妙見町地区における都市計画提案の理由書 (1)地区の概況 本提案を行う区域は、名古屋市昭和区妙見町及び山手通3丁目の各一部で、広さは 約 4.3ha、区域内には高低差があり、区域北側端部が最も低く南側が高くなる丘陵部 の地形となっている。区域の西側に名古屋市営地下鉄名城線が敷設されており、区域 内に出入口を有し、地下鉄名城線八事日赤駅から栄駅まで 18 分程度と利便性が高い 区域となっている。 区域内の東側においては名古屋第二赤十字病院が多くを占め、西側山手通り沿いは 商業地が形成されている。また、区域周辺の状況としては、北側は閑静な低層住宅地 を基本に都市計画道路四谷通隼人町線沿道で商業・業務施設が多くみられる。区域の 西側は、八事日赤駅直近という立地を活かした中高層の集合住宅が集積している。区 域周辺の南側は、閑静な低層住宅地を基本に、山手通り沿いには商業施設が立地して いる。区域周辺の東側は、寺院が多く立地する閑静な低層住宅地であり、緑地ととも に、潤いある空間を形成している。 (2)都市の将来像における位置付け 区域は地下鉄名城線八事日赤駅から半径 800m 内となっている。平成 23 年 12 月に 策定された「名古屋市都市計画マスタープラン」における将来都市構造図では、「駅 そば生活圏」に該当し、「駅そば生活圏」においては、「都市機能の更なる強化」と 「居住機能の充実」を図ることとなっている。また、本区域は、人・もの・情報が行 き交う多様な交流を促進する主な交流軸として設定されている。 (3)計画に至った経緯 名古屋第二赤十字病院は、大正3年の日赤愛知支部八事療養所の開設から 100 年間 の長きに亘り、名古屋市を中心とした愛知県内において高度先端医療の提供を行い、 救命救急病院、災害時拠点病院として地域医療の一翼を担ってきた。 こうしたなか、高度先端医療の提供について、平成 20 年 2 月に地域がん診療連携 拠点病院に指定を受け、がん高度先端医療を提供することが求められるなか、ハイブ リッド手術室や化学療法など、近年ますます高度化する治療に必要とされる設備は大 幅に増加している。また救命救急病院としても、昭和 59 年 4 月救命救急センターに 指定され、平成 13 年 6 月救命救急センター棟がオープンして以降、入院や手術が必 要な二次、三次の患者が大幅に増加しており、手術室など現状の医療スペースでは対 応が難しくなっている。さらに、平成 19 年 3 月愛知県の災害拠点病院(中核地域災 害医療センター)に指定されたものの、大規模災害時の際には、対策本部スペースが 十分に確保できず、また、食糧等の備蓄が院内各所に散在しており、その量も最低限 の3日間程度しか確保されていない状況である。加えて、近年は、入院患者のケアを 強化していくため、1 床当たりの建物延床面積も増加傾向にある。 しかし、現在の都市計画のもとでは、これらの期待に応える機能強化は難しい状況 にある。 そこで、期待に応える機能を強化し、必要な施設整備をさらに進め、地域の医療拠 点として形成を図るため、用途地域の変更等の都市計画提案を行うものである。 (4)計画の必要性 高度先端医療や救命救急病院、災害拠点病院としての機能強化を行い、更なる地域 貢献を行っていく上では、増築が可能な容積率まで引き上げる必要がある。そこで、 用途地域を対象区域の一部で指定されている第一種低層住居地域(容積率 100%、建 ぺい率 30%)から近隣商業地域(容積率 300%、建ぺい率 80%)へと変更するととも に、高度地区を現状の 10m高度地区から絶対高 45m高度地区へと変更、準防火地域 の指定、風致地区の指定解除を提案するものである。この変更により区域内の高度利 用が可能となる。 反面、用途地域及び高度地区を変更することにより、従来は建築することが不可能 であった用途や高さの建築物等が建築可能となり、隣接する地域がこれまでに形成し てきたゆとりと潤いのある良好な環境に悪影響を及ぼしかねない。そのため、地区計 画を決定し、建築物等に関する制限を加えることで、用途変更を行った後において も、従来と同様の良好な環境を維持していくものである。 (5)計画の妥当性 用途地域の変更等をすることにより病院の増築が可能となる。また、区域内の高度 利用が可能となり、将来的に、余剰地を活用して駐車場台数を増加することで、周辺 の交通環境の大幅な改善が予測される。 また、第Ⅱ期で歩行者用通路の整備と敷地内を通る市道宮東妙見町線支線第8号第 2支線とともに沿道を緑化することで、緑のプロムナードの形成が可能となる。更 に、高度利用によって生まれた余剰地の緑化やセットバックした空間を活用した周辺 道路の沿道緑化を進めることで、周辺環境と調和した地域に潤いを与える緑豊かな空 間を形成することができる。 建築物等の形態又は色彩その他の意匠については、周辺環境との調和を考慮し、地 区全域において四谷・山手通都市景観形成地区と同様の色彩基準を適用する。道路に 面する垣又はさくの構造は、生垣又はフェンス等とし、周辺市街地に対し圧迫感や閉 塞感を与えないよう配慮するとともに、地区施設の利用を妨げないものとする。これ により、周辺市街地に対する圧迫関と閉塞感を抑えることが可能である。 以上のことから、本地区における都市計画の決定及び変更を行うことで、現状の良 好な環境を損なうことなく、良好な都市環境の形成、周辺環境と調和したまちづく り、医療の機能強化、防災力の強化など、地域社会への更なる貢献を図ることが可能 となる。
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