緊急特集 第 2章 本家 ARM の IoT ワールド入門 ご購入はこちら IoT 時代のコンピュータ・テクノロジ・ダイジェスト ARM の IoT 開発ワールドの 基礎知識 mbed は ARM マイコンの試作などによく使われる 開発プラットフォームです.ここでは,ARM の IoT 開発プラットフォームとしてさまざまな側面を持った mbed の世界を中心に解説していきます. ARM マイコン定番開発環境 mbed の IoT 向けの取り組み mbed は,ARM 社が提供しているマイコン開発プ ラットフォームで,IoT 開発向けに進化中です.主に Cortex-M シリーズのプロセッサ・コアを使用したマ イコンの開発ボードや開発環境,ライブラリ,クラウ ド接続サービスなどで構成されています. mbed は,ARM 社と半導体パートナ企業およびコ ミュニティによって開発が行われています.mbed 対 応ボードを持っていれば,無償で開発環境を利用する ことが可能です. ユーザ登録や開発環境を使用する場合には,特に登 録費用などは発生しません.E-mail アカウントさえあ れば誰でもユーザ登録が可能です. mbed 対応ボードは,多種のマイコン(MCU)を搭載 したタイプが各社から安価に提供されており,入手も 容易です.半導体ベンダやボード・ベンダからさまざ まな仕様・形状のボードが販売されています.定番の 拡張インターフェースである,お手軽マイコン基板 Arduino Uno R3 の拡張シールドが使用可能な形状の ボードや,ブレッドボードに直接挿入してプロトタイ ピング開発が行いやすい形状のボードなどがあります. 2016 年 10 月に米国サンタクララで開催された ARM イベント ARM TechCon や mbed Connect において, クラウド・サービス mbed Cloud が発表され,IoT デバ イス側だけではなく,サーバ側のプロビジョニングや アップデート・サービスを含んだ統合的なソリュー ションがアナウンスされました.mbed Cloud は,現時 注 1:従 来の mbed 2 では, “mbed”という名称のライブラリが リンクされていましたが,mbed OS 5 で動作しているプロ グラムには, “mbed-os”という名称のライブラリが使われ ます. 2017 年 2 月号 渡會 豊政 点では限定されたパートナのみに提供されています. ARM の IoT 向け開発環境 「mbed OS 5」 ● OS と付いているけど OS だけのことじゃない 2016 年 8 月に開発者向けに mbed OS 5 が正式に発 表され,最初のバージョン 5.1.0 がリリースされまし た.従来までの mbed 2.0 で提供されていたオンライ ン・コンパイラやプラットフォーム間で高いポータビ リティのある各種ライブラリはそのまま使えるように しつつ,セキュリティやコネクティビティの拡張が行 われました.開発用ツールなども拡充されました. ● 従来の mbed とはほぼほぼ互換性がある mbed 2.0 は,マイコンの複雑な周辺モジュールや 割り込みなどを高度に隠ぺいしたハードウェア抽象化 レイヤ(Hardware Abstraction Layer:HAL)の API を提供し,半導体パートナ企業によってこのレイヤ下 のターゲット依存部分の実装が行われています.ま た,ターゲット・デバイス上で動作するほとんどのソ フトウェアはオープンソース化され,誰でも利用した り修正したりすることができます. プロトタイピング目的の場合は,これらの基本 API のみで十分だったのですが,セキュリティやコネク ティビティ機能が必要な IoT デバイスを開発する場合 には,不十分でした.それらのコンポーネントを標準 でサポートするために mbed OS 3 が開発されました. mbed OS 3 で 開 発 さ れ た 成 果 物 は,Technology preview としてリリースされ,さまざまなフィード バ ッ ク を 反 映 し, 従 来 ま で の mbed OS 2 と 新 し い mbed OS 3 の新機能を組み合わせて mbed OS 5 がリ リースされました(図 1).バージョン番号が 4 でなく 5 なのは, 「2 + 3 = 5」という意味です. mbed OS 5 で使用している HAL の部分は,mbed OS 2 と共用したコードベースになっています.API も共通になっているので,mbed OS 2 用に開発した ライブラリやアプリケーションを移行することも簡単 です注 1. 17
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