4項目の有無にフォーカス デューデリジェンスの 目的と役割 実行に係る意思決定に先だって、そ 実務上、当事者によるM&A取引の 合には、 規模が小さい場合等を除き、 M&A取引を実行しようとする場 ることができると考えられる ⑷。 無について調査をすることと整理す つの考え方として、次の各事項の有 にあるが、より具体的にいえば、1 得る問題点や留意点を調査すること や留意点を調査することを目的とし た手続として、いわゆるデューデリ ⑴⑵ 。 ジェンス (以下、 「DD」 という) が実 行されることが一般的である DDにおける調査対象項目は、D Dの目的がM&A取引の実行に係る 意思決定に影響を与え得る問題点や 留 意 点 を 調 査 す る こ と に あ る た め、 自 ず と、 多 岐 に わ た る こ と が 多 い。 実 務 上 も、 法 務・ 財 務・ 税 務 等 ⑶の 各分野に応じて、それぞれの分野の 専門家によってチームを組成したう えで実施されることが一般的であ る。 このようなDDの目的を抽象的に いえば、前記のとおり、M&A取引 の実行に係る意思決定に影響を与え ⑴ 一般的には、買収案件の場合には、買収当事 者が買収対象会社または買収対象事業を対象 として実施し、統合案件の場合には、当事者双 方が相手方当事者を対象としてそれぞれ実施 している。 ⑵ DDは、M&A取引に係る社内の最終的な 意思決定 (典型的には、株式取得案件の場合に おける株式譲渡契約等の最終契約の締結承認 が挙げられる) をターゲットとして実施するこ とが一般的である。 他方、最終的な意思決定段 階でなくとも、たとえば、基本合意書の締結承 認等、 M&A取引に向けた具体的な協議・検討 を当事者間で進めることに係る意思決定を ⑷ M&A取引の実行に際して対応 が必要な事項 ⑶ M&A取引の実行後の事業遂行 に影響を与え得る事項 ⑵ 対象会社等の価値に影響を与え 得る事項 ⑴ M&A取引の実行の障害となる 事項 の意思決定に影響を与え得る問題点 第1章 ターゲットとして、 極めて重要な事項に絞った DDが先行して実施されることなどもある (こ のようなDDは、 最終的な意思決定をターゲッ トとして実施されるものとの比較から、「プレ デューデリジェンス」 などと言われることがあ る) 。 ⑶ 法務・財務・税務のほかにも、ビジネス・ 環境・不動産・人事・IT等、案件に応じて、 対象分野を細分化したうえで実施することも ある。 ⑷ 実務上は、次の⑴ないし⑷に掲げる各事項 以外にも、 M&A取引に係る対象会社または対 象事業 (以下、「対象会社等」 という) を把握する うえで有用な事項や、(対象会社等の価値に影 響を与え得る事項とまではいえないものの) 改 善すべき事項等のM&A取引の実行に係る意 思決定に影響を与え得る問題点や留意点とま ではいえない事項についても、 あわせて調査が 実施されていることも多い。 M&A取引の実行 の障害となる事項 たとえば、想定するM&A取引の 実 行 が 違 法 で あ る こ と な ど に よ り、 そ の 実 行 自 体 が 不 可 能 な 場 合 に は、 による対象会社に対する影響が甚大 であるために許容できない場合等も 同様である。また、想定するM&A 取 引 の 実 行 が 可 能 で あ る と し て も、 たとえば、その実行のために、所轄 官庁による許可の取得が必要となる 場合等、一定の要件を充足する必要 が あ る 場 合( こ の よ う な 要 件 を、 以 下、「実行要件」 という) には、当該M &A取引を実行するか否かの意思決 定に際しては、実行要件の充足可能 性や充足に必要な期間等を考慮する 必要がある。 このようなM&A取引の実行の障害 となる事 項 が ある場 合には、M&A 取 引 を 実 行 すべきか否か、実 行 する としても その方 法・スケジュールに直 結 する問 題 とな り 得るため、M&A 取 引の実 行の障 害 となる事 項の有 無 について調 査 することは、DDの必 要 最小限度の役割であるといえる。 対象会社等の価値 に影響を与え得る 事項 客観的に取引実行が不可能な場合に ムで実行することはできない。 また、 て、各 当 事 者は、対 象 会 社 等の価 値 とはいうまでもないが、その前提とし 当事者間の合意によって決められるこ M&A取 引の対 価は、最 終 的には、 加え、検出事項が当事者のポリシー 評 価 を 行い、当 該 価 値 評 価の結 果と 当該M&A取引をそのままのスキー として許容できない場合や検出事項 12 経理情報●2017.1.1(No.1467)
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