検査通知システム導入による輸血後感染症検査実施状況の変化

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検査通知システム導入による輸血後感染症検査実施状況の変化
◎佐久間 恵美 1)、村上 和代 1)、遠藤 美紀子 1)、楢本 和美 1)、二村 亜子 1)、芝口 好美 1)、
加藤 秀樹 1)、湯浅 典博 1)
名古屋第一赤十字病院 1)
【はじめに】血液製剤は献血者の血液を原料
患者が輸血後 3 カ月以内に転院または死亡し
としているため、輸血による感染症発生を完
た症例を除いた 1202 件を対象とし、前期:通
全には回避することはできない。厚生労働省
知システム導入前(2014 年 9 月~2015 年 8 月:
「輸血療法の実施に関する指針」には、輸血
12 ヶ月)、後期:通知システム導入後(2015 年
療法を受けた患者は輸血後 3 カ月をめどに
9 月~2016 年 1 月:5 ヶ月)の両期間で輸血後
“HBV(NAT)、HCV コア抗原、HIV 抗体”検
感染症検査の実施率を調査した。統計学的検
査を行う必要があると記載されている。しか
討はカイ二乗検定で行った。
し輸血後感染症検査の依頼や実施は医師や患
【結果】輸血後感染症検査実施率は、前期:
者に委ねられる部分が多く、輸血患者全員に
575/843(68.2%)、後期:299/353(84.7%)であっ
実施することは難しい。当院ではこれまで輸
た。「輸血後感染症検査通知システム」導入
血後感染症検査実施率を向上させるため、
後、検査実施率は約 16%増加した(p<
①輸血後感染症検査セットの作成、②輸血実
0.0001)。システム導入後も検査オーダーがさ
施時に文書でスタッフと患者へ輸血実施日と
れない症例は、終診、患者が来院しない、終
輸血後感染症実施期間を通知、③電子カルテ
末期患者や小児で採血困難だと医師が判断し
上での付箋を用いて医師へ輸血実施日と輸血
た場合などが原因と考えられた。輸血後感染
後感染症実施期間を通知するなどの取り組み
症検査が実施された患者に HBV・HCV・HIV の
を行ってきた。今回 2016 年 1 月の電子カルテ
感染は前期、後期とも 1 例も認めなかった。
システム更新に伴い、電子カルテを用いた
【考察】「輸血後感染症検査通知システム」
「輸血後感染症検査通知システム」を導入し
の導入後、輸血後感染症検査の実施率は有意
たので、その効果と今後の課題を明らかにす
に上昇した。一方で、医師が輸血後感染症検
る。
査は不要であると判断した患者のメッセージ
【輸血後感染症通知システムの概要】輸血か
表示はどうすれば停止できるのか、外来や入
ら約 2 カ月後の輸血後感染症検査オーダーの
院、診療科により電子カルテを閲覧する頻度
有無をコンピュータでチェックし、オーダー
やタイミングが異なるため、表示期間を変更
がない場合は、担当医が患者カルテを閲覧し
してほしいなど、本システムに対する輸血部
た時に輸血実施日と輸血後感染症実施期間を
門への問い合わせや要望がよせられている。
示すメッセージを画面中央に表示するように
【結論】「輸血後感染症検査通知システム」
した。メッセージ画面より直接、検査オーダ
の導入後、輸血後感染症検査の実施率は上昇
ー画面を開くことができる。メッセージの表
した。診療科によって異なる要望に対し、柔
示期間は輸血の 2 カ月から 5 カ月後までとし
軟に対応できるシステムの構築が今後の課題
た。
である。
【対象と方法】2014 年 9 月から 2016 年 1 月ま
でに当院で行われた同種血輸血のうち、輸血
から 3 カ月以内に再び輸血を行っている症例、
名古屋第一赤十字病院 輸血部
052-481-5111(内線 23572)