深め、最終報告書を取りまとめる 予定です。 平成 年 月 都立・公社病院診療データバンク構想検討委員会 委員長 橋本廸生 目 次 はじめに 序章 診療データ利活用の重要性 …………………………………………… 1 1 都立・公社病院の基本的役割と概要 ………………………………… 1 (1) 都立・公社病院の基本的役割 ……………………………………… 1 (2) 都立・公社病院の概要 ……………………………………………… 2 診療データバンクが求められる背景と 東京都長期ビジョンにおける位置付け ……………………………… 1 (1) 診療データバンクが求められる背景 ……………………………… (2) 東京都長期ビジョンにおける位置付け …………………………… 3 診療データの利活用により期待される効果 ………………………… 2 3 3 第1章 2 都立・公社病院における情報システムの概要と ……………………………………… データ利活用の現状と課題 1 都立・公社病院における電子カルテシステムの概要 ……………… (1) 都立病院における電子カルテシステム …………………………… (2) 公社病院における電子カルテシステム …………………………… 2 データ利活用の現状と課題 …………………………………………… 4 4 5 5 6 第2章 診療データバンクの機能と活用方法 ……………………………… 7 1 診療データバンクが備えるべき機能 ………………………………… 7 (1) 診療支援機能 ………………………………………………………… 7 (2) 治験・臨床研究支援機能 …………………………………………… (3) 経営マネジメント支援機能 ………………………………………… (4) 医療ビッグデータ機能 ……………………………………………… 2 機能構築の考え方 ……………………………………………………… (1) 第1フェーズ(試行) ……………………………………………… (2) 第2フェーズ(展開) ……………………………………………… (3) 第3フェーズ(データの外部提供、ビッグデータの活用) …… 3 具体的な活用方法について …………………………………………… (1) (2) (3) (4) 診療支援機能 ………………………………………………………… 治験・臨床研究支援機能 …………………………………………… 経営マネジメント支援機能 ………………………………………… 医療ビッグデータ機能 ……………………………………………… 9 11 12 12 12 13 13 13 13 16 18 20 4 駒込病院パイロット事業について …………………………………… (1) パイロット事業としての機能事例 ………………………………… (2) 効果検証結果 ………………………………………………………… 23 23 23 第3章 整備の進め方と運用体制 …………………………………………… 1 整備の進め方 …………………………………………………………… (1) フェーズ毎の基本的方向性と課題 ………………………………… 2 フェーズ毎の運用体制 ………………………………………………… 29 29 29 31 (1) 第1フェーズ(基本構想策定、試行システム) ………………… (2) 第2フェーズ(他都立・公社病院へ運用拡大)以降 …………… 32 33 第4章 個人情報保護とセキュリティ ……………………………………… 1 個人情報保護の考え方 ………………………………………………… (1) 機能別整理 …………………………………………………………… (2) 改正個人情報保護法 ………………………………………………… (3) 課題 …………………………………………………………………… 34 34 34 36 37 2 データセキュリティの管理方針 ……………………………………… (1) 現行のデータセキュリティの管理体系 …………………………… (2) 取組の基本的方向性 ………………………………………………… 37 37 39 終章 ビッグデータ活用に向けた課題整理等 ……………………………… 1 ビッグデータ活用における課題 ……………………………………… (1) 各都立・公社病院間のデータの「違い」の把握と整合性の確保 (2) 病院間の患者名寄せ ………………………………………………… (3) データベースの構成 ………………………………………………… 42 42 42 42 42 (4) 病院経営本部における活用方法 …………………………………… 43 2 データの外部提供(第三者提供)における課題 …………………… 43 (1) 都立・公社病院がデータを外部提供することへの合意形成 …… 43 (2) 臨床現場におけるニーズと民間事業者を含めた 利用者ニーズの整合性 ……………………………………………… 43 (3) データ提供のタイミングと手法 …………………………………… 43 (4) データの提供ルール ………………………………………………… 43 3 国の動向(参考) ……………………………………………………… 44 (1) 医療等分野における ID の導入等 (2018 年運用開始、2020 年本格運用見込み)……………………… 44 (2) ビッグデータ活用によるイノベーション促進、 医療現場や政策への活用 …………………………………………… 44 資料編 都立病院と公社病院の概況 ………………………………………………… 「東京都長期ビジョン」(平成 26 年 12 月)抜粋 (診療データバンク構想関連)………………………………………………… 改正個人情報保護法 抜粋(平成 28 年 11 月時点) …………………… 診療データ活用に関連する国の動向 ……………………………………… S u i c aに関するデータの社外への提供について ………………………… 都立・公社病院診療データバンク構想検討委員会設置要綱 …………… 都立・公社病院診療データバンク構想検討委員名簿 …………………… 都立・公社病院診療データバンク構想検討委員会 検討経過 ………… 46 47 48 55 56 57 59 60 序章 診療データ利活用の重要性 1 都立・公社病院の基本的役割と概要 都立・公社病院の基本的役割 ア 都立病院の基本的役割 ・ 高水準で専門性の高い総合診療基盤に支えられた「行政的医療」(注1)を適正 に都民に提供し、他の医療機関等との密接な連携を通じて、都における良質な 医療サービスの確保を図る。 注 行政的医療 ・ 法令等に基づき、対応が求められる医療(精神科救急医療、結核医療、感染症医療など) ・ 社会的要請から、特に対策を講じなければならない医療(難病医療、周産期医療など) ・ 新たな医療課題に対して、先導的に取り組む必要がある医療(小児精神科医療など) イ 公社病院の基本的役割 ・ 「地域の医療機関との役割分担の下、患者が身近な地域で適切な医療を継続 的に受けることができる」という、地域医療のシステム化推進の先導的役割を 果たすとともに、地域の中核病院として地域医療の確保を図り、地域の医療機 関と信頼関係に基づく連携を重視して、住民が必要とする保健医療サービスの 提供等を行い、特色ある医療の提供に取り組む。 都立・公社病院の概要 ・ 都立病院は8病院で運営されており、総病床数は5147床、平成27年度 の延入院患者数は170万7893人、延外来患者数は212万7090人の 診療規模を有している。 ・ 公社病院は6病院で運営されており、総病床数は2256床、平成27年度 の延入院患者数は66万3008人、延外来患者数は89万0056人の診療 規模を有している。 ・ 都立病院と公社病院を合算すると、総病床数は7403床で都内病床数の5. 8%にのぼり、平成27年度の延入院患者数は237万0901人、延外来患 者数は301万7146人の診療規模を有している。 -1- <都立・公社病院の概要> 開 設 病 院 者 数 都 立 病 院 公 社 病 院 東 京 都 知 事 公益財団法人東京都保健医療公社理事長 8 病 院 6 病 院 広尾、大塚、駒込、墨東、 東部、多摩南部、大久保、 多摩総合、神経、小児総合、松沢 多摩北部、荏原、豊島 都立・公社病院合計 病床数(医療法) 5,147床 2,256床 7,403床 延 入 院 患 者 数 1,707,893人 663,008人 2,370,901人 延 外 来 患 者 数 2,127,090人 890,056人 3,017,146人 2 診療データバンクが求められる背景と東京都長期ビジョンにおける位置付け ・ 近年、診療情報の電子化が進む中で、電子的に診療データが蓄積されてきている ことや ,&7 の進歩により大量のデータを高速に処理することが可能になったことな どに伴い、データの学会への提出等、カルテ情報の活用の機会が増加し、その有効 活用のニーズが増大してきている。 ・ ここでは、 「診療現場」 「患者」「都民」の3つの視点から診療データバンクが求 められる背景をまとめ、平成 年 月に策定された「東京都長期ビジョン」にお ける位置付けを整理する。 診療データバンクが求められる背景 ・ 診療現場、患者、都民のそれぞれの視点で、下記のようなニーズが背景になっ ている。 ア 診療現場 ・ 日々の診療をモニタリングすること等により患者の変調の予測、アラート、 診療の質の評価をできるようにすること。 ・ 複数の患者情報を管理する画面を作成するなど、診療成績を正確に把握し、 定期的かつ科学的な検証を可能とすること。 ・ 学会等へのデータ提出を効率化すること。 ・ データを多面的に集約し、病院運営の改善に寄与させること。 ・ データを様々な視点で自由に検索できるようにすること。 ・ 特定の条件を満たす患者を対象とした従来の臨床研究の枠組みを超えて、 幅広い患者について網羅的な検討ができるようにすること。 イ 患者 ・ 自分の病気に対する治療歴(症例数)を把握すること。 ・ 同時期に治療した患者の通常の経過と比較すること。 ・ 薬品等の副作用の発生リスクを事前に知ること。 ・ 入院期間や費用を調査すること。 -2- ウ 都民(法人含む) ・ 網羅性の高い情報網を活用することで、インフルエンザ等の流行を初期段階 で把握すること。 ・ 都立・公社病院が蓄積しているデータをビジネスに活用すること。 東京都長期ビジョンにおける位置付け ・ 上記背景と ,&7 の進歩、ビッグデータ活用の機運の高まりを踏まえ、東京都長 期ビジョンでは、診療データバンクを以下のとおり位置付けている。 ア 診療データバンクを活用した先進医療・臨床研究等の推進 ・ 全都立・公社病院の電子カルテシステムに蓄積された約 床の診療デー タを集約し、診療支援情報等を提供するデータバンクシステムを構築すること で、臨床現場での医療水準の向上を図る。 ・ データバンクシステムを活用し、安全で質の高い先進医療の提供とあわせて、 臨床研究や治験の推進に取り組む。 (「東京都長期ビジョン 都市戦略5 福祉先進都市の実現/政策指針13 質の高い医療が受 けられ、生涯にわたり健康に暮らせる環境の実現」より抜粋) イ 東京を国際的なライフサイエンスビジネス拠点へと成長 ・ 全都立・公社病院の電子カルテシステムに蓄積された診療データを集約して データバンクシステムを構築するなど、臨床研究や治験の環境整備を推進する。 (「東京都長期ビジョン 都市戦略6 世界をリードするグローバル都市の実現/政策指針15 日本の成長を支える国際経済都市の創造」より抜粋) 3 診療データの利活用により期待される効果 ・ 診療データの利活用により、 「医療の質の向上」、「患者サービスの向上」、「都民 への還元」 「マネジメント力強化」 、「職員負担軽減」が効果として期待される。 ・ 具体的な活用方法と効果については、第2章で詳述する。 -3- 第1章 都立・公社病院における情報システムの概要とデータ利活用の現状と課題 1 都立・公社病院における電子カルテシステムの概要 ・ 電子カルテシステムは、診療業務に必要な情報を電子的に処理するとともに、放 射線情報システム、調剤支援システムなどの部門システムと連携することで、検査 等の指示、薬の処方から診断結果の提示まで行うなど、診療業務全体を支援する基 幹システムである。 ・ 診療業務全体を支援するシステムであることから、電子カルテシステムには診療 に関する膨大なデータが蓄積されている。 ・ 現行の都立・公社病院の電子カルテシステムの構成等は、次頁のとおり。 -4- 都立病院における電子カルテシステム ・ 富士通㈱製 +23((*0$,1*;9HU を都立病院用に一部カスタマイズしている。 ・ 全 都立病院に導入済である。なお、 年度から 年度にかけて次世代 電子カルテへ移行を計画している。 ・ 660,;(注2)は導入されていない。 ・ 区部と多摩地域の か所のサーバー室で集中管理し、都立病院間のネットワー クを構築している。 公社病院における電子カルテシステム ・ 日本電気㈱製 0HJD2DN+59HU を公社病院用に一部カスタマイズしている。 ・ 全 公社病院に導入済である。なお、次期システムへの更新は未定である。 ・ 660,; 標準化ストレージ機能を装備している。 ・ 各病院内のサーバー室で管理し、公社病院間のネットワークは構築されていな い。 (注2)660,;医療情報の交換、共有を目的とした厚生労働省が定める標準規約 -5- 2 データ利活用の現状と課題 ・ 電子カルテシステム・部門システムに蓄積されている診療データの利活用を行う 場合の現状と課題は以下のとおりである。 記述データが多く、情報の検索、データ集計・加工が困難である。 ≪イメージ≫ 個人単位でデータが存在するため、複数患者を一覧できない。 診療、看護、検査などの情報がそれぞれ別々のシステムで保存されているため、 診療に必要な情報を即時に一括して検索・表示することが困難である。 ≪イメージ≫ 各患者の登録情報は、別々のシステムに保存されており、即時、一括での 参照・検索が困難である。 入力用語が病院毎に異なるため、複数病院でのデータ集計が困難である。 システムベンダーが異なるため、データの直接相互利用が困難である。 個人情報保護の観点から、データ取扱い方法の確立が必要である。 -6- 第2章 診療データバンクの機能と活用方法 1 診療データバンクが備えるべき機能 ・ 診療データバンクが備えるべき機能は「診療支援機能」「治験・臨床研究支援機 能」「経営マネジメント支援機能」 「医療ビッグデータ機能」の 機能である。 診療支援機能 ・ 診療業務を直接支援することを目的とした、主に院内、患者単位で活用する機 能である。 ア 対象業務例 ・ アレルギー情報管理支援 治療の各段階で発生するアレルギー情報を集約して提供する。 ・ 感染症管理支援 入院患者の感染症リスク指標の集約及び発生時の履歴追跡支援を行う。 ・ 抗菌薬スクリーニング支援 抗菌薬の適正な使用のため、検査時期、検査値等をモニタリングする。 ・ 診療指標管理支援 長期治療が必要な疾病について、治療評価のポイントとなる情報を集約する。 ・ 重篤副作用スクリーニング支援 重篤な副作用が発生する薬剤投与後の検査実施の有無及び検査結果等をチェ ックする。 イ 対象業務イメージ ・ 抗菌薬スクリーニング支援と重篤副作用スクリーニング支援の対象業務イ メージは次頁のとおりである。 -7- 〈抗菌薬スクリーニング支援イメージ〉 ・ 患者に尿道留置カテーテルの挿入措置を実施した際に、&53(炎症反応) 数値をスクリーニングし、診療データバンクに蓄積された過去の実績デー タと比較して、数値が異常値になった際に、診療端末上でワーニングを表 示させる。医師は、ワーニング表示を参考とすることで、速やかに尿道炎 の判断を行い、抗菌薬投与開始等を指示する。これまで、患者の検査数値 と医師の経験に基づき判断していた抗菌薬投与開始が、客観的な情報を基 にした速やかな判断が可能となる。 〈重篤副作用スクリーニング支援イメージ〉 ・ 抗てんかん剤又はジギタリス製剤を投与中の患者は、7'0(薬剤血中濃 度検査)を定期的に検査しなければならないが、その定期検査状況を管理 し、 未実施の検査があった際にはアラートを表示させることで、医師の 7'0 実施指示の出し忘れを防止することができる。 -8- ウ データ取得タイミング(時間軸) ・ 日々の診療に必要なため、高頻度かつ、即時性が必要である。 ・ オンライン処理によるリアルタイムのデータ取得が必要である。 エ 対象とするデータ ・ 電子カルテシステムデータ原データ ・ 各種部門システムデータ オ 課題 ・ アラートを出すための条件となるデータを抽出・精査し、データの品質確保 等を行う必要がある。 ・ リスク分析機能の向上を図るためのアラートプログラムを設定する必要が ある。 ・ アラートのタイミングを調整する必要がある。 ・ 医療従事者に対するアラートの伝達方法を検討する必要がある(画面ポップ アップ・3+6)。 治験・臨床研究支援機能 ・ 治験・臨床研究業務を支援することを目的とした、主に患者の横断的なデータ 分析に活用する機能である。 ア 対象業務例 ・ 治験候補者検索支援 病名、投与歴等の条件を組み合わせて治験候補者を検索する。 ・ 薬物間相互作用分析 複数の薬物を投与した際に、その薬効・副作用に相違が出る組合せを分析す る。 ・ 新薬治療効果分析 処方薬毎の治療効果を比較し、新薬の治療効果を分析する。 ・ 疾病予兆分析 分析により疾病を引き起こす因子を特定し、疾病の早期発見を図る。 ・ 縟瘡リスク分析 褥瘡発生要因・予兆の分析、防止対策の効果検証を行う。 イ 対象業務イメージ ・ 治験候補者検索支援と疾病予兆分析の対象業務イメージは次頁のとおりで ある。 -9- 〈治験候補者検索支援イメージ〉 ・ 診療データバンクに登録された患者全体の中で、例えば「ある疾病 $ につい て、薬剤 % を 年以上投与されている、 代~ 代」といった条件を満たす 患者をグルーピングすることで、治験の目的に応じた、適切な治験候補者検索 をこれまで以上に容易かつ正確に行うことができる。 〈疾病予兆分析(例:肺塞栓)イメージ〉 ・ 肺塞栓に関するリスク評価や、血栓のリスクを調べる血液検査である ' ダイ マー等、様々なデータが蓄積された診療データバンクに医療従事者がアクセス し、肺塞栓発症予兆の条件を分析する。分析を積み重ね、肺塞栓の予兆を把握 するノウハウを蓄積することで、診療データバンクの診療支援機能におけるワ ーニング条件として追加して、診療支援にもつなげることができる。 - 10 - ウ データ取得タイミング(時間軸) ・ 1日~1か月程度(診療支援と比較すると頻度は低い) ・ 定期的なバッチ処理によりデータを取得する。 ・ 悉皆性のあるデータを漏れなく抽出し、チェックを行う。 エ 対象とするデータ ・ レセプトデータ ・ '3& 調査データ ・ 電子カルテ、各部門システムのデータオーダ情報、実施情報など ・ 外科 1&' データ ・ 660,; オ 課題 ・ (%0 を実践するために必要な精度の高い臨床データを収集・整備し、データ の品質を確保することが必要である。 ・ データの標準化方法について検討する必要がある。 ・ 名寄せの方法を検討する必要がある。 ・ 倫理審査等による適切な情報利用を検討する必要がある。 経営マネジメント支援機能 ・ 病院経営を支援することを目的とした、主に院内で活用する機能である。 ア 対象業務例 ・ 病床稼働状況分析 ・ 手術室稼働状況分析 ・ マーケティング分析 ・ クリニカルインディケーター分析 ・ 指導料・管理料算定チェック イ データ取得タイミング(時間軸) ・ 1か月程度 ・ 定期的なバッチ処理によりデータを取得する。 ・ 定期的な報告やチェックが基本となり、データ収集のタイミングは低頻度と なる。 ウ 対象とするデータ ・ レセプトデータ - 11 - ・ '3& 調査データ ・ 医事、物流、財務、人事などの各システムのデータ エ 課題 ・ 経営分析に必要な精度の高いデータを収集・整備し、データの品質を確保す ることが必要である。 ・ '3& のベンチマーキングコンサルティングソフト((9()との併用活用の方法 を検討する必要がある。 医療ビッグデータ機能 ・ ~の機能構築により整理された有効性の高いデータを外部提供し、ビッ グデータとして活用する機能である。 2 機能構築の考え方 ・ 診療データバンクは第 フェーズ(試行)、第2フェーズ(展開)、第3フェーズ (データの外部提供、ビッグデータの活用)の大きく3つのフェーズに分けて整備 されるが、各種機能は以下のとおりフェーズ毎に段階的に構築する。 第 フェーズ(試行) ・ 試行病院に、試行システムを構築し、 「診療支援機能」 「治験・臨床研究支援機 能」「経営マネジメント支援機能」の開発と検証を行う。特に「診療支援機能」 の開発を優先的に行うことで、データクレンジング(注3)のノウハウを蓄積し、 段階的な情報整備を行いながら、院内及び患者単位での情報活用を進める。 (注3)データクレンジング データベースに保存されているデータの中から、重複や誤記、類似表現などを探し出し、 削除や修正などを行い、データの品質を高めること ・ 試行システムにおける機能開発にあたっては、臨床現場での試行錯誤を繰り返 し、実用性の検証を幾度も積み重ねていくことが有用であるため、短期間の開発 サイクルを繰り返し、機能を追加しながらソフトウェアの完成度を高めていく、 アジャイル開発を採用する。 ・ 試行システムに実装する業務は、試行病院と都立・公社病院の代表により構成 される作業部会により選定する。 - 12 - 第 フェーズ(展開) ・ 試行病院で得られたノウハウ・経験を基に、他都立・公社病院に展開し、運用 拡大を図る。 ・ 「治験・臨床研究支援機能」は、「診療支援機能」の成果を反映させながら、 他都立・公社病院の運用拡大を目指した都立・公社病院横断のデータ基盤の構築 や、患者の横断的なデータ分析を行い、研究データ分析ノウハウを蓄積する。 第 フェーズ(データの外部提供、ビッグデータの活用) ・ 整理された有効性の高いデータの外部提供を、国の動向を注視しつつ、実施す る。 <機能構築の考え方> 3 具体的な活用方法について ・ 都立・公社病院診療データバンク構想検討委員会及び作業部会等から提案された 代表的な診療データの利活用方法と効果は以下のとおりである。 診療支援機能 ア アレルギー・禁忌情報一括検索・参照 ア活用方法 複数のシステムに散逸保存されたアレルギーや禁忌情報(食事、放射線、処 方、妊娠等)を一括で、検索・参照できるようにする。 - 13 - イ効果 「医療の質の向上」 患者のアレルギーや禁忌情報をもれなく医療従事者間で共有することで、医 療安全の確保に繋げることができる。 「職員負担軽減」 複数のシステムを展開し、患者一人ひとりのアレルギーや禁忌情報を検索・ 参照する時間を短縮することができる。 イ 退院サマリ等作成支援 ア活用方法 複数のシステムに散逸保存された退院サマリやがん登録等に必要なデータ 項目と入力画面を連携し、データの転記入力を減少させる。 イ効果 「職員負担軽減」 複数のシステムを展開し、退院サマリやがん登録等に必要なデータ項目を検 索・参照し、転記入力する時間を短縮することができる。 ウ 患者情報等相互参照 ア活用方法 複数病院にまたがる患者情報等を、相互に参照・検索し、抽出できるように する。 イ効果 「医療の質の向上」 転院元の病院から転院先に、患者の検査値等の参照を容易にすることで、 継続的なケアの実現に寄与することができる。また、多摩メディカルキャン パスにおいて感染症が発生した場合、患者情報を共有することで迅速な対応 が可能となり、医療安全の確保に繋げることができる。 「患者サービスの向上」 転院先で一から検査等を実施する必要性をなくすことで、患者の経済的負 担を軽減することができる。 「職員負担軽減」 病院間で患者情報について問合せ・確認を行う時間を短縮することができる。 - 14 - エ リアルタイムアラート ア活用方法 検査・処方オーダの実施期間、薬品投与量、他オーダの実施状況等をモニタ リングして、輸血後の定期的な感染症検査、検査処方の累積投与量、処方オー ダ時に適切な期間に検査が行われているか(7'0 が必要な薬剤等)等について チェックを行い、アラートを表示する。 イ効果 「医療の質の向上」 日々の診療をモニタリングし、医療従事者にリアルタイムで必要な検査の実 施等を促すことで、医療安全の確保に繋げることができる。 「患者サービスの向上」 必要な検査等がリアルタイムで伝えられることで、効率的な診療が可能とな り、患者の受診期間の短縮化に繋げることができる。 「職員負担軽減」 電子カルテシステムの画面を展開し、患者一人ひとりのオーダ情報等を確認 する時間を短縮することができる。 オ チーム医療支援 ア活用方法 電子カルテシステムの複数の画面に保存されている服薬指導、167、感染症 管理等定例的に行う業務に必要なデータを蓄積し、抽出できるようにする。 イ効果 「医療の質の向上」 服薬指導が必要となる薬剤の投与患者一覧、167 回診回数とアルブミン値、 +,9 治療実績やワクチン投与歴等を蓄積し、抽出できるようにすることで、チ ーム医療を実施するにあたり必要な患者データを、さらに幅広く、医療従事者 間で情報共有することができる。 「職員負担軽減」 電子カルテシステムの画面を展開し、患者一人ひとりのオーダ情報等を確認 する時間を短縮することができる。 - 15 - カ 術前チェック ア活用方法 術前に同意書の有無やリスク評価、インフォームドコンセント及び感染症検 査の実施有無・結果のデータを抽出し、確認できるようにする。 イ効果 「医療の質の向上」 術前に必要な検査等の見落としを防ぐことで、医療安全の確保に繋げること ができる。 「マネジメント強化」 手術がキャンセルになった場合や術前の検査が間に合わない場合等に、既に 準備が整っていて手術が可能な患者をリストアップすることで、手術室の柔軟 な稼働管理が可能となる。 「職員負担軽減」 電子カルテシステムの画面を展開し、患者一人ひとりのオーダ情報等を確認 する時間を短縮することができる。 治験・臨床研究支援機能 ア 治験対象者抽出 ア活用方法 治験対象者の抽出を、病院単位のみならず、都立・公社病院を横断して、自 動的に実施できるようにする。さらに、医療機関から治験依頼者(製薬会社 等)に提出する症例報告書(&5))への対象患者の登録や入力支援を行う。 イ効果 「医療の質の向上」 洩れなく、より多くの対象者を抽出し、治験・臨床研究の活性化に繋げるこ とができる。 「職員負担軽減」 都立・公社病院横断的な治験対象者の抽出作業と症例報告書(&5))への転 記作業の時間を短縮することができる。 - 16 - イ 台帳作成 ア活用方法 救急医療台帳、感染医療台帳(抗菌薬投与状況)、手術台帳、周産期台帳、 薬剤投与状況台帳等を病院単位のみならず、都立・公社病院を横断して出力で きるようにすることで、治験・臨床研究のエビデンスとして活用する。 イ効果 「職員負担軽減」 都立・公社病院で共同研究を実施する際に、各病院の実績データ等を集約・ 加工する時間を短縮することができる。 ウ 医療用画像相互参照 ア活用方法 症例別に、匿名化及び一画面表示された放射線画像や読影レポートを病院単 位のみならず、都立・公社病院を横断して参照できるようにする。 イ効果 「職員負担軽減」 都立・公社病院で共同研究を実施する際に、同一症例の放射線画像や読影レ ポートを集約する時間を短縮することができる。 エ 患者追跡調査 ア活用方法 都立・公社病院間で転院した患者のデータを追跡調査できるようにする。 イ効果 「職員負担軽減」 転院後の患者の検査値や予後の追跡調査に要する時間を短縮することがで きる。 オ 症例登録 ア活用方法 660,; 等のデータストレージを導入して、症例登録に必要なデータを自動 的に抽出し、登録用データを作成する。 - 17 - イ効果 「職員負担軽減」 複数のシステムを展開し、症例登録に必要なデータ項目を検索・参照する時 間を短縮することができる。また、他都立・公社病院展開時に都立・公社病院 を横断して同一症例の検索・参照が可能となる。 経営マネジメント支援機能 ア 栄養食事指導 ア活用方法 栄養食事指導が必要となる患者データを、病名や実施歴から自動的に抽出で きるようにする。 イ効果 「医療の質の向上」 糖尿病や高脂血症などの栄養摂取環境が原因となる疾患をもつ患者デー タを抽出し、栄養指導を実施することができる。また、他病院での指導歴等 を共有することで、転院後も漏れなく指導を実施することができる。 「マネジメント強化」 栄養食事指導を漏れなく実施することで、栄養食事指導料の算定件数増によ る収益増を実現することができる。 「職員負担軽減」 栄養食事指導が必要となる患者を特定するため、電子カルテシステムの画面 を展開し、患者一人ひとりのオーダ情報等を確認する時間を短縮できる。 イ 患者調査 ア活用方法 診療圏における疾患別の集患可能地域の調査に必要な患者データを自動的 に抽出できるようにする。 イ効果 「マネジメント強化」 抽出したデータを基に、地域における自院の強み・弱みを分析し、地域医療 連携の取り組み等に反映することで、新規患者の獲得など経営改善に寄与する ことができる。 - 18 - 「職員負担軽減」 複数のシステムを展開し、患者一人ひとりの疾患や所在地を検索・参照する 時間を短縮することができる。 ウ 看護統計 ア活用方法 施設基準の診療報酬上の要件として求められる医療・看護必要度や褥瘡管理 などを項目ごとに詳細なデータを抽出できるようにする。また、転倒・転落の リスク管理やナースコール対応業務など、これまで数値化が困難であった業務 のデータを抽出できるようにする。 イ効果 「医療の質の向上」 きめ細かく看護業務の分析ができるようになることで、院内の看護業務の実 績を適切に把握し、都立・公社病院全体で看護の質の統一的な向上を図ること ができる。 「マネジメント強化」 医療・看護必要度をきめ細かく評価し、点数を取得できるようにすることで、 収益増を実現することができる。また、これまで数値化が困難であった業務の データを抽出し、分析することで、業務量の正確な把握と業務分担の改善に活 かすことができる。 「職員負担軽減」 電子カルテシステムの画面を展開し、患者一人ひとりのオーダ情報等を確認 する時間を短縮できる。 エ 施設基準届出 ア活用方法 施設基準届出上、必要なデータ項目を自動的に抽出できるようにする。 イ効果 「マネジメント強化」 がん拠点病院加算や総合入院体制加算に必要なレジメン実施件数等の統計 データを自動的に抽出できるようにすることで、診療実態に見合った診療報酬 を確実に確保できる。 - 19 - 「職員負担軽減」 複数のシステムを展開し、施設基準届出に必要なデータ項目を検索・参照す る時間を短縮することができる。 医療ビッグデータ機能 ア 臨床指標(クリニカルインディケーター)の公表 ア活用方法 都立・公社病院の臨床指標(クリニカルインディケーター)に必要なデータ を自動的に抽出できるようにし、これらの情報を都民一般に公表する。 イ効果 「患者サービスの向上」 患者が医療機関を選択する際の参考とすることができる。 「都民への還元」 臨床指標(クリニカルインディケーター)の公表により、都立・公社病院に おいて実施している医療の透明性を高めることができる。また、都立・公社病 院の取組により他の医療機関の透明性も高めることが期待される。 イ '3& データの公表 ア活用方法 平成 年度から '3& 病院に対して、症例数や患者構成等を公表することが 義務化されるが、これに必要なデータを自動的に抽出できるようにし、これら の情報を都民一般に公表する。 イ効果 「患者サービスの向上」 患者が医療機関を選択する際の参考とすることができる。 「都民への還元」 '3& データの公表により、潜在的な患者や納税者に対して、都立病院の現状 についてタイムリーな情報を提供することができる。 ウ 感染症流行状況の公開 ア活用方法 インフルエンザ等感染症の流行情報の地域別・日別の分析に必要なデータを 自動的に抽出できるようにし、これらを都民一般に公表する。 - 20 - イ効果 「都民への還元」 感染症の予防及びまん延の防止に寄与することができる。 エ パーソナル・ヘルスケア ア活用方法 患者に対して自身の検査データ等をスマートフォンアプリ等で提供できる ようにする。 イ効果 「患者サービスの向上」 患者個人が自らの健康状態を正確に知ることで、健康増進や生活習慣病予防 を目指して、積極的な健康管理が促進される。 オ 地域医療連携 ア活用方法 地域医療機関と患者データを相互にやりとりできるようにする。また、多様 な医療機能がある中で、都民が病状に応じた適切な医療機関を選択できるよう にする。なお、地域医療機関の電子カルテシステム等と連携する際は 660,; の導入や ,+((注4)規格による接続等について検討する。 イ効果 「患者サービスの向上」 地域の医療機関相互の連携の下で、急性期から回復期を経て在宅療養に至る まで、適切なサービスが切れ目なく提供されるような体制構築の実現に寄与す ることができる。 「都民への還元」 地域における医療資源の効率的活用と医療機関の機能分担の推進に寄与す ることができる。 (注4),+(医療情報システム相互接続 ,QWHJUDWLQJWKH+HDOWKFDUH(QWHUSULVHの略で医療情報システムの相互接続性を推 進する国際的プログラムのこと。データセンター間を接続することで、各病院が持つ地 域医療連携システムを接続し、病院‐病院間、病院-診療所間や在宅医療に係るネット ワークが構築できる。 - 21 - <具体的な活用方法> - 22 - 4 駒込病院パイロット事業について ・ 「総論だけでなく、具体的な診療データの利活用プランをブラッシュアップして、 成功事例を一つでもつくるという視点も大事」「成功事例の具体的なイメージを元 に議論を進めたい」との意見を踏まえ、試行に先立ち、駒込病院にて下記の機能を 試行システムに実装し、効果検証をすることとした。 パイロット事業としての機能事例 ア 手術室稼働分析 電子カルテシステムに保存されている手術室の予約取得データと手術部門シ ステムに保存されている手術実施有無や、手術実施時間等のデータを突合せ、手 術室の稼働状況の可視化・共有化と手術関連情報(術式別の手術時間数等)の院 全体での共有化を図る。 イ 患者来院形態・初再診区分分析 従来の統計においては「病院を初めて受診する人」 「他科紹介初診」 「一定期間 経過後の経過観察受診」等が初診、再診の中に混在している。これらを可視化し 分析することで、診療科活動量等の適正な評価を図る。 ウ '3& データの活用 様式1で「緊急」のフラグを選択しながら、() ファイルで救急医療管理加算 、 を算定していない患者を特定し、救急医療管理加算の算定増が見込まれる症例 の抽出を行う。 効果検証結果 試行システムへの実装を完了した機能の効果検証結果は次頁のとおりである。 - 23 - ア 手術室稼働分析 アデータ分析方法 ・ 手術部門システム内のデータは、マスタの整備が不十分であり、統計デー タの抽出に不向きであったため、マスタの整備された医事会計システム内の データと統合し、手術データの詳細な統計抽出を実施した。 ・ さらに各術式に対応する . コード(診療報酬の医科点数を算定する際の手 術の種類別に割り振られたコード)を追加し、統計で利用する術式名称を集 約した イ成果 ・ 診療科別、術式別に、手術室の予約時間と実時間の差や、手術に要した人 員数など、様々な種類の手術統計レポートを作成した。 <手術室稼働分析(例)> 術式別の予約時間と実時間の差 - 24 - ウ検証結果 ・ 手術予約時間と手術実施時間のギャップを埋めることで、手術待ち時間を 短縮させ、効率的な手術室の稼働に寄与することができる。 ・ 手術予約に係る診療科別、医師別の行動傾向を把握することで、手術待ち 時間短縮に向けた是正措置をとれる可能性がある。 ・ 手術待ち時間の診療科ごとのバラツキを俯瞰できることで、バランスに考 慮した効率的な手術室の稼働に寄与することができる。 ・ 手術時間が単に短いから良いというわけではなく、出血量や予後の状態な ども合わせて評価することが今後の課題となる。 ・ 診療科ごとの手術実施情報に他科の実績(術式等)が混ざっていたため、 データクレンジングにより一連の手術の内訳をより明らかにし、診療科ごと に振り分け直すことが今後の課題となる。 ・ 都立・公社病院間で空床状況だけでなく、手術室の稼働状況や術者の空き 状況を共有化することで、救急搬送患者がよりスピーディーに治療を受けら れる可能性がある。 ・ 院内にて、手術室、術者、時間帯等の割り当てについておおよそのルール を作成した上で、短期手術は手術室の計画を立てた段階で病床を確保する等 の取組をすることで、計画的な治療の効率化が期待される。 ・ 将来的には、他の医療機関と同じ病名・術式の症例について、予後を含め、 比較分析できることが望ましい。 - 25 - イ 患者来院形態・初再診区分分析 アデータ分析方法 ・ 現行の初再診統計は医事会計システムから算定実績を基に作成している が、同日複数診療の場合は、2つ目の診療科は再診扱いとなる等の課題が存 在する。そのため、電子カルテシステムの複数データベース内に保存されて いる多数の受信歴データ等を統合し、正確な病院新患数や科新患数の抽出を 実施した。 イ成果 ・ 年度別の正確な診療科別新患者数レポートを作成した。 <患者来院形態・初再診区分分析(例)> 診療科別新患者数の実績 - 26 - ウ検証結果 ・ 診療科ごとの病院新患と他科新患の受入数の軌跡を時系列で辿れること により、経営マネジメントの観点から、診療科の体制強化の判断やその結果 の検証に寄与することができる。 ・ 診療科ごとの新患者数を月単位で詳細に調査・分析できることにより、経 営マネジメントの観点から、新患者数を増やすための病院の取組に寄与する ことができる。 ・ 患者を受け入れている診療科、紹介元病院、患者住所等のデータを組み合 わせ、診療圏における疾患別の集患可能地域の調査等に必要なデータを自動 的に抽出する機能を構築することが将来的に期待される。 - 27 - ウ '3& データの活用 アデータ分析方法 ・ 各加算の算定実績のある医事統計データと '3& データ(救急入院の有無、 救急車による来院、入院契機病名等の各種情報)を統合し、より詳細な医事 統計データの抽出を実施した。 イ成果 ・ '3& データにおいて、救急フラグ有の患者について、救急医療管理加算の 取得有無を確認し、算定漏れ患者や疑い患者リストを作成した。 <'3& データの活用(例)> '3& データを活用した救急医療管理加算取得実績 ウ検証結果 ・ '3& データを活用し、診療報酬点数項目の算定条件を分析することで、算 定条件を満たしている、又は満たしている可能性があるリストを抽出し、担 当者に算定の検討を促すことで診療報酬請求の精度を高めることができる。 ・ '3& データ等からがん患者のステージ別患者数や肺炎の重症度等を抽出し、 '3& 病院が公表義務化される情報を自動的に抽出できるような機能を構築す ることが将来的に期待される。 - 28 - 第3章 整備の進め方と運用体制 1 整備の進め方 ・ 診療データバンクは、第 フェーズ(試行)、第2フェーズ(展開)、第3フェー ズ(データの外部提供、ビッグデータの活用)の大きく3つのフェーズに分けて整 備されるが、フェーズ毎の基本的方向性と課題について、以下のとおり整理する。 <診療データバンク構想整備の全体イメージ> フェーズ毎の基本的方向性と課題 ア 第1フェーズ(試行) ア基本的な方向性 ・ 試行病院に、試行システムを構築し、 「診療支援機能」 「治験・臨床研究支 援機能」 「経営マネジメント支援機能」の開発と検証を行う。特に「診療支 援機能」の開発を優先的に行うことで、データクレンジングのノウハウを蓄 積し、段階的な情報整備を行いながら、院内及び患者単位での情報活用を進 める。 ・ 試行システムにおける機能開発にあたっては、臨床現場での試行錯誤を繰 り返し、実用性の検証を幾度も積み重ねていくことが有用であるため、短期 間の開発サイクルを繰り返し、機能を追加しながらソフトウェアの完成度を 高めていく、アジャイル開発を採用する。 - 29 - イ課題 ・ 試行での検証作業を通じて、データ取得や処理のタイミングを意識したデ ータベースの構築方法を検討する必要がある。 ・ 試行での検証作業を通じて、出力されたデータに誤りがないかシステム間 のエラーをチェックする機能などを含む、データクレンジングの手法、デー タ精度向上のための検証体制の構築を検討する必要がある。 ・ 診療データバンクの試行の成果を出すことにより、診療現場にその有用性 を理解してもらうことで、記述ルールや入力内容の整合を図り、データの精 度向上に繋げていくことが必要である。 ・ 診療データバンクと次世代電子カルテシステムにおける機能分担を明確 にする必要がある。 ・ データの利活用方法を、非匿名化データを単体として共有することで価値 が発生するものと、匿名化データを大量に集約することで価値が発生するも のの2つの側面から考える必要がある。 イ 第2フェーズ(展開) ア基本的な方向性 ・ 試行病院で蓄積したデータクレンジングに関する技術や各種機能構築の ノウハウを他都立・公社病院へ展開し、より広範な規模でのデータ利活用を 実現する。 ・ 病院毎に電子カルテシステム内のマスタ構成や部門システムベンダーが 異なることから、病院毎に基礎となるデータベースを構築し、電子カルテシ ステムと部門システムのデータ収集・クレンジングを実施する。 ・ クレンジング後のデータを匿名化・標準化し、集計データを取得できる仕 組みを構築して、病院間での横断的なデータ利活用を可能とする。 イ課題 ・ 各病院のデータを結合して利活用する場合、改正個人情報保護法等に配慮 しつつ、匿名化の実施有無や匿名化レベル、同意の取得方法等を取り決め、 それに応じたシステム構成を検討する必要がある。 ・ 開設者が異なる都立・公社病院間のデータ統合方法について、検討する必 要がある。 ・ 病名記載ポリシーや薬品の記載方法等、同じ表記でも病院間でデータが持 つ意味が異なる場合に、内容のすり合わせ方法について検討する必要がある。 ・ 検体検査等で、独自マスタを利用している場合、診療データバンクに保存 する際に標準コードに置き換える必要がある。 ・ 得られたデータが各種治療方針等の様々なガイドラインに適合している - 30 - かどうか等のエビデンスレベルの評価方法を検討する必要がある。 ウ 第3フェーズ(データの外部提供、ビッグデータの活用) ア基本的な方向性 ・ 蓄積された都立・公社病院のデータをビッグデータとして活用する。 ・ データの外部提供を実施する。 イ課題 ・ 臨床現場における有用性のみならず、公的病院である都立・公社病院の役 割を踏まえ、 「患者サービスの向上」と「都民への還元」の視点から、デー タの利活用方法等を検討する必要がある。 ・ 来院患者という枠を超えて、広く都民に利益を還元するため、企業や団体 等が求めるデータを調査する必要がある。 ・ データの外部提供方法・形式について、国の動向等も踏まえ検討する必要 がある。 ・ 情報を資源としてとらえ、活用できる運用の検討をする必要がある。 2 フェーズ毎の運用体制 ・ 診療データバンクの運用体制は、次頁のとおりフェーズ毎に整備する。 ・ 将来的にどのようにしたいかという要望を、現場の医師や患者のニーズから集約 する仕組みが重要である。 ・ 将来的にデータバンク構想を拡大していき多くの方に情報提供するとなると、都 として病院経営本部として説明責任を果たすため、対応する業務にあたる専用の部 署や人の手当てが必要になる。 - 31 - 第1フェーズ(基本構想策定、試行システム) ・ 都立・公社病院の医師、各部門(看護、薬剤、放射線、検査、栄養)、事務局 等で構成される「作業部会」において、試行システム、診療データバンクに実装 する業務を、技術的難易度・要望・データ利用のタイミング等を考慮の上、選定 を行う。 ・ 「試行病院(駒込病院)」において、対象業務を試行システムに逐次実装し、 効果検証を行う。 ・ 対象業務の効果検証結果や試行システムの運用情報は「作業部会」を通して「都 立・公社病院診療データバンク構想検討委員会」に適宜報告を行う。 ・ 「都立・公社病院診療データバンク構想検討委員会」は業務選定や試行システ ムの運用状況を確認し、必要に応じて助言を行う。 <第1フェーズにおける運用体制> - 32 - 第2フェーズ(他都立・公社病院へ運用拡大)以降 ・ 「診療データバンク委員会(仮称)」により、診療データバンクに実装する業 務の選定を行う。 ・ 都立・公社病院は、診療データバンクシステムの運用状況や対象業務の効果検 証結果を「診療データバンク委員会(仮称)」に報告する。 ・ チェック機関として、 「診療データバンク評議委員会(仮称) 」を設置し、運用 管理状況について審査、精度管理、監査、助言を行う。 ・ 運用の一時窓口として「診療データバンク運用センター(仮称)」を新規に整 備し、運用管理、データ品質管理、分析支援等の業務を委託する。 <第2フェーズ以降における運用体制> - 33 - 第4章 個人情報保護とセキュリティ 1 個人情報保護の考え方 ・ 診療データバンクに関係する個人情報保護の考え方について、以下のとおり整理 する。 機能別整理 ・ 診療データバンクの機能別に、個人情報にかかる患者の同意取得や匿名化等に 関する取扱いについて、現状と取組の基本的方向性を以下のとおり整理する。 ア 診療支援機能 ア現状 ・ 院内での診療データの活用であれば、院内掲示により黙示の同意を取得し ている。 イ取組の基本的方向性 ・ 当面は、試行病院内での活用であり、院内掲示により黙示の同意取得済と 考える。 ・ 試行病院内利用であれば匿名化は不要である。 ・ 複数の病院のデータ活用に応じた匿名化や同意の取り方を検討していく。 イ 治験・臨床研究支援機能 ア現状 D 観察研究 ・ 院内での診療データの活用であれば、院内掲示により黙示の同意を取得 している。 ・ 院外に情報を持ち出す場合は、必ず匿名化を実施している。 E 介入研究・治験 ・ 研究、治験としての診療データ利用について個別に同意を取得している。 ・ 院外に情報を持ち出す場合は、必ず匿名化を実施している。 イ取組の基本的方向性 D 観察研究 ・ 当面は、試行病院内での活用であり、院内掲示により黙示の同意取得済 と考える。 ・ 試行病院内利用であれば匿名化不要である。 - 34 - E 介入研究・治験 ・ 引き続き、研究、治験として、診療データ利用について個別に同意を取 得する。 F 共通 ・ 院外に情報を持ち出す場合は必ず匿名化を実施する。 ・ 研究倫理審査を徹底させることが必要である。 ウ 経営マネジメント支援機能 ア現状 ・ 院内での診療データの活用であれば、院内掲示により黙示の同意を取得し ている。 ・ 加工、統計情報等を活用している。 イ取組の基本的方向性 ・ 集計値の利用を原則としており、個人識別可能な情報は限定的である。 〈個人情報保護の考え方 機能別整理〉 - 35 - エ 各機能共通の基本的方向性 ・ 都立病院間であれば、同一開設者であるため、診療データを個人情報のまま 利用することが制度上は可能だが、その場合にどのような説明、同意の取り方 が必要か、検討していく。 ・ データバンク(患者の受診病院以外でデータを利用)としての活用に向け、 その説明方法、個別同意をとるべきか、黙示の同意でも許されるのか等につい て、個人情報保護法の内容を踏まえつつ検討していく。 ・ 都立病院と公社病院の患者を識別するための ,' を検討していく。 改正個人情報保護法 ・ 診療データバンクに関連する主な改正部分、スケジュール及び今後の基本的方 向性について以下のとおり整理する。 ア 診療データバンクに関連する主な改正部分(平成 年 月時点) ・ 診療データバンクに関連する主な改正部分は以下のとおりである。「資料編 3 改正個人情報保護法関連」に抜粋を記載した。 目的(改正法第1条(施行済)) 「要配慮個人情報」 (改正法第 条第 項(未施行) 、 条第 項(未施行) 、第 条 (一部未施行) ) 「匿名加工情報」 (改正法第 条第 項~第 項(未施行) 、第 条~ 条(未施行) ) 個人情報保護委員会(改正法第 条第 項~ 項(一部未施行)) イ スケジュール ・ 平成 年 月 日改正法成立。全面施行は公布から 年以内 ・ 平成 年 月に個人情報保護委員会設置 ・ 平成 年度に政令制定検討開始 ・ 平成 年度内に委員会規則、ガイドライン等の策定 ウ 取組の基本的方向性 ・ 地方自治体は、法規制の対象外だが、法の趣旨を反映させた条例の制定が必 要である。国の動向を注視し、都の所管局と考え方を調整しながら、適切な対 処を行う。 ・ 「要配慮個人情報」「匿名加工情報」の取扱については政令やガイドライン により定められるため、その内容を踏まえ、対応を検討する必要がある。 - 36 - 課題 ・ 診療データバンクの個人情報保護に関する課題は、以下のとおりである。 ・ 都立病院間においては、同一開設者であるため、診療データを個人情報のまま 利用することが可能だが、その際の同意の取得方法や説明方法について検討する 必要がある。 ・「要配慮個人情報」は、都立・公社間、外部機関と診療データをやり取りする 際に、患者同意の取得が原則必要となる。今後、政令やガイドラインによる要件 緩和の有無を注視しつつ、同意の取得方法や説明方法について検討する必要があ る。 ・「匿名加工情報」は「作成時」 「譲渡時」の 段階で「加工したデータ項目・加 工手法」を公表する義務が発生する。診療データバンクは膨大なデータを保存し ており、用途も多様となることが想定されるため、公表作業が煩雑となる可能性 が高い。今後、政令やガイドラインが定める匿名化技術や公表手続を注視しつつ、 有用なデータとして「匿名加工情報」を利活用することが可能かを検討する必要 がある。 ・ 個人情報を第三者に譲渡する場合、個人情報保護委員会にデータ項目などを届 け出る義務が発生するが、診療データバンクは膨大なデータを保存しており、用 途も多様となることが想定されるため、個人情報保護委員会への届出作業が煩雑 となる可能性が高い。今後、政令やガイドラインが定める届出手続を注視しつつ、 対応方法を検討する必要がある。 2 データセキュリティの管理方針 ・ 診療データバンクのデータセキュリティの管理方針について、以下のとおり現行 のデータセキュリティの管理体系をもとに、取組の基本的方向性を整理する。 現行のデータセキュリティの管理体系 ・ 東京都においては「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関する ガイドライン(総務省) 」を参考として、以下のとおり情報セキュリティに関す る規定を自主的に策定している。また、各種医療システムのデータセキュリティ は「情報セキュリティ実施手順」を策定し、管理している。 - 37 - ア 国のガイドライン ア地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン (総務省) ・ 各地方公共団体が情報セキュリティポリシーの策定や見直しを行う際の 参考として、情報セキュリティポリシーの考え方及び内容について解説した ものである。 イ医療情報システムの安全管理に関するガイドライン(厚生労働省) ・ 医療情報システムを運用する医療機関等の組織の責任者を対象に、医療情 報システムを安全に管理するための遵守事項を定めたものである。 イ 東京都における情報セキュリティに関する規程 ア東京都サイバーセキュリティ基本方針 東京都の情報セキュリティに関する基本的な考え方を提示したものである。 イ東京都サイバーセキュリティ対策基準 情報セキュリティ対策等を実施するために、各情報システム等共通の最低限 必要な水準として、具体的な遵守事項及び判断基準等を定めたものである。 ウ情報セキュリティ安全管理措置 東京都サイバーセキュリティ基本方針、東京都サイバーセキュリティ対策基 準に基づき、病院経営本部において、情報資産の適切な管理を行うため、必要 な事項を定めたものである。 エ情報セキュリティ実施手順 情報処理システムごとに情報セキュリティ対策を実施するための具体的な 手順を管理者用、利用者用に定めたものである。 - 38 - <国のガイドラインと東京都セキュリティポリシーの関係> 取組の基本的方向性 ・ 診療データバンクの整備に当たっては、他の医療情報システム同様、「診療デ ータバンク情報セキュリティ実施手順」を策定し、以下のとおりフェーズ毎に管 理を行う。 ア 第1フェーズ(基本構想策定、試行システム)の主な管理内容 ・ 試行1病院で作業が完了することを前提に以下のとおりデータセキュリテ ィの管理を行う。 ア組織体制 情報セキュリティ責任者、システム管理者、ネットワーク担当者等を選任し、 セキュリティ管理体制を構築する。 イ情報資産の分類と管理方法 診療データバンクで取り扱う情報資産を棚卸しの上、機密性、完全性、可用 性の観点からランク付けし、外部記録媒体の利用制限等を決定する。 - 39 - ウ物理的セキュリティ 管理区域(サーバ等設置場所)における入退室ルールを決定する。 エ人的セキュリティ システム管理者・利用者を対象とした操作研修・セキュリティ事故発生時の 訓練を実施する。 オ技術的セキュリティ ・ ,'・パスワードの運用ルール(配付ルール、文字数制限、変更頻度等)を 決定する。 ・ アクセス権限を設定する。 ・ ネットワーク機器に外部ネットワークと接続できないよう設定する。 ・ 不正ソフトウェア(ウイルス等)対策を行う。 カ運用 ・ システム監視を実施する。 ・ データバックアップを実施する。 ・ セキュリティ事故発生時の対応方法を決定する。 ・ 情報セキュリティ監査を実施する。 イ 第2フェーズ(都立公社病院へ運用拡大)以降に追加する管理内容 ・ ネットワークと通じて外部機関とやり取りすることが想定されることから、 国の動向や技術の進展等、社会の動向を注視しながら、以下の管理内容の追加 を検討する。 ア技術的セキュリティ ・ 技術の進展に伴い識別が可能となるリスクに備えた匿名化技術を採用す る。 ・ 外部と安全にデータ交換するための回線と通信の暗号化方式を決定する。 イ運用 ・ 通信事業者等との運用上の責任分界点を設定する。 ・ 患者が安心・納得できるデータの匿名化方式や運用管理体制を周知する。 - 40 - <診療データバンク情報セキュリティ実施手順のフェーズ別管理内容> - 41 - 終章 ビッグデータ活用に向けた課題整理等 1 ビッグデータ活用における課題 ・ 第3フェーズの「ビッグデータ活用」に移行する前までに解決しておくべき課題 について、以下のとおり整理する。 各都立・公社病院間のデータの「違い」の把握と整合性の確保 ・ 病名をつけるポリシーや薬品の記載方法等、同じ表記でも病院間でデータが持 つ意味が異なる場合に、内容をすり合わせる方法について検討する必要がある。 ・ 検査、検体検査等で、独自マスタを利用している場合、診療データバンクに保 存する際に標準コードに置き換える必要がある。 ・ 得られたデータが各種治療方針等の様々なガイドラインに適合しているかど うか等のエビデンスレベルの評価方法を検討する必要がある。 病院間の患者名寄せ ・ データの精度を確保していくために、複数病院で受診している患者を、同一患 者として識別する方法を検討する必要がある。 データベースの構成 ・ データベースの管理方法を集中管理型にするのか、0,'1(7医療情報データベ ース基盤整備事業(注5)のように各病院にデータを保存して必要な時に参照す る方式にするのか、それ以外がよいのかを検討する必要がある。 ・ データベースに保存される情報の種類を、個人情報のまま保存するか、匿名化 するか等について検討する必要がある。 (注5) 0,'1(7医療情報データベース基盤整備事業 厚生労働省が所管する、医療情報を薬剤疫学的手法によりデータ抽出・分析し、医薬品 等の安全対策に活用することを目的とする事業。 万人規模の情報収集を目指し、平 成 年度より 年計画で整備を進めている。詳細は、資料編4「診療データ活用に関連 する国の動向」を参照。 - 42 - 病院経営本部における活用方法 ・ 業務統計の自動化、経営分析の抜本的見直しなど、データ所有者である病院経 営本部での有効な活用方法を検討する必要がある。 2 データの外部提供(第三者提供)における課題 ・ 第3フェーズの「データの外部提供(第三者提供)」における課題について、以 下のとおり整理する。 都立・公社病院がデータを外部提供することへの合意形成 ・ 個人情報及びプライバシー保護の観点から、「6XLFD に関するデータの社外へ (注6) の提供について 中間のとりまとめ」 など有識者会議の提言を踏まえた周知 内容・方法等について検討する必要がある。 (注6) 6XLFD に関するデータの社外への提供 東日本旅客鉄道株式会社が 年 月に、6XLFD 利用データから氏名、電話番号、物販情 報等を除外し、生年月日を生年月に変換した上、さらに、6XLFD,' 番号を不可逆の別異の番 号に変換したデータを株式会社日立製作所に同年 月に提供したことが明らかになり、多く の利用者から、個人情報の保護、プライバシーの保護や消費者意識に対する配慮に欠けてい るのではないかとして批判や不安視する声があがった。詳細は、資料編5「6XLFD に関する データの社外への提供について」を参照。 臨床現場におけるニーズと民間事業者を含めた利用者のニーズの整合性 ・ 臨床現場だけでなく、都立・公社病院の役割を踏まえたデータを整備し、広く 都民に還元していくために、いつ、どのように外部のニーズを把握していくのか を検討する必要がある。 データ提供のタイミングと手法 ・ 定期的な提供に加え、請求に基づく提供の実施可否、間隔及び手法等を検討す る必要がある。 データの提供ルール ・ データの価値は匿名化基準を高くすればするほど一般的に低下していくので、 データを提供するにあたり、匿名化をどのような手法で行うべきなのかを検討す る必要がある。 - 43 - 3 国の動向(参考) ・ 年 月 日、政府は成長戦略の骨子「『日本再興戦略』改訂 」を閣議決 定した。診療データバンク構想に関連する国の施策とそれに伴う課題は以下のとお りである。 医療等分野における ,' の導入等( 年運用開始、 年本格運用見込み) ・ 同一患者を名寄せするための統合患者 ,' として利用できないかを検討する必 要がある。 ビッグデータ活用によるイノベーション促進、医療現場や政策への活用 ・ 次世代医療 ,&7 基盤協議会により 年度に策定した「医療等分野データ利 活用プログラム」を参照し、都立・公社病院診療データバンク事業との整合性を 図る。 ・ 医療等分野の情報を活用した創薬や治療の研究開発の促進を目的とする「代理 機関(仮称)」(注7)のデータの収集方法、管理方法、匿名化方法及び活用方法等 について参考とする。 ・ ,&7 を活用した患者・国民本位の医療等サービスの提供や持続可能な医療等シ ステムの実現、産官学が一体となった研究開発や新規サービスの創出に向けて、 患者・国民、医療等の現場にとって価値あるデータが、医療等の現場が主体とな って自律的に作られていく次世代型の医療情報の共通インフラやプラットフォ ーム等の在り方や実現方策について、保健医療分野における ,&7 活用推進懇談会 において、 年度に検討を行い、厚生労働省等において必要な対応を実施するの で、これを参考とする。 (注7) 代理機関 消費者本人の同意に基づいて、各企業や公的機関が持つ健康情報、学習履歴情報、購買 履歴などの管理を受託し、データベースに保存する。事業者は、代理機関のインフラを活 用し、相互にデータ連携しながらサービス提供できる。情報の連携にはマイナンバーも検 討する。 - 44 - 資 料 編 1 都立病院と公社病院の概況 2 「東京都長期ビジョン」(平成 26 年 12 月)抜粋 (診療データバンク構想関連) 3 改正個人情報保護法関連 抜粋(平成 28 年 11 月時点) 4 診療データ活用に関連する国の動向 5 6 7 8 Suicaに関するデータの社外への提供について 都立・公社病院診療データバンク構想検討委員会設置要綱 都立・公社病院診療データバンク構想検討委員名簿 都立・公社病院診療データバンク構想検討委員会 検討経過 - 45 - - 46 - 八王子市 日野市 小平市 多摩市 床 % 床 % 床 % 都 立 病 院 公 社 病 院 都立・公社合計 ※ 都立病院、公社病院病床数は 年度予算 床数等の状況について(+ 時点) 」より引用 ※ 都内病床数は、「厚生労働省:二次医療圏・基準病 床 % 都 内 病 床 数 狛江市 区西南部 世 田谷区 ⑦ 目 黒区 渋谷 区 大田区 足 立区 江 戸川区 葛飾区 区東部 特徴:集学的がん、脳血管 疾患、高気圧酸素療法、感染症 特徴:精神科救急、精神科 身体合併症 荏原病院 病床数 床 外来規模 人日 区南部 千代田区 中 央区 墨 田区 江東区 区 台東 東区 荒川区 区中央部 文 京区 港区 品 川区 新宿区 豊島区 松沢病院 病床数 床 外来規模 人日 調布市 野区 区西部 中野 杉並区 練馬区 北区 特徴:東京ER、島しょ医 療、脳血管疾患、災害時医 療 心臓病 広尾病院 病床数 : 床 外来規模: 人日 特徴:東京ER、感染症、 精神科救急、周産期、脳血 管疾患 墨東病院 病床数 床 外来規模 人日 特徴:がん、感染症、エイ ズ医療、造血幹細胞移植 駒込病院 病床数 : 床 外来規模: 人日 特徴:救急、循環器、がん 東部地域病院 病床数 床 外来規模 人日 注 病床数、外来規模は 27 年度予算 公社病院 都立病院 (小児精神科医療、薬物中毒等精神科特殊医療、エイズ医療など) ・新たな医療課題に対して、先導的に取り組む必要がある医療 (難病医療、障害者合併症医療、周産期医療、三次救急医療など) ・社会的要請から、特に対策を講じなければならない医療 (精神科救急医療、結核医療、感染症医療、災害時医療) 行 政 的 医 療 ・法令等に基づき、対応が求められる医療 公社病院 ・地域の医療機関との連携に基づく地域医療のシステム化を推進し、住民が必要とする保健医療サービスの提供を行う。 都立病院と公社病院の役割 都 立 病院 ・高水準で専門性の高い総合診療基盤に支えられた「行政的医療」を適正に都民に提供し、他の医療機関との密接な連携 を通じて、都における良質な医療サービスの確保を図る。 武 蔵野市 西東京 市 板橋 区 区東北部 特徴:周産期、リウマチ膠原病、 障害者合併症 特徴:救急、がん、脳血管 疾患、感染症、精神科救急 区西北部 大塚病院 病床数 : 床 外来規模: 人日 豊島病院 病床数 床 外来規模 人日 北多摩南部 三鷹市 小金井 小 小金 井市 東久留米 市 稲 城市 府 中市 国 分寺市 国立市 町田市 立川市 東村山市 特徴:救急、がん 南多摩 東 大和市 北多摩西部 武蔵村 山市 昭島市 瑞穂町 福生市 羽村市 北多摩北部 清瀬 市 特徴:東京 '4、周産期(新生 児) 、小児精神、小児難病 あきる野市 日 の出 町 青 梅市 多摩南部地域病院 病床数 床 外来規模 人日 西多摩 小児総合医療センター 病床数 床 外来規模 人日 檜原村 都民医療に占める都立・公社病院の割合 特徴:東京ER、精神科救急、 周産期 産科、がん、脳血管疾 患 多摩総合医療センター 病床数 床 外来規模 人日 特徴:神経・筋難病を含む 脳神経系疾患 神経病院 病床数 床 外来規模 人日 奥多摩町 特徴:救急、生活習慣病、 腎医療、脳卒中、がん 特徴:救急、がん、小児 大久保病院 病床数 床 外来規模 人日 ⑪ 多摩北部医療センター 病床数 床 外来規模 人日 ⑥ 1 都立病院と公社病院の概況 ⑦ 2 「東京都長期ビジョン」(平成 年 月)抜粋 (診療データバンク構想関連) 都市戦略5 福祉先進都市の実現 政策指針 質の高い医療が受けられ、生涯にわたり健康に暮らせる 環境の実現 政策目標(S) 事項 目標年次 目標値 診療データの蓄積・研究活用基盤の構築 年度 全都立・公社 病院 【おおむね 㻝㻜 年後(㻞㻜㻞㻠(平成 㻟㻢)年頃)まで】㻌 㻌 ■超高齢社会に対応し、医療基盤の充実と医療人材の確保を推進㻌 㻌 㻌 ◇東京の医療水準が向上し、高い治療技術や臨床研究の成果が都民の健康に還元㻌 事項 診療データの蓄積・研究活用基盤の構築 目標年次 目標値 2024年度 全都立・公社14病院 これからの政策展開S 事項 目標年次 診療データの蓄積・研究活用基盤の構築 年度 診療データを活用した先進医療・臨床研究等の推進 目標値 全都立・公社 病院 ・ 全都立・公社病院の電子カルテシステムに蓄積された約 床の診療デ ータを集約し、 診療支援情報等を提供するデータバンクシステムを構築する ことで、臨床現場での医療水準の向上を図る。 ・ データバンクシステムを活用し、安全で質の高い先進医療の提供とあわせ て、臨床研究や治験の推進に取り組む。 都市戦略6 世界をリードするグローバル都市の実現 政策指針 日本の成長を支える国際経済都市の創造 これからの政策展開S 事項 目標年次 診療データの蓄積・研究活用基盤の構築 年度 東京を国際的なライフサイエンスビジネス拠点へと成長 目標値 全都立・公社 病院 ・ 全都立・公社病院の電子カルテシステムに蓄積された診療データを集約し てデータバンクシステムを構築するなど、臨床研究や治験の環境整備を推進 する。 - 47 - 3 改正個人情報保護法関連 抜粋(平成 年 月時点) 改正個人情報保護法 ○目的(改正法第1条) 第一条 この法律は、高度情報通信社会の進展に伴い個人情報の利用が著しく拡大していること に鑑み、個人情報の適正な取扱いに関し、基本理念及び政府による基本方針の作成その他 の個人情報の保護に関する施策の基本となる事項を定め、国及び地方公共団体の責務等を 明らかにするとともに、個人情報を取り扱う事業者の遵守すべき義務等を定めることによ り、個人情報の適正かつ効果的な活用が新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊 かな国民生活の実現に資するものであることその他の個人情報の有用性に配慮しつつ、個 人の権利利益を保護することを目的とする。 ○「要配慮個人情報」 (改正法第2条第3項、第 条第2項、第 条第2項)関連 第二条第3項(未施行) 3 この法律において「要配慮個人情報」とは、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、 犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の 不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等 が含まれる個人情報をいう。 第十七条第2項(未施行) 2 個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ない で、要配慮個人情報を取得してはならない。 一 法令に基づく場合 二 人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得 ることが困難であるとき。 三 公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であっ て、本人の同意を得ることが困難であるとき。 四 国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行 することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当 該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき。 五 当該要配慮個人情報が、本人、国の機関、地方公共団体、第七十六条第一項各号に 掲げる者その他個人情報保護委員会規則で定める者により公開されている場合 六 その他前各号に掲げる場合に準ずるものとして政令で定める場合 - 48 - ○「要配慮個人情報」 (第 条第1項~第4項)関連 第二十三条(下線部は未施行) 個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、 個人データを第三者に提供してはならない。 一 法令に基づく場合 二 人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得 ることが困難であるとき。 三 公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であっ て、本人の同意を得ることが困難であるとき。 四 国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行 することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当 該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき。 2 個人情報取扱事業者は、第三者に提供される個人データ(要配慮個人情報を除く。以 下この項において同じ。)について、本人の求めに応じて当該本人が識別される個人デ ータの第三者への提供を停止することとしている場合であって、次に掲げる事項につい て、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、あらかじめ、本人に通知し、又は 本人が容易に知り得る状態に置くとともに、個人情報保護委員会に届け出たときは、前 項の規定にかかわらず、当該個人データを第三者に提供することができる。 一・二(略) 三 第三者への提供の方法 四 本人の求めに応じて当該本人が識別される個人データの第三者への提供を停止する こと 五 本人の求めを受け付ける方法 3 個人情報取扱事業者は、前項第二号、第三号又は第五号に掲げる事項を変更する場合 は、変更する内容について、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、あらかじ め、本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置くとともに、個人情報保護委員 会に届け出なければならない。 4 個人情報保護委員会は、第二項の規定による届出があったときは、個人情報保護委員 会規則で定めるところにより、当該届出に係る事項を公表しなければならない。前項の 規定による届出があったときも、同様とする。 - 49 - ○「要配慮個人情報」 (第 条第5項)関連 第二十三条 第5項(下線部は未施行) 5 次に掲げる場合において、当該個人データの提供を受ける者は、前各項の規定の適用 については、第三者に該当しないものとする。 一 個人情報取扱事業者が利用目的の達成に必要な範囲内において個人データの取扱い の全部又は一部を委託することに伴って当該個人データが提供される場合 二(略) 三 特定の者との間で共同して利用される個人データが当該特定の者に提供される場合 であって、その旨並びに共同して利用される個人データの項目、共同して利用する者 の範囲、利用する者の利用目的及び当該個人データの管理について責任を有する者の 氏名又は名称について、あらかじめ、本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態 に置いているとき。 ○「匿名加工情報」 (改正法第2条第9項、第 項)関連 第二条(未施行) 9 この法律において「匿名加工情報」とは、次の各号に掲げる個人情報の区分に応じて 当該各号に定める措置を講じて特定の個人を識別することができないように個人情報を 加工して得られる個人に関する情報であって、当該個人情報を復元することができない ようにしたものをいう。 一 第一項第一号に該当する個人情報当該個人情報に含まれる記述等の一部を削除する こと(当該一部の記述等を復元することのできる規則性を有しない方法により他の記 述等に置き換えることを含む。)。 二 第一項第二号に該当する個人情報当該個人情報に含まれる個人識別符号の全部を削 除すること(当該個人識別符号を復元することのできる規則性を有しない方法により 他の記述等に置き換えることを含む。)。 この法律において「匿名加工情報取扱事業者」とは、匿名加工情報を含む情報の集合 物であって、特定の匿名加工情報を電子計算機を用いて検索することができるように体 系的に構成したものその他特定の匿名加工情報を容易に検索することができるように体 系的に構成したものとして政令で定めるもの(第三十六条第一項において「匿名加工情 報データベース等」という。)を事業の用に供している者をいう。ただし、第五項各号 に掲げる者を除く。 - 50 - ○「匿名加工情報」 (改正法第 条、第 条)関連 第三十六条(未施行) 個人情報取扱事業者は、匿名加工情報(匿名加工情報データベース等を構成するものに 限る。以下同じ。)を作成するときは、特定の個人を識別すること及びその作成に用いる 個人情報を復元することができないようにするために必要なものとして個人情報保護委員 会規則で定める基準に従い、当該個人情報を加工しなければならない。 2 個人情報取扱事業者は、匿名加工情報を作成したときは、その作成に用いた個人情報か ら削除した記述等及び個人識別符号並びに前項の規定により行った加工の方法に関する 情報の漏えいを防止するために必要なものとして個人情報保護委員会規則で定める基準 に従い、これらの情報の安全管理のための措置を講じなければならない。 3 個人情報取扱事業者は、匿名加工情報を作成したときは、個人情報保護委員会規則で定 めるところにより、当該匿名加工情報に含まれる個人に関する情報の項目を公表しなけ ればならない。 4 個人情報取扱事業者は、匿名加工情報を作成して当該匿名加工情報を第三者に提供する ときは、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、あらかじめ、第三者に提供さ れる匿名加工情報に含まれる個人に関する情報の項目及びその提供の方法について公表 するとともに、当該第三者に対して、当該提供に係る情報が匿名加工情報である旨を明 示しなければならない。 5 個人情報取扱事業者は、匿名加工情報を作成して自ら当該匿名加工情報を取り扱うに当 たっては、当該匿名加工情報の作成に用いられた個人情報に係る本人を識別するために、 当該匿名加工情報を他の情報と照合してはならない。 6 個人情報取扱事業者は、匿名加工情報を作成したときは、当該匿名加工情報の安全管理 のために必要かつ適切な措置、当該匿名加工情報の作成その他の取扱いに関する苦情の 処理その他の当該匿名加工情報の適正な取扱いを確保するために必要な措置を自ら講 じ、かつ、当該措置の内容を公表するよう努めなければならない。 第三十七条(未施行) 匿名加工情報取扱事業者は、匿名加工情報(自ら個人情報を加工して作成したものを除 く。以下この節において同じ。)を第三者に提供するときは、個人情報保護委員会規則で 定めるところにより、あらかじめ、第三者に提供される匿名加工情報に含まれる個人に関 する情報の項目及びその提供の方法について公表するとともに、当該第三者に対して、当 該提供に係る情報が匿名加工情報である旨を明示しなければならない。 - 51 - ○「匿名加工情報」 (改正法第 条、第 条)関連 第三十八条(未施行) 匿名加工情報取扱事業者は、匿名加工情報を取り扱うに当たっては、当該匿名加工情報 の作成に用いられた個人情報に係る本人を識別するために、当該個人情報から削除された 記述等若しくは個人識別符号若しくは第三十六条第一項の規定により行われた加工の方法 に関する情報を取得し、又は当該匿名加工情報を他の情報と照合してはならない。 第三十九条(未施行) 匿名加工情報取扱事業者は、匿名加工情報の安全管理のために必要かつ適切な措置、匿 名加工情報の取扱いに関する苦情の処理その他の匿名加工情報の適正な取扱いを確保する ために必要な措置を自ら講じ、かつ、当該措置の内容を公表するよう努めなければならな い。 ○地方公共団体等への支援(改正法第8条) 第八条 国は、地方公共団体が策定し、又は実施する個人情報の保護に関する施策及び国民又は 事業者等が個人情報の適正な取扱いの確保に関して行う活動を支援するため、情報の提供、 事業者等が講ずべき措置の適切かつ有効な実施を図るための指針の策定その他の必要な措 置を講ずるものとする。 - 52 - 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律 ○利用及び提供の制限(第8条) 第八条 行政機関の長は、法令に基づく場合を除き、利用目的以外の目的のために保有個人情報 を自ら利用し、又は提供してはならない。 2 前項の規定にかかわらず、行政機関の長は、次の各号のいずれかに該当すると認め るときは、利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し、又は提供するこ とができる。ただし、保有個人情報を利用目的以外の目的のために自ら利用し、又は 提供することによって、本人又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがあると 認められるときは、この限りでない。 一 本人の同意があるとき、又は本人に提供するとき。 二 行政機関が法令の定める所掌事務の遂行に必要な限度で保有個人情報を内部で利 用する場合であって、当該保有個人情報を利用することについて相当な理由のある とき。 三 他の行政機関、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人に保有個人 情報を提供する場合において、保有個人情報の提供を受ける者が、法令の定める事 務又は業務の遂行に必要な限度で提供に係る個人情報を利用し、かつ、当該個人情 報を利用することについて相当な理由のあるとき。 四 前三号に掲げる場合のほか、専ら統計の作成又は学術研究の目的のために保有個 人情報を提供するとき、本人以外の者に提供することが明らかに本人の利益になる とき、その他保有個人情報を提供することについて特別の理由のあるとき。 3 前項の規定は、保有個人情報の利用又は提供を制限する他の法令の規定の適用を妨 げるものではない。 4 行政機関の長は、個人の権利利益を保護するため特に必要があると認めるときは、 保有個人情報の利用目的以外の目的のための行政機関の内部における利用を特定の部 局又は機関に限るものとする。 - 53 - 東京都個人情報の保護に関する条例 ○利用及び提供の制限(第 条) 第十条 実施機関は、保有個人情報を取り扱う事務の目的を超えた保有個人情報の当該実施機関 内における利用(以下「目的外利用」という。)をしてはならない。ただし、次の各号の いずれかに該当する場合は、この限りでない。 一 本人の同意があるとき。 二 法令等に定めがあるとき。 三 出版、報道等により公にされているとき。 四 個人の生命、身体又は財産の安全を守るため、緊急かつやむを得ないと認められる とき。 五 専ら学術研究又は統計の作成のために利用する場合で、本人の権利利益を不当に侵 害するおそれがないと認められるとき。 六 同一実施機関内で利用する場合で、事務に必要な限度で利用し、かつ、利用するこ とに相当な理由があると認められるとき。 2 実施機関は、保有個人情報を取り扱う事務の目的を超えた保有個人情報の当該実施機 関以外の者への提供(以下「目的外提供」という。)をしてはならない。ただし、次の 各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。 一 本人の同意があるとき。 二 法令等に定めがあるとき。 三 出版、報道等により公にされているとき。 四 個人の生命、身体又は財産の安全を守るため、緊急かつやむを得ないと認められる とき。 五 専ら学術研究又は統計の作成のために提供する場合で、本人の権利利益を不当に侵 害するおそれがないと認められるとき。 六 国、独立行政法人等、他の地方公共団体、地方独立行政法人若しくは他の実施機関 等(以下この号において「国等の機関」という。)に提供する場合で、国等の機関が事務 に必要な限度で利用し、かつ、利用することに相当な理由があると認められるとき。 3 実施機関は、目的外利用又は目的外提供をするときは、本人及び第三者の権利利益を 不当に侵害することがないようにしなければならない。 - 54 - 実施:平成年~ 所管:厚生労働省 レ セ プ ト 情 報 保 険 者 - 55 - '3&データ 実施:平成年~ 所管:厚生労働省 特定健診等 情報 サーバ 国の保有する データベース レセプト 情報 サーバ 用 途 に 応 じ て 集 計 ・ 加 工 を 行 い 活 用 病名と診療内容 によってグループ化 '3&[[[[ '3&[[[[ '3&[[[[ 医療の質と効率性 の比較・評価 診療報酬の 定額評価 備考 「'3&データにより医療の全体像を把握できるだけでなく、'3&ごとの月平均退院患者 数、医療圏シェア、平均在院日数などの診療実績の比較もできる。 カルテ 情報 一見多彩な病態 統計的分析が 可能となる 概要 「'3&'LDJQRVLV3URFHGXUH&RPELQDWLRQ」とは、・急性期入院医療の・診断群分類 に基づく・1日当りの包括評価制度であり、分析可能な全国統一形式の患者臨床情報+診 療行為の電子データセットである。 社会保険 診療報酬 支払基金 備考 ●レセプト(年月~年月診療分) 格納件数約83億4,800万件 ●特定健診・特定保健指導(年度~年度分) 格納件数約1億2,000万件 (支払基金、 都道府県連合会等) 代行機関 匿名化処理 保 険 者 実特 施定 機健 関診 等 審査支払機関 特 定 健 等診 情 報 医 療 機 関 匿名化処理 概要 1'%とは、国が保有するレセプト情報、特定健診情報及び特定保健指導情報のデータ ベースである。厚生労働省は医療の質向上や研究基盤の強化を進めるため、ビッグデータ である1'%データの利活用推進方針を打ち出した。 1'%(ナショナルデータベース) 4 診療データ活用に関連する国の動向 実施:平成年~ 所管:厚生労働省 拠点病院 検査データ オーダリング データ 検討:平成年~ 所管:厚生労働省 '% '% 拠点病院 医療等,' 医療等分野 医療保険者 保険者 備考 ・年月からマイナンバー制度は本格的に運用を開始したが、医療等,'については運用 管理方法等を現在検討中である 薬局等 病院 診療所等 医療機関等 ※検討中イメージ 医療等情報 中継'%(仮称) マイナンバー 概要 医療等,'とは、社会保障・税・災害対策の各分野で利用されるマイナンバーに対し、 医療機関等を情報連携対象とする医療分野の番号制度である。 医療等,' 備考 ・現在試行病院への導入が完了し、データ蓄積・品質管理の検証中 '% 拠点病院 ネットワーク '% 拠点病院 全国カ所 拠点病院 電子カルテ データ レセプト データ データベース構築 と活用促進 '% 期待される成果:医薬品等の迅速で的確な安全対策の実施 ・副作用の発生割合の比較 ・副作用か、病気自体の症状かの判別 ・安全対策が副作用低減に効果があったのか検証 医薬品医療機器総合機構 データの 調査 分析 副作業情報等の安全性情報の 収集及び分析 研究者・ 製薬企業 概要 医療情報データベース基盤整備事業は、医療情報を薬剤疫学的手法によりデータ抽出・ 分析し、医薬品等の安全対策に活用することを目的とする事業である。万人規模の 情報収集を目指し、平成年度より5年計画で整備を進めている。 0,'1(7(医療情報データベース基盤整備事業) - 56 - ○ 今後、「統計データ」や「匿名化したSuica分析用データ」の提供を検討するにあたっては、利用者への配慮において、他の民間企業の取組等も 参考としながら、「統計データ」や「匿名化したSuica分析用データ」の内容、作成ルール、運用管理体制等を利用者に周知し、利用者が安心・ 納得できるような配慮を行っていくことが肝要となる。 ※ k-匿名化処理 …あらゆる観点でデータを絞り込んでも、分解能がk名までに制限され、特定の個人を識別できないようにする匿名化 ○ 「統計データ」や、氏名・電話番号の識別情報や不要項目の削除、曖昧化、※k-匿名化処理による集合匿名化を施した「匿名化したSuica分析用 データ」は、社会通念上、個人の特定を不可能とし、特定の個人の行動履歴を把握することができないため、これらの提供は、個人情報の保護及 びプライバシーの保護の観点から問題となることはないと考えられる。ただし、「匿名化したSuica分析用データ」は、k-匿名化処理による集合 匿名化によって、移動データや滞在データ等の動線データが本来有するデータ量・特性価値(行動特性の把握等)が相当程度失われる。 ○ また、プライバシーの保護についても、直ちに個人のプライバシーが侵害されるおそれはないと判断される一方、今後、技術の進展に伴い、特定 の個人が識別され新たな問題が生じる可能性も考えられるため、今後とも継続して、最善と考えられる配慮を行うべきである。 ○ JR東日本が、(個人情報保護法の)現行法において合理的と考えられる範囲で法の解釈運用に努めていたことは認められるが、個人情報の定義に おける個人の識別性の論点については、専門家の間でも解釈に幅があり、また、現在、法改正が検討されていること等の状況にあるため、今後の 立法化の動向にも注視していく必要がある。 有識者会議は、個人情報及びプライバシー保護の観点から以下のとおり提言している。(「Suicaに関するデータの社外への提供について 中間の とりまとめ」2014年2月) 有識者会議による提言 東日本旅客鉄道株式会社(以下「JR東日本」という。)が2013年6月に、Suica利用データから氏名、電話番号、物販情報等を除外し、生年月日を生 年月に変換した上、さらに、SuicaID番号を不可逆の別異の番号に変換したデータを株式会社日立製作所に同年7月に提供したことが明らかになり、多 くの利用者から、個人情報の保護、プライバシーの保護や消費者意識に対する配慮に欠けているのではないかとして批判や不安視する声があがった。 そのため、Suicaに関するデータの社外への提供に関し、利用者の理解を得ながら実現させることができるかを検討することを目的に、「Suicaに関 するデータの社外への提供についての有識者会議」が設けられた。 経緯 5 6XLFDに関するデータの社外への提供について 都立・公社病院診療データバンク構想検討委員会設置要綱 平成 年 月 日 病 サ 事 第 号 病院経営本部長決定 第 章 総則 (目的) 第1条 都立・公社病院の電子カルテシステムに蓄積された膨大な診療データを、診療支援、治 験・臨床研究支援に活用する診療データバンクを構築することを目的とした「都立・公社病院 診療データバンク構想検討委員会(以下「検討委員会」という。) 」を設置する。 (所掌事項) 第2条 検討委員会は、次に掲げる事項について検討する。 (1) 診療データバンクの基本構想に関すること (2) 診療データバンクの試行方針に関すること (3) 診療データバンクの試行の評価に関すること (4) その他、診療データバンク構想の事業推進に必要な事項 (構成) 第3条 検討委員会は、病院経営本部長が委嘱する委員で構成する。 2 前項に規定する者のほか、病院経営本部長が指定する者を委員とすることができる。 (委員の任期) 第4条 委員の任期は2年までとし、再任を妨げない。ただし、委員に欠員を生じたときは、こ れを補充し、その任期は前任者の残任期間とする。 (委員長及び副委員長) 第5条 検討委員会に委員長及び副委員長を置く。 2 委員長は委員の互選により、副委員長は委員長の指名により選出する。 3 委員長は、検討委員会を主宰し、検討委員会を代表する。 4 副委員長は、委員長を補佐し、委員長に事故あるときは、その職務を代理する。 (会議) 第6条 検討委員会の会議は、委員長が招集する。 2 検討委員会は、過半数の委員の出席がなければ会議を開くことができない。 3 委員は事前に委員長の許可を得た場合は、代理の者を検討委員会に出席させることができる。 (委員以外の出席) 第7条 検討委員会は、必要と認めるときは、委員以外の者に対し会議への出席を求め、又は他 の方法により意見を聞くことができる。 - 57 - (会議及び会議録の公開) 第8条 会議及び会議録は原則公開とする。 2 委員長又は委員の発議により出席委員の過半数により議決したときは、会議又は会議録を非 公開とすることができる。 (庶務) 第9条 検討委員会の庶務は、病院経営本部サービス推進部事業支援課において処理する。 (雑則) 第10条 この要綱に定めるもののほか、検討委員会の運営に関し必要な事項は、委員長が別に 定める。 附 則 この要綱は、決定日から施行する。 - 58 - 都立・公社病院診療データバンク構想検討委員名簿 (敬称略) 区分 氏 名 役職等 石川ベンジャミン光一 国立がん研究センター社会と健康研究センター (副委員長) 臨床経済研究室長 児玉 安司 新星総合法律事務所弁護士 小松 恒彦 帝京大学医学部第三内科学講座教授 田渕 健 東京都立駒込病院小児科医長 東京都福祉保健局保健政策部地域がん登録担当課長 外部有識者 橋本 廸生 日本医療機能評価機構執行理事 (委員長) 横浜市立大学名誉教授 目々澤 肇 東京都医師会理事 山口 育子 132 法人ささえあい医療人権センター &20/ 理事長 東京大学大学院医学系研究科特任准教授(平成 年 月まで) 山本 隆一 自治医科大学客員教授(平成 年 月から) 医療情報システム開発センター理事長 黒井 克昌 東京都立駒込病院副院長 都関係者 和智 明彦 公益財団法人 東京都保健医療公社 多摩南部地域病院院長 ※区分毎に 音順で記載 - 59 - 都立・公社病院診療データバンク構想検討委員会 検討経過 区分 開催年月日 第1回 平成 27 年 5 月 12 日 主な議題 都立・公社病院診療データバンク構想検討委員会の設置 都立・公社病院診療データバンク構想の概要 第 1 回委員会 論点整理の確認 第2回 平成 27 年 7 月 29 日 診療データバンクの機能と活用方法 個人情報保護・データセキュリティへの対応 第 1 回・第 2 回委員会 論点整理の確認 全都立病院・公社病院への展開 第3回 平成 27 年 10 月 28 日 運用体制 作業部会設置報告 国の動向を踏まえたビッグデータ活用への対応 第 4 回・第 5 回検討委員会の審議内容等 第4回 平成 28 年 3 月 3 日 駒込パイロット事業 都立・公社病院診療データバンク基本構想の概要(案) 今後検討すべき診療データの活用方法 駒込パイロット事業の効果検証 第5回 平成 28 年 7 月 28 日 今後の診療データの利活用プラン(案) 報告書(中間のまとめ)の検討 報告書(中間のまとめ)の位置付けについて検討 第6回 平成 28 年 12 月 1 日 報告書(中間のまとめ)の修正案の承認 今後の進め方について - 60 - 都立・公社病院診療データバンク構想の 基本的方向性と課題について (中間のまとめ) 登録番号() 平成 年 月発行 編集・発行 都立・公社病院診療データバンク構想検討委員会 事務局所在地 東京都病院経営本部サービス推進部事業支援課 東京都新宿区西新宿二丁目 番 号 電話 ()(ダイヤルイン) () 内線 KWWSZZZE\RXLQPHWURWRN\RMS 印刷 東京都中央区日本橋馬喰町 丁目 番 号 株式会社中央謄写堂 電話 () 古紙パルプ配合率70%の再生紙を使用しています。 石油系溶剤を含まないインキを使用しています。
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