プレスリリース

【発信】国立大学法人
富山大学総務部広報課
News Release
(TEL)076-445-6028
(FAX)076-445-6063
報道解禁時間
平成 28 年 12 月 9 日(金)午前 4:00(日本時間)
平成 28 年 12 月 7 日
報 道 機 関
各位
生命の起源における新たな機構を証明
フランス ESPCI Paris の Andrew Griffiths 教授および富山大学大学院理工学研究
部(理学)テニュアトラック教員の松村茂祥 助教らの研究グループは、生命の起源
における RNA 進化の新たな機構を提唱し、実験・理論で証明しました。生命の初期
進化におけるパラドックスの一つが最先端技術を用いた実験により解き明かされ、
また、RNA の新たな進化モデルの確立・理解に繋がることが期待されます。この成果
は、12 月 9 日付けで、米科学誌 Science にて発表されます。
本件につきまして、下記の通り記者会見を行いますので、取材・報道方よろしく
お取りはからい願います。
なお、本研究成果の取り扱いについては、解禁時間以降でお願い申し上げます。
記
1. 発表内容
別紙資料のとおり
2. 報道解禁時間
平成 28 年 12 月 9 日(金) 午前 4:00(日本時間)
※本件の取り扱いについては、上記解禁時間以降でお願い申し上げます。
3. 会見日時
日時
平成 28 年 12 月 9 日(金)15:00~
場所
富山大学五福キャンパス 災害対策プラザ 2 階
会見者 松村 茂祥(富山大学大学院理工学研究部(理学)助教)
【本件に関する問い合わせ先】
松村 茂祥 富山大学 大学院理工学研究部(理学) 助教
〒930-8555 富山県富山市五福 3190
TEL 076-445-6640 / FAX 076-445-6549(学科共通)
E-mail: [email protected]
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報道解禁時間
平成 28 年 12 月 9 日(金)午前 4:00(日本時間)
別紙資料
1. 発表のポイント
·
時限的区画化(Transient Compartmentalization, TC)という新たな RNA 進化
モデルを提唱
·
液滴マイクロ流体システムを用いて、上記モデルを実験的に検証
·
時限的区画化により、触媒 RNA がパラサイトによる絶滅を免れることを実験に
より証明
·
時限的区画化により、異種 RNA の複製速度が同調することや、RNA の配列多様性
が自発的に増大する現象を発見
2. 研究の概要
生命の起源は、科学における最も根源的なテーマの一つです。なぜなら、これは
単純な過去の問題だけではなく、
「生命とは何か?」という本質を理解することに他
ならないからです。近年の技術発達により、この問題に対して、実験を通してアプ
ローチすることが可能になってきています。生命の起源を説明する最もよく知られ
た考え方の一つに、
「RNA ワールド仮説」があります。これは、RNA という分子が、
単純なものからより複雑で高機能なものへと進化する過程で、生命が生まれた、と
する仮説です。では、このような進化はどのようにして起こったのでしょうか?
RNA は自分のコピーを作る能力をもつ分子です。このような分子の「増える」能力
は、その分子の複雑度に応じて変わってきます。つまり、単純な分子は増えるのが
速く、複雑な分子は増えるのが遅くなります。すなわち、複雑(=高機能)な分子
は、単純な分子(パラサイト)との競争では不利であり、進化することができませ
ん。この状況を解決するには、RNA を複製増殖する原始
的細胞(図 1)の中に入れ、その細胞ごと進化させる必
要があることが、これまで提唱されてきました。しかし、
細胞の増殖が適切に行われるには、その内部に高機能な
(すでに進化した)RNA が必要であるというパラ
ドックスが生じます。
図 1: 複製増殖する原始的細胞
Andrew Griffiths 教授および松村茂祥助教らの研究グループは、この問題点を解
決するため、時限的区画化(Transient Compartmentalization, TC、図 2)という新
たな RNA 進化モデルを提唱し、実験的に証明しました。このモデルでは、RNA が膜・
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区画の中に封入された後、それが分
裂・増殖することはなく、膜が再び
融合し内部の RNA が混合された後、
再び区画化されるというサイクル
を繰り返します。すなわち、RNA の
膜内への封入が一時的にのみ行わ
れるモデルです。このモデルを実験
的に検証するため、微小液滴を操作
する「液滴マイクロ流体システム」
技術を用いて触媒 RNA を膜内に封
入する図 3 のような実験系を構築し、
図 2: 時限的区画化(TC)モデル
RNA の進化実験を行った結果、時限
的区画化により、触媒 RNA がパラサ
イト(単純 RNA)による駆逐を免れ
ることを証明しました。また、時限
的区画化により、異種 RNA の複製速
度が同調することや、RNA の配列多
様性が自発的に増大する現象が見
出されました。
これらの結果は、
·
複製増殖する原始的細胞を想
定しなくても、さらに単純な時
限的区画化現象(エアロゾルや
図 3: 本研究の RNA 進化実験
岩石上の微小孔など)により生命の
初期進化は可能であること
·
時限的区画化により異種 RNA の共存や RNA の多様性が増大することが、次のス
テージへの進化の原動力となり得ること
を示唆するものであり、生命初期進化のメカニズムに新たな観点を提供する、非常
に画期的な成果です。
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3. 発表論文
雑誌名
Science
論文名
Transient compartmentalization of RNA replicators prevents extinction due to
parasites
(RNA 複製体の時限的な区画化は寄生体による絶滅を防ぐ)
著者
Shigeyoshi Matsumura, Adam Kun, Michael Ryckelynck, Faith Coldren, Andras
Szilagyi, Fabrice Jossinet, Christian Rick, Philippe Nghe, Eors Szathmary,
Andrew Griffiths
(松村 茂祥、クン アダム、リケリンク ミカエル、コールドレン フェイス、シラ
ーギ アンドラス、ジョシネ ファブリス、リック クリスティオン、エンゲ フィリ
ップ、サトゥマリ エオルシュ、グリフィス アンドリュー)
DOI 番号:10.1126/science.aag1582
4. 本研究成果の問い合わせ先
松村 茂祥 富山大学大学院理工学研究部(理学) 助教
〒930-8555 富山県富山市五福 3190
TEL 076-445-6640 / FAX 076-445-6549(学科共通)
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