企業・事業所実態調査の分析結果(海南管内)(PDF:1.5MB)

1
海南管内データの分析結果
(1)調査事業所の分析概要
海南管内では、現存する 1,826 事業所から回答が得られた。それらの事業所について、業種ごとに分類
した結果を同じく表1に示した。
中分類別の事業所数は 1-4-1 に示す通りであり、製造業・小売業の比率が高くなっている。
表1
調査事業所の概要(2016 年)
事業所種別
事業所数
工業系
410
商業系
416
サービス業系
731
参照
小売業
17.7%
卸売業
9.1%
その他
9.1%
1,826
合計
情報通
信業
0.4%
8.5%
269
N。A。
専門サー 1-4-1 運輸業
ビス業 業種
1.8%
(士業)
飲食業・
5.5%
宿泊業
7.7%
製造業
17.8%
建設業
(資料:企業・事業所調査)
その他
サービス
業
13.3%
医療・福
祉
9.2%
(2)事業所の属性
海南管内の事業所について、設立形態を図 1-3-1 に示した。
有限会
社
合資・
12.0%
合弁会
社
0.2%
1-3-1 その他
3.9%
株式会
社
26.6%
個人
57.3%
商業や地場産業の事業所が多いことから、個人事業所が多数を占めている。事業規模・従業者規模も
一般に小さく、年間の売上高は 5 千万円未満、販売先も県内の消費者・事業所向けが多数を占める。
(図
1-5-1、1-6-1)
その他
5.3%
国内事業
所(県
外)
8.2%
国内一般
消費者
(県外)
4.1%
国内事業
所(県
内)
23.2%
1-5-1
国内一般
消費者
(県内)
58.7%
海外(一
般消費
者・事業
所)
0.4%
~5億
1-6-1
円以上 年間売上高
7.9%
~1億
円未満
11.0%
~5億
円未満
14.7%
1千万
未満
38.4%
~5千
万未満
27.9%
経営者の属性を検討すると、50 歳以上の経営者が 3/4 を占め、経営者の高齢化が著しいことがわかる。
若年の経営者はわずかながらみれるが、6%程度であり、今後予想される高齢経営者の引退を補うだけの
ボリュームにはなっていない。
(図 1-7-1)
性別も男性が 85%を占めており、女性経営者は美容院等の一部業種を除けば多くない。事業承継につ
いて分析すると、事業を受け継ぐ人材に関して決定している事業所は 2 割に過ぎない。決まっている事
業者に承継する人材を質問したところ、その 85%が「子」と回答している。
(図 1-7-2)
~40歳
未満
5.5%
~30歳
未満
0.5%
1-7-1
事業主
~50歳未
満
14.3%
~60歳未
満
23.5%
20歳未満
0.2%
~70歳未
満
32.1%
1-7-2
事業主
女性
14.6%
男性
85.4%
70歳以上
23.9%
このことから、海南管内の事業者の多数は高齢であるものの、事業を承継させるべき人材がいない、
もしくは未定の状況にあり、事業の存続が危ぶまれる事業所が多数あると懸念される。それを反映して、
人材採用の予定について質問しても、採用の「予定なし」と回答する企業が 40%を超える。
採用を予定している場合でも、パートもしくは中途採用を検討しており、新卒採用を検討する企業は 1
割に満たない(表 1-9-1、1-9-2、1-10-1)
。
(3)景況
景況感について検討すると、売上・利益は前期比、前年同期比とも「減少」と回答する事業所が多数
を占める。採算状況としては、
「トントン」と回答する事業所が半数を占めているが、「赤字」と回答す
る事業所も 3 割あり、厳しい経営状況が窺い知れる。現状の景気動向としても「悪化」もしくは「横ば
い」と回答する事業所が多く、政府の進めるいわゆるアベノミクスの好循環の影響を感じることはでき
ない。今後の景況感をたずねたところ、
「悪化」・
「横ばい」で 96%を占める。新興国経済の停滞、Brexit
問題に象徴される欧州経済の先行き不安から、国内景況にも不透明感が増している。資金繰りに関して
は、普通と回答する企業が 6 割を占めるものの、3 割の事業所が「苦しい」と回答しており、事業の存続
が危ぶまれる事業所が一定数存在しているといえる(図 2-1-1-1〜2-1-7)
。
2-1-1-2
売上・前年比
2-1-1-1
売上・前期比
増
12.8%
減
50.2%
横
38.0%
2-1-2-2
利益・前年比
2-1-4景気動向
好転
3.7%
黒字
24.3%
減
52.5%
赤字
31.1%
好転 2-1-5次期景況感
4.0%
横ば
い
46.6%
減
53.0%
横
36.0%
2-1-3採算
増
10.0%
横
37.5%
増
11.0%
増
11.8%
減
50.5%
横
36.7%
2-1-2-1
利益・前期比
収支
トン
トン
44.6%
楽 2-1-6資金繰り 悪化
4.8%
0.1%
悪化
49.4%
横ば
い
46.2%
悪化
8.4%
悪化
50.0%
2-1-7銀行対応 好転
4.2%
苦し
い
33.3%
普通
61.8%
売上の増減とその要因についてたずねた(表 2-2、2-3)。
変化
なし
87.4%
売上が増加したと回答した企業がその理由としてあげた上位 3 要因は、
「営業力の強化・拡大(24.4%)」
、
「新規販路・新分野の開拓(13.5%)」、
「技術力・サービスの強化(11.7%)」である。ほかにも、「新商品・
サービス開発(6.5%)」や「コストダウン・生産性アップ(5.7%)」など、どちらかといえば企業の自助努力
に基づく項目が回答される傾向がある。
売上が減少したと回答した事業所が挙げる主要 3 要因は、
「国内需要の減少(38.4%)」
、
「販売・受注価格
の減少(20.3%)」
、
「他社との競合状態の悪化(18.4%)」である。ここから、地方の経済では、いまだデフレ、
停滞から脱し切れていないことがわかる。その環境下で、自社の存続を企図した企業間競争が激化して
いると考えられる。
(4)経営上の課題とその対応
経営上の課題についてたずねた(表 3-1)
。
企業が挙げる 3 つの課題としては、
「民間需要の停滞(17.9%)」
、
「仕入れ単価の上昇・高止まり(17.3%)」
、
「税金・公共料金負担の増加(13.7%)」がある。これらに次ぐものとして、
「従業員の確保(9.6%)」
、
「人件
費負担(7.0%)」と雇用にかかる課題が挙げられる。
これらの課題に対応するための、今後の取り組みについてもたずねた(表 3-2)
。
上位 3 位までの対応としては、
「営業力の拡大(15.1%)」、
「経費節減(10.9%)」
、「新規販路・新分野の開
拓(8.7%)」が挙げられている。これら以外に、
「技術力の強化(8.3%)」、
「新商品・サービスの開発(8.2%)」
などが挙げられている。
上記のことから、民間需要の停滞に対して、新商品や技術力に裏打ちされた販路の拡大を図ろうとし
ていることが理解できる。これは、先の売上増加の要因と類似している。その一方で、経費節減を図り
つつ従業員の確保をする必要性も生じている企業があることが垣間見える。
他方、今回の調査では厳しい経営状況の中で、
「廃業(4.9%)」を選択・希望する事業者が一定数いるこ
とが把握された。
今後の投資計画についてたずねてあるが、8 割の事業所が「ない」と回答している(図 3-3)
。
今期中にあ
る(1年以
内)
6.2%
3-3
投資計画
社員能力の
アップ
0.2%
検討中
12.1%
ない
81.6%
また、今後有望と考えられる業種・業態についてもきいた(表 3-6-1、3-6-2)
。業種としては「サービ
ス業(35.9%)」
、
「製造業(14.2%)」
、
「飲食・宿泊業(13.6%)」が、業態としては「オンリーワン(23.8%)」
、
「専
門性重視(22.2%)」
、
「地元密着(21.8%)」が多数を占めた。すなわち、これらの業態特性を兼ね備えたサー
ビス業が、最も有望と考えられている。
(5)産業支援のあり方
産業支援について、経営革新(4-1-1)、販路拡大(4-1-2)、そして開発(4-1-3)の各領域で、連携先がどこか
をたずねた。
民間コ
金融機ンサル
関 タント
9.0% 5.2%
商工
会・商
工会議
所
14.8%
4-1-1
行政機
関
3.9%
行政機
広告代 関
理店・ 9.9%
工技セン 産業振興
財団
ター
6.5%
8.5%
商社
10.8%
産業団
体等
11.2%
その他
15.9%
4-1-2
税理士
等
51.3%
商工
会・商
工会議
所
11.4%
その他
44.8%
民間コ
ンサル
タント
11.8%
商工会・
商工会議
所
10.7%
行政機関
11.2%
4-1-3
大学等研
究機関
3.1%
その他
59.8%
各事業所の連携先は多様であり、支社・支店・チェーン店等では本部など経営判断を下す組織が連携
先となる。特徴的なものとしては、経営革新の連携先で「税理士等」の士業が最多となっている。税務・
会計事務等の領域で日常的に取引があり、経営支援を受けているためと考えられる。販路拡大・開発で
は、それぞれ民間コンサルタント、行政機関が最多であるが、それ以下の項目と大きな差はない。この
同業
0.2%
結果から判断するに、海南管内の事業所は、現状においてはそれぞれ目的に応じて必要となる連携先と
結びついていると判断できる。なお、各項目において商工会議所は 2・3 位の回答となっているが、これ
は非会員が回答者の多数を占めるためである。
次に、市が提供する事業所支援政策メニューについて、それぞれの満足度を調査した。4-2-1〜4-2-5 は
それぞれ、設備投資支援、新商品開発投資支援、商店街活性化支援、経営安定化支援(利子補給)、そし
て雇用支援である。
やや不
満
3.8%
やや
満足
3.2%
満足
2.1%
4-2-1
4-2-2
やや
不満
不満
3.5%
3.6%
やや
満足
満足
4.1%
4.5%
普通
29.0%
普通
24.8%
知らな
い
59.0%
4-2-4
やや
不満
2.8%
不満
2.7%
知ら
ない
56.8%
4-2-3
満足
1.4%
不満
6.6%
不満
4.4%
普通
27.4%
やや
満足
2.4%
やや
不満
6.5%
やや
満足 満足
1.9% 1.0%
普通
23.3
%
知ら
ない
65.2%
やや 不満
不満 2.8%
3.3%
4-2-5
やや
満足
1.1%
知ら
ない
59.8%
満足
1.1%
普通
27.8%
知ら
ない
64.0%
各項目において、最多の回答率を占めるのは「知らない」である。つまり、市が実施している政策は、
半数以上の事業所において認知されていないことになる。業種ごとに支援内容に関わりのない政策も散
見されるが、市の政策が広く認知されることで、さらに政策メニューが周知される可能性も高いことか
ら、現状の周知方法には課題が大きいことがわかる。
なお、利用している、もしくは知っている事業所からの評価としては、
「普通」と回答される事例が多
数を占め、政策自体の不満は大きくないようにみえる。
前項と同様に、商工会議所・商工会が実施する指導等に関して、満足度を調査した。以下、4-3-1〜4-3-5
は、それぞれ巡回・窓口指導、セミナー・講習会の実施、記帳・税務指導、金融斡旋、そして保険・共
済代行である。
ア)単純集計した結果
やや
満足
3.3%
やや
不満
2.4%
4-3-1
不満
0.9%
満足
4.8%
普通
31.0%
やや
満足
満足
3.5%
4.8%
満足 やや
5.4% 不満
2.1%
やや
満足
6.9%
知ら
ない
57.6%
やや
不満
2.5%
やや
満足
3.5%
やや
不満
2.5%
満足
4.8%
普通
32.5%
4-3-3
普通
32.6
%
不満 やや
1.5% 不満
1.3%
知ら
ない
55.6
%
不満
0.8%
知ら
ない
56.0
%
普通
32.5
%
知ら
ない
56.0%
やや
満足
満足 3.2%
5.8%
知ら
ない
47.3
%
普通
37.4
%
不満
0.8%
不満
0.9%
4-3-2
4-3-4
4-3-5
単純集計を実施すると、いずれの項目とも 40〜60%の事業者が「知らない」と回答している。ただ、
商工会議所の会員組織率を勘案した場合、結果の妥当性には疑問が残る。そこで、
「知らない」を除外し
て集計した結果を下に示した。各項目とも 400 社弱の回答となり、現状の組織率を反映した数値となる。
その結果、評価は「普通」が 7 割超となり、会員は概ね評価している結果となった。
イ)
「知らない」を除外して集計した結果
満足
11.2%
4-3-1
やや
不満
5.8%
やや
満足
7.7%
満足
10.3%
4-3-2
不満
2.2%
満足
13.0%
やや
不満
2.9%
普通
70.9%
やや
やや
満足 不満
満足
5.6%
10.9%
8.0%
普通
73.7%
4-3-3
不満
1.8%
普通
73.2%
4-3-4
やや
やや 不満
3.9%
満足
13.1%
普通
73.4%
満足
8.8%
不満
1.9%
4-3-5
やや やや
不満 満足
2.3% 7.6% 不満
2.9%
普通
78.4%
やや
満足
7.3% 不満
3.4%
商工会議所・商工会が行う巡回相談に関して、6 項目から評価してもらった。4-4-1〜4-4-6 は、訪問頻
度、相談のしやすさ、情報の提供、関係団体との関係性、新設・丁寧、そして専門性・知識の各項であ
る。
やや不
満
満足 6.3%
7.3%
4-4-1
不満
13.2%
やや満
足
7.4%
満足
7.8%
不満
10.7%
やや
満足
4.4%
やや満
足
9.7%
4-4-2
やや不
満
6.1%
不満
10.5%
普通
68.8%
満足
14.2%
やや不
満
6.1%
普通
68.0%
4-4-4
満足
17.7%
4-4-3
やや満
足
9.7%
普通
59.5%
不満
11.6%
普通
62.3%
やや
やや 不満
満足 7.6%
8.5%
やや不
満
不満
4.6%
8.7%
やや満
足
11.7%
やや不
満
満足
7.2%
9.3%
満足
10.4%
普通
57.3%
4-4-5
不満
10.6%
普通
62.8%
4-4-6
いずれの項目とも、概ね普通以上の評価を得ている。また、相談のしやすさ、新設・丁寧さに関して
は満足の数値も比較的大きい。ただし、関係団体との関係、専門性・知識に関してはやや満足度が低く、
改善の余地があるといえよう。
最後に、今後の市および商工会議所の施策に対する希望について質問している。この項目に関しては、
欠損値も多く満足な集計ができなかった。
しかしながら、いずれの設問においても回答の多数を占めるのは「特になし」であった。付記される
コメントとしては「特に期待しない」など辛辣なものもあり、市等の機関と事業者の間に信頼関係が希
薄であることをうかがわせる記載がみられる。