2 下津町管内データの分析結果 (1)調査事業所の分析概要 下津町管内では、503 の事業所から回答が得られた。503 の事業所について、業種ごとに分類した結果 は表 1 に示した。内訳は、工業系事業所 104、商業系事業所 107、サービス業系事業所 185、業種不明の 事業所 107 となっている。 また、中分類別に示した分類は、図のようになり、小売業、建設業とその他 のサービス業の比率が高くなっている。 表1 製造業 7.6% 調査事業所の概要(2016 年) 事業所種別 事業所数 参照 104 工業系 商業系 107 サービス業系 185 N。A。 107 合計 503 小売業 24.0% 専門サービ ス業(士 業) その他 3.3% 11.6% その他サー ビス業 18.7% 医療・福祉 3.0% 建設業 18.7% 飲食業・宿 運輸業 泊業 3.0% 7.1% 卸売業 3.0% (資料:企業・事業所調査) (2)事業所の属性 下津町管内の事業所について、設立形態を図 1-3-1 に示した。 その他 1.8% 有限会社 11% 株式会社 15% 1-3-1 個人 72% 小売業が多いことから、個人事業所が多数を占めている。事業規模・従業者規模も一般に小さく、年 間の売上高は 1 千万円未満、販売先も県内の消費者・事業所向けで 8 割を占める(図 1-5-1、1-6-1) 。 海外(一般 消費者・事 業所) 0.3% その他 2.7% 国内事業所 (県外) 7.5% 1-5-1 国内事業所 (県内) 14.2% 国内一般消 費者(県 内) 71.8% 国内一般消 費者(県 外) 3.5% ~1億 円未満 5.4% ~5億 円以上 3.6% 1千万 未満 53.6% 1-6-1 ~5千 万未満 28.6% ~5億 円未満 8.9% 経営者の属性を検討すると、50 歳以上の経営者が 9 割弱を占め、経営者の高齢化が著しいことがわか る。海南管内と比較すると、若年の経営者がわずかであり、今後予想される高齢経営者の引退を補うだ けのボリュームには達しない。性別は男性が 84%を占めており、女性経営者は美容院等の一部業種を除 けばやはり多くない。事業承継 について分析すると、事業を受け継ぐ人材に関して決定している事業所 は 25%に過ぎない。決まっている事業者に承継する人材を質問したところ、その 95%が「子」と回答 し ている(図 1-7-1、1-7-2、表 1-9-1、 1-9-2)。 ~30 歳未 満 0.8% 1-7-1 70歳 以上 29.5% ~70 歳未 満 32.5% ~40 歳未 ~50 満 歳未 3.0% 満 11.6% ~60 歳未 満 22.7% 1-7-2 女性 16.1% 男性 83.9% このことから、下津町管内の事業者の多数は高齢であるものの、事業を承継させるべき人材がなく、 事業の存続が危ぶまれる事業所が多数を占めている。それを反映して、人材採用の予定について質問し ても、採用の「予定なし」と回答する企業が 75%となっている。採用を予定している場合でも、パート もしくは中途採用を検討しており、新卒採用を検討する企業は 5%にすぎない(表 1-10-1)。 (3)景況 景況感について検討すると、売上・利益は前期比、前年同期比とも「横ばい」・「減少」と回答する事 業所が同程度となる。採算状況としては、 「トントン」と回答する事業所が 6 割を占めているが、 「赤字」 と回答する事業所も 27%あり、厳しい経営状況が窺い知れる。現状の景気動向としても「悪化」もしく は「横ばい」と回答する事業所が多く、政府の進めるいわゆるアベノミクスの好循環の影響を感じるこ とはできない。今後の景況感をたずねたところ、 「悪化」 ・ 「横ばい」で 98%を占める。海外の先行き不安 から、国内景況にも不透明感が増しており、特に小売業が多い下津管内では深刻度が増している。資金 繰りに関しては、普通と回答する企業が 7 割を占めるものの、3 割の事業所が「苦しい」と回答しており、 海南管内同様に事業の存続が危ぶまれる事業所が一定数存在しているといえる(図 2-1-1-1〜2-1-7) 。 増 11.3% 2-1-1-1 売上・前期比 増 8.9% 2-1-1-2 売上・前年比 横 45.3% 減 47.0% 減 43.3% 増 7.0% 2-1-2-2 利益・前年比 減 49.6% 好転 1.3% 横ば い 53.8 % 横 44.1% 横 43.4% 赤字 27.1 % 黒字 15.1 % 2-1-6 苦し い 29.2 % 悪化 44.8 % 普通 68.7 % 2-1-4 好転 1.6% 横ば い 54.6 % 楽 2.1% 横 45.3% 減 45.6% 2-1-3 収支 トン トン 57.8 % 2-1-5 増 9.1% 2-1-2-1 利益・前期比 悪化 4.9% 悪化 43.8 % 2-1-7 変化 なし 92.6% 好転 2.5% 売上の増減とその要因についてたずねた(表 2-2、2-3) 。 上が増加したと回答した企業がその理由としてあげた上位 3 要因は、 「営業力の強化・拡大(27.0%)」、 「技術力・サービスの強化(10.1%)」 、 「新規販路・新分野の開拓(9.4%)」である。下津町管内においても、 やはり企業の自助努力に基づく項目が回答される傾向がある。 売上が減少したと回答した事業所が挙げる主要 3 要因は、 「国内需要の減少(46.9%)」 、 「他社との競合状 態の悪化(20.4%)」 、 「販売・受注価格の減少(12.8%)」である。下津町管内において特徴的な回答には、 「公 共事業の削減(4.7%)」がある。建設業が比較的大きな比率を占めるためである。未だ、地方経済の大きな 部分を建設業が占めることがここからも明らかとなる。 (4)経営上の課題とその対応 経営上の課題についてたずねた(表 3-1)。 企業が挙げる 3 つの課題としては、 「民間需要の停滞(32.1%)」 、 「仕入れ単価の上昇・高止まり(13.4%)」 、 「税金・公共料金負担の増加(10.1%)」がある。これらに次ぐものとして、 「間接経費の増加(7.8%)」、 「新 規参入者の拡大による競争激化(5.8%)」と経費負担の増加、競争による収入源が挙げられている。 これらの課題に対応するための、今後の取り組みについてもたずねた(表 3-2) 。 上位 3 位までの対応としては、 「営業力の拡大(20.5%)」、 「経費節減(17.4%)」 、「取引先・消費者ニーズ の把握(8.7%)」が挙げられている。これら以外に、 「技術力の強化(8.1%)」 、 「人材の採用(6.0%)」などが挙 げられている。一方、下津町管内では、海南管内と比較すると、 「廃業(8.5%)」を回答する事業者が多い ことが特徴といえる。 これらのことから、民間需要の停滞に対応するべく、営業力を拡大し、顧客ニーズを把握して対応し ようとする姿がうかがえる。しかしながら、厳しい経済環境の中で、経費節減を図っているものの、そ の努力も限界に達しており、廃業を選択せざるを得ない事業者が増加しているといえよう。当然ながら、 その意向を反映して、投資計画は 88.3%の事業者が「ない」と回答している(図 3-3) 。 今期中に ある(1年 以内) 3.0% 検討中 8.7% 3-3 投資計画 ない 88.3% 今後有望と考えられる業種・業態についてもきいた(表 3-6-1、3-6-2) 。業種としては「サービス業(46.8%)」、 「建設業(17.6%)」 、 「飲食・宿泊業(11.6%)」が、業態としては「地元密着(33.3%)」 、 「オンリーワン(25.8%)」、 「専門性重視(18.7%)」が多数を占めた。建設業があげられているのが特徴的であるが、国土強靱化等諸 施策を当て込んだものと考えられる。 (5)産業支援のあり方 産業支援について、経営革新(4-1-1)、販路拡大(4-1-2)、そして開発(4-1-3)の各領域で、連携先がどこか をたずねた。 民間コ ンサル タント 1.6% 税理士 等 31.1% その他 6.6% 民間コ ンサル タント 4.4% 金融機 関 行政 3.5% 機関 1.9% 商工 会・商 工会議 所 55.3% 商工 会・商 工会議 所 51.5% 4-1-2 4-1-1 4-1-3 広告代 理店・ 商社 4.8% その他 22.3% 産業 行政 団体 機関 等 9.2% 7.9% 大学等 研究機 関 1.3% 商工 会・商 その他 工会議 29.7% 所 46.2% 産業振 興財団 5.7% 工技セ ンター 行政 5.1% 機関 12.0% 特徴的なものとしては、いずれの連携先でも「商工会・商工会議所」が最多となっている。この結果 から判断するに、下津管内の事業者は小売業など小規模事業所が多いことから、あらゆる相談事を商工 会に持ち込んでいることがわかる。ただし、この数値から規模の大小にかかわらず、連携先と選択され ているので、身近な相談相手として商工会が信頼されている様子が伺い知れる。 次に、市が提供する事業所支援政策メニューについて、それぞれの満足度を調査した。4-2-1〜4-2-5 は それぞれ、設備投資支援、新商品開発投資支援、商店街活性化支援、経営安定化支援(利子補給)、そし て雇用支援である。 やや 満足 不満 3.0% 1.5% 4-2-1 やや 満足 3.9% やや 不満 1.8% 満足 1.5% 4-2-2 知ら ない 不満 57.9 0.9% % 満足 5.1% 普通 32.4 % 不満 2.4% 4-2-4 満足 1.2% やや やや 不満 満足 1.8% 4.5% 知ら ない 64.5 % 満足 1.5% 4-2-5 やや やや 不満 3.0% 満足 1.2% 普通 32.3 % 知ら ない 53.8 % 不満 0.9% 4-2-3 やや やや 不満 満足 2.1% 3.0% 普通 30.0 % 普通 28.1 % 普通 32.5 % 不満 1.2% やや 満足 3.1% 知ら ない 61.0 % 不満 3.3% 知ら ない 60.4 % 各項目において、最多の回答率を占めるのは「知らない」である。下津管内においても、海南管内同 様に市が実施している政策は、半数以上の事業所において認知されていないことになる。 利用している、もしくは知っている事業所からの評価としては、 「普通」と回答される事例が海南管内 と同じように多数を占め、政策自体の不満は大きくないようにみえる。 前項と同様に、商工会議所・商工会が実施する指導等に関して、満足度を調査した。以下、4-3-1〜4-3-5 は、それぞれ巡回・窓口指導、セミナー・講習会の実施、記帳・税務指導、金融斡旋、そして保険・共 済代行である。 満足 25.1 % 4-3-1 やや 不満 0.7% やや 満足 9.7% 4-3-2 満足 やや やや 14.0 不満 満足 % 3% 7.4% 不満 0.4% 不満 0.7% 普通 75.7 % 普通 63.8 % 4-3-4 やや やや 満足 不満 10.4 0.4% % 不満 満足 2% 20.8 % やや 満足 不満 29.1 0.8% % やや 不満 満足 1.2% 26.2 % 普通 66.0 % 4-3-5 4-3-3 やや 満足 不満 8.3% 0.8% 普通 61.1 % やや 満足 8.5% 不満 0.4% 普通 63.8 % 評価は「普通」が 7 割超となり、会員は概ね評価している結果となった。加えて、海南管内と比較す ると、満足という回答が 3 割ほどを占めており、下津商工会の取り組みが高く評価されていると判断で きる。今後とも同じ水準でのサービス提供が継続されることが望ましい。 商工会議所・商工会が行う巡回相談に関して、6 項目から評価してもらった。4-4-1〜4-4-6 は、訪問頻 度、相談のしやすさ、情報の提供、関係団体との関係性、新設・丁寧、そして専門性・知識の各項であ る。いずれの項目とも、概ね普通以上の評価を得ている。また、訪問の頻度、相談のしやすさ、親切・ 丁寧さに関しては満足の数値も比較的大きい。ただし、情報の提供に関しては他の項目より相対的に満 足度が低く、工夫が必要であるといえよう。 やや 不満 1.3% 4-4-1 やや 満足 不満 8.4% 1.9% 満足 24.4% やや 不満 1.9% 不満 1.6% 満足 26.9% 普通 64.0% やや 不満 3.2% 満足 16.2% やや 満足 13.6% 4-4-2 4-4-4 4-4-3 やや 満足 7.4% 不満 2.1% やや 不満 1.3% 4-4-5 やや 満足 12.3% 普通 56.8% やや 満足 不満 8.4% 1.7% 満足 21.4% 普通 55.8% 満足 28.4% 普通 71.1% やや 不満 3.0% 普通 65.6% 不満 1.3% やや 不満 1.3% 4-4-6 やや 満足 不満 10.0% 1.7% 満足 20.7% 普通 66.2% 最後に、今後の市および商工会の施策に対する希望について質問している。この項目に関しては、海 南会議所同様に欠損値も多く満足な集計ができていない。しかしながら、いずれの設問においても回答 の多数を占めるのは「特になし」であった。付記されるコメントとしては「特に期待しない」など辛辣 なものもあり、市と事業者の間に信頼関係が希薄であることをうかがわせる記載がみられる。
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