Economic Indicators 定例経済指標レポート

Market Flash
その時、景気は回復していた
2016年11月24日(木)
第一生命経済研究所 経済調査部
主任エコノミスト 藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
【欧米経済指標他】
・10月米耐久財受注は前月比+4.8%と市場予想(+1.7%)を大幅に上回った。振れの大きい民間航空機
(+94.1%)の急増により輸送用機器(+12.4%)が強く伸び、全体を牽引。輸送用機器を除いたベース
では前月比+1.1%とまずまずの伸びだった。最重要項目のコア資本財受注は前月比+0.4%と伸びを欠き、
3ヶ月前比年率では+4.4%へとモメンタム鈍化。依然として企業が設備投資を積極化する様子は窺えない。
もっとも、先行指標のISM、PMIの新規受注が50を上回っていることから判断すれば、ダウンサイド
リスクは限定的だろう。
・11月米PMI(Markit)は53.9と10月から0.5pt改善して2015年5月以来の高水準を記録。生産(55.5→
56.0)、新規受注(54.8→55.5)が高水準を回復したほか、雇用(51.7→52.4)が改善。ISMに近づけ
たベースでは52.9と10月から0.4pt改善。現段階ではここもとのUSD高が製造業の景況感を蝕んでいる様子
千
は見受けられない。
(10億㌦)
75
コア資本財受注
PMI・ISM
65
PMI
60
70
55
65
50
60
45
55
ISM
40
50
35
45
05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15
(備考)Thomson Reutersにより作成 太線:3ヶ月平均
ISM換算
30
16
08
09
10
11
12
13
(備考)Thomson Reutersにより作成
14
15
16
・11月ミシガン大学消費者信頼感指数(確定値)は93.8と速報値から2.2pt上方修正された。現況は直近1年
程度のレンジ内だったが、より重要な期待が2015年6月以来の高水準となった。新政権に対する期待、ガ
ソリン価格の再下落が背景とみられる。
・10月新築住宅販売件数は前月比▲1.9%、56.3万件と9月(57.4万件)から減少。3ヶ月平均でみても▲
3.3%と減速基調にあるが、前年比では2桁の伸び率が維持されており、消費者の強い住宅購入意欲が窺え
る。NAHB住宅市場指数など関連指標が堅調な領域にあることを踏まえれば、悲観する必要はないだろう。
・11月ユーロ圏製造業PMIは53.7と10月から0.2pt改善。3ヶ月連続の改善で2014年1月以来の高水準を記
録。生産(54.6→54.1)、雇用(53.7→53.5)が僅かに軟化した反面、新規受注(53.8→54.5)が高水準
に回帰。総合PMIは54.1へと0.8pt改善し、実質GDP成長率の前期比+0.4%に整合する水準となった。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
1
新築住宅販売件数
(千件)
ユーロ圏PMI
60
サービス
650
55
50
550
製造業
45
450
40
350
35
30
250
09
10
11
12
13
(備考)Thomson Reutersにより作成
14
15
07 08 09 10 11 12 13
(備考)Thomson Reutersにより作成
16
14
15
16
【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】
・前日の米国株は続伸。米長期金利上昇が重荷となったものの、根強い景気回復期待を背景に買い優勢。N
Yダウは連日の最高値更新。WTI原油は47.96㌦(▲0.07㌦)で引け。ベーカー・ヒューズ公表の石油稼
動リグ数が3基増加の474基となり需給懸念が生じた。
・前日のG10 通貨はUSDの堅調地合が続くなか、JPYの弱さが目立った。USD/JPYは好調な米指標を手掛かり
に112後半へと上伸。EUR/USDも下落が続き、1.05前半へ水準を切り下げた。新興国通貨も総じて弱く、JPM
エマージング通貨インデックスは2月末と同水準に低下。
・前日の米10年金利は2.350%(+3.8bp)で引け。米指標堅調で一時2.4%を突破したが、7年債入札が好調
な結果になると上昇幅縮小。欧州債市場(10年)も総じて軟調。米金利上昇とECBの緩和打ち止め観測
が併存する下で軟調地合が継続。ドイツ(0.262%、+4.1bp)、イタリア(2.117%、+9.2bp)、スペイ
ン(1.596%、+7.1bp)、ポルトガル(3.678%、+5.0bp)が揃って金利上昇。周縁3ヶ国加重平均の対
独スプレッドはワイドニング。
【国内株式市場・アジアオセアニア経済指標・注目点】
・日本株は米株高、USD/JPY上昇を受けて高寄り後、もみ合い。日経平均は18300円を回復(10:30)。
<#トランプラリー #グローバルPMI改善 #タイミング
>
・目下のところトランプラリーが継続中。先進国株高・金利上昇、USD全面高の地合が続く下、日経平均は
18000、USD/JPYは110という節目をあっさりと突破した。トランプ共和党の経済政策の行方は未だ全貌が明
らかになっていないものの、大型減税・規制緩和・大規模インフラ投資に対する期待は大きい。もっとも、
今回の大統領選はタイミングが非常に良く、元からリスクオンの素地が整っていたことは留意しておきた
い。グローバル製造業PMIに目を向けると、景気先行指標として注目されている新規受注指数が52.8と
約2年ぶりの高水準にあるほか、新規受注・在庫バランスが27ヶ月ぶりの水準にあり在庫調整の完了を示
唆している。また、市場関係者の間で注目度が高まっているアトランタ連銀算出のGDPNOWも前期比年率+
3.6%(直近値、11月1週目は3%台前半)と非常に強い領域にあり、投資家のリスク選好を促している。
これを踏まえるとトランプ共和党政権誕生の有無に拘らず、リスクオンが促されていた可能性が高い。更
にUSD/JPYの上昇は米国のエコノミックサプライズ指数でも説明可能。USD/JPYは10月中旬頃から堅調地合
にあったが、それはエコノミックサプライズ指数が反転上昇した時期に一致する。その時、既に米景気回
復の芽が出つつあったということだろう。
・このように目下の先進国株高・USD/JPY上昇は、米国を中心に景気回復の後ろ盾があったことが大きい。ト
ランプ共和党政権の動向が重要なのは言うまでもないが、米ファンダメンタルズの軌道を注視する姿勢を
維持したい。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
2
グローバルPMI新規受注
(%)
65
30
60
25
55
20
50
15
グローバルPMI新規受注・在庫バランス
10
45
5
40
0
35
-5
30
-10
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16
(備考)Thomson Reuters、Markitにより作成
60
10
11
12
13
14
(備考)Thomson Reutersにより作成
グローバル製造業PMI
80
60
55
総合
15
16
エコノミックサプライズ指数(米国)(USD/JPY、差)
15
USD/JPY(右)
40
先進国
20
5
0
50
0
-20
-40
新興国
45
-5
-60
-80
40
-100
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16
(備考)Markitにより作成
10
-10
エコノミックサプライズ指数
-15
13
14
15
16
(備考)Thomson Reutersにより作成 USD/JPYは3ヶ月前差
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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