圧縮木材を活用した既存建物の耐震補強に関する研究

農林水産総合技術センター 木材研究所
担当:副所長 木質構造課長多田 敏宏
News Release
所長
高岡 満
電話:(直通)0766-56-2915
平成 28 年 12 月 19 日
圧縮木材を活用した既存建物の耐震補強に関する研究
木材研究所の最近の試験研究成果の中から最近話題の耐震補強に関する研究と
その実用化事例についてご案内します。
※裏面に発表内容の詳細を記載しています。
圧縮木材等を活用した
既存建物の耐震補強に関する研究
富山県
富山県農林水産総合技術センター 木材研究所
背景・目的
県内に多く残る「伝統的な木造建物」には、現在の耐震基準を満さず、中には中規模地震でも損
傷する可能性が指摘される建物も存在します。
これらの建物改修に多く用いられる耐震工法として、伝統的木造建築物に適した面格子壁があり
ますが、経年変化により格子間に隙間が生じるため初期剛性は低く評価されています。
本研究は、この面格子壁の欠点である「初期剛性」の低さを解決するため、木材の形状復元力を
利用した「圧縮木材」をあらかじめ格子壁の隙間に埋めることにより、変形初期から大変形領域に
わたり高い耐力を発揮する「耐震壁」の開発を行ったものです。
研究の成果
① 加熱圧縮した圧縮木材を、格子毎に設置した隙間に入れ、耐震性に優れた面格子壁を試作
しました(図1)。
② 試作した面格子壁の剛性を測定するため、壁せん断試験を実施したところ、圧縮木材を用い
ない面格子と比較し、高い初期剛性が得られました(図2)。
普通格子
耐震格子(圧縮木材)
図2 壁せん断試験
図1 面格子壁
成果の活用
① 構造計算を行った結果、平成28年度の護国神社大拝殿での耐震改修工事に使用することが
決定しました。
② 現在、県内建築事務所との共同研究により、圧縮木材のピースの量産製造条件及び品質管
理技術などを開発し、工事の施工指導を実施中。
護国神社大拝殿
一般的な面格子の施工事例(木材研究所)