そ の 他 の 検 討 事 項

特集 買主に有利な規定になっていないか
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契約当事者、契約期間、実効性の担保等
その他の検討事項
その売却を検討しているAAA㈱
⑶ 対象会社を当事者とする
場合
株 式 譲 渡 の 場 合 に は、 取 引 の 対 象
となるのが株式であるため、売主と
は別の法主体である当該株式に係る
会社
(対象会社)
が存在する。
そして、
株式譲渡を行うかにつき検討・交渉
を行う際に必要となる情報は、対象
会社のビジネス、資産・負債、労務
当 事 者 と さ れ て い る は ず で あ る が、
れば意味がない。通常は適切な者が
体として適切な者を当事者としなけ
即して、当該契約上の権利義務の主
ては、当該契約の目的および内容に
秘密保持契約に限らず契約におい
事業の買主となる者がこれに該当
受領する側の者として、当該株式や
業の売主となる者、情報を主として
として、取引の対象となる株式や事
は、情報を主として開示する側の者
のが通常である。M&A取引の場合
る者およびこれを受領する者とする
引ないし交渉において情報を開示す
秘密保持契約の当事者は、当該取
るときには、売主を当事者とすれば
渉のために必要な情報を保有してい
場合であって、かつ売主が検討・交
の株式の譲渡を検討・交渉している
る。
すべきかを検討する必要が生じ得
を秘密保持契約の当事者として追加
うことになる。そのため、対象会社
て保有し開示する者は対象会社とい
等の情報であり、当該情報を主とし
定められている者が当事者として適
し、秘密保持契約の当事者としては
足り、対象会社を当事者として追加
⑵ 原則的な当事者
切であるか疑問を生じる場合や、当
そ れ で 足 り る 場 合 も 多 い( な お、 た
する必要は特にないことが多い。ま
(売主)
と、同株式の譲受を検討して
該契約の事情により定められている
とえば事業譲渡や会社分割の場合に
た、売主自身がかかる情報を保有し
契約当事者
者以外の者を当事者として追加する
は、取引の対象となるのが売主の事
ていなくても、売主の子会社に対す
式会社
(以下
「対象会社」
という。
)
の株式を売主が買主
に譲渡する取引
(以下
「本取引」
という。
)
の可能性を検
討することを目的
(以下
「本目的」
という。
)
として、相互
に開示する情報の取扱いに関し、
以下のとおり、
秘密保
持契約
(以下
「本契約」
という。
)
を締結する。
いるBBB㈱(買主)が契約当事者と
ことを検討する必要がある場合が存
業の全部または一部であるため、売
るコントロールが十分に及んでいれ
(以下
「買主」
という。
)
は、売主の子会社であるCCC株
した後にあらためて検討することが
であり、場合によっては全体を検討
れば、特に問題はないと思われる。
当事者は、何らかの特殊事情がなけ
したがって、買主サンプル契約の
を行うことが可能であるから、その
示し、逆に受領した情報の秘密保持
検討・交渉のために必要な情報を開
されている。
買主サンプル契約では、頭書およ
する。そのため、検討対象とする契
主側の当事者としては、当該事業の
ば、売主としては、子会社に指示し
AAA株式会社
(以下
「売主」
という。
)
とBBB株式会社
⑴ 買主サンプル契約の条項
び記名押印欄において、株式譲渡の
約書のドラフトに記載された当事者
売主となる会社以外の当事者は通常
ま た は こ れ を 監 督 す る こ と に よ り、
(図表13) 買主サンプル契約の条項(契約当事者)
この点、売主の子会社
(対象会社)
対象であるCCC㈱の株式を保有し
が適切であるかについては、ドラフ
想定されない)。
望ましい。
経理情報●2016.12.10(No.1465)
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Ⅴ
トの検討の最初の段階で検討すべき
売主視点で考えるM&A時の秘密保持契約