122 RBC 出庫後輸血実施までの所要時間調査と改善への取り組み ◎山本 富夫 1)、田近 洋介 1) 富山県済生会 富山病院 1) 【はじめに】輸血療法の安全性と適正化を図 P=0.0006)。また、引継ぎ間の管理上の問題も るために、輸血療法委員会が中心となり取り 生じる可能性があり、輸血実施者が血液製剤 組みがなされている。しかし、RBC 出庫後に を受け取りに来る事が理想的と考える。 搬送用クーラーボックスに入れたまま放置さ 連絡先 076-437-11443 れた事例や輸血実施までに 3 時間を要した事 例もあり、出庫後の管理が十分と言えない状 態であった。今回、出庫後 RBC 輸血実施まで の所要時間、受取者と実施者の関わり合いに おける所要時間も調査し、改善に向けての取 り組みを報告する。 【調査期間と RBC パック数】平成 26 年 9 月 より平成 28 年 5 月まで調査をした。尚、所要 時間調査は病棟における実施 2553 単位 1290 パックの内、1 パック目実施の 662 パッ クを対象とした。 【結果 1】調査開始 3 ヶ月 所要時間 30 分以 内:50 パック(61.7%)、~60 分:15 パック (18.5%)、~90 分:4 パック(4.9%)、~120 分: 7 パック(8.7%)、120 分以上:5 パック(6.2%)で あり、平均 42.9 分であった。 【改善策】調査開始 3 ヶ月の結果を輸血療法 委員会、運営会議に報告し、院内メールにて 注意勧告を行い、平成 28 年 10 月からは個別 に指導した。 【結果 2】改善後平成 28 年 3 月~5 月 所要 時間 30 分以内:87 パック(88.8%)、~60 分: 11 パック(11.2%)であり、平均 16.6 分であっ た。 【考察】個別的な指導により、RBC 出庫後 30 分以内の輸血実施が意識付けられたと考え る。今後も継続的に調査を行い、適切な輸血 実施に向けて支援していくことが必要である。 受取者と実施者が異なる場合には、明らかに 所要時間が長くなる(Mann-Whitney の U 検定 123 当院における輸血後感染症検査実施率向上への取り組み ◎小出 明奈 1)、山本 喜之 1)、松原 優 1)、大岩 啓三 1) 厚生連 知多厚生病院 1) 【はじめに】 (1)輸血後感染症検査の説明が十分に行われて 輸血前後における感染症検査は、平成 17 年に おらず、患者自身も検査の必要性を理解でき 厚生労働省より通知された「輸血療法の実施 ていない可能性があった、(2)輸血依頼医では に関する指針(改訂版)」および「血液製剤 なく依頼科医師宛の付箋の注意喚起は、依頼 等に係る遡及調査ガイドライン」に則し、輸 科医師および依頼科外来の看護師の注意をひ 血療法の安全性を確保するために実施されて きつけることに成功した、また保険適用期限 いる。しかし、当院における輸血後感染症検 の入力によって重要性の周知が行われた、 査の実施率は 30~40%と低く伸び悩んでいた。 (3)専従検査技師による輸血後感染症検査のフ 今回、当院における輸血後感染症検査実施率 ォロー体制が確立された、(4)時差を設けた 目標を 50%と設定し、実施率向上に向けて取 「輸血後感染症検査のお知らせ」の郵送は輸 り組みを行ったので報告する。 血を受けられた患者本人のみならず家族への 【方法】 注意喚起となった、(5)診療側が輸血療法の安 (1)輸血実施に伴い、電子カルテより同意書取 全性について再考する契機となり、実施率向 得時に「輸血後感染症検査の案内書」の出力、 上へとつながった。 (2)輸血の依頼があった依頼科の医師宛に電子 【今後の課題】 カルテの付箋機能にて保険適用期限も含めた 輸血後感染症検査の未実施者は外来通院患者 「輸血後感染症検査のお知らせ」を入力、 が 9 割を占める。そのため対策の焦点を外来 (3)約 3 ヶ月後の外来受診日に合わせて検査科 通院患者においた対応策の立案がさらなる実 輸血部門専従検査技師による「輸血後感染症 施率向上の糸口になると考える。当院では地 検査の依頼代行入力」の実施、(4)当院での最 域住民を対象とした住民公開講座を行ってい 後の輸血から約 2 ヶ月後に患者さん宅へ「輸 るため、輸血療法委員会を中心に輸血後感染 血後感染症検査のお知らせ」を郵送、(5)「輸 症検査への関心を高めるため公開講座の開催 血後感染症検査」診察予約枠の設置 を検討したい。 【結果】 また、同意書取得時等の新たな取り組みとし 平成 26 年 9 月~平成 28 年 2 月までの 18 ヶ月 て、医師等の業務軽減および診療支援を目的 間で輸血実施者数 149 人(但し、頻回輸血の に臨床検査技師による輸血後感染症検査の検 者を除く)、輸血後感染症検査実施者数 査説明の導入を検討したい。 116 人、この期間における輸血後感染症検査実 【まとめ】 施率は 81%であった。また、月々の実施率は 輸血後感染症検査実施率を向上させるために 50%以上まで上昇し、設定目標は達成した。 は、輸血療法に携わるすべてのスタッフの意 なお、今回の輸血実施者数は生存者・死亡者 識向上と協力が必要不可欠である。今後も輸 (輸血後 3 ヶ月以内の死亡)の区別は行っていな 血療法委員会を中心に病院全体で継続して実 い。 施率向上に努めたい。 【考察】 連絡先:0569-82-0395(内線 2713) 124 検査通知システム導入による輸血後感染症検査実施状況の変化 ◎佐久間 恵美 1)、村上 和代 1)、遠藤 美紀子 1)、楢本 和美 1)、二村 亜子 1)、芝口 好美 1)、 加藤 秀樹 1)、湯浅 典博 1) 名古屋第一赤十字病院 1) 【はじめに】血液製剤は献血者の血液を原料 患者が輸血後 3 カ月以内に転院または死亡し としているため、輸血による感染症発生を完 た症例を除いた 1202 件を対象とし、前期:通 全には回避することはできない。厚生労働省 知システム導入前(2014 年 9 月~2015 年 8 月: 「輸血療法の実施に関する指針」には、輸血 12 ヶ月)、後期:通知システム導入後(2015 年 療法を受けた患者は輸血後 3 カ月をめどに 9 月~2016 年 1 月:5 ヶ月)の両期間で輸血後 “HBV(NAT)、HCV コア抗原、HIV 抗体”検 感染症検査の実施率を調査した。統計学的検 査を行う必要があると記載されている。しか 討はカイ二乗検定で行った。 し輸血後感染症検査の依頼や実施は医師や患 【結果】輸血後感染症検査実施率は、前期: 者に委ねられる部分が多く、輸血患者全員に 575/843(68.2%)、後期:299/353(84.7%)であっ 実施することは難しい。当院ではこれまで輸 た。「輸血後感染症検査通知システム」導入 血後感染症検査実施率を向上させるため、 後、検査実施率は約 16%増加した(p< ①輸血後感染症検査セットの作成、②輸血実 0.0001)。システム導入後も検査オーダーがさ 施時に文書でスタッフと患者へ輸血実施日と れない症例は、終診、患者が来院しない、終 輸血後感染症実施期間を通知、③電子カルテ 末期患者や小児で採血困難だと医師が判断し 上での付箋を用いて医師へ輸血実施日と輸血 た場合などが原因と考えられた。輸血後感染 後感染症実施期間を通知するなどの取り組み 症検査が実施された患者に HBV・HCV・HIV の を行ってきた。今回 2016 年 1 月の電子カルテ 感染は前期、後期とも 1 例も認めなかった。 システム更新に伴い、電子カルテを用いた 【考察】「輸血後感染症検査通知システム」 「輸血後感染症検査通知システム」を導入し の導入後、輸血後感染症検査の実施率は有意 たので、その効果と今後の課題を明らかにす に上昇した。一方で、医師が輸血後感染症検 る。 査は不要であると判断した患者のメッセージ 【輸血後感染症通知システムの概要】輸血か 表示はどうすれば停止できるのか、外来や入 ら約 2 カ月後の輸血後感染症検査オーダーの 院、診療科により電子カルテを閲覧する頻度 有無をコンピュータでチェックし、オーダー やタイミングが異なるため、表示期間を変更 がない場合は、担当医が患者カルテを閲覧し してほしいなど、本システムに対する輸血部 た時に輸血実施日と輸血後感染症実施期間を 門への問い合わせや要望がよせられている。 示すメッセージを画面中央に表示するように 【結論】「輸血後感染症検査通知システム」 した。メッセージ画面より直接、検査オーダ の導入後、輸血後感染症検査の実施率は上昇 ー画面を開くことができる。メッセージの表 した。診療科によって異なる要望に対し、柔 示期間は輸血の 2 カ月から 5 カ月後までとし 軟に対応できるシステムの構築が今後の課題 た。 である。 【対象と方法】2014 年 9 月から 2016 年 1 月ま でに当院で行われた同種血輸血のうち、輸血 から 3 カ月以内に再び輸血を行っている症例、 名古屋第一赤十字病院 輸血部 052-481-5111(内線 23572)
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