海外だより - JA 全中

D.C.通信
海外だより
連載 67
中村岳志 (JA全中農政部国際企画課<在ワシントン>)
December, 2016
アメリカの日本酒(SAKE)事情
■急成長する日本食・日本酒
ると、 4 合瓶 1 本で100~数百ド
近年、海外の日本食レストラ
ルにもなる。
ン総数は急増しており、2006年
このため、一部の大手酒造
には約 2 万4,000店だったもの
メーカーは、西海岸に工場を設
が、2015年にはその約3.7倍と
け、カリフォルニア米等を用い
なる 8 万9,000店へと急成長を
て、比較的リーズナブルな SAKE
遂げている。
を現地生産している。アメリカ
それに伴い日本酒の輸出額も
では、日本国内と同等の品質の
増加し、2013年に初めて100億
酒造好適米が入手困難であるほ
に つ い て は、 銘 柄 名 の ほ か、
円 を 突 破し た 後、2015年 に は
か、水質の違いもあり、国産同
Honjozo や Ginjo とし か 書 い て
140億円となり、この10年で 3
様の品質を実現するのは容易で
おらず、それらが何を意味する
倍の伸びとなった。最大の輸出
ない模様であるが、 4 合瓶で10
のか、味にどのような特徴があ
先は、全体(約60か国)の36%
ドル弱~という圧倒的な低価格
るのかが理解しにくい。アメリ
を占 めるアメリカだ。もは や
を武器に、現地生産のものは約
カ人に興味を持ってもらうため
「SAKE」という単語は当地でも
8 割 の シェア を 獲 得し て い る
には、風味の特徴を書いた上で、
よく知られており、西・東海岸
(JETRO 調べ)
。
スタッフが料理との相性も含め
て提案できるように、情報提供
を中心に、日本食レストランや
日系・アジア系スーパーで手に
■情報提供・教育の必要性
や教育を強化していく必要があ
取ることができる。
こうした中、価格帯が大きく
るのではないか。
異なる日本産 SAKE をアメリカ
近年では、フランス等の一流
人にさらに普及していくために
レストランでも、ワインととも
は、まずその味・質・価値を理
に日本酒もお薦めされていると
ただ、日本産 SAKE でネック
解してもらう努力を強化してい
いうような話も聞くし、アメリ
になるのが価格であり、輸送コ
く必要があるのではないか。例
カでも着実に認知度が向上して
ストや中間マージン等により、
えばワインであれば、原料ブド
いるようにも思う。日本産 SAKE
小売価格は日本の 2 ~ 3 倍、飲
ウの種類や風味についてリスト
がワインと肩を並べて味わうこ
食店ではさらに割高となってい
に詳しく書かれているほか、ソ
とができる日を夢見て、個人的
る。とりわけ、大吟醸などのい
ムリエが料理に合わせてお薦め
にも当地アメリカ人に日本酒を
わゆる「プレミアム SAKE」とな
もし てくれ る。し かし、SAKE
薦めていきたい。
■シェアを広げ る現 地 生 産
SAKE
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ニューヨークの日系スーパーにずらり
と陳列される日本産SAKE
月刊 JA
2016/12