研 修 報 告 報告者 Tさん 1、研修名 平成 28 年度 全国子どもの健全育成リーダー養成セミナー 子どもの力、遊びの力、地域の力 2、日時と場所 【1 日目】全体会 2016 年 12 月 17 日(土) 13:00~17:00 東京国際交流館(江東区青海) 情報交換会 17:30~19:30 同上 【2 日目】分科会 2016 年 12 月 18 日(日) 09:30~12:30 東京国際交流館(江東区青海) 3、主催 厚生労働省 /(一般財団法人)児童健全育成推進財団 後援 東京都 /(公益財団法人)児童育成協会 / 児童厚生員養成課程連絡協議会 4、 【1 日目】プログラム 開会式 推進財団・理事長S氏の挨拶及び児童館立ち上げの草創期の苦労話、国の補助金を獲得 するのに情熱的に活躍された山形のA氏の話がありました。 行政説明 厚生労働省の少子化対策室・室長N氏の豊富な資料に基づき「児童館・放課後児童クラ ブの現状と展望」と題して、1、子育てをめぐる状況~少子化の要因~ 2、児童館の 機能と役割について 3、放課後児童クラブについて 行政説明が丁寧に行われました。 シェアリング・休憩 記念講演 演題「子どもの才能の見つけ方、伸ばし方」 講師 Tさん 講演内容 講演の前に、テレビで放映された録画の上映がありました。それは、Tさんの長男Nさんが第 13 回 ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで優勝。日本人初の快挙としてマスコミに取り上げられた ときの感動的な映像でした。その中でNさんは、「ここまでやってこられたのは母親Tさんの支えがあ ったからだ」といった趣旨のことを語っておられました。 講演者のTさんはフリーアナウンサーとして活躍後、産婦人科医と結婚。1988 年に長男Nさんを出 産。生後まもなく全盲と分かり、絶望と不安の中、育児書や子育てマニュアルがまったく役に立たない ところから、手探りで子育てをスタートされたとのことです。 そして、 「明るく、楽しく、あきらめない」をモットーにNさんを育てられたとのことです。常に子 どもの可能性を信じ、よく見てほめる「親ばか」の子育てで、生後 8 ヶ月で、Nさんの音楽の才能を見 つけ、プロのピアニストへと二人三脚で歩まれたそうです。その結果、2009 年 6 月、アメリカで開催 された第 13 回ヴァン・クライバーン国際ピアニストコンクールで、Nさん 20 歳のときに日本人初の優 勝を果たすといった、映像とも重なるような感動的な話でした。 Nさんの誕生は 1988 年、身長 48 センチの標準的な赤ちゃんだったそうです。生まれて 2 日後に初め て授乳されたときNさんは母親の前でいつも眠ったままだったそうです。「何で私の子だけはいつも眠 ったままなのだろう。早く起きてくれないかな。」と思われたそうです。このとき初めて心の片隅に黒 いインクを垂らしたようなNさんの眼に対する不安が芽生えてき、その不安は日々少しずつ大きくなっ ていったとのことでした。そして、Nさんの目に障害があるらしいと分かったとき、深い谷底に落とさ 1 れたようなショックを受けたとも。 「夢ならさめてほしい。」言葉では言いつくせない、心の傷を体の奥 深くに背負ったとのことでした。 その後、友人の励ましやTさんの実家の母親の家事の協力などに支えられて、持ち前の明るさや積極 さを取り戻しつつ、生きていく勇気や希望を回復されていったそうです。障害児教育のあり方にしても、 “障害児だから障害児らしく”ではなく、 “NさんだからNさんらしく”成長してほしい、 「他の子と比 べちゃいけない。発達は誰でも千差万別なのだから、NさんにはNさんなりに輝く日がきっとやってく る」と信じ、目の見えないNさんを育てられてきたそうです。 Nさん生後 8 ヶ月のとき、CD「プーニンの英雄ポロネーズ」を聴くと全身でリズムをとって襖を足 でパタパタと鳴らしているのに気づき、TさんはNさんが音楽に敏感なことを感じられたそうです。ま たNさんは生活の中の「音」に、異常なまでに敏感だったようです。掃除機や洗濯機の音がなり始める と火がついたように泣き出してしまうことがあったそうです。 「一つでもNさんに自信を持たせることをさせてやりたい」と、1 歳 5 ヶ月でピアノのレッスンを始 められたとのことです。K先生は優しい先生で、Nさんを膝に抱っこしながらピアノを弾いてくださっ たそうです。Nさんもピアノのレッスンをとても楽しみにされていたようです。 そして、Nさんが 2 歳 3 ヶ月のころ、Tさんがジングルベルをハミングしながら料理をされていたと き、Tさんのジングルベルに合わせて、ピアノの伴奏が隣の部屋から襖を隔てて聞こえてきたとのこと。 驚き、Nさんの部屋に駆け込むと、やはりNさんがカワイの白いおもちゃのピアノではっきりしたメロ ディーラインで弾いておられたとのことです。まだ言葉を発していなかったNさんが、ピアノで自己表 現されたとのことです。その時の感激が伝わる話しぶりでした。 Nさんの 4 歳のころ、サイパンに家族旅行され、ショッピングセンターに行かれたとき、そこにピア ノが置いてあり、頼んで弾かせてもらったところ、お店の人やお客さんがたくさん集まった中で「渚の アデリーヌ」を弾き終わると、 「ブラボー」と、驚きの声と拍手が湧きあがったとのことでした。その 時の聴衆を前にしてのピアノ演奏と歓声が「ピアニストになりたい」という気持ちを育くむ源になった とのことでした。 その後、本格的な先生に付いたほうがいいということで、週 2 回のK先生のレッスンが始まり、そし て、小学校 1 年生のとき、全日本盲学生音楽コンクールに出場し、1 位になったとのことでした。この コンクールは、年齢別になっていなくて、小学生から高校生までの盲学生が競い合うコンクールだった ようです。このときの経験はNさんの自信につながり、母親Tさんの「Nさんのピアノは本物だ」とい う確信が強まった出来事だったようです。 それから、Nさんはいろんなことにチャレンジすることが好きで、水泳にも興味があったそうです。 また、スキーや山遊びなど、 「怪我したらピアノが弾けなくなるからだめ」と先生から言われていたに もかかわらず、林間学校等の学校行事にも参加させたとのことです。音楽では、ピアノ以外にヴァイオ リンなどもやったとのことです。 ともあれ、TさんはNさんを育てるにあたって、Nさんの演奏に感動したらかならず、「すごくよか った」 「感動した」と言葉にし、褒めて育ててきたとのことです。子どもは親に褒めてもらいたいと思 っているとも語られました。上から目線でものを言わないこと、子どもが間違えたときには、褒めた後 に注意するようにしたとも述べられました。そして、誰よりもまず母親のTさんがNさんの最初にして 最高のファンでありたい、ほめてほめて褒めちぎることで親子二人三脚のテンションは盛り上がったと のことでした。 2 それから、Nさんの成長には指揮者S氏との出会いも大きかったようです。Nさんは当時 13 歳中学 1 年生のとき、Y交響楽団の演奏する「第九」の演奏後、楽屋を訪ねたTさんとNさんに対して、S氏は Nさんにピアノを弾かせたとのことです。そして、Nさんの奏でるピアノのそばで、S氏は涙を流して 感動されたとのことです。それが縁で、その後、海外での演奏会に共演者として誘ってくださったとの ことでした。 そして、Nさん 20 歳。アメリカ・テキサスで行われたヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール に出場。予選、本選と勝ち進んできて、Tさんは心の中でファイナリスト 6 名に残るのが目標だったよ うです。ところがなんとNさんは優勝。 語り口は穏やかでしたが、その話の内容はとても感動的でした。話の途中で、Nさんの父親のことも いくらか話されました。父親の支えも大きなものがあったのだと思われました。精神的にも経済的にも。 シェアリング・休憩 リレーメッセージ 「子どもの力、遊びの力、地域の力」~児童館現場発のメッセージ~ 杉並区/児童館・館長 S氏 神戸市/社会福祉協議会・主幹 O氏 京都市/児童館・館長 H氏 港区/中高生プラザ・館長 S氏 R大学/社会福祉学部・教授 O氏 厚生労働省/少子化対策室・室長 N氏 児童健全育成推進財団・理事長 S氏 ○ 進行;栃木県/小学校・校長 Y氏 <拾ったキーワード> ・ 要支援児童をほうっておくと要保護児童になる。 ・ 自分は(母に、親に、社会に)見捨てられた、ごみと同じと思うようになる。 ・ このような子どもと関わる人がサポートする必要がある。 ・ 子どもは大人を試している。 信頼できる大人との出会いが大切。 ・ いじめの加害者は、昔は被害者だった。 チームであたる。子どもに力をつける。 ・ 昔、 「親はなくても子は育つ」といわれた。現在、 「親がいても子は育たない」といわれる。 ・ 自分で、みんなで決めて、楽しく決める。社会を変える。 ・ ファミリーをしっかり支援。 コミュニティ、地域で支援。 FCTD ・ 子どもの貧困。 多様化する地域の福祉課題と児童館活動。 ・ 生活保護家庭の例、お金がないわけではないが、子どもの衣食住に回せない。母はごみ屋敷の中 に住んでいる。不登校の子どもを持つ。兄が母に暴力。 ・ 社会とのつながりが大切。それがないと貧困になる。 ・ 「努力」の文化が継続しない家庭、10 代で結婚する家庭に多い。 ・ 子育て支援プロデュース これが面白い!! ・ リバース機能 ネットワークプロデュース ・ 児童館の役割・・子育て支援。 エンパワーメント風土 子育つ、親育つ関係を結ぶ。 ・ 保護者・地域連携。 保護者支援地域連携と児童館。 ・ 保護者との信頼、難しくなってきている。 価値観が多様化している。 ・ 貧困・差別・・社会構造に問題・・格差社会。 ・ 親との関係をつなぐことが大切。 ・ 看板を掲げる以上価値ある活動を! 地域連携が不可欠。 「児童福祉」→「児童家庭福祉」に変わった。 地域のすべてが子どものエンジョイ。 CSKE 市の取り組みを児童館に依頼。 3 ・ オムツごみ袋配布(引換券) 譲ります 貰います。お買い物プロデュース エンパワーメント ・ コラボプログラム マタニティーとベビー マタニティー・ウォーキングプログラム ・ 現代の子育て「少子化」 「核家族化」 「都市化」が前提である。 ・ 問題が深刻化してから児童館に来る親がいる。 児童館は何しているところか分からない。 ・ 「健全育成」が児童館の役割。 「子育て」 「親育て」「地域育て」はつながっている。 ・ 「楽しむ」という視点で仕事をする。 児童館の問題、館長が替わると、7 割変わる。 ・ 仕事の仕方 1、レンガを積んでいる。 2、建築の仕事をしている。 3、大聖堂を作ってい る。 ・・・3 番でありたい。 夜 17:30~ 情報交換会 5、 【2日目】第 3 分科会 子育て支援 児童館・放課後児童クラブ ~地域における子育て支援の新しい潮流と児童館~ ゲストスピーカー A短期大学・准教授 K氏 京都市/児童館・館長 H氏 K氏のスピーチ 「児童館とこれからの子育て支援」 1990 年代から「少子化」「核家族化」「都市化」という言葉がよく使われていた。そのような社会状 況によって、現在の子育て家庭は苦しいから子育て支援が必要という考え方になっている。でも、現代 の保護者は「少子化」 「核家族化」 「都市化」のなかで子育てをするのが前提となっているので、そろそ ろそのような言い方はやめませんかとのことでした。 それに対して、すでに様々な専門家が様々な支援を行っており、そのことを保護者に伝え、より良い 子育て支援をしていくことが大事だろうとのことです。そして児童館もその一つであり、「健全育成」 を実現する子育て支援を模索していかなければならないとのことでした。どのように地域社会で児童館 の活動を広めるか、子育てに役立つ児童厚生員の専門性を追求していかなければならないとも述べてお られました。 H氏のスピーチ 「子育て支援プロデュース これがおもしろい!!」 ネットワーク編として、地域(小学校通学区域)の子育て支援のネットワークを構築するため、ネッ トワーク会議の開催をし、児童館ならではのプロデユースをしかけられたとのことです。 そして、プログラム編として、「子育て支援プロデュース これがおもしろい!!」と題して、児童 館の特性を子育て支援のベースに常に貼り付けてきたとのことでした。0 歳から 18 歳までのその可能 性を存分に引き出し、長期的、継続的な関わりが持てる福祉施設として、児童館の役割を発信すること が大事とのことです。 また、その活動の獲得目標はエンパワメント風土にあり、児童館のミッションの「要」となるウエル ヴィーイングと予防機能の「最大の戦力」の獲得にあるようです。そのため、「活かし種」を見つけて いくことが大切とのことです。活かし種として、「ランチタイム」「お買い物プロデュース」「コラボプ ログラム」などがあり、事業の連携と長期的・継続的な関わりが持てることを戦略にしてきたとのこと でした。 スピーチの後、児童館関係者、放課後児童クラブ関係者のいくつかの小グループに分かれて、意見交 換会がもたれました。その後、終了時間となり、主催者の挨拶があって、解散となりました。 4 2016 年 12 月 24 日作成 5
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