比 較 ス ポ ー ツ 論 ( 和 田 浩 一 、 2016.12.22) テーマ:比較史の方法と意味 ―― 比較スポーツ論とは 「私は新たな万能薬の発見者としてあなた方の前に立っているわけではなく……」 マ ル ク ・ ブ ロ ッ ク 『 比 較 史 の 方 法 』 1928、 p. 3. I.流行する「比較○○論」 1.比較史的方法 自 覚 的 行 使 : 19世 紀 中 葉 、 明 確 化 : 20世 紀 ※.依然として、「比較○○論」の自覚的考察が不足 2.一国・一地域的な視点 → 他国的・他地域的 = 国際関係的な関心 「比較+○○」 google. 政 治 学 、 制 度 論 、 組 織 論 、 文 学 、 文 化 論 、 文 明 論 、 言 語 学 、 社 会 論 、 環 境 論 amazon. 金 融 シ ス テ ム 論 、 技 術 論 、 経 営 論 、 経 済 発 展 論 、 行 政 制 度 論 、 思 想 論 、 社 会 論、食文化論、政治制度論、組織論、都市論、日本語論、福祉国家論、文化 論、文明論、野球選手論 大 学.比較文化学部・比較文化学類、比較文化学科、国際・比較法学科 II.「比較史」の目的と有効性 1.「比較史」の背景 1) 近 代 歴 史 学 : 歴 史 叙 述 → 実 証 主 義 歴 史 学 「 史 料 こ そ が α で あ り Ω で あ る 」 2) 近 代 学 問 の 専 門 化 : 歴 史 学 → 政 治 史 、 外 交 史 、 法 制 史 、 経 済 史 、 思 想 史 、 美 術 史 、 3) ニ ー チ ェ 「 歴 史 の 過 剰 は 生 を 阻 害 す る 」 ( 1874) スポーツ史…… 2.「比較史」の目的 1) 一 つ あ る い は そ れ 以 上 の 異 な る 社 会 状 況 か ら 、 一 見 し て よ く 似 て い る 現 象 を 選 び 、 2) そ れ ぞ れ の 発 展 の 道 筋 を 追 う こ と に よ っ て 、 そ れ ら の 現 象 の 類 似 点 と 相 違 点 を 確 定 し 、 3) さ ら に は そ の 類 似 や 相 違 が 生 じ た 理 由 を 説 明 す る こ と 。 3.「比較史」の有効性 1) 単 数 の 対 象 を 見 つ め て い る だ け で は 見 え て こ な い も の を 浮 か び 上 が ら せ る こ と 。 2) あ る 単 数 の 対 象 に 関 す る 通 念 を 他 者 と 比 較 す る こ と に よ っ て 再 検 討 ・ 相 対 化 す る こ と 。 ※.自国についてのみ研究する人 → 自国で何がユニークなのか言える? ↓ 日本における外国史の存在理由 : 日本(史)の理解の深化 1 参考.「比較経済史」 イギリス = 資本主義・近代化のモデル → 他国・他地域の近代化の測定 ↓ ・後進的な国・地域:近代化の遅れ・歪みの指弾、共通性の議論なし III.「比較史」の対象と方法 1.「比較(史)」の対象 対象を選択する基準:同質なるもの、類似したもの ・比較レベルを特定する配慮 → 石油:石炭(硬度×、エネルギー○) 2.「比較史」の二つの方法 1) 時 代 的 に も 地 理 的 に も 離 れ た 社 会 の 現 象 を 比 較 す る こ と 〈ギリシア・ローマ社会〉と〈現代の「原始」社会〉との対比 2) 時 代 的 に も 地 理 的 に も 近 い 社 会 の 現 象 を 比 較 す る こ と → 厳 密 な 意 味 で の 歴 史 の 領 域 〈日本:一言語、一国民、一国家〉と〈スイス:複数言語、一国民、一国家〉 cf.ド イ ツ 語 : ド イ ツ 連 邦 共 和 国 ・ ド イ ツ 民 主 共 和 国 ・ オ ー ス ト リ ア 共 和 国 ・現象の相互影響関係を探ったり、共通の起源に遡れる。 ・地理的に近く、同時代の社会の間の比較に最適。 ・なんらの共通性もないような歴史現象には適用しえない。 3.類似点と相違点の確定と解釈 比較的近い前後の時代・地域にあった現象 1) そ れ ら が 影 響 関 係 に あ る が ゆ え の 類 似 点 2) こ う し た 影 響 関 係 で は 説 明 で き な い 類 似 点 IV.「比較史」の意味 ―― 歴史家の言葉から 1.第一次世界大戦の交戦国 化 学:爆薬と毒ガスを提供 歴史学:大義名分、正当化の根拠あるいは弁解を提供 ↓ 批判的精神と公平さ( = 歴史学の本質)を喪失 ↓ 人 種 的 ・ 民 族 的 偏 見 ( ア ン リ ・ ピ レ ン ヌ 、 1923年 ) 2.国民の独創性と個性の理解 た だ 一 つ 、 比 較 と い う 方 法 の み ( ピ レ ン ヌ 、 1923年 ) 2 3.比較的方法 人種的・政治的・宗教的・民族的偏見を少なくする最も確実な方法 ( カ ー ル ト ン ・ J・ H・ ヘ ー ズ 、 1946年 ) 4.大学での学び = 受講生へのメッセージ 自分に関心のあるテーマ → 関連する図書を〈読む〉、授業を〈聴く〉。 ↓ 1) そ れ に 近 い 領 域 に つ い て も 〈 読 む ・ 聴 く 〉 。 2) 関 心 の あ る テ ー マ か ら 離 れ て い る 領 域 に つ い て も 〈 読 む ・ 聴 く 〉 。 ※.日本の政治のことだけを見るよりも、外国での政治の在り方も学んだ方が、両者 の長所や問題点、それらが生まれてきた状況などが相対的に見えてくる。 V.参考文献 1. マ ル ク ・ ブ ロ ッ ク 著 、 高 橋 清 徳 訳 『 比 較 史 の 方 法 』 創 文 社 、 1978年 2. 望 田 幸 男 「 比 較 史 の 方 法 と 意 味 : 体 験 か ら の 試 論 」 『 政 策 科 学 』 ( 立 命 館 大 学 ) 11(3) : 309-320, 2004年 3. 二 宮 宏 之 『 マ ル ク ・ ブ ロ ッ ク を 読 む 』 岩 波 書 店 、 2005年 □レポート課題 授業で取り上げられなかったテーマを設定し、スポーツの多様性や時間的・空間的な発 展 過 程 を 比 較 史 的 な 視 点 か ら 論 じ な さ い ( A4× 2枚 ) 。 レ ポ ー ト の 構 成 は 以 下 の と お り と する。 1. テ ー マ ← 自 分 で 決 め る 。 こ の テ ー マ に し た 理 由 と 目 的 ( = 問 い ) を 明 記 す る 。 2. 事 実 の 提 示 ← ど の 事 実 を ど こ か ら 引 用 し た の か が 分 か る よ う に す る 。 3. 考 察 ← 2で 提 示 し た 事 実 に 基 づ い て 考 察 す る 。 4. 結 論 ← 考 察 か ら 導 い た 結 論 = 目 的 ( 問 い ) の 答 え 5. 引 用 文 献 ← 最 低 1冊 は 本 を 読 む こ と 。 ○レポート発表会の日程 1月 19日 1月 26日 14AC009 15AB099 15CA133 16CA162 14AC022 15AC013 15CA139 16CA219 14AC056 15AC113 15CA168 14CA021 15CA034 15CA182 14CA062 15CA054 16BD005 14CA102 15CA063 16CA038 14CA229 15CA089 16CA066 15AB084 15CA129 16CA072 ★ 合理的な理由による発表日の変更を、12/22の《授業内のみ》受け付ける。 3
© Copyright 2024 ExpyDoc