生活衛生課(食品衛生担当) 1.最近の食中毒の動向 2.ノロウイルス食中毒の予防策 1 1.最近の食中毒の傾向 年平均で約24,079名 食中毒患者数の推移(H18-H27) が食中毒にかかり、毎年 25000 約5名が死亡している。 20000 死亡者総数の内自然 15000 毒が25名を占め、細菌 (21名)を上回った。自然 10000 毒食中毒の件数、患者 5000 数とも少数であるが、自 然毒の致命率は高い。 0 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26 H27 ノロウイルスは患者数 は多いが死亡はない。 細菌 ウイルス 自然毒 化学物質 30000 他方、消費者の関心が 高い農薬や添加物など化 学物質による事故件数は 少なく、死亡者も発生して いない。 H18~27年 細菌 ウイルス 化学物質 自然毒 平均患者数 通算死亡数 8,459名 21名 15,058名 0名 253名 0名 309名 25名 食中毒死亡原因の推移(2000~2015)人数 自然毒 大腸菌 サルモ ブドウ ウェル セレウ 年 VT産生 ネラ 球菌 シュ菌 ス菌 植物 動物 1 1 1 1 2000 1 3 2001 イヌサフラ 9 2 1 6 2002 ン、トリカブ 1 2 3 2003 ト、キノコ、 2 1 2 2004 グロリオサ 1 4 2 2005 1 1 3 1 2006 ユッケ、柏 生卵入りオ 4 3 2007 餅、サンド クラ納豆、 ウィッチ 1 3 2008 昆布の煮物 2009 2010 フグ、アオ ブダイ 7 3 1 2011 8 2 1 2012 1 2013 浅漬け 1 1 2014 4 2 2015 計 26 10 1 1 1 25 28 計 4 4 18 6 5 7 6 7 4 0 0 11 11 1 2 3 6 92 月別の食中毒事件数(H27) 160 細菌は、汚染食品中で増殖して、喫食 者に食中毒を引き起こす。増殖に好都合 な高温多湿の夏場に多発する。一般的 に細菌が増殖できる25℃~55℃に放置 してはダメ。 140 120 100 ウイルスは生きている細胞の 酵素系と有機物を利用して増殖 し、外界では死滅する一方であ る。死滅が遅く乾燥し、気温が 低い冬場に多発する。 80 60 40 フグ料理は冬場が盛んであるが、自 分で釣った素人料理で年中発生してい る。春の山菜シーズンや、秋のキノコ 狩りシーズンに誤食が多発する。 20 0 細菌 ウイルス 自然毒 寄生虫 寄生虫食中毒は、年中発生するが、夏 場から秋場に多い。(サバ、イカ、サンマ) 食中毒発生状況(松山市)平成25~平成27年 年 H25 H26 H27 発生 年月日 摂食 者数 患者数 原因食品 病因物質 調理場所 1月12日 9 5 食事 ノロウイルス(G1,G2) 飲食店 7月8日 23 5 食事 カンピロバクター・ジェジュニ 飲食店 10月23日 111 31 食事 ノロウイルス(G2) 飲食店 3月17日 47 9 食事 サポウイルス 飲食店 4月12日 2 2 フグ料理 フグ毒 (テトロドトキシン) 飲食店 10月20日 2 1 不明 アニサキス 11月26日 50 24 食事 ノロウイルス(G1) 飲食店 1月23日 11 3 食事 ノロウイルス(G2) 飲食店 3月11日 41 20 食事 ノロウイルス(G1,G2) 飲食店 4月8日 31 4 食事(推定:殻付 ノロウイルス(G1,G2) 焼きカキ) 飲食店 7月23日 30 14 炊き込みおにぎり 8月26日 33 6 食事 カンピロバクター・ジェジュニ 飲食店 12月31日 59 8 食事 カンピロバクター・ジェジュニ 飲食店 黄色ブドウ球菌 不明 家庭 5 2.ノロウイルス食中毒の予防策 6 ノロウイルス(Norovirus) ウイルスの特徴 分布 ・・・カキ等の二枚貝、人間 特徴 ヒトの腸管でのみ増殖。 85~90℃で90秒以上の加熱、又は 次亜塩素酸Na消毒で失活 消毒用エタノールには耐性(効きにくい)。 潜伏期間・・・24~48時間 主症状・・・吐気、嘔吐、激しい下痢、腹痛。 発熱を伴うことも多い。(風邪様症状) 7 ウイルスの特徴(流行の要因) 感染力が強い・・・ウイルス粒子100個以下 大量・長期間排泄・・・109個/g以上 2週間以上 自分は不顕 不顕性感染者(キャリア)が多い 性感染者かも 環境中で耐性 塩素濃度・・・10ppm以上 温度・・・60℃、30分安定 乾燥状態で安定 ウイルス株の多様性・・・遺伝子型30以上(≒血清型) H18はGⅡ4が大流行、H27からは GⅡ17流行懸念 8 長期の免疫力弱い・・・数ヶ月で低下 塩素(200ppm)や熱湯(85℃以上・90秒以上)が有効 <ノロウイルス~人由来の典型例> 学校給食の食パンによる食中毒事件 (平成26年1月 浜松市) 【概要】 市内19の学校で、1,200人以上が下痢、嘔吐、発熱等の症状 複数の患者便、パン製造所従事者便、食パン、およびパン製造 所(拭き取り)からもノロウイルスを検出 給食の食パンが原因食品と断定され、製造者は営業禁止処分 【原因】 スライス作業後、食パン1枚1枚を、手袋を着用した手に取り、異 物の混入がないか確認していた。 ウイルスは工場のトイレでも見つかっていることから、従事者が 感染(不顕性感染)を自覚しないまま、トイレの後に十分な手洗 いをせずに手袋に触れ、パンを触ったことで汚染 食品は加熱済みだから安全と思い込むことは危険! 手袋の着用方法にも注意! 9 10 11 参考資料 ノロウイルス防止に関するグループワーク(対象:栄養士、調理師)で 改善すべき事項として揚げられた事例 (ノロウイルス対策トレーナー認定制度でのグループワーク内での意見) ・勤務シフトに余裕がなく、休みにくい環境であった。 →急なシフト交代マニュアルの作成 ・トイレの消毒の未実施、白衣のまま入室していた。 →トイレの洗浄消毒・入室マニュアルの作成→見える化 ・布巾を使いまわして使用していた。 →布巾の追加、使用後はバケツに入れ消毒、汚染非汚染区 域用に布巾の色分けによる使い分け ・二度洗いの未実施 →手洗いチェッカー、ポスターの作成掲示 ・使い捨て手袋の取り出し方法が不適切で、手袋指先を汚染さ せるような取り出しをしていた。 →開封部分を変更し、手首部分が取り出し口になるように工夫) 12 ノロウイルス食中毒予防の衛生管理の概要(厚労省提供) 基本は感染症対策 ノロウイルス食中毒予防 4原則: 「1.持ち込まない」、「2.拡げない」、「3.加熱する」、「4.つけない」 食品衛生法第50条第2項に基づく管理運営基準 その他関係通知 ・食品等事業者が実施すべき管理運営基準に関する指針 ・大量調理施設衛生管理マニュアル 消化器症状を呈している食品取扱者 は、食品の取扱作業に従事させない ・ノロウイルスに関するQ&A 持ち込まない 従事者の健康管理 衛生的な作業着の管理 適切な手洗いの実施 トイレの維持管理、清掃、消毒 器具等の洗浄・消毒 つけない 拡げない 手洗い設備の維持管理 交差汚染、二次汚染の防止 加熱する 適切な加熱の実施 適切な手洗い(方法・タイミング)の実施 器具等の洗浄・消毒 おう吐物の適切な処理 不顕性感染者を前提とした対策、 13 従事者自らが不顕性感染者である可能性を自覚した行動が重要 トイレが汚染源となりやすい! トイレの外で作業着を脱ぐ 長袖の場合は袖口をまくる トイレ専用の履物に履き替える 便器内の汚物を水で流すときは蓋を閉める トイレ使用後は適切に手を洗う トイレ、床や壁面などの広範囲な清掃消毒が必要 人がさわるレバー、ドアノブ、カランなど、定期的な 消毒(塩素0.02%濃度、200ppm)必要 重要 トイレから汚染を持ち出さない 注意事項 1.汚物処理セット いざという時に すぐに使えるよう 準備しておく。 消毒液は十分な 濃度(塩素 1000ppm)であ ること 2.マニュアル整備 お客様対応 汚物処理方法 上司への報告等 3.作業後も注意 マスク等の取外し 十分な手洗い 〈しっかり2回〉 感染や食中毒を 起こさないために どうすればよいか 考える 飲食店営業等における汚染想定ケース 1.客席(食堂)の汚染 利用者が突然、客席で嘔吐した! 2.トイレの汚染 トイレ掃除に行ったら、嘔吐物 や下痢便で汚染されていた。 3.厨房が汚染 ・従業員が突然体調不良を訴えた。 全てノロに 汚染と想定 しましょう!! トイレは定期的に 清掃・消毒(塩素系 薬剤)を!! 厨房施設の設備の 取手など、従事者 が触る部分の消毒 も!! (体調不良には、典型的な嘔吐、下痢、風邪症状だけでなく、食 欲不振、胃の違和感(停滞感含む)、軟便、だるさも含めて) ・従業員が厨房で嘔吐した。 16 手洗を2回連続する→微生物が約1万分の1に減少 手 洗 い 手 順 ★ 水道の蛇口は洗う前の手で触れているので、手と一緒に洗うかペーパータ オルを利用して蛇口を締めると、手の再汚染を防ぐことができます。 ★ 最後に手指に消毒用アルコールをすり込みましょう。 出典:東京都「社会福祉施設等におけるノロウイルス対応標準マニュアル第3版」 腸管出血性大腸菌O157による 食中毒の発生(死者6名発生) 平成28年8月に老人ホームで、未加熱の野菜調理品(きゅうり のゆかり和え)を喫食したことが原因の腸管出血性大腸菌O157 による集団食中毒が発生しました。 調査では調整時に、次亜塩素酸ナトリウムによる消毒あるいは 加熱処理がなされていなかったことが報告されています。 生野菜等を提供する際は、消毒あるいは加熱を実施後に提供 しましょう。 ■ 原材料は低温(10℃以下)で保管! ■ 原材料の洗浄は、飲用適の水で十分に! (流水で3回以上水洗い→中性洗剤の使用→流水での十分なすすぎ) ■ 野菜等を生で提供する場合は、殺菌を確実に実施! 塩素による消毒(100ppm・10分間 または 200ppm・5分間) あるいは 18 75℃・1分間以上の加熱の徹底!
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