10 月米個人所得・消費支出

ニッセイ基礎研究所
2016-12-01
【10 月米個人所得・消費支出】
個人消費は予想比下振れも、個人所得は堅調な
賃金・給与が下支えし、16 年 4 月来の高い伸び。
経済研究部
主任研究員
TEL:03-3512-1824
窪谷 浩
E-mail: [email protected]
1. 結果の概要:個人所得は、予想を上回るも、個人消費は予想を下回る
11 月 30 日、米商務省の経済分析局(BEA)は 10 月の個人所得・消費支出統計を公表した。
個人所得(名目値)は、前月比+0.6%(前月改定値:+0.4%)となり、上方修正された前月から伸
びが加速、市場予想(Bloomberg 集計の中央値、以下同様)の+0.4%も上回った。一方、個人消費
支出(名目値)は、前月比+0.3%(前月改定値:+0.7%)と、上方修正された前月改定値を下回っ
たほか、市場予想(+0.5%)も上回った(図表 1)。価格変動の影響を除いた実質個人消費支出は、
前月比+0.1%(前月改定値:+0.5%)と前月改定値、市場予想(+0.3%)ともに下回った(図表 5)
。
貯蓄率1は 6.0%(前月:5.7%)と前月から上昇した。
価格指数は、総合指数が前月比+0.2(前月:+0.2%)と前月値に一致したものの、市場予想(+0.3%)
は下回った。また、変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は、前月比+0.1%(前月値:
+0.1%)と前月、市場予想(+0.1%)に一致した(図表 6)
。なお、前年同月比では、総合指数が+1.4%
(前月:+1.2%)
、コア指数が+1.7%(前月:+1.7%)となり、コア指数は前月に一致したものの、
総合指数は 3 ヶ月連続で伸びが加速した(図表 7)。
2. 結果の評価:個人消費は堅調も、高い伸びとなった前月の反動で伸びは鈍化
名目個人消費(前月比)は、市場予想を下回
る伸びに留まったものの、9 月が+0.7%の高い
(図表 1)
1.2
伸びとなった反動とみられる(図表 1)。もっ
1.0
とも、9 月の高い伸びが 8 月の消費不振の反動
0.8
であったことも考慮すると、10 月は好調であ
費は堅調であると判断できる。
0.0
となっている。このため、足元の資本市場の堅
1
6.5
6.0
5.5
5.0
-0.2
4.5
個人所得(前月比)
個人消費支出(前月比)
貯蓄率(右軸)
-0.4
-0.6
14/01
14/07
15/01
15/07
(注)名目値、季節調整済
(資料)BEAよりニッセイ基礎研研究所作成
可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。
1|
(%)
0.4
0.2
の水準まで上昇しており、消費余力を残した形
個人所得・消費支出、貯蓄率
0.6
った 9 月からさらに消費が伸びているため、消
一方、所得対比では、貯蓄率が再び 8 月以来
(%)
|経済・金融フラッシュ 2016-12-01|Copyright ©2016 NLI Research Institute
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4.0
16/07
調さと合わせて考えると、消費はもう一段の加速が期待できる状況である。
物価(前年同月比)は、コア指数が安定する一方、エネルギー価格の持ち直しもあり総合指数が
7 月以降、3 ヵ月連続で上昇しており、物価上昇圧力には緩やかながら高まりがみられる。もっと
も、総合指数、コア指数ともにFRBの物価目標(2%)を下回る状況が持続している。
3. 所得動向:労働需給の改善を反映して賃金・給与が堅調
個人所得の内訳をみると、賃金・給与が前月比+0.6%(前月:+0.5%)と堅調な伸びが持続して
いる。雇用統計の時間当たり賃金の伸びが 2 ヵ月連続で加速するなど、労働需給の改善が賃金増加
に繋がり易い環境となっており、今後も賃金・給与の堅調推移が期待できる。一方、利息・配当収
入は+1.2%(前月:+0.2%)と 14 年 4 月以来の高い伸びとなり、こちらも所得の伸びに貢献した
(図表 2)
。
個人所得から社会保障支出や税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、名目値が+0.6%(前
月:+0.4%)と 16 年 4 月以来の伸びとなったほか、価格変動の影響を除いた実質ベースも前月比
+0.4%(前月:+0.2)と、こちらは 15 年 12 月以来の伸びとなった(図表 3)
。
(図表 2)
0.8
(図表 3)
名目個人所得(前月比寄与度)
(%)
0.8
0.6
その他
移転所得
賃金・給与
個人所得
(%)
可処分所得(名目、実質)
利息・配当
0.6
0.4
0.4
0.2
0.2
0.0
0.0
-0.2
-0.2
名目可処分所得
実質可処分所得
-0.4
-0.4
14/01
14/07
15/01
15/07
16/01
(注)名目値、季節調整済前月比
(資料)BEAよりニッセイ基礎研研究所作成
16/07
14/01
14/07
15/01
15/07
16/01
16/07
(注)季節調整済前月比
(資料)BEAよりニッセイ基礎研研究所作成
4. 消費動向:公益、外食・宿泊、娯楽などのサービス消費が減少
名目個人消費(前月比)は、財消費では+1.3%(前月:+1.2)と 2 ヵ月連続で高い伸びとなった
(図表 4)
。非耐久財が+1.4%(前月:0.7%)と前月から伸びが加速したほか、耐久財が+1.0%(前
月:+2.1%)と、前月から鈍化したものの、高い伸びを維持した。非耐久財ではガソリン・エネル
ギー関連が+6.7%(前月:+5.3%)と高い伸びとなったほか、耐久財では自動車・自動車部品が+1.4%
(前月+5.2%)と底堅い伸びとなった。
このように財消費は堅調であったものの、サービス消費は▲0.2%(前月:+0.5%)と 12 年 8 月
以来のマイナスとなった。住宅・公共料金が▲0.6%(前月:▲0.0%)と 2 ヵ月連続で減少したほ
か、外食・宿泊が▲1.0%(前月:+1.1%)、娯楽サービス▲0.9%(前月:+2.2%)、交通が▲0.4%
(前月:+0.9%)と、軒並み前月からマイナスに転じた。公共料金などの減少は、一部は 10 月の
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温暖な気候に伴う燃料消費の減少によるとみられる。
(図表 4)
(図表 5)
名目個人消費(前月比寄与度)
(%)
1.2
1.2
サービス
1.0
非耐久財
耐久財
個人消費支出
個人消費支出(名目、実質)
(%)
名目個人消費支出
1.0
0.8
0.8
0.6
0.6
0.4
0.4
0.2
0.2
0.0
0.0
-0.2
-0.2
-0.4
-0.4
実質個人消費支出
-0.6
-0.6
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14/07
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15/07
16/01
14/01
16/07
14/07
15/01
15/07
16/01
16/07
(注)季節調整済前月比
(資料)BEAよりニッセイ基礎研研究所作成
(注)名目値、季節調整済前月比
(資料)BEAよりニッセイ基礎研研究所作成
5. 価格指数:食料品価格の下落が持続しているものの、エネルギー価格の上昇が顕著
価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が+3.8%(前月:+3.0%)と 2 ヵ月連
続でプラスとなるなど、上昇が顕著となった(図表 6)
。一方、食料品価格指数は▲0.1%(前月:
▲0.1%)と、こちらは 6 ヵ月連続でマイナスとなっており、エネルギー価格と対照的となった。
前年同月比では、エネルギー価格指数が▲0.2%(前月:▲3.5%)と 3 ヵ月連続でマイナス幅が
縮小しているほか、ほぼマイナス幅が解消した状況となっている(図表 7)
。一方、食料品価格指数
は、▲1.8%(前月:▲1.7%)と、こちらは 6 ヵ月連続でマイナスとなった。
原油価格は、30 日のOPEC総会で 8 年ぶりに減産合意が実現したことから、当面堅調に推移す
るとことが見込まれる。このため、これまでみられたエネルギー価格の物価押下げ効果は早期に解
消しよう。
(図表 6)
0.8
(図表 7)
PCE価格指数(前月比)
(%)
総合指数
0.6
コア指数
食料品
(%)
エネルギー(右軸)
8
4
0.2
2
0.0
0
-0.2
-2
-0.4
-4
-0.6
-6
-0.8
-8
-1.0
-10
-12
14/01
14/07
15/01
(注)季節調整済
(資料)BEAよりニッセイ基礎研研究所作成
15/07
16/01
16/07
PCE価格指数(前年同月比)
(%)
(%)
30
6
0.4
-1.2
3
2
20
1
10
0
0
-1
-10
-2
-20
総合指数
コア指数
食料品
エネルギー関連(右軸)
-3
-30
14/01
14/07
15/01
15/07
16/01
16/07
(注)季節調整済
(資料)BEAよりニッセイ基礎研研究所作成
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