衝撃緩和クッション材の開発

技術分野︓樹脂材料
応⽤分野︓介護、スポーツ分野︓衝撃緩和資材
衝撃緩和クッション材の開発
シーズ保有機関
担
当
者
技術の概要
︓ 奈良県産業振興総合センター
︓ 梅本 博⼀
⾼齢者の転倒時の衝撃を緩和するクッション材の開発と評価技術
⾼齢者の転倒時の⼤腿⾻頸部⾻折リスクの低減を⽬的として、衝撃緩和クッション材の評価技術を構築しました。
1 ⾻折を回避できる衝撃荷重を求め、これを満⾜するクッション材を探索・評価できる衝撃緩和評価装置を製作。
2 本装置で県内企業のクッション材の性能を評価し、有望な材料を絞り込んだ。
3 上敷きを設けた際の衝撃緩和性能評価や歩⾏感に関する評価試験も⾏い、製品化の⽬途をつけた。
技術の特徴
クッション材の衝撃緩和性能評価から感性評価まで⽀援
1.⾼齢者の転倒を再現する衝撃緩和評価装置(図1)を開発し、県内
企業が製造する各種発泡樹脂シートによる試験を⾏い、衝撃緩和性能
の評価技術を構築した。それにより⾻折リスクを低減する材料やその
厚み、残留へこみ等を明らかにし、クッション材を絞り込んだ。
2.製品化を想定して上敷きを設置した状態で衝撃緩和性能を評価した。
その結果、上敷きの種類に関わらず開発した ク ッション材は、⼤腿⾻頸
部⾻折発⽣の閾値である2110Nの半分以下の衝撃荷重に軽減されて
図1 衝撃緩和評価装置
100
おり、⼗分な衝撃緩和性能を有していることを確認した。市販のジョイ
90
ントマットも同条件で評価をしたが、衝撃荷重は上敷きの種類に依存し、
ていることを明らかにした。
3.床に敷くシートとして適⽤するため歩⾏感に関するVAS法による感
性評価を実施した。指標は、「柔らかさ」「滑りにくさ」「不安感」の3点で
被験者は30名とした。図2は滑りにくさと不安感の相関を⽰しており、
回帰分析の結果から、不安感を減らすには適度な滑りが求められ
ることを明らかにした。
技術の活⽤例
R2==0.3424
R²
0.3424
直線回帰
直線回帰
70
不安感
不安感
前記の閾値を超過しており、リスク低減には当該クッションの⽅が優れ
80
60
50
40
= 0.6298
RR²2=0.6298
2次曲線回帰
2次曲線回帰
30
20
10
0
0
20
40
ケガや⾻折を防⽌する衝撃緩和クッション材として活⽤
・ ⾼齢者施設の廊下⽤歩⾏シート、ふろ場のマット、⾃宅のベッドサイド等で活⽤。
・ ヘルメットの衝撃緩衝部材、スポーツ器具や施設の柵、尖った⾓の安全保護部材にも活⽤できます。
衝
撃
⼒
衝撃緩和クッション材
60
80
滑りにくさ
滑りにくさ
図2 感性試験結果
-滑りにくさと不安感の相関-
100
技術開発の経緯
⾼齢者の転倒による⾻折を減らし健康な暮らし実現に貢献する
奈良県の65歳以上⼈⼝の割合は全国平均を上回っており、今後も全国平均を上回る速さで⾼齢化が進むと予想される。
そうした中で⾼齢者の転倒事故は、寝たきりになるなど健康的な⽣活へ影響するだけでなく、年々増⼤する医療費の⼀因とも
なる。本開発は転倒事故による⼤腿⾻頸部⾻折のリスクを低減させることを⽬的に、県内で発泡樹脂を開発製造する企業と
連携して実施した。具体的には、転倒時に床との間で起こる衝突現象を再現できる評価装置を製作し,衝突状況下での荷
重、加速度及び変位を評価し、⼤腿⾻頸部⾻折リスクの定量化に有効なツールとした。さらにそれに上敷きを組み合わせた状
態で衝撃緩和性能及び歩⾏感に関する評価を、⾻折リスク低減効果に優れた歩⾏
可能な衝撃緩和クッション材を実現した。
産官⾦による連携⽀援
産
官
⾦
・産業⽀援機関による共同研究、共同開発における体制構築、推進⽀援
・研究開発資⾦獲得⽀援、販路探索等の事業化⽀援
・歩⾏⽤クッション材の衝撃荷重・変位などの評価技術から歩⾏感などの感性評価技術を提供。
・⽣活⽤、防災⽤、スポーツ⽤など幅広く衝撃緩和⽤のクッション材の開発評価を指導・⽀援
・研究開発、事業化のための資⾦調達、融資⽀援
・事業化、企業経営コンサルティング
企業の⽅へ⼀⾔
・⾼齢者の⾻折リスク低減に優れた衝撃緩和クッション材を開発しました。これを活⽤して、転倒時の⾻折を低減する最終
製品の製造・販売を⼿掛けることを希望される⽅がおられましたら是⾮ご連絡ください。
・また本クッション材は、安全安⼼のため多様な使い⽅が考えられますが、その開発のための評価技術も弊センターの試験評
価技術でお⼿伝いができますのでご相談ください。
・クッション材に限らず材料の試験設備や評価技術を保有していますので是⾮ご活⽤ください。
特許の情報、その他
■ 特許の情報
<クッション材製品化の際に関係する特許>
(1)スチレンブタジエン系軟質樹脂架橋発泡体の
製造⽅法
登録番号︓特許第4043992号
出願⽇︓平成15年4⽉25⽇
特許権者︓積⽔化成品⼯業株式会社、安⽥プラスチッ
ク株式会社
(2)スチレンブタジエン系軟質樹脂架橋発泡体
登録番号︓特許第4585345号
出願⽇︓平成17年3⽉23⽇
特許権者︓積⽔化成品⼯業株式会社、安⽥プラスチッ
ク株式会社
■ その他の情報
⽤語解説
VAS法︓Visual Analogue Scaleの略。評価項⽬毎
に両端に固いと柔らかいなど最低と最⼤指標を記載した
100mmの直線上に被験者が感じた程度の部分に×印
をつけてもらう。端から×印までの⻑さを測ることで
定量化する。
この資料についての問合わせ先︓近畿経済産業局 産学官連携推進室
公益財団法⼈ 新産業創造研究機構
TEL 06-6966-6164
TEL 078-306-6805