病原菌に負けないタフな植物 ペピーノでトマトをRESCUE 東京農業大学 農学部 農学科 教授 篠原 弘亮 1 ペピーノを台木として用いたナス科 作物に発生する土壌病害の防除法 TM 東京農大 Laboratory of Plant Pathology Atsugi, Kanagawa 東京農業大学 農学部 農学科 植物病理学研究室 教授 篠原 弘亮 2 従来技術とその問題点 作物栽培では病害による収量や品質の低下が常に重要な問題 となっている。特に土壌中の病原菌が原因となる土壌病害は発 生を防ぐことが困難な難防除病害の代表である。ナス科作物で も産地化による連作で青枯病を筆頭に多くに病害が発生して問 題となっている。土壌消毒はじめとした様々な手段が用いられ ており、病害に強いトマトやナス等の品種が育成されこれを台 木とした接ぎ木による対策もひとつとして挙げられる。そこで、 病害に強いナス科作物を探索したところ、ペピーノ(Solanum muricatum Ait.)が青枯病に強く、かつトマトやナスとの接ぎ木 の親和性が高いことを明らかにし、ペピーノを台木としてトマト やナスを接ぎ木栽培することで土壌病害の発生を防ぐ栽培技 術を開発した。 3 従来技術とその問題点 ~ペピーノの青枯病に対する耐病性~ ペピーノに青枯病菌を土壌灌注接種してから120日を経過しても無発病 接種区でも発病は認められず無接種区と同様 に生育した 無接種区 接種区 4 新技術の特徴・従来技術との比較 既にナス科作物でも土壌病害対策として台木の利用はされて いる。トマトでは、病害に強いトマトを台木の品種として育成、利 用され、別の種の利用は少ない。本技術はナス科でもトマトと は別種であるペピーノを台木として用いることが従来の技術と は異なる。さらにトマト以外のナス科作物に利用が可能であり 汎用性に優れている。 ペピーノ(品種:ゴールドNo.1) 5 新技術の特徴・従来技術との比較 • 未利用であったペピーノを台木として活用した 土壌病害対策 • 植物病原細菌が原因の青枯病に効果が高い • トマトやナスなどナス科作物の多くに親和性 が高く台木としての汎用性に優れている • 挿し木での増殖が可能であり、苗の大量生産 が効率的 • 台木となる植物の播種から採種までの栽培が 不要 6 新技術の特徴・従来技術との比較 ~ペピーノ台接ぎ木トマトの活着率~ 第1表 ペピーノ台接ぎ木トマトの活着率(接ぎ木後20日目) 穂木品種 台木品種 接ぎ木法 供試株数 活着株数 活着株率(%) 大型福寿 ゴールドNo.1 割接ぎ 30 28 桃太郎8 ゴールドNo.1 割接ぎ 12 12 93.3 100 7 新技術の特徴・従来技術との比較 ~ペピーノ台接ぎ木トマトの活着率~ ‘大型福寿’穂木/ ‘ゴールドNo.1’台木 ‘桃太郎8’穂木/ ‘ゴールドNo.1’台木 8 新技術の特徴・従来技術との比較 ~ペピーノ台接ぎ木トマトに対する青枯病の接種試験~ 第2表 ペピーノ台接ぎ木トマトに対する青枯病の接種試験(接種後30日目) 処理区 接種区 無接種区 発病程度 供試植物 無病徴 0 自根トマト(‘大型福寿’) 自根ペピーノ(‘ゴールドNo.1’) 3 ペピーノ台接ぎ木トマト (‘大型福寿’/‘ゴールドNo.1’) 自根トマト(‘大型福寿’) 自根ペピーノ(‘ゴールドNo.1’) ペピーノ台接ぎ木トマト (‘大型福寿’/‘ゴールドNo.1’) 発病株率 (%) 萎凋 0 0 枯死 3 0 5 1 0 16.7 3 3 0 0 0 0 0 0 6 0 0 0 100 0 9 新技術の特徴・従来技術との比較 ~ペピーノ台接ぎ木トマトに対する青枯病の接種試験~ 第1図 ペピーノ台接ぎ木トマトに対する青枯病菌の接種試験 (接種後30日目) 左から自根トマト,ペピーノ台接ぎ木トマト,自根ペピーノ 10 想定される用途 • トマトやナスの産地で問題となっている土壌病 害の被害を軽減できる。 • 上記以外に、糖度など品質の向上が期待でき る。 11 実用化に向けた課題 • 現在、植物細菌病である青枯病に対して効果 を確認済み。しかし、その他の病害に対す効 果は検討してる。 • 今後、萎凋病など植物糸状菌病に対して試験 を重ねて、幅広い病害に適用させるための条 件を検討するとともに、圃場試験での実証が 必要である。 • さらに実用化に向けて、より病害に強く、かつ より多くのナス科作物に適用できる品種を選 抜、育成するなど本技術の確立を目指す。 12 企業への期待 • 未実施の試験については、時間を要するがこ れから試験を重ねることで解決できる。 • 実用化に向けて種苗生産技術を持つ、企業 等との共同研究を強く求めております。 • また、ナス科作物の生産に関わる企業、農業 法人、農業生産法人および団体には、本技術 の導入の検討を希望しています。 13 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称:ナス科植物の土壌病害 防除用台木及び該ナス科植物の土壌 病害防除用台木を用いた土壌病害の 防除方法 • 出願番号 :特願2016-56293 • 出願人 :東京農業大学 • 発明者 :篠原弘亮 他3名 14 お問い合わせ先 東京農業大学 総合研究所 加納朝子 TEL 03-5477-2532 FAX 03-5477-2634 e-mail nri@nodai.ac.jp 15
© Copyright 2024 ExpyDoc