核酸医薬品における非臨床 安全性試験実施の留意点 医薬品医療機器総合機構 笛木 修 はじめに 2 本発表は発表者の個人的見解に基づくものであり、 独立行政法人医薬品医療機器総合機構の公式見 解を示すものではありません。 また、本発表について、開示すべきCOIはありませ ん。 核酸医薬品に必要な非臨床安全性試験 3 単回投与毒性試験 反復投与毒性試験 遺伝毒性試験 がん原性試験 生殖発生毒性試験 局所刺激性試験 安全性薬理試験 その他の毒性試験 参照すべきガイドライン 4 ICH S6(R1):バイオテクノロジー応用医薬品の非臨 床における安全性評価 ガイドラインに示される原則はオリゴヌクレオチド製 剤にも適用されうる ICH M3(R2):医薬品の臨床試験及び製造販売承 認申請のための非臨床安全性試験の実施につい てのガイダンス 必要に応じ、S1(がん原性)、S3(TK)、S4(毒性試 験法)、S5(生殖発生毒性)、S7(安全性薬理)、S9 (抗がん剤開発)等も参照 核酸医薬品による作用と動物種の選択 核酸医薬品 核酸成分に由来 核酸成分以外に由来 (化学物質など) ハイブリダイゼーションに起因 標的配列への ハイブリダイゼーション オンターゲット 毒性 薬理作用を示す動物種を選択 (サロゲートの利用やノックアウト動物の 情報も考慮) ハイブリダイゼーションに起因しない 標的以外の配列への ハイブリダイゼーション 狭義の オフターゲット毒性 オフターゲット毒性 ・ ・ ・ ・ 動物試験で 評価困難 標準的な動物種を選択 (In silico解析や マイクロアレイ解析) (げっ歯類及び非げっ歯類) 5 単回投与毒性試験 6 用量漸増試験や反復投与毒性試験から急性毒性 に関する情報が得られれば、独立した試験は不 要 核酸医薬の毒性の低さを考慮すると、反復投与毒性 試験成績から読み込める可能性は高いと考える。 反復投与毒性試験 7 動物種:2種(げっ歯類、非げっ歯類)←オフターゲット 毒性を考慮 動物数:ICH S4(げっ歯類10例/群、非げっ歯類3例/ 群) 投与期間: ICH M3(R2) 投与量:ICH M3(R2)(曝露の飽和、投与可能最大量、 最大耐量、臨床曝露の50倍、1000mg/kg/日) ただし、クラスエフェクト等に関する今後の情報の蓄積に より、上限の見直しは考慮しうる オンターゲット毒性については検出困難であることが 多く、必要に応じてサロゲートの使用を考慮する 局所刺激性の評価や安全性薬理試験の項目を組み 込むことも可能 遺伝毒性試験 8 ICH S2(R1)ガイドラインに従った評価を実施 修飾核酸の代謝物等に起因する遺伝毒性 (核酸アナログ様の作用)を考慮する 三重鎖形成に起因する遺伝毒性の発現も考 慮する 膜透過性向上等のDDSを行っている場合、 製剤としての試験実施も考慮する 将来的には核酸医薬品に最適化した遺伝毒 性評価法自体の開発も必要かもしれない Triplex(三重鎖)構造 がん原性試験 9 試験実施の要否についてはICH S1Aガイドライン を考慮 低分子医薬品で従来行われているがん原性試験 と同様の試験系を用いる 修飾核酸における情報が蓄積されることにより、 将来的には評価手法等を含めた変更もありうる 生殖発生毒性試験 10 基本的にICH S5(R2)ガイドラインに準拠 バイオ医薬品と異なり、胎盤通過能に関する情報 が重要 人工核酸モノマーのDNAへの取り込み等の影響 も考慮する 各試験の実施タイミング 11 被験者の安全性を確保するために、適切な時期に適切な安全性評価が 行われなければならない 「医薬品の臨床試験及び製造販売承認申請のための非臨床安全性試 験実施についてのガイダンス(ICH M3 R2)」に準拠する 生殖発生毒性試験(妊娠可能な女性組み入れ前) 遺伝毒性試験(in vitro) 急性毒性の評価 局所刺激性試験 遺伝毒性試験 がん原性試験 (in vivo) 非臨床 試験 Phase I Phase II Phase III 臨床試験期間に応じた適切な期間の反復投与毒性試験 審 査 市 販 後 まとめ 12 S6ガイドラインが参考になるとされているが、バイオ 医薬品と異なり、オフターゲット毒性の検出が重要 であることを考慮すると、基本的に低分子医薬品と 同様の安全性試験が必要と考えられる。ただし、今 後のデータの蓄積によって、核酸医薬独自の安全 性評価パッケージを構築しうるものと考えられる。 開発に際しては、PMDAにおける相談等を活用して 頂きたい。
© Copyright 2024 ExpyDoc