あの日の勇気

第36回全国中学生人権作文コンテスト愛知県大会愛知県教育委員会賞
あの日の勇気
碧南市立南中学校2年
磯貝実香
テレビや新聞からたびたび伝えられているいじめの問題。私は,自分には関わりのない
ものだと思っていました。でも,中学一年生になって,その考えは変わりました。
中学校生活にも慣れ,部活動が始まったある日のことでした。私は運動部に所属してお
り,いつものように体操をし,アップをしている時でした。一人の子が私の方をみながら
隣にいる子にひそひそと何かを話し,くすくすと笑っていました。そのことをきっかけに
その日は一日中,私に聞こえるように私の悪口を言ったり,私と一緒にいる子を呼び,私
を一人にしたりということがありました。私は,ちょっとした悪口には耐えることができ
ましたが,
「顔も見たくない。」
そう言われたときには,涙があふれてしまいそうでした。私は,「『顔も見たくない』と
言われてしまうような事をしたのかなぁ。もししていたらちゃんと謝ろう。」と思い,原
因を考えました。でも,心当たりはなく,ただただこれからの日々に不安をつのらせまし
た。私はこれからこんな毎日が続くのかと考えると,「そんなのは,絶対にいやだ。せめ
て今日だけにしよう。」そんな思いがうまれました。私は,「ちゃんと面と向かって,『や
めて』と言おう。そうしたら何か変わるかもしれない。」そう思いました。そして,部活
が終わった後に,私に悪口を言っていた子を見つけて,こう言いました。
「私に対して,私の悪口を言うのはやめて。」
私はすごくこわかったし,緊張して体じゅうが震えていました。どんな言葉がかえってく
るかもわからず混乱していると,
「は?」
その一文字がかえってきました。「あぁ,また明日からもいじめられるんだなぁ」そう思い
ました。私はそのときこわくてこわくてたまらなかったです。
家にかえって,私はその日にあった出来事を,泣きながらお母さんにすべて話しました。
お母さんは私に,
「よくがんばったね。えらいね。」
と言いながら,頭をなでて,ぎゅっとだきしめてくれました。私はお母さんの言葉で余計
に涙がでました。「私は,もう一人じゃないんだ。家族がついていてくれる。」そう思うと,
心がふわりと軽くなりました。それからお母さんは,顧問の先生に相談してくれました。
そのおかげで顧問の先生は私に気にかけてくれるようになり,私は安心できるようになり
ました。それでもやっぱり
「やめて」
と言った後のあの返事は忘れられなくて次の日がこわかったです。でも,やっぱり効果は
ありました。次の日からは私はいじめられなくなりました。「本当に本当に良かった。」と
思いました。あの勇気がなかったら私はまだいじめられていたかもしれません。そして,
あの「やめて」と言った勇気がとても良い出来事をおこしました。
私が「やめて」と言ったあのとき,近くできいていた子が数日後に,
「あの時,すごいかっこよかったよ。私,感動した。」
と言ってくれました。私はすごくうれしかったです。そして言ってくれた子と私には共通
点がありました。それは,「二人ともいじめられていた」ということです。だからその子に
は,余計にかっこよくみえたそうです。
それから私たちは何でも言い合える友達になりました。つらいことや不安な事も相談で
きる仲になりました。あの,「やめて」の勇気がなければこうはならなかったと思います。
今では,私をいじめてくれた子に感謝をしています。なぜなら,いろいろな勇気を学ば
させてくれたからです。「やめて」としっかり言う勇気,両親に相談する勇気,先生に相談
する勇気,本当にいろいろな勇気を私にくれた気がします。
今,あなたはいじめていませんか?いじめられていませんか?いじめはとても卑劣で卑
怯なことです。ほんの少しでも,あなたが勇気を出せば,いじめは無くなると思います。
いじめられている人,絶対に自分から逃げないで下さい。絶対に負けないで下さい。ほ
んの少しでいいから,勇気を出し,立ち向かって下さい。もしも無理だと思ったら両親の
方,友人,だれでもいいので相談できる相手を見つけて下さい。きっとあなたの味方にな
ってくれます。
勇気とは,恐怖,不安などを恐れず自分の信念を貫き向かっていく積極的で強い心意気
のことです。勇気は簡単に出せるものではありません。それでも立ち向かう心があれば勇
気は出せると思います。
私は,いつかこの世界が温かい笑顔であふれるのを祈っています。